家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(素案)


第1 一般原則

(1)家庭動物等の所有者又は占有者(以下「所有者等」という。)は、命あるものである家庭動物等の適正な飼養保管に責任を負う者として、動物の本能、習性及び生理を理解し、愛情をもって家庭動物等を取り扱うとともに、所有者は、家庭動物等を終生飼養するように努めること。

(2)所有者等は人と動物との共生に配慮しつつ、人の生命、身体又は財産に対する侵害を防止し、及び生活環境を害することがないよう責任をもって飼養及び保管に努めること。
 

第2 定義
 
 この基準において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 
(1)動物     哺乳類、鳥類及びは虫類に属する動物をいう。
(2)家庭動物等    愛玩動物又は伴侶動物(コンパニオンアニマル)として家庭等で飼養されている動物、並びに情操の涵養及び生態観察のため学校、福祉施設等で飼養されている動物をいう。
(3)管理者    情操の涵養及び生態観察のため動物を飼養保管する学校、福祉施設等において、当該動物及び飼養保管施設を管理する者をいう。
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第3 飼養保管に当たっての配慮

(1)家庭動物等の飼養に当たっては、その飼養に先立って、動物の本能、習性及び生理に関する知識の習得に努めるとともに、将来にわたる飼養の可能性について、住宅環境・家族構成の変化も考慮に入れ、慎重に判断するなど、終生飼養の責務の実施に支障が生じないよう努めること。

(2)特に、家畜化された動物ではない野生動物等については、一般にその飼養のためには当該動物の本能、習性及び生理に即した特別の飼養保管のための諸条件を整備、維持する必要があること、譲渡が難しく飼養の中止は容易でないこと等を、飼養に先立ち慎重に検討すべきであること。さらに、こうした動物は、ひとたび逸走等により自然生態系に移入された場合、生物多様性保全上の問題が生じるおそれが大きいことから、飼養者の責任は重大であり、その点を十分自覚する必要があること。
 

第4 共通基準

(所有の明示)
 
 家庭動物等の所有者は、飼養者としての責任の所在を明らかにし、又、逸走時の発見を容易にするため、名札、脚環、マイクロチップ等を装着するな ど、動物の種類を考慮して、容易に脱落、消失しない適切な方法により、その所有する家庭動物等が自己の所有であることを明らかにするための措置を講じるよう努めること。

(健康及び安全の保持)
 
 所有者等は、下記事項に留意し、家庭動物等に必要な運動、休息及び睡眠を確保し、並びにその健全な成長及び本来の習性の発現を図るように努めること。

(1)家庭動物等の種類、発育状況等に応じて適正に飼料及び水の給与を行うこと。

(2)疾病及びけがの予防等の家庭動物等の日常の健康管理に努めるとともに、疾病にかかり、又は負傷した家庭動物等については、原則として獣医師により速やかに適切な措置を講ずること。

(3)所有者等は、適正な飼養保管に必要なときは、家庭動物等の種類、習性及び生理を考慮した保管施設(以下「施設」という。)を設けること。保管施設の設置に当たっては、適切な日照、通風等の確保を図り、施設内の適切な温度、湿度の維持等適切な飼育環境を確保するとともに、衛生状態の維持に配慮すること。

(生活環境の保全)

(1)所有者等は、自らが飼養する家庭動物等が公園、道路等公共の場所及び他人の土地、建物等を、損壊し、又は汚物、毛、羽毛等で汚すことのないように努めること。

(2)所有者等は、家庭動物等の汚物、毛、羽毛等の適正な処理を行うとともに、施設を常に清潔にして悪臭、衛生昆虫等の発生の防止を図り、周辺の生活環境の保全に努めること。 

(適正な飼養数)
 
 所有者等は、その飼養又は保管する家庭動物等の数を、適切な飼養環境の確保、家庭動物等の終生飼養の確保及び周辺の生活環境の保全に支障を生じさせないよう適切な管理が可能となる範囲内とするよう努めること。

(繁殖制限)
 
 所有者は、その飼養又は保管する家庭動物等が繁殖し、飼養数が増加しても、終生飼養の確保又は適切な譲渡が自らの責任において可能であると見込まれる場合を除き、原則としてその家庭動物等について去勢手術、不妊手術、雌雄の分別飼育等繁殖制限の措置を講じること。

(動物の輸送)
 
 所有者等は、家庭動物等の輸送に当たっては、下記事項に留意し、動物の健康及び安全並びに動物による事故の防止に努めること。

(1)家庭動物等の疲労及び苦痛をできるだけ小さくするため、なるべく短い時間による輸送方法を選択するとともに、輸送時においては必要に応じ適切な休憩時間を確保すること。

(2)家庭動物等の種類、性別、性質等を考慮して、適切に区分された輸送する方法をとるとともに、輸送に用いる容器等は、動物の安全の確保及び動物の逸走防止のために必要な規模及び構造のものを選定すること。

(3)輸送中の家庭動物等に適切な間隔で給餌及び給水するとともに、適切な温度、湿度等の管理、適切な換気の実施等に留意すること。

(動物に起因する感染性の疾病対策)

(1)所有者等は、その所有し又は占有する家庭動物等に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、その飼養に当たっては、感染の可能性に留意し、適度な接触にとどめるなど自らへの感染のみならず、他の者への感染の防止にも努めること。

(2)家庭動物等に接触し又は家庭動物等の排泄物を処理したときは、手指等の洗浄を十分行い、必要に応じ消毒を行うこと。

(逸走防止等)
 所有者等は、下記事項に留意し、家庭動物等の逸走防止のための措置を講ずるとともに、万が一に逸走した場合は、自らの責任において速やかに捜索し捕獲すること。

(1)施設は、家庭動物等の逸走防止に配慮した構造とすること。

(2)施設の点検等、逸走防止のための管理に努めること。

(危害防止)
 
 所有者等は、人に危害を加えるおそれのある家庭動物等を飼養する場合には、下記事項に留意し、逸走防止等、人身事故の防止に万全を期すこと。

(1)施設は、動物が脱出できない構造とすること。

(2)施設は、飼養者が飼養に当たって、危険を伴うことなく作業ができる構造とすること。

(3)所有者等は、人に危害を加えるおそれのある動物の脱出時の措置について予め対策を講じ、脱出時の事故の防止に努めること。

(4)所有者等は、飼養施設を常時点検し、必要な補修を行うとともに、施錠の確認をするなど逸走を防止のための管理に万全を期すこと。

(5)捕獲等のための機材を常備し、当該機材については常に使用可能な状態で整備しておくこと。

(6)所有者等は、人に危害を加えるおそれのある家庭動物等が施設から脱出した場合には、速やかに関係機関への通報を行うとともに、近隣の住民に周知し、脱出した動物の捕獲等を行い、家庭動物等による事故の防止のため必要な措置を講ずること。

(緊急時対策)
 
 所有者等は、地震、火災等の非常災害に際してとるべき緊急措置を定めるとともに移動用ケージ、非常食など避難に必要な準備を行うよう努めること。非常災害が発生したときは、速やかに家庭動物等を保護し、及び家庭動物等による事故の防止に努めるとともに、避難する場合には、できるだけその家庭動物等の適切な避難場所の確保に努めること。
 

第5 犬の飼養及び保管に関する基準

(1)放し飼い防止
 犬の所有者等は、柵等で囲まれた自己の所有地、屋内等その他の人の生命、身体若しくは財産に害を加え、又は人に迷惑を及ぼすことのない場所において飼養する場合を除き、犬の放し飼いを行わないこと。

(2)けい留
 犬の所有者等は、犬をけい留する場合には、けい留されている犬の行動範囲が道路又は通路に接しないように留意すること。

(3)しつけ及び訓練
 犬の所有者等は、適当な時期に、飼養目的等に応じ、また、人の生命、身体若しくは財産に害を加え、又は人に迷惑を及ぼすことのないよう、適正な 方法でしつけを行うとともに、特に所有者等の制止に従うよう訓練に努めること。

(4)犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合には、下記事項を遵守するよう努めること。
 ア  犬を制御できる者が原則として引き運動により行うこと。
 イ  犬の突発的な行動に対応できるよう引綱の点検及び調節等に配慮すること。
 ウ  運動場所、時刻等に十分配慮すること。

(5)犬の所有者は、やむを得ず犬を継続して飼養することができなくなった場合には、適正に飼養することのできる者に当該犬を譲渡するように努め、新たな飼養者を見出すことができない場合に限り、都道府県知事等(法第18条第1項に規定する都道府県知事等をいう。)に引取りを求めること。

(6)犬の所有者は子犬の譲渡に当たっては、特別の場合を除き、離乳前に譲渡しないように努めるとともに、その社会化が十分に図れた後に譲渡するよう努めること。また、譲渡を受ける者に対し、社会化に関する情報を提供するよう努めること。
 

第6 ねこの飼養及び保管に関する基準

(1)ねこの所有者等は、周辺環境に応じた適切な飼養及び保管を行うことにより人に迷惑を及ぼすことのないよう努めること。

(2)ねこの所有者等は、ねこの疾病の感染防止、不慮の事故防止等健康、安全の保持の観点から、屋内飼養に努めるものとし、屋内飼養以外の方法により飼養する場合にあっては、屋外での疾病の感染、不慮の事故防止に十分な配慮を行うこと。

(3)ねこの所有者は、繁殖制限に係る共通基準によるほか、屋内飼養によらない場合にあっては、原則として、去勢手術、不妊手術等繁殖制限の措置を講じること。

(4)ねこの所有者は、やむを得ずねこを継続して飼養することができなくなった場合には、適正に飼養することのできる者に当該ねこを譲渡するように努め、新たな飼養者を見出すことができない場合に限り、都道府県知事等(法第18条第1項に規定する都道府県知事等をいう。)に引取りを求めること。

(5)  ねこの所有者は、子ねこの譲渡に当たっては、特別の場合を除き、離乳前に譲渡しないように努めるとともに、その社会化が十分に図れた後に譲渡するよう努めること。また、譲渡を受ける者に対し、社会化に関する情報を提供するよう努めること。
 

第7 学校、福祉施設等における飼養及び保管

(1)管理者は、動物の飼養保管が、獣医師等十分な知識と飼養経験を有する者の指導のもとに行われるよう努め、本基準の各項に基づく適切な動物の飼養及び動物による事故の防止に努めること。

(2)管理者は、飼養保管する動物に対して飼養に当たる者以外の者から食物等を与えられ、又は動物が傷つけられ、若しくは苦しめられることがないよう必要な予防のための措置を講じるよう努めること。
 

第8 その他
 
 所有者等は、動物の逸走、放し飼い等により、野生動物の捕食、在来種の圧迫等の自然環境保全上の問題が生じ、人と動物との共生に支障が生じることがないよう十分な配慮を行うこと。
 

第9 準用
 
 第2の(2)に該当する以外の目的で飼養及び保管される犬、ねこについては、当該動物の飼養保管の目的に反しない限り、本基準を準用する。