報道発表資料本文

平成16年度環境保全経費の見積りの方針の調整の基本方針


平成15年7月
環境省総合環境政策局


 わが国の環境問題は、高度経済成長期の激甚な産業型公害を中心としたものから、都市生活型公害や地球温暖化問題、廃棄物問題など国民の日常生活や通常の事業活動から生じる環境負荷が大きくなったことに起因するものへと変化してきた。
 こうした問題の解決を図るため、環境基本法に基づき環境基本計画が策定され、持続可能な社会の構築に向けた施策が総合的かつ計画的に推進されている。現行の第二次環境基本計画では、具体的な環境保全施策を図るため「理念から実行への展開」と「計画の実効性の確保」という2点に留意するとともに、特に重点的・戦略的に取り組むべき11分野を戦略的プログラムとして示している。
 環境基本計画の制定以降、持続可能な社会の構築に向け、各施策の取組は進展を見せているものの、各分野で依然多くの課題を抱えており、第二次環境基本計画のもと具体的な各施策の実効性を高める必要がある。地球温暖化対策については、昨年6月に締結した京都議定書の6%削減約束を確実に実行するため、温室効果ガス排出抑制のための真に実効ある対策を推進していく必要がある。また、循環型社会の形成を目指して、資源の効率的利用の度合いを総合的に表す資源生産性などの具体的数値目標を盛り込んだ「循環型社会形成推進基本計画」を本年3月に閣議決定したところであり、その枠組みが確固たるものとなったことから、今後は、本計画に沿った各種施策の展開が必要となる。
 さらに、持続可能な社会の構築を具体的に推進するためには環境保全のみならず、社会、経済の側面をとらえた環境施策を推進する必要があり、具体的な戦略に基づく環境と経済の統合を進めていく必要がある。
 このような状況を踏まえ、平成16年度の環境保全経費の概算要求に際しては、以下の点に留意して環境保全施策の効果的な展開が図られるよう努めることとする。


I 環境保全施策の推進

 持続可能な社会の構築に向け、第二次環境基本計画の第3部第2章「環境保全施策の体系」に示された国内における各種施策や国際的取組の効率的、効果的な推進が図られるよう、関係府省においては、環境保全上の効果及び緊急性を踏まえつつ、必要な予算の確保に努めることとする。

II 「戦略的プログラム」に係る施策

 第二次環境基本計画における各施策の中でも、特に、第3部第1章において「戦略的プログラム」として示された事項に係る施策については、国民のニーズや対応の緊急性、環境政策全般の効果的実施の必要性、統合的アプローチに立脚した環境政策の総合化の必要性などの観点から見て、本計画期間中に優先的に取り組むべき分野であり、重点的な展開が図られるよう努めることとする。
 昨年7月には、戦略的プログラムのうち、「地球温暖化対策の推進」、「物質循環の確保と循環型社会の形成に向けた取組」、「化学物質対策の推進」、「生物多様性の保全のための取組」、「環境教育・環境学習」の5分野についての点検結果がとりまとめられたことから、これらの各分野に関しては、今後の課題として指摘のあった以下の事項を踏まえ、取組の強化に努めることとする。
 なお、環境基本計画では、計画に基づく施策の進捗状況の点検を行い、その結果については環境保全経費の見積りの方針の調整に反映することとされている。

1.地球温暖化対策の推進

 ○  京都議定書の6%削減約束の達成に向けて、昨年3月に決定された「地球温暖化対策推進大綱」に基づき、総合的かつ計画的な取組を推進することが必要である。
 ○  温室効果ガスの吸収源対策として、森林・林業基本計画に示された目標達成に必要な森林整備、木材供給、木材の有効利用等を着実かつ総合的に実施することが不可欠である。この際、森林が持つ生物多様性の保全や水源のかん養などの多面的な機能にも留意し、国民の参加を得つつ、森林を活用しながら保全し、子孫に受け継いでいくことが重要である。
 ○  京都議定書の約束を費用効果的に達成するため、京都メカニズムについて、具体的な措置等の実施及び検討を進めることが必要である。
 ○  税、課徴金等の経済的手法については、他の手法との比較を行いながら、環境保全上の効果、国民経済に与える影響、諸外国における取組の現状等の論点について、地球環境保全上の効果が適切に確保されるよう国際的な連携に配慮しつつ、様々な場で引き続き総合的に検討することが必要である。

2.物質循環の確保と循環型社会の形成に向けた取組
 ○  循環型社会の形成に際しては、「循環型社会形成推進基本計画」で示された数値目標の達成に向けて、グローバルな視点や地域の視点などを踏まえ、すべての主体の積極的な参加と適切な役割分担の下で、適正かつ公平な費用負担により、循環型社会を形成する基盤となる条件の整備、適正な発生抑制・循環的な利用、処理の確保等の施策を着実に講じていくことが必要である。
 ○  再生品については、各主体による積極的な利用により、その市場の育成を推進することが必要である。また、市場メカニズムの中で環境保全に資する製品やサービスの提供を進展させる環境ビジネスの普及促進や事業者の行動への環境配慮の織り込みを促進するための施策を展開することが必要である。

3.化学物質対策の推進  
 ○  化学物質の環境リスクについて、リスクコミュニケーションを促進しつつ、評価と管理を一層推進していくことが必要である。
 ○  化学物質による生態系に対する影響の適切な評価と管理について更に検討を進めることが必要である。
 ○  人の健康や生態系に対する影響などの有害性に関するデータや暴露に関するデータの収集・整備を引き続き進めることが必要である。
 ○  PRTR制度により得られる排出量などのデータを適切に活用していく上で、国及び地方公共団体並びに事業者自身の役割は大変重要である。国は、都道府県の体制整備について適切な支援を行うとともに、関係省庁間の連携を図りながら、事業者による的確な届出を促し、得られたデータを活用していくことが必要である。
 ○  環境リスクコミュニケーションの推進に当たっては、様々な場面においてそれぞれの状況に適したリスクコミュニケーションが実施されるよう、地域の範囲、化学物質の種類及び影響の種類などに応じ多様な手法を活用することが必要である。
 ○  PCB対策に関しては、PCB処理関連2法の枠組みに基づき、平成28年までにPCB廃棄物を全て処理するため、全国的な処理体制の構築のための拠点的処理施設について、概ね平成18年度を目標に整備を進め、その後概ね10年で処理を終えることが必要である。
 ○  化学物質問題への対応は、単に日本国内のみの問題あるいは環境問題のみで済まされるものではないことから、国際的な協力や健康・安全に関わる行政との連携を一層進めることが必要である。

4.生物多様性の保全のための取組  
 ○  新・生物多様性国家戦略が十分に機能し、生物多様性の保全のための具体的施策が効果的に推進されることが必要である。特にその実効性を高めるため、森林・林業基本計画等の国の各種計画との連携が図られるとともに、生物多様性の保全と持続可能な利用に影響を及ぼすおそれのある国の計画・施策については、新・国家戦略の基本的な方向に沿ったものとなるよう、十分な配慮が盛り込まれることが必要である。
 ○  新・国家戦略に掲げられた、自然的、社会的条件を踏まえた生態系管理のための手法の検討(エコシステムアプローチの原則の具体化)、里地里山の中間地域において、地域の生物多様性保全を進めるための助成や税制措置等の経済的な奨励措置、自然再生推進法(平成14年法律第148号)に基づく地域の多様な主体が参画して自然再生を促進するための措置が必要である。
 ○  生物多様性の保全、地球温暖化の防止など、森林の有する多面的機能を高度に発揮させていくためには、森林の適切な保全・整備を進めていくことが必要である。
 ○  移入種(外来種)対策については、実効ある制度の構築に向け法制化も視野に入れ、その在り方について、関係府省が連携して検討し、具体的な取組を進めることが必要である。
 ○  生物多様性に関する情報整備については、今後、全国1,000ヶ所程度のモニタリングサイトの設置や浅海域の調査の推進を図っていくことが重要である。また、各分野の専門家とのネットワークの構築・強化、情報収集の効率化や各省間の連携、情報の共有化に努めるとともに、情報へのアクセスを容易にすることが必要である。さらに、国内外の情報交換を活発化させる仕組みの構築が急務である。
 ○  野生動植物の種の保存については、絶滅のおそれのある種の飼育栽培下での保存、増殖、野生復帰への取組に加え、絶滅のおそれを未然に回避する予防的措置を進めるとともに、各府省などの研究機関における遺伝資源の収集・保存事業について、より連携を深め取組を強化することが必要である。
 ○  施策推進の基盤整備として、分類学や生態学の分野の研究は重要であり、それらの専門家について、人材養成が不可欠である。

5.環境教育・環境学習  
 ○  環境教育・環境学習の推進に当たっては、環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律(平成15年法律第130号)をも踏まえ、環境基本計画に盛り込まれた施策の基本的方向に沿って体系的に取り組むことが必要である。
 ○  地球温暖化対策、廃棄物・リサイクル対策、生物多様性の保全をはじめとするすべての個別政策分野において、幅広く環境教育・環境学習を有効に位置付け活用することが必要である。
 ○  人材の育成に当たっては、環境教育の専門家、学校教育における教員、環境カウンセラーをはじめ地域における環境保全活動の実践リーダーなどの幅広い人材を対象とするとともに、その質的向上を図ることが必要である。
 ○  総合的な環境情報・環境教育データベースの構築など環境情報基盤整備を一層推進するとともに、情報の積極的開示に努めることが必要である。
 ○  次世代を担う若年層の環境教育については、学校教育のみに依存することなく、家庭における環境教育の重要性を認識した取組が重要である。また、実社会で重要な役割を担っている層の環境意識を高める施策の充実を図ることが必要である。
 ○  各主体の連携については、環境教育のモデル事業などを通して、各主体間のパートナーシップを強化していくとともに、これらの取組を支援するため関係府省間の協力・連携を一層推進していくことが必要である。
 ○  環境教育を受けた子ども・青少年達が社会に出た際に、引き続き環境に関する取組に参画できるよう、各教育機関との連携の下、継続性を考えていくことが必要である。
 ○  環境教育・環境学習の取組の結果、子どもなどその対象者の意識や行動形態がどう変化したか、それが環境保全にどのような効果をもたらしたか把握に努めることが必要である。

III その他の環境保全に対する考え方

 上記の他、政府において環境保全に係る考え方や施策が示されており、関係府省においては、これらを踏まえつつ、必要な予算の確保に努めることとする。
 ○  「循環型社会形成推進基本計画」(平成15年3月14日閣議決定)においては、循環型社会に向けての現状と課題を分析し、わが国が目指す循環型社会のイメージを示している。また、循環型社会に向けた具体的な数値目標を設定し、この目標を達成するための国及び各主体の取組を挙げている。その上で、本計画の点検・見直しなどの留意事項を示し、さらに具体的な取組に関する工程表を示し、循環型社会形成に向けての枠組みを確固たるものとした。
 ○  「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(平成15年6月27日閣議決定)においては、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」が平成16年度予算で、活力ある社会・経済の実現に向けた重点4分野のうちの一つとされている。なお、主要予算の改革の一つとして「環境関連」については、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応に当たっては、関係府省、研究機関等への重複支出を整理する。」、「「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月27日閣議決定)に掲げた目標達成に向けた取組工程等の策定や評価基準の明確化を行い、予算に反映させるなど、環境を重視した施策への転換を推進する。」、「大規模施設整備が進められているごみ焼却施設については、稼働率やエネルギー利用等も考慮して、より効率的・効果的な整備に努める。」が掲げられている。
 ○  「環境・エネルギー産業発掘戦略」(平成14年12月5日内閣官房)においては、環境産業が環境負荷の少ない持続可能な社会システムの形成に重要な役割を担うものとして、そのための技術開発や普及促進が掲げられている。
 ○  「バイオマス・ニッポン総合戦略」においては、バイオマスの総合的な利活用による「地球温暖化の防止」、「循環型社会の形成」が同総合戦略の中に位置付けられ、その実現に向けた具体的目標、基本的戦略が明示された。
 ○  「規制改革推進3か年計画(再改定)」(平成15年3月28日閣議決定)においては、「持続的な発展を可能とするための環境負荷の少ない循環型社会の形成推進」が規制改革の推進に当たっての重点事項とされるとともに、「市街地土壌汚染対策に係る新たなルール策定」、「循環型社会形成推進のための諸制度の改善」等環境分野が横断的措置事項の一つと明示された。
 ○  「530万人雇用創出プログラム(平成15年6月10日530万人雇用創出促進チーム)では、雇用創出におけるプログラムの一つとして環境サービス分野が掲げられている。
 ○  「平成16年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」(平成15年6月19日総合科学技術会議意見具申)においては、環境分野は、特に重点を置き、優先的に研究開発資源を配分する4分野のうちの一つとされた。



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