報道発表資料概要

「中核的温暖化対策技術検討会」報告書について
本文




1.検討会の目的

 ○  民生部門及び運輸部門を中心とした実効性があり、早期に効果を見込むことができる「中核的温暖化対策技術」を抽出し、普及に向けた具体的なシナリオについて検討することを目的とした、学識経験者、地方公共団体、産業界等の有識者からなる検討会を設置。


2.検討会のこれまでの経過

(1) 第1回検討会(平成14年10月)
   温室効果ガスの排出動向及び削減に向けた取組について情報共有。
   民生・運輸部門における中核的な対策・施策の候補について検討。
(2) 第2回検討会(平成14年12月)
   民生・運輸部門における中核的な対策・施策の候補について第1回検討会について引き続き検討。
   民生・運輸部門における中核的対策・施策の導入シナリオについての検討。
(3) 第3回検討会(平成15年1月)
   中間報告についての検討。
(4) 第4回検討会(平成15年3月)
   中間報告について検討、とりまとめ。


3.検討会メンバー構成

  ※  別紙参照


4.検討会報告書の概要

(1) 中核的温暖化対策技術の必要性
   従来の民生・運輸部門における対策のみでは不十分であり、以下の考え方に基づく有効な対策の抽出が必要。
   技術的に有効・確実で早期の効果が見込めること
   ソフトに頼る手法ではないこと(「心がけ」の程度に効果が依存しない)
   公平で普及対象が大きいこと
   体系的な普及促進が図れること
   新規対策または対策強化が必要であること(従来対策がないまたは効果が限界の状態)
  
(2) 中核的温暖化対策技術の選定
  [1]  温暖化対策推進大綱及び中環審シナリオ小委からの報告に加えて、本検討会における議論等を踏まえ、幅広く対策技術の候補を抽出し、個別の対策技術のそれぞれについて、技術開発状況、コスト、導入実績等の観点から整理。
  [2]  「対策単体の効果の確実性」及び「大量導入の可能性」の双方の観点から対策技術を絞り込むとともに、さらに、「政策手段等により、制度的、経済的制約が早期に除去できる」との観点に合致するものについて、中核的温暖化対策技術として選定。具体的な対策技術として以下のものがあげられている。
     低濃度バイオエタノール混合ガソリン
     業務用燃料としてのバイオエタノール利用
     住宅用電圧調整システム
     超低硫黄軽油
     民生用風力発電システム
     民生用太陽光発電システム
  
(3) 中核的温暖化対策技術の普及シナリオの検討
  [1]  低濃度バイオエタノール混合ガソリン
     バイオマス燃料(京都議定書上CO2排出量がゼロカウント)であるバイオエタノールを低濃度でガソリンに混合・利用するもの。
     エタノール混合はガソリン燃料のオクタン価向上により燃費向上にも寄与。
     米国では、1980年代からエタノール10%混合ガソリン(E10)が普及しており、自動車各社はエタノール混合燃料に関する対応技術、各種情報を既に有していることから、今後の普及に当たっては、本格的な技術開発やスタンド整備を要しないとのメリットや、適切な低濃度混合割合により既販車への適用が可能であることからかなり早い時期から効果を期待しうる対策。
     自動車燃料体系に再生可能燃料を導入することは、将来の燃料電池自動車の体系においても再生可能水素の供給源の観点からも有意義。
     国際的には、米国、ブラジル等において既に利用実績があるのみならず、中国、タイ、オーストラリアなどで積極的に導入拡大を動きが見られ、我が国として早期に供給ルートを開拓することも重要。
     バイオエタノールの生産時や輸送時のCO2排出についての指摘があるが、生産時についてはプロセスにおいてバイオマス燃料が用いられており、生産時のライフサイクルで評価したCO2排出の6倍以上の削減効果がある。
     関係各省で本年1月から実施されている安全性、排ガス性状の試験結果を踏まえ、使用過程車で使用可能な混合濃度(5%程度以下)を明らかにした上で導入開始。
     普及シナリオとしては、供給体制確立段階とE10ガソリンを基本とする段階(E10普及段階)に分け、後者は2008年〜2010年の間の適切な時点を想定。なお、E10普及段階においても非対応車が残っている間は、非対応車向けにプレミアムガソリンを残す等の措置が必要(具体的なスケジュールについては、下図参照)。
     品質確保、供給設備での対応、ランニングロス等の燃料蒸発ガスへの対応、排ガス性状の確認、経済性の確保、等の課題については、それぞれ適切な対策と確認により対応可能。
     2010年におけるCO2削減効果としては、運輸部門の1990年比5.5%削減、全部門の1990年比1.0%削減。
   

低濃度バイオエタノール混合ガソリンの普及シナリオのスケジュールの例
低濃度バイオエタノール混合ガソリンの普及シナリオのスケジュールの例


   [2]  業務用燃料としてのバイオエタノール利用
   灯油や重油を燃料とするボイラー等において、バイオエタノールを混合して燃焼するもの(方式としては、エタノール用バーナーの追加、重油バーナーの直前混合、エタノールのエマルジョン混合がある)。
   民生業務部門における冷暖房・給湯等の熱需要の約6割を石油系燃料が賄っていることから非常に大きな効果が期待される。
   対策機会は灯油・重油燃料を使用する全ての事業所が有することから公正性を確保。
   ばいじん対策となるとともに、エマルジョン化して燃焼する場合にはNOx対策にも資する。
   バーナー交換・改造に対する支援措置が重要。
   2010年におけるC02削減効果は、民生業務部門の1990年比0.74%削減。
  
[3]  住宅用電圧調整システム
   100Vを超える比較的高い電圧を100Vに自動調節する機器を設置することによる省エネ化(消費電力量は電圧の2乗を負荷で割った値となるため、電圧の2乗の変化分に比例し、103Vを100Vに調整する場合5.7%の省エネとなる)。主として照明等の抵抗負荷に係る消費電力が削減可能。エアコンや冷蔵庫等でもインバーター制御を受けない部分等で効果が得られる。
   電圧調整により電気機器への電圧変動による影響が低減され、機器の寿命が延びるとの利点もある(白熱灯の場合、105Vは100Vの1/2の寿命)。
   既に業務用システムとして確立している技術であり、家庭用システムについても一部商品化されている。
   分電盤のある全ての住宅への導入が可能であることから、対策機会が限定されず大量普及が可能。
   地域協議会を活用する等による地域単位での導入促進、初期導入コスト(15万円程度の見込み)の補助により大幅な導入普及を図る(具体的なスケジュールについては、下図参照)。
   粗悪製品の排除と消費者保護対策が必要であることから、補助対象とする機器については、技術的な要件を規定することが適当。
   2010年におけるC02削減効果は、民生家庭部門の1990年比1.1%削減。
    

住宅用電圧調整システムの普及シナリオのスケジュールの例
住宅用電圧調整システムの普及シナリオのスケジュールの例


   [4]  超低硫黄軽油
   ディーゼルエンジンの高効率性を活かすために必要なDeNOx触媒に対する悪影響(被毒作用)の原因である軽油中の硫黄分を大幅に削減、これにより燃費改善とともにCO2排出削減。
   製油所における超深度脱硫装置の導入、超低硫黄対応のディーゼル車の普及が必要。現行硫黄分濃度500ppm対応車両から10ppm以下の超低硫黄軽油対応車両の普及により、4%以上のディーゼル車の燃費改善。
   普及シナリオとして、供給体制の整備、車両側の対策実施等に対する支援措置が重要。
   脱硫コストの増加分の負担、全面供給への一斉切り替え、対応車両の開発・普及、等の課題については、それぞれ適切な対策と確認により対応可能。
   2010年におけるC02削減効果としては、運輸部門の1990年比0.5%削減。
  
[5]  民生用風力発電システム
   従来システムでは利用できなかった2〜3m/s程度の都市部の平均風速でも発電が可能で騒音の少ない1kW規模程度の小型風力発電システム。
   従来システムでは、商用電力系統と連携しない独立型システムが大半であり、充電池、充放電コントロール、インバーター等の併設が必要であったことから、利用用途の限定やコスト高といった問題が残されていた。
   普及シナリオとして、地域協議会を活用する等による地域単位での導入促進、住宅・業務施設への導入促進、公共施設への導入促進、補助金等による支援措置が重要。
   商用電力系統への影響、発電機の設置方法、設置費用負担の軽減、等の課題については、それぞれ適切な対策と確認により対応可能。(特に、商用電力系統への影響については、発電容量から考えて自家消費が可能な発電電力量と想定される。)
   2010年におけるC02削減効果は、民生家庭部門の1990年比5.3%削減。
 
[6]  民生用太陽光発電システム
   太陽光発電システム(PV)の大幅普及。家庭用のPVについては既に3〜4kW規模のシステムを中心に既に多数商品化されており技術的には確立済み。
   技術的には確立されている一方、考えられる導入ポテンシャルと従来までの導入実績の乖離が大きく、さらなる施策手段の活用が必要な状況。
   投資回収年が10年より短くなるためには約45万円/kW程度の初期コストのになることが必要。このためには、政策的に更にプッシュし、生産規模を拡大することが必要。
   普及シナリオとして、地域協議会を活用した地方自治体による施策への国による補助、地方自治体所有の場所(公共施設の屋根等)を活用した大型PVによる自治体への売電事業への国による補助、等が想定される。
  
(4) 今後の検討方針
  [1]  報告書において提言されている対策の推進に向けた場(組織)を設ける。
  [2]  この組織のリードの下に、早急に可能なところから具体的な事業に着手し全国展開に向けた施策を推進。
  [3]  「中核的温暖化対策技術」の継続的な検討(新たな有望対策技術の発掘に向けた取組)


 地球環境局 報告書
 民生・運輸部門における中核的対策技術に関する中間報告



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