・ | 健康リスク及び生態リスクにわたる環境リスク初期評価(13物質) |
・ | 追加的に実施した生態リスク初期評価(69物質) |
・ | 発がん性評価:定量的リスク評価(6物質)及び定性的評価(19物質) |
(1) | 評価の内容 |
多数の化学物質の中から相対的に環境リスクが高そうな物質をスクリーニングするための「初期評価」を、平成14年1月に結果が公表された39物質に引き続き実施した。評価対象とした13物質は、PRTR対象物質等、化学物質に関するリスク管理の行政施策上環境リスク評価の必要性が高いと考えられるものを中心に選定している。 今回も「化学物質の環境リスク初期評価ガイドライン」に基づき、現時点で評価手法の確立した有害性に関する知見により評価を行った。発がん性については評価文書に基づく定性的な判定にとどめており、別途「発がん性評価」の中で検討した。現在有害性評価のための試験法開発等が進められている内分泌攪乱作用は、基本的には本初期評価の対象としてこなかったが、別途内分泌攪乱化学物質問題検討会により既に内分泌攪乱作用が認められた物質については、その知見も視野に入れて評価を行った。 また、今回の評価では、スクリーニングとしての環境リスク初期評価の充実に向けて暴露評価に用いる測定値の取扱い、判定ができない物質の取扱い等について検討を行い、その成果を個別物質の評価に反映させた。 本初期評価はスクリーニングとしての目的で限られた情報に基づきリスクの判定を行い、詳細な評価を行う候補物質を抽出するものであり、今回の結果を受け直ちに低減対策等を必要とするものではない。 |
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(2) | 環境リスク初期評価の成果 |
13物質の評価結果は以下のとおりである。 |
健康リスク | 生態リスク | |
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なし | 4-t-オクチルフェノール、クロロホルム及びノニルフェノール |
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アクリロニトリル、クロロホルム等5物質 | アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)及び1,2-ジクロロエタン |
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5物質 | 5物質 |
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3物質 | 3物質 |
(1) | 評価の内容 |
環境リスク初期評価を実施した13物質のほかに、強い生態毒性が示唆される物質等を中心に生態リスク評価の必要性が高いと考えられる69物質を選定して、追加的に生態リスク初期評価を行った。評価内容は上記環境リスク初期評価における生態リスク初期評価と同じである。 | |
(2) | 成果 |
十分な情報が得られなかったため生態リスクの判定ができなかった物質も少なくないが、判定を行うことのできた36物質の評価結果は以下のとおりである。 |
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アクロレイン、EPN、イソキサチオン、イソプロチオラン、イプロベンホス、エチレンジアミン四酢酸、オキシン銅、クロルニトロフェン、ジクロルボス、ダイアジノン、チウラム、チオベンカルブ、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、トリフルラリン、ピリジン、フェニトロチオン、フェノブカルブ及びベンゾ(a)ピレン(19物質) |
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2-アミノエタノール、1,1,1-トリクロロエタン及びベンゼン(3物質) |
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14物質 |
(1) | 検討の内容 |
平成9〜12年度に実施されたパイロット事業において今後の課題とされた発がん性に関する評価について、評価のための手順書の作成を進めつつ、現時点までに環境リスク初期評価を行った物質のうち、既存の知見により発がん性が認められるものを対象として、パイロット事業としての位置付けの下で発がん性のリスク評価を試みた。対象物質は、定量的なリスク評価については6物質、定性的な評価については19物質を選定した。 | |
(2) | 成果 |
[1] | パイロット事業としての検討を通じて、健康リスク初期評価の一環として行う発がん性に関する定量的なリスク評価及び定性的評価について、作業を進めるための手順書をとりまとめた。 |
[2] | 発がん性に関する定量的なリスク評価の結果は以下のとおりである。 |
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塩化ビニルモノマー ホルムアルデヒド |
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エチレンオキシド |
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なし |
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3物質 |
[3] | 発がん性に関する定性的な評価を行った結果、アクリロニトリル、アセトアルデヒド、酸化プロピレン、1,2-ジクロロエタン及び1,3-ジクロロプロペンの5物質が定量的なリスク評価を行う候補と判定された。 |
(1) | 評価結果の情報提供 | |
評価結果は「化学物質の環境リスク評価 第2巻」としてとりまとめるとともに、インターネットも活用して環境リスク評価の成果を広く公開する。 | ||
(2) | 詳細評価等の実施 | |
環境リスクの判定の結果詳細な評価を行う候補とされた物質については、関係部局の連携と分担の下で詳細な評価の実施を含めた対応を図る。 | ||
[1] | 発がん性の定量的リスク評価の結果詳細な評価を行う候補とされた2物質 | |
ホルムアルデヒドについては、一般環境大気及び室内空気の吸入暴露による発がんリスクが高い可能性がある。大気中のホルムアルデヒドについては、全国で濃度測定が実施されるとともに、事業者による自主管理が行われており、室内空気については、既に厚生労働省により室内濃度指針値が設定され、建築基準法等による対応が図られているため、当面これらのリスク低減対策の効果等について情報収集を行う。 塩化ビニルモノマーについては、地下水を含む経口暴露による発がんリスクが高い可能性がある。地下水中濃度に関する情報の充実を図りつつ、その情報に応じ必要に応じて詳細な評価を進めることを検討する。 |
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[2] | 生態リスク初期評価により詳細な評価を行う候補とされた22物質 | |
環境省では、生態毒性等に関する知見を充実させつつ、生態リスクの詳細な評価を優先的に進めることを検討する。 水環境分野においては、水生生物の保全のための水質環境基準の設定について中央環境審議会水環境部会に設置された専門委員会において審議を進めており、生態リスク初期評価の結果も勘案しつつ今後も検討を進めていく。 |
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(3) | 情報の収集 | |
環境リスクの判定の結果情報の収集が必要とされた物質や、リスクの判定ができなかった物質については、関連情報を収集の上、その情報に応じ必要な初期評価を行う。 | ||
(4) | 環境リスク評価の計画的な実施 | |
環境リスク評価の手法の改善を図りつつ、内外の知見から人の健康又は生態系に対する有害性が高いと考えられる物質、PRTRデータ等から環境排出量又は暴露量が多いと考えられる物質を選定して、環境リスク初期評価を計画的に実施していく。 | ||
(5) | 今後の課題 | |
[1] | PRTRデータ等を用いた暴露モデルの開発を進めるとともに、暴露評価への活用を図る。 | |
[2] | 発がん性に関する評価を健康リスク初期評価の中に位置付け、一体として評価を進める。 | |
[3] | 底生生物を用いた生態影響試験方法の確立等を受け、生態リスク評価における活用に向けて、水生生物以外の生物に対する影響評価の方法について検討を進める。 | |
[4] | 内分泌攪乱作用を含めた環境リスク評価の実施に必要となる知見の充実を図る。 | |
[5] | 環境リスク評価の内容及び成果に対する国民の理解を深めるための方策を検討する。 |