ダイオキシン類精密暴露調査の結果について
−平成12,13年度調査結果−
本 文


  1. 調査の目的及び内容
     
     環境省は、人の健康に対する環境要因等の影響評価を行うため、ダイオキシン類精密暴露調査を行っている。平成12,13年度は、平成11年度に引き続き、大阪府能勢町地域、埼玉県地域(所沢市、狭山市、川越市等)において調査を行った。
     本調査では、廃棄物焼却施設周辺地区及び対照地区を設定し、各地区について対象者及び環境調査地点を選定の上、環境調査(大気、室内空気、土壌等)、食事調査等を実施し、各地区における個人総暴露量を推計するとともに、血中ダイオキシン類濃度の測定を行った。
     
     
  2. 調査結果
     
    (1) 環境調査
    [1] 埼玉県地域の大気、室内空気、両地域の土壌では、焼却施設周辺地区が対照地区に比べ高い値であった。
      [2] 経年変化では、埼玉県地域の大気、室内空気において減少傾向が認められた。
      大阪府能勢町地域 埼玉県地域
    環境媒体 年度 施設周辺地区 対照地区 施設周辺地区1 施設周辺地区2 対照地区
    大気
    [pg-TEQ/m3]
    13年度
    12年度
    11年度(参考)
    0.031
    0.030

    0.077
    0.042
    0.029

    0.076
    0.16
    0.37

    0.42
    0.13
    0.29

    0.30
    0.10
    0.20

    室内空気
    [pg-TEQ/m3]
    13年度
    12年度
    11年度(参考)
    0.053
    0.15

    0.092
    0.063
    0.60

    0.64
    0.12
    0.17

    0.21
    0.15
    0.15

    0.16
    0.085
    0.10

    土壌
    [pg-TEQ/g]
    13年度
    12年度

    11年度(参考)
    20
    24

    13
    8.7
    5.7

    20
    36
    41

    42
    30
    36

    44
    19
    15

     
    (2) 食事調査
    両地域とも、施設周辺地区及び対照地区の間で明確な差を見いだせなかった。
      (単位:pg-TEQ/kg/日)
      大阪府能勢町地域 埼玉県地域
      施設周辺地区 対照地区 施設周辺地区1 施設周辺地区2 対照地区
    13年度
    12年度

    11年度(参考)
    2.7
    1.8

    1.8
    1.7
    2.2

    2.1
    1.0
    1.3

    1.7
    1.4
    1.9

    1.8
    1.4
    1.4

     
    (3) 個人総暴露量の推計
     (1)、(2)を踏まえた個人総暴露量の推計では、両地域とも、施設周辺地区及び対照地区の間で明確な差を見いだせなかった。
      (単位:pg-TEQ/kg/日)
      大阪府能勢町地域 埼玉県地域
      施設周辺地区 対照地区 施設周辺地区1 施設周辺地区2 対照地区
    13年度
    12年度

    11年度(参考)
    2.7
    1.9
    1.8
    1.8
    2.3

    2.1
    1.2
    1.4

    1.7
    1.5
    2.0

    1.8
    1.4
    1.5

     
    (4) 血液調査
     ダイオキシン類の長期的な暴露指標である血液調査の結果では、両地域とも、施設周辺地区及び対照地区の間で明確な差を見いだせなかった。
      (単位:pg-TEQ/g脂肪)
      大阪府能勢町地域 埼玉県地域
      施設周辺地区 対照地区 施設周辺地区1 施設周辺地区2 対照地区
    12年度
    11年度(参考)
    28
    29
    33
    30
    23
    27
    24
    27
    22
      
     
  3. 評価
     
    (1) 焼却施設周辺及び対照地区における比較
     環境調査では焼却施設周辺地区が対照地区に比べ高い項目があったものの、食事、個人総暴露量及び血液濃度では地区間の明確な差は認められなかった。
    (2) 経年変化
     平成11年度以降の経年変化については、埼玉県地域の大気及び室内空気で減少傾向が認められたが、食事、個人総暴露量及び血液濃度では年度間の明確な差は認められなかった。
     
     環境省としては、今後、ダイオキシン類に関する各種環境調査等を活用しつつ、国民の暴露量の推計を行うとともに、血液調査を通じた人体への蓄積状況の推移や健康影響指標に関する調査研究を行う。