(別紙)

諫早湾干拓事業の計画変更について

  1. 経緯
     標記の事業については、昭和63年3月の公有水面埋立(干拓)の承認に係る認可に際し、環境庁長官(当時)から建設大臣及び運輸大臣(当時)に対して、「今回行われた環境影響評価の予測結果に関してレビューを行い、必要に応じて対策を講じること。」という意見を述べているところである。
     農林水産省九州農政局ではこれまで継続的に環境監視等を実施するとともに、それらを用いて昭和63年当時の環境影響評価の予測結果に検証を加え、平成13年8月に、「諫早湾干拓事業環境影響評価レビュー報告書」(以下、レビュー報告書)をとりまとめて公表を行っている。環境省では、このレビュー報告書に対し、今後の環境保全対策を進める上で必要な事項を見解(以下、平成13年見解)としてとりまとめ、長崎県知事宛に意見を通知(平成13年8月27日付環政評第294号)したところである。
     今般、標記事業の計画内容が変更され、平成14年7月10日付けで公有水面埋立法に基づく長崎県知事の承認が行われたことから、平成13年見解に加えて述べるべき事項を見解としてとりまとめたものである。
     
  2. 計画変更に伴う必要な措置
    (1) 計画変更内容について
     農林水産省の説明によると、今回、[1]旧東工区等の干拓の取り止めや土地利用計画の変更、[2]潜堤の設置、[3]干拓地における林帯の整備等、計画が変更されている。
     これらの変更に伴い、事業完了時の調整池の水質に対して以下のような影響が想定される。
    [1] 調整池の面積の増加に伴う底泥の巻き上げ量の増加による水質の悪化
    [2] 潜堤の設置、潜堤上のヨシの植栽に伴う底泥の巻き上げの抑制効果による水質改善
    [3] 農地として利用される面積が縮小されることによる事業実施区域内の汚濁発生負荷量の減少
     以上については、公有水面埋立法の変更申請時に、事業者である農林水産省九州農政局が作成した環境保全に関し講じる措置を記載した図書において、計画変更後も環境保全目標を達成できると予測されており、これをもって、長崎県知事による承認がなされたものである。
     
    (2) 必要な措置
     計画変更内容に関連し、次の事項について検討がなされる必要がある。
    [1] レビュー報告書におけるT−N(全窒素)及びT−P(全りん)の水質予測値は環境保全目標をわずかに下回るレベルであったが、計画変更後はCOD(化学的酸素要求量)の水質予測値についても同様の状況となっている1。また、事業完了時に調整池の環境保全目標を達成するためには、事業完了予定年(平成18年度)までに残された期間が限られている。したがって、関係機関と協力し、平成13年見解にも述べた水質保全対策を着実に実施するとともに、同見解の「新たな水質保全対策」の早期実現に努めることによって、栄養塩類等の流入汚濁負荷対策を強力に推進すること。
    [2] 今回増加することとなる底泥の巻き上げを抑制するために計画されている潜堤の設置や潜堤上のヨシの植栽について、その効果を確認するための環境監視体制、水質保全の観点からの効果的な維持管理方策を早急に定めること。
    [3] 計画内容の変更に伴い、調整池内の水質等の環境監視体制の必要な見直しを行うこと。
     
    (3)  (2)の検討結果については、平成10年2月に長崎県によって作成された「諫早湾干拓調整池水質保全計画」の改定に際し、(2)の検討結果も反映して行うこと。また、平成13年見解で述べた「レビューのフォローアップ」を行う際には、関係機関による検討結果及び今回の事業の変更内容を十分勘案すること。
     
      
     


     
    __________
    1
       計画変更後の予測値 レビュー報告書の予測値 環境保全目標
    COD 4.8〜4.9 3.9〜4.2 5以下
    T-N 0.90〜0.92 0.96〜0.98 1以下
    T-P 0.092〜0.098 0.087〜0.091 0.1以下



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