地球温暖化防止京都会議で採択される
議定書の条文(案)の概要について

 各国に配布されている交渉のための議定書の条文(案)の構成及びポイントは以下のとおり。全9章、276のパラグラフから構成されている。議定書案は、各国の多様な提案を各項目毎に並記したものであり、今後の交渉で絞り込まれ、最終的な議定書の条文が作成されることとなっている。

 

(構成)
[1].前文、定義、目的、原則
[2].条約第4条2項の強化(先進国の約束の強化)
A.政策・措置
B.数量目的(QELROs)
C・D(略)
E.非附属書[1]国(途上国)による約束の自主的実施
[3].約束のレビュー
[4].条約第4条1項の約束の実施の推進(全締約国の約束の推進)
[5].教育、訓練、普及啓発
[6].議定書の約束の改善(Evolution)
[7].組織及び手続(締約国会議、事務局、紛争解決等)
[8].最終条項(意思決定方法、署名、批准、発効等)
[9].附属書

 

1.政策・措置(EU、米国、日本等からの12提案)
EUは、特定の政策措置を共通義務化することを含め詳細な政策措置のリストを作成すべきと主張。米国は政策・措置の規定を設けること自体に反対。
・EU:共通かつ義務的に実施すべき措置、各国が優先的に採用すべき措置及び各国の実情に応じて採択すればよい措置があり、それぞれについてリストを作成することを主張。
・米国:特定の政策・措置を議定書に定めることには反対
・日本:5つの分野に分類し、各分野ごとに何らかの措置を選択することを義務化



2.数量目標(QELROs:数量化された排出抑制・削減目的)
(1)レベル及びタイミング(米、EU、日、豪等16提案)
主要先進国のうち、EUは2010年までに90年比で15%削減を主張しているが、米、日本等は具体的な数値を提出していない。また、「一律削減」を主張するEU、米等と「差異化」を主張する日、豪、ノルウェー等が対立。


(一律削減)
EU:CO2、CH4、N2O排出量をバスケットアプローチにより、2005年までに7.5%、2010年までに15%削減
米国:附属書Cに定める温室効果ガス排出量について、一定期間の排出バジェットを割り当てる。排出バジェットは1990年水準に基づき設定。バジェット期間中の繰越や前借りを認めることにより、フレキシビリティを持たせる。
小島嶼国連合(AOSIS):2005年までに1990年比でCO2排出量を少なくとも20%削減
(差異化)
日本:一人当たり排出量目標又は総排出量目標からの選択
アイスランド・
ノルウェー:
まず附属書[1]締約国全体の削減量(10〜15%を想定。)を決め、その達成のために、幾つかの指標を用いた公式により各国に削減割当てを行う。 ・スイス:2010年までに1990年レベルに対し、附属書[1]締約国の全温室効果ガスの合計排出量を10%削減。一人当たり排出量に基づき分類して、同分類に属する国毎に同じQELROsを適用。
豪州:差異化された数量目標を交渉により設定
(その他)
・ロシア:2000年から2010年の温室効果ガス排出量を1990年水準に安定化。また、2010年から2020年の期間について、1990年水準以上の削減を図るため、実現可能性を考慮して追加的で差異のある削減義務を設定。


(2)排出権取引(米国、イラン等からの3提案)
・米国:バジェットを有する先進国間の国際的な排出枠取引制度を提案(・EUは、先進国間での共同実施を主張し、排出権取引には反対。)


(3)共同実施(米国、EU、ロシア、スイス等からの9提案)
米国が途上国との共同実施の導入を主張、EUは途上国との共同実施は時期尚早として先進国間での共同実施とすることを主張。多くの途上国は、途上国との共同実施に反対。
・米国:附属書A(先進国)及び附属書B(自発的に約束をした途上国)締約国と、その他の締約国(途上国)とのクレジットを伴う共同実施を主張
・EU:先進締約国(附属書X国)間の共同実施を主張。
・ロシア:議定書加盟国による共同実施を認め、削減効果の配分を行う。
・スイス:削減目標の50%まで(パーセンテージは適宜レビューされる。)に限定した議定書加盟国による共同実施。議定書加盟国以外の条約締約国との共同実施はボランタリーで行うことができる。
・コスタリカ:附属書[1]締約国と非附属書[1]締約国の共同実施を提案。附属書[1]国の共同実施による義務の達成は、自国の排出許容量の25%までに限定。



3.途上国を含む全締約国の約束の推進
先進国間では途上国の取組の強化に関する必要性は共通認識。但し、途上国は反対。特に義務化については、米国が途上国に対し、拘束力ある約束をするよう強く主張。
(1)非附属書[1]国による約束の自主的実施(米国、EU、日本等から9提案)
・米国:先進国以外の国が、先進国の約束を負うことができるようにすることを提案。
・EU:附属書X(先進国)以外の国による政策・措置の実施及び/又は数量目標の自主的用を可能とするよう提案
・日本:途上国からの数量目的等を含む情報の自発的提出を奨励。温暖化防止のために受入を望む技術目録を途上国が作成した場合及び具体的対策計画を作成した場合に、当該途上国に優先して資金を供与することを提案。
・ポーランド:自発的に先進国の義務を負う途上国は、排出削減目標に伴う基準年を先進国とは異なって設定できるよう提案。


(2)条約第4条1項の約束の推進(米国、EU、G77等からの6提案)
・米国:後悔しない対策の実施、インベントリーの毎年の報告、通報のレビュー等を義務化。
・EU:国家計画の策定、インベントリーの毎年の報告等を義務化するとともに、これに対するインベントリー作成や技術の普及、AIJ等に関する国際協力を強化。
・G77:ベルリンマンデートに基づき途上国に対しいかなる新たなコミットメントも求めてはならない。途上国の対策実施には、先進国の資金援助・技術移転が前提。


(3)議定書の約束の改善(Evolution)(米国、G77等からの5提案)
・米国:途上国に対し、例えば2005年までに拘束力のある約束の設定を求める。
・G77:議定書の約束の改善は、先進国に限られるべき。