報道発表資料本文

II.野生生物のダイオキシン類蓄積状況等調査

1.調査方法

 ダイオキシン類による環境汚染の実態を把握するため、平成13年度に続き、鳥類(トビ、カワウ)、海棲哺乳類(オウギハクジラ、スナメリ)及び陸棲哺乳類(アカネズミ、タヌキ)について、また新たにハシブトガラス、ニホンザルについて、ダイオキシン類の蓄積状況の調査を行った。さらに、野生生物への影響に関する調査も行った。


2.調査結果

(1) 蓄積状況調査結果
鳥類(カワウ)では他の生物に比較してダイオキシン類の蓄積量が高い個体が見られた。ハシブトガラスは全体としては、他の2種よりダイオキシン類の蓄積濃度は相対的に低い傾向がみられた。海棲哺乳類(オウギハクジラ、スナメリ)では、陸棲哺乳類(アカネズミ、ニホンザル、タヌキ)に比較して、蓄積量が高かった。
経年的変化については、本年度極端に蓄積濃度が高くなった種はないものの、オウギハクジラについては上昇の傾向が示唆されたが、全体的には、濃度は横ばいもしくは減少傾向にある。

(2) 影響調査
ダイオキシン類の蓄積による影響について検討を行うため、薬物代謝酵素活性、病理組織学的変化、血中ホルモン濃度について、カワウとハシブトガラスを用いて調査を行った。その結果、ダイオキシン類蓄積と薬物代謝酵素活性の間に相関関係が認められたが、種差があった。病理組織学的変化については、ダイオキシン類の蓄積量に関連すると考えられる変化は認められなかった。また、血中ホルモン濃度については、カワウのダイオキシン類蓄積濃度と甲状腺ホルモン濃度との間に負の相関関係を認めた。
今回の調査結果から、カワウにおいては薬物代謝酵素活性の誘導および血中の甲状腺ホルモン濃度を、ハシブトガラスにおいては薬物代謝酵素活性の誘導を、ダイオキシン類蓄積による影響の指標として、活用できる可能性が示唆されたものの、今後、検体数を増やしてさらに調査する必要があると考えられた。

 




 報道発表本文に戻る