参考2

フロン類破壊に関する基本的な考え方

平成13年9月4日
フロン類破壊基準等検討会

はじめに
 本検討会は、中央環境審議会フロン類等対策小委員会、産業構造審議会フロン回収・破壊ワーキンググループ合同会議に報告するため、平成13年6月22日に公布された「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(フロン回収破壊法)の施行に向けた破壊許可基準・破壊基準の策定に当たり、フロン類の適正な破壊の在り方について検討したものである。

I 破壊施設の現況

1 フロン類破壊施設の種類の分類
 現在、我が国において稼働している主要なフロン類破壊施設を、表のとおり分類した。

表:フロン類破壊施設の種類の分類(例)

混焼炉 廃棄物混焼法 都市ごみガス化溶融炉
ロータリーキルン
二段階燃焼法半ガス化焼却炉
セメント・石灰焼成炉混入法 セメントキルン
石灰焼成炉
その他 電炉
専焼炉 液中燃焼法 炉内分解型液中燃焼法
バーナー部分解型液中燃焼法
液体注入法 液体注入法
プラズマ法 高周波プラズマ法
マイクロ波プラズマ法
アークプラズマ法
触媒法 TiO2系触媒法
過熱蒸気反応法 過熱蒸気反応法
その他 化学的熱分解法


2 フロン類破壊施設の現況の把握
 分類した施設の主要な種類について、現在のフロン類破壊施設の使用・管理方法を把握するため、関連業者から、次の事項に関するヒアリングを行った。

  1. フロン類の破壊処理方法(共用設備or専用設備か、熱源は何か等の概要)
  2. フロン類が適正に破壊されていることの目安値
  3. フロン類を適正に破壊するために考慮している運転条件等
  4. フロン類を適正に破壊するために考慮している運転条件等が維持されるように、破壊業者に指導している管理方法等
  5. フロン類を破壊する際に発生する有害物質(排ガス・排水・固形物)の排出の管理方法
  6. 排ガス、排水中の有害物質の濃度が大気汚染防止法、ダイオキシン類対策特別措置法、水質汚濁防止法、その他の法令等で定める基準を満たすために、設置している「排ガス処理施設(設備)」、「排水処理施設(設備)」等の概要
  7. 上記[2]~[6]以外のフロン類の破壊処理に関し考慮している事項
  8. その他フロン類の破壊基準等に関する意見・要望等

上記ヒアリングを踏まえ、各破壊方式の現況を次のとおり把握した。

(1)

「廃棄物混焼法」方式

  • 炉内温度は、850℃以上に保持すること
  • 炉内ガス滞留時間は、2秒以上とすること
  • フロン類の供給方法を適正に管理すること

 上記の運転条件を遵守すれば、安定的に分解効率99.99%以上を概ね確保でき、その場合、副成物も環境上問題のない範囲に収まるものと認められる。

(2)

「セメント・石灰焼成炉混入法」方式

  • 炉内温度は、1,000℃以上に保持すること
  • 炉内ガス滞留時間は、6秒以上とすること

 上記の運転条件を遵守すれば、安定的に分解効率99.99%以上を概ね確保でき、その場合、副成物も環境上問題のない範囲に収まるものと認められる。なお、排ガス中のフロン濃度が薄い(ppbオーダー)ため、分解効率を厳密に測定することは困難である。

(3)

「液中燃焼法」方式

  • 炉内温度は、1,200℃以上に保持すること
  • 炉内ガス滞留時間は、1秒以上とすること
  • 排ガス中CO濃度は、100ppm以下とすること

 上記の運転条件を遵守すれば、安定的に分解効率99.99%以上を概ね確保でき、その場合、副成物も環境上問題のない範囲に収まるものと認められる。

(4)

「高周波プラズマ法」方式

  • フロン類の種類に応じてプラズマ状態を正常に維持すること
  • フロン類及び水蒸気が正常に供給されるよう管理すること

 上記の運転条件を遵守すれば、安定的に分解効率99.99%以上を概ね確保でき、その場合、副成物も環境上問題のない範囲に収まるものと認められる。

(5)

「マイクロ波プラズマ法」方式

  • フロン類の種類に応じてプラズマ状態を正常に維持すること
  • フロン類、水蒸気及び空気が正常に供給されるよう管理すること

 上記の運転条件を遵守すれば、試験値として分解効率99.99%以上を確保できると認められる。

(6)

「アークプラズマ法」方式

  • フロンの種類に応じてプラズマ状態を正常に維持すること
  • フロン類、水蒸気及び空気が正常に供給されるよう管理すること

 上記の運転条件を遵守すれば、試験値として分解効率99.99%以上を確保でき、実運転においても同程度の分解効率を確保しているものと認められる。
 また、電極や反応装置の定期的な交換が必要。
 高温分解で排出されるNOxについて、環境上どのように考えるべきか検討が必要。

(7)

「TiO2系触媒法」方式

  • 触媒反応装置内温度は、400℃程度を目安とすること
  • 触媒充填層内空間速度は、1,500h-1以下とすること

 上記の運転条件を遵守すれば、安定的に分解効率99.99%以上を概ね確保できるものと認められ、その場合、副成物も環境上問題のない範囲に収まるものと認められる。
 なお、触媒の劣化に対する対応が必要。

(8)

「過熱蒸気反応法」方式

  • 反応装置内温度は、フロンの種類に応じて850~1,000℃とすること
  • 装置の仕様に適合するようにフロン等の供給を管理すること

 上記の運転条件を遵守すれば、試験値として分解効率99.99%以上を確保でき、また、実運転においても概ね99.9%以上の分解効率は確保しているものと認められる。なお、定期的な部品交換が必要。

II フロン類の適正な破壊の在り方について

 本報告書では、適正な破壊のために、技術的観点から、破壊施設について遵守する必要があると考えられる事項を取りまとめている。これらの事項については、フロン回収破壊法の破壊許可基準・破壊基準、関連するガイドラインや他法令等を含めた体系の中で総合的に確保されるべきものであり、具体的にどのような手段をとることが望ましいか、行政においてさらに検討すべきものである。

1 フロン類破壊施設の構造についての検討

(1) 廃棄物混焼法方式施設
(ロータリーキルン方式施設、都市ごみ直接溶融炉方式施設、固定床二段階燃焼炉方式施設、流動床式製鉄ダスト焙焼炉方式施設、都市ごみストーカー炉方式施設等)
イ 燃焼装置
ロ フロン類供給装置
ハ 助燃剤供給装置
ニ 空気供給装置
ホ 使用及び管理に必要な計測装置
ヘ 破壊の結果生じた排ガス、その他生成した物質等を処理するための装置
(2) セメント・石灰焼成炉混入法方式施設
(セメントキルン方式施設、石灰焼成炉方式施設)
イ 燃焼装置(キルン本体)
ロ フロン類供給装置
ハ 助燃剤供給装置
ニ 使用及び管理に必要な計測装置
ホ 破壊の結果生じた排ガス、その他生成した物質等を処理するための装置
(3) 液中燃焼法方式施設
(炉内分解型液中燃焼法方式施設、バーナー部分解型液中燃焼法方式施設)
イ 燃焼装置
ロ フロン類供給装置
ハ 助燃剤供給装置
ニ 水蒸気供給装置
ホ 空気供給装置
ヘ 使用及び管理に必要な計測装置
ト 破壊の結果生じた排ガス、その他生成した物質等を処理するための装置
(4) プラズマ法方式施設
(高周波プラズマ法方式施設、マイクロ波プラズマ法方式施設、アークプラズマ法方式施設)
イ プラズマ反応装置
ロ フロン類供給装置
ハ 水蒸気供給装置
ニ 必要に応じて空気供給装置
ホ 必要に応じてオイルフィルター
ヘ 使用及び管理に必要な計測装置
ト 破壊の結果生じた排ガス、その他生成した物質等を処理するための装置
(5) 触媒法方式施設
(TiO2系触媒法方式施設 等)
イ 触媒反応装置
ロ フロン類供給装置
ハ 水蒸気供給装置
ニ 空気供給装置
ホ 必要に応じてオイルフィルター
ヘ 使用及び管理に必要な計測装置
ト 破壊の結果生じた排ガス、その他生成した物質等を処理するための装置
(6) 過熱蒸気反応法方式施設
イ 反応装置
ロ フロン類供給装置
ハ 水蒸気供給装置
ニ 空気供給装置
ホ 必要に応じてオイルフィルター
ヘ 使用及び管理に必要な計測装置
ト 破壊の結果生じた排ガス、その他生成した物質等を処理するための装置
(7) その他の方式の施設
主務大臣が必要と認める設備・装置があること(事案毎に判断する)

2 フロン類破壊施設の破壊の能力についての検討
 フロン類の分解効率*1が99%以上でありかつ最終排ガス中のフロン類の濃度が1ppm以下であること、または、分解効率が99.9%以上でありかつ濃度が15ppm以下であること。
     
(説明)

3 フロン類破壊施設の使用及び管理の方法についての検討

(1)

フロン類破壊施設の使用及び管理
 破壊温度、フロン類の滞留時間等の運転条件、フロン類等の供給方法、保守点検の方法等が、フロン類破壊施設の種類に応じ、破壊の能力に関する基準を達成できるよう適正に定められていること。
 また、使用及び管理の方法が遵守されている状態を計測装置等により定常的に確認すること。

「Aグループ」
 次の方式の施設については、現段階の知見により、次の条件の下で運転を行う場合には、フロン類を適正に破壊することが可能であると考えられる。
 ただし、今後の様々な技術開発及び知見の集積に対して配慮し、対応方式の拡大について検討する必要がある。

  1. 廃棄物混焼法方式施設
    (ロータリーキルン方式施設、都市ごみ直接溶融炉方式施設、固定床二段階燃焼炉方式施設、流動床式製鉄ダスト焙焼炉方式施設、都市ごみストーカー炉方式施設等)
     運転条件
    (a) 燃焼温度:炉出口の温度が850℃以上であること。
    (b) フロン類ガスの滞留時間:1.5秒以上であること。
    (c) 排ガス出口のCO濃度:100ppm以下であること。
     フロン類の添加条件
    (a) フロン類と同時に燃焼する廃棄物は、性状等を可能な限り均質化すること。
    (b) フロン類の添加の割合は、排ガス処理設備のハロゲン化物の処理能力等を考慮して決めるものとし、同時に焼却する廃棄物量に対する重量比3%以下とすること。
     フロン類の添加方法
     フロン類の添加は、バーナー近傍の位置より噴霧して行うこと。

  2. セメント・石灰焼成炉混入法方式施設
    (セメントキルン方式施設、石灰焼成炉方式施設)
     運転条件
    (a) 炉内温度:1,000℃以上であること。
    (b) フロン類ガスの滞留時間:6秒以上であること。
     フロン類の添加条件
     排ガス処理設備の処理能力、製品の品質への影響等を考慮してフロン類を添加すること。
     フロン類の添加方法
     フロン類の添加は、窯前のバーナー近傍の位置より噴霧して行うこと。

  3. 液中燃焼法方式施設
    (炉内分解型液中燃焼法方式施設、バーナー部分解型液中燃焼法方式施設)
     運転条件
    (a) 燃焼温度:炉出口の温度が1,200℃以上であること。
    (b) フロン類ガスの滞留時間:1秒以上であること。
    (c) 排ガス出口のCO濃度:100ppm以下であること。
     フロン類の添加条件
     フロン類の添加の割合は、排ガス処理設備のハロゲン化物の処理能力等を考慮して決めること。

「Bグループ」
 次の方式の施設については、以下の条件が実際に安定的に確保されることにより、フロン類を適正に破壊することが可能であると考えられる。

  1. プラズマ法方式施設
    (高周波プラズマ法方式施設、マイクロ波プラズマ法方式施設、アークプラズマ法方式施設)
     運転条件
     プラズマ状態を正常な状態に維持するため、フロン類の種類に応じて安定かつ十分な電力供給を行うよう管理すること
     フロン類の供給方法
     フロン類の供給は、施設の処理能力に合わせてフロン類の種類
    に応じた適正な流量又は圧力で行うこと

    例えば、
    出力100KWの高周波プラズマではフロン類の供給速度は100kg/hrを目安とする。
    出力2KWのマイクロ波プラズマではフロン類の供給速度は2kg/hrを目安とする。
    出力10KWのアークプラズマではフロン類の供給速度は10
    kg/hrを目安とする。
     水蒸気の供給方法
     水蒸気の供給は、フロン類の供給量に合わせてフロン類の種類に応じた適正な流量又は圧力(温度)で行うこと
     空気の供給方法
     空気の供給を行う場合は、フロン類の供給量に合わせてフロン類の種類に応じた適正な流量又は圧力で行うこと
     電極の交換
     アークプラズマ法方式施設については、破壊の能力を維持できなくなる前に電極を交換すること。

  2. 触媒法方式施設
    (TiO2系触媒法方式施設 等)
     運転条件
    (a) 反応温度:TiO2系触媒法方式施設については400℃以上であること。
    (b) 触媒充填層内空間速度:TiO2系触媒法方式施設については1,500h-1以下であること。
     フロン類の供給方法
    (a) フロン類の供給は、施設の処理能力に合わせてフロン類の種類に応じた適正な流量で行うこと。
    (b) 触媒充填層内に供給される混合気体中におけるフロン類の混合率(体積分率)に留意すること。
    (c) フロン類の種類を確認の上、指定温度に到達後フロン類を供給すること。
     水蒸気の供給方法
     水蒸気の供給は、フロン類の供給量に合わせてフロン類の種類に応じた適正な量であること。
     触媒の交換
     破壊の能力を維持できなくなる前に触媒を交換すること。


  3. 過熱蒸気反応法方式施設
     運転条件
     反応器内の温度は、フロン類の種類に応じて850~1,000℃とすること
     フロン類の供給方法
    (a) フロン類の供給は、施設の処理能力に合わせてフロン類の種類に応じた適正な流量で行うこと
    (b) フロン類の種類を確認の上、指定温度に到達後フロン類を供給すること。
     水蒸気の供給方法
     水蒸気の供給は、フロン類の供給量に合わせてフロン類の種類に応じた適正な流量で行うこと
     空気の供給方法
     空気の供給を行う場合は、フロン類の供給量に合わせてフロン類の種類に応じた適正な流量で行うこと
     反応器の交換
     破壊の能力を維持できなくなる前に反応器を交換すること。

  4. その他の方式の施設
    主務大臣が必要と認める方法であること(事案毎に判断する。) 。
(2) フロン類が適正に破壊されていることの確認
 排ガス中のフロン類の濃度及び分解効率について年1回以上測定を行うこと。
 装置が適切に運転・管理されていることが確認できるように、施設から排出されることが推定される主要な物質について、必要に応じて排ガス(HCl、HF)及び排水(フッ素含有量)を測定すること。
 測定結果に異常が認められる場合には、破壊事業を中断し、適正な対策を講ずること
(3) フロン類破壊施設の管理責任者の選任
フロン類破壊施設の使用及び管理についての責任者を選任すること。
(4) 破壊の記録
破壊したフロン類の種類及び量について、日報として記録すること。

4 フロン類の破壊に関する基準の策定に向けた考え方
 「使用及び管理の方法」を遵守した適正な破壊処理を行うこと。

フロン類破壊基準等検討会名簿

○有識者

 
氏 名
所 属
(座長) 平岡 正勝 立命館大学エコ・テクノロジー研究センター長
  指宿 堯嗣 独立行政法人産業技術総合研究所環境管理研究部門長
  岩崎 好陽 東京都環境科学研究所応用研究部長
  浦野 紘平 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授
  酒井 伸一 国立環境研究所循環型社会形成推進・廃棄物研究センター長
  坂本 和彦 埼玉大学大学院理工学研究科教授
  原   穆 オゾン層保護対策産業協議会事務局長
  水野 光一 長崎県商工労働部技監 兼 長崎県工業技術センター所長
  守富  寛 岐阜大学大学院工学研究科環境エネルギーシステム専攻教授

○参考人

   
氏 名
所 属
  長田 守弘 新日本製鐵株式会社
  志水 泰三 新明和オートエンジニアリング株式会社
  山田 久俊 株式会社タダノ技術研究所
  安達 太起夫 日鉄化工機株式会社
  黒川 秀昭 株式会社日立製作所
  林  錦吾 日立造船株式会社
  佐藤 仁宣 三菱重工業株式会社
  深見 慎二 太平洋セメント株式会社
  宮竹 智 旭硝子株式会社
  川村 健二 イネオスケミカル株式会社
  原田 勝典 株式会社市川環境エンジニアリング
  渋谷 秀一 日曹金属化学株式会社
  早坂 将崇 株式会社クリエイト
  竹内 喜郎 糸井商事株式会社

 


 

検 討 経 過

○第1回 フロン類破壊基準等検討会(平成13年8月10日)

(1) フロン回収破壊法の概要
(2) 参考人からのヒアリング
(3) その他

○第2回 フロン類破壊基準等検討会(平成13年8月23日)

(1) フロン類破壊基準等検討会参考人の追加について(案)について
(2) 参考人からのヒアリング
(3) 破壊許可基準・破壊基準の策定に係る考え方(案)について
(4) その他

○第3回 フロン類破壊基準等検討会(平成13年8月27日)

(1) フロン類破壊に関する基本的な考え方(たたき台)について
(2) その他

○第4回 フロン類破壊基準等検討会(平成13年9月4日)

(1) フロン類破壊に関する基本的な考え方(案)について
(2) その他