アホウドリの保護対策について
環境省自然環境局野生生物課
アホウドリ類のうち、我が国を繁殖地として利用しているものは、アホウドリ(
Diomedea albatrus)、クロアシアホウドリ(
Diomedea
nigripes)、コアホウドリ(
Diomedea immutabilis)の3種である。このうち、アホウドリについては、羽毛採取等を目的とした乱獲により激減し、絶滅寸前となったため、繁殖地での保護対策を講じている。
1.経緯
- 羽毛採取・食肉の目的で、推定で合計1000万羽近くが、1880年代~1930年代にかけて捕獲され、絶滅寸前となる。
- 1951年に鳥島に10羽程度が生息していることが発見され、絶滅していなかったことが確認され、気象庁鳥島気象観測所の保護活動により、1965年には推定で100羽程度まで回復するが、1965年に火山性地震の群発により気象観測所が閉鎖され、保護活動が中断される。
- 1981年(昭和56年)より環境庁のアホウドリの生息状況調査及び繁殖地の維持・保全事業※1が開始された。
- 1993年(平成5年)に種の保存法による「国内希少野生動植物種」に指定され、同年保護増殖事業計画が策定され、アホウドリの繁殖地の維持・保全事業及び新繁殖地形成事業※2が開始された。1993年の推定個体数は約500羽。
- 事業開始後、アホウドリの個体数は順調に増加し、1999年には1000羽を超えた。2004年4月現在の推定個体数は約1600羽。(1998年のレッドリスト見直しでは絶滅危惧II類に引き下げられた)
※1 |
繁殖地の維持・保全事業 |
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既存の繁殖地(燕崎)が降雨に伴い流出する火山灰の堆積により埋没するため、堆積する土砂の除去及び土留め工事を行う事業 |
※2 |
新繁殖地形成事業 |
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デコイ(鳥の模型)・音声発生装置を用いた新繁殖地(初寝崎)への誘導 |
2.保護対策
- 平成5年より鳥島における繁殖地の維持・保全事業及び鳥島における新繁殖地形成事業を実施(2003年度(平成15年度)1,950万円)。
- 繁殖地の維持・保全事業により、繁殖成功率が事業開始前の1992年(平成4年):48%であったのが、2004年(平成16年):70%に向上。
- 新繁殖地形成事業により1つがいが新繁殖地において繁殖し、7羽のヒナが巣立っている。