(別紙2)

自動車排出窒素酸化物及び自動車排出粒子状物質の総量の削減に関する基本方針案

 

第1 対策地域における自動車排出窒素酸化物等の総量の削減に関する目標

 窒素酸化物対策地域及び粒子状物質対策地域(以下「対策地域」という。)においては、自動車交通の集中、増大等に伴って、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る大気汚染が厳しい状況にあることに鑑み、対策地域における自動車排出窒素酸化物及び自動車排出粒子状物質(以下「自動車排出窒素酸化物等」という。)の削減に係る各種の対策を、国、地方公共団体、事業者、国民の緊密な協力の下で本基本方針等にのっとり総合的かつ強力に推進していくこと等により、対策地域において、二酸化窒素については平成22年度までに二酸化窒素に係る大気環境基準(昭和53年環境庁告示第38号)をおおむね達成すること、浮遊粒子状物質については平成22年度までに自動車排出粒子状物質の総量が相当程度削減されることにより、浮遊粒子状物質に係る大気環境基準(昭和48年環境庁告示第25号)をおおむね達成することを目標とする。

第2 総量削減計画の策定その他対策地域における自動車排出窒素酸化物等の総量の削減のための施策に関する基本的事項

  1  総量削減計画の策定に関する基本的事項
   

 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(平成4年法律第70号。以下「特別法」という。)第7条に基づく窒素酸化物総量削減計画及び第9条に基づく粒子状物質総量削減計画(以下「総量削減計画」という。)は、対策地域の実情を踏まえ、「2 対策地域における自動車排出窒素酸化物等の総量の削減のための施策に関する基本的事項」に掲げる各種施策等の推進により、平成22年度までに、二酸化窒素については二酸化窒素に係る大気環境基準をおおむね達成し、浮遊粒子状物質については自動車排出粒子状物質の総量が相当程度削減されるように自動車排出窒素酸化物等の総量を削減することを目途とし、一の計画として策定するものとする。その際、目標の着実な達成に向けた施策の進行管理に資するため、平成17年度までに達成すべき自動車排出窒素酸化物等の総量についての削減目標量についても定めるものとする。この場合、当該地域における自動車排出窒素酸化物等及び自動車以外の窒素酸化物発生源における窒素酸化物等の排出の状況並びにこれらの見通しについて評価分析を行い、自動車以外の窒素酸化物発生源等に係る大気汚染防止法等に基づく対策にも考慮を払いつつ、併せて特別法に基づく車種規制等の措置を前提としながら、今後講ずべき施策を総合的に検討し、実効ある計画を策定するものとする。
 なお、総量削減計画と対策地域の開発に係る諸計画との整合が図られるよう配慮し、全体として調和のとれたものとすること。

  2 対策地域における自動車排出窒素酸化物等の総量の削減のための施策に関する基本的事項
    1 自動車単体対策の強化等
     

 平成12年11月の中央環境審議会答申に基づき、ディーゼル新長期目標の早期達成、燃料品質対策等の自動車排出ガス低減対策を着実に推進するとともに、点検・整備の確実な実施等を図るため、指導・監視の徹底、効果的な取締りの実施を図るものとする。
  さらに、自動車排出窒素酸化物等の低減技術の研究開発を推進し、適切なものについては、その普及を図るものとする。

    2 車種規制の実施等
     

 特別法に基づく車種規制の適正かつ確実な実施を図るとともに、窒素酸化物排出基準及び粒子状物質排出基準の適合車への早期の転換の促進のための所要の支援措置を講ずるものとする。
  さらに、対策地域内への流入車についても、できるだけ窒素酸化物排出基準及び粒子状物質排出基準の適合車とするよう自動車の使用者に対する啓発活動を行うものとする。

    3 低公害車の普及促進
     

 低燃費かつ低排出ガス認定車を含め、低公害車の大量普及を促進するため、低公害車の導入支援措置及び燃料供給施設の整備拡充のための所要の支援措置を講ずるとともに、普及・広報等を積極的に推進するものとする。
  また、燃料電池自動車の実用化や現行の大型ディーゼル車に代替する次世代低公害車の技術開発を早急に進め、その普及を図るものとする。
  さらに、国等においては、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)の基本方針に基づき、低公害車への切り替えを着実に進め、地方公共団体においては、率先して低公害車の導入に努めるものとする。

    4 交通需要の調整・低減
     

 効率的な物流システムを構築し、輸送効率の向上を図るため、営業用トラックの積極的活用、共同輸配送の推進、帰り荷の確保等について理解と協力を促すとともに、高度道路交通システム(ITS)による物流の情報化を推進するものとする。なお、発注方法の改善等についても事業者に対し理解と協力を促すものとする。
  また、対策地域内の自動車交通量の軽減を図るため、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心として、輸送力を増強するための鉄道、船舶、港湾等の整備、物流拠点への連携を強化するためのアクセス道路等の整備による鉄道・海運の積極的活用を通じて適切な輸送機関の選択を促進するものとする。
  さらに、トラックターミナル等の物流施設の複合化、高度化を推進するとともに、機能、立地等を考慮したより効率の良い物流システムの構築のため、再配置及び集約立地を含めた物流拠点の計画的な整備を行うものとする。
  公共交通機関の積極的な活用を図り、自家用乗用車利用の抑制に資するため、鉄道等の整備、バスロケーションシステムの整備や、バス優先信号制御等を行う公共車両優先システム(PTPS)の整備をはじめとする高度道路交通システム(ITS)の推進等を図るとともに、駅周辺の乗り継ぎの改善のため、駅前広場、歩道、パークアンドライド駐車場、自転車駐車場など交通結節点の整備を推進するものとする。
  さらに、パークアンドライド、時差出勤など都市内交通を適切に調整する施策を推進する。
  また、徒歩や自転車の利用促進のための施設整備を進めるとともに、不要不急の自家用乗用車使用の自粛を呼びかけるものとする。
  交通需要の調整・低減のための各対策の進捗状況を適切に評価するための手法を早期に確立するものとする。

    5 交通流対策の推進
     

 交通の分散や道路機能の分化を図るため、環状道路、バイパス等の整備を進めるとともに、交差点や踏切での交通渋滞の解消を図るため、立体交差化、右折専用レーンの設置等交差点の改良及び道路と鉄道との連続立体交差化を進めるものとする。
 また、道路整備の状況をも踏まえつつ、中央線変移等の交通規制の効果的な実施を図るとともに、駐車場の整備、違法駐車の効果的な排除等の総合的な駐車対策を推進するものとする。さらに、交通管制システム、信号機その他の交通安全施設の整備、交通渋滞や駐車場等に係る情報収集及び的確な提供を行う道路交通情報通信システム(VICS)等の整備拡充並びにノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)の整備等高度道路交通システム(ITS)の活用等を通じて、自動車交通流の円滑化を図るものとする。また、交通流の円滑化に資するため、正確かつ的確な道路交通情報を提供する民間の取り組みを促進する。
 交通流と大気汚染の相関を分析し、都府県境を越える信号制御の連動、う回誘導等により自動車起因の大気汚染を低減する施策を研究し、その実用化を図るものとする。 
 各交通流対策の進捗状況を適切に評価するための手法を早期に確立するものとする。

    6 局地汚染対策の推進
     

 二酸化窒素濃度や浮遊粒子状物質濃度の高い交差点周辺部等の汚染メカニズムについて解析調査等を行うとともに、交差点の改良等地域の実情に応じた効果的な施策を進めるものとする。

    7 普及啓発活動の推進
     

 自動車排出窒素酸化物等の問題は、事業者及び国民の活動と非常に深く係わっていることから、事業者及び国民が、特別法第4条及び第5条に規定された責務について十分理解を深め、自動車排出窒素酸化物等による大気汚染の防止について努力するように、事業者に対しては特別法第15条第1項の規定による判断の基準となるべき事項についての周知徹底等を行い、国民に対しては窒素酸化物排出量及び粒子状物質排出量等の低減に効果のある自動車使用方法等についての理解を求め、協力を促すなどの普及啓発活動を積極的に展開するものとする。
  また、国、地方公共団体は、低公害車の普及拡大や二酸化窒素及び浮遊粒子状物質の高濃度期における対策の推進のため、各種の普及啓発活動を実施するものとする。

  3 事業者の判断の基準となるべき事項の策定に関する基本的事項
     特別法第15条第1項の判断の基準となるべき事項については、製造業、運輸業その他の事業を所管する大臣が、別紙の第1及び第2の事項を盛り込むとともに、別紙の第3の事項を事業の実態に応じて盛り込んで、策定するものとする。

第3 その他対策地域における自動車排出窒素酸化物等の総量の削減に関する重要事項

  1  地方公共団体間の連携
   

 自動車起因の窒素酸化物汚染及び粒子状物質汚染の広域性に鑑み、対策地域間における連携を確保し、相互に十分な調整を図るものとする。

  2 総量削減計画の進行管理
   

 自動車排出窒素酸化物等の削減施策は広範囲な分野に及ぶため、関係機関の協力の下に総合的に推進していく必要があること、また、目標の着実な達成のためには施策の進捗状況を的確に把握・評価し、必要に応じその後の施策のあり方を見直す必要があることに鑑み、総量削減計画策定後においても関係者と密接に連携を図りつつ、施策の進捗状況の的確かつ継続的な把握と評価に努め、総量削減計画の進行管理を着実に実施するものとする。なお、総量削減計画の進行管理のため、国及び地方公共団体は情報の交換に努めるものとする。
 また、総量削減計画の進行管理については、その結果を公表するものとする。

  3 調査研究
   

 対策地域において自動車排出窒素酸化物等による大気の汚染状況の的確な監視・測定を行うため、監視測定局の新設や適正配置を進めることなどにより、監視測定体制の整備充実等を図るとともに、自動車排出窒素酸化物等の全体の動向の継続的な把握に努めるものとする。
 また、対策地域における自動車排出窒素酸化物等の総量の一層の削減を図るための諸施策に関する調査検討を進めるものとする。

 


(別紙)
 

第1 趣旨

 大都市地域を中心として、自動車交通に起因する窒素酸化物及び粒子状物質による大気汚染は、厳しい状況にあり、とりわけ近年、ディーゼル車から排出される粒子状物質については、発がん性のおそれを含む国民の健康への悪影響が懸念されている。
 こうした状況を踏まえ、自動車から排出される窒素酸化物に加えて、粒子状物質による大気汚染の防止に関して、国、地方公共団体を通じた総合的な対策の枠組みを定め、一定の自動車について排出に係る規制を行うとともに、事業者による排出抑制のための措置を強化することにより、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る大気環境基準の確保を図るため、特別法が改正されたところである。
 この事業を行う者の判断の基準となるべき事項は、特別法第15条第1項の規定に基づき、対策地域における自動車排出窒素酸化物等による大気の汚染の防止を図るため、事業活動に伴う自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制のために必要な計画的に取り組むべき措置その他の措置に関し定めるものである。

第2 取組方針の作成とその効果等の把握

 事業者は、事業活動に伴う自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制のために必要な措置を計画的かつ効果的に行うよう、以下のように取り組むこととする。

  [1]

 自らの事業活動に伴う自動車排出窒素酸化物等の排出の実態について把握した上で排出の抑制のための自主的な排出量に関する目標及びその達成に向けて講ずべき措置の方針を作成する 。

  [2]  [1]に基づき具体的な措置を講ずる。
 

[3]

 [2]の措置の実施状況及びその効果を把握する。
[4]  [3]を踏まえた上で当初作成した目標及び措置の方針を再検討し、更に効果的な取組を行う。
 また、以上のような措置を行うために必要な自動車の使用状況等について記録化を行うこととする。
 

第3 排出量の抑制のための措置

 事業者は次のような措置の中から個々の事業活動の規模、種類等の事情、事業活動を行う地域の環境の状況及び技術的可能性を踏まえて適切に選択した措置を講ずることにより、事業活動に伴う自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制を図ることとする。

 

 

1.車両1台当たりの自動車排出窒素酸化物等の排出量の削減

    (1)自動車排出窒素酸化物等の排出量がより少ない車両への転換
       現に使用する車両の自動車排出窒素酸化物等の排出量の把握を行い、使用実態を考慮しつつ、特別法第12条第1項の窒素酸化物排出基準及び粒子状物質排出基準に適合する車への転換を早期に推進する。
    (2)低公害車の積極的導入
     

 自動車排出窒素酸化物等の排出量が少ないCNG(圧縮天然ガス)自動車、ハイブリッド自動車等の低公害車やDPF(ディーゼル微粒子除去装置)等排出ガスを低減する装置等の開発状況等の十分な把握に努め、その導入を積極的に進める。

    (3)適正運転の実施等
      [1] 適正運転の実施
         自動車の使用に際しては、運転方法により燃料消費量、ひいては、窒素酸化物等の排出量も大きく異なることから、以下のような事項につきマニュアルの作成、従業員の教育等を通じ、実施の徹底を図る。また、デジタル式運行記録計等の活用により、適正運転の実施の担保を図る。

ア)おだやかな発進と加速(急発進・急加速の排除)
イ)早めに一段上のギアにシフトアップ
ウ)定速走行・経済速度の励行
エ)エンジンブレーキの多用(ディーゼル車)
オ)予知運転による停止・発進回数の抑制
カ)空ぶかしの排除
キ)アイドリング・ストップ
 

      [2] 車両の維持管理
         日常の点検・整備の良し悪しが、運転方法により燃料消費量、ひいては、窒素酸化物等の排出量も大きく異なることから、以下のような事項につきマニュアルの作成、従業員の教育等を通じ、実施の徹底を図る。

ア)エアクリーナーの清掃・交換
イ)エンジンオイルの適正な選択・定期的な交換
ウ)適正なタイヤ空気圧の維持
 

  2.車両走行量の削減
    (1)車両の有効利用の促進
      [1] 共同輸配送の促進
         自社内努力により、あるいは他の事業者や自治体等と連携しつつ、複数の事業者が個別に処理していた物資の集荷、仕分け、配送等の業務を共同で行い、若しくは車両及び貨物を相互融通すること等により、積載効率、輸送効率の向上及び輸送距離、使用車両の削減を促進する。
      [2] 帰り荷の確保
         輸送需要の的確な把握を行い、帰り荷の確保を行う。
      [3] ジャスト・イン・タイムサービスの改善
         輸送効率の向上を図るため、他の事業者との協議を十分に行い、行き過ぎた多頻度少量輸送、ジャスト・イン・タイムサービスの見直し、改善を行う。
      [4] 受注時間と配送時間のルール化
         受注時間と配送時間のルール化を図り、緊急配送をできるだけ避ける。
      [5] 検品の簡略化
         検品に時間を要することによる運行効率の低下を避けるため、検品の簡略化を図る。
      [6] 道路混雑時の輸配送の見直し等
         日中の道路混雑時の輸配送の見直しによる輸配送の円滑化や積載効率が比較的低い土曜日、日曜日における車両使用の削減といった対策を講ずる。
      [7] 商品の標準化等
         商品の標準化、商品荷姿の標準化により積み合わせを容易にする。
    (2)モーダルシフトの推進
       自動車輸送と比較してより環境に対する負荷が少ない大量輸送機関である鉄道及び海運の活用(モーダルシフト)を推進する。
    (3)公共交通機関の利用の促進
       移動を行う場合にあっては、自ら自動車を使用することと比較して、より環境に対する負荷が少ない鉄道、バス等の公共交通機関、自転車、徒歩による移動をできるだけ行う。
    (4)情報化の推進
       輸送効率の向上を図る上においては、情報ネットワーク化の推進が必要であることから、他の事業者や自治体等と連携をとり、VICS(道路交通情報通信システム)といったシステムも活用しながら、積載効率の向上等に資する情報システムの積極的な開発・導入を行う。
    (5)物流施設の高度化、物流拠点の整備等
     

 既存施設について、機械化・自動化及び流通加工、保管等の機能の付加による高度化・複合化を推進するとともに、共同輸配送、新輸送商品の開発に対応するため、施設間の適正配置・集約化や荷受け、仕分けといった業務の効率化に配慮しつつ、物流拠点の整備を図る。
 また、交通渋滞をもたらし、自動車排出窒素酸化物等の排出量の増大の原因となる路上駐停車を防止し、交通流の円滑化に資するため、路上駐停車の自粛と併せ、荷捌き場、駐停車場所、進入出路についても他の事業者や自治体との協力を行うなどして整備を図る。
 
 

  3.自動車を使用する事業者に対する協力
   

 
 自動車を使用する事業者が事業活動に伴う自動車排出窒素酸化物等の排出を抑制するために前記の措置を講ずるに当たっては、荷主、発注者といった関係事業者の理解、協力及び相互の連携が不可欠である。
 したがって、事業者は、荷主又は発注者として自動車を使用する事業者の自動車の運行に影響を及ぼす場合にあっては、以下の措置を講ずる。

    [1]  事業者は、貨物自動車運送事業者等に輸配送を委託する場合にあっては、取引先との協力の下、貨物自動車運送事業者等が自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制に向けて行う努力に対し協力するものとする。
    [2]  事業者は、発注を行う場合にあっては、発注の計画化及び平準化を行うことにより取引先である納入業者又は貨物自動車運送事業者等が納入に使用する自動車の積載効率の向上を図るなど、自動車排出窒素酸化物等の排出の抑制に向けて行う努力に対し協力するものとする。
    [3]  事業者は、交通渋滞をもたらし、自動車排出窒素酸化物等の排出量の増大の原因となる路上駐停車を防止し、交通流の円滑化に資するため、荷捌き場、駐停車場所、進入出路の整備に努めるものとする。