ダイオキシン類の環境測定を外部に委託する場合の信頼性の確保に関する指針



 本指針は、ダイオキシン類の環境測定を国内の外部機関や海外施設に委託する場合の信頼性を確保するため、委託を行う者が講ずべき措置等を定めたものである。
  1. 国内の外部機関又は海外施設に関する事前の審査
     

     国内の外部機関又は海外施設(以下「外部機関等」という。)にダイオキシン類の環境測定を委託(一般競争契約等によるものを含む。)しようとする場合には、事前に次の事項を調査し、審査を行う。
  2. (1) ダイオキシン類の環境測定の実施可能性
     ダイオキシン類の環境測定について、外部機関等が実施可能な対象項目・作業の範囲・対応可能な測定方法、これらを実施するための組織の整備状況等の概要及びこれまでの実績を調査する。
     このため、業務範囲マトリックス(注1)、「ダイオキシン類の環境測定に係る精度管理指針」(平成12年11月14日環境庁公表、以下「指針」という。)の第1部第1章1に定める組織に関する文書等(注2)及び業務実績に関する資料(注3)を入手する。
     また、試料採取、ガスクロマトグラフ質量分析計による測定作業等を他の外部機関等に再委託すること(共同受注の形態を含む。以下「再委託」という。)の有無について記述した資料(注4)を入手する。
     これらの資料(注5)に基づき、委託しようとする環境測定の実施可能性について1次審査を行う(注6)。
    注1: 別表1を参照。なお、委託する環境測定の対象項目、測定方法、作業範囲が限られている場合には、それを提示し、対応可能かどうか把握できる資料を入手すればよい。
    2: 別表2を参照。必要に応じ、追加・省略する。
    3: 対象項目毎の業務実績(過去3年程度)。なお、業務実績がない又は少ない場合には、その理由、実績不足を補うために講じている取組等を記述させる。
    4: 有の場合には、その理由、再委託する作業、再委託先、再委託先における再々委託の有無、全体の業務管理の実施方法及び責任の所在等について記述させる。
    5: 資料には、その作成日を記載させる。なお、海外施設の場合には、英語で作成されたものでもよい(以下同じ。)。
    6: 外部機関等の要請があれば、1次審査終了後不要となった資料を返却する。
     
    (2) 精度管理に関する取組
     (1)の1次審査により実施可能性があると認めた外部機関等について、当該外部機関等が自ら講じているダイオキシン類の環境測定に係る精度管理(以下、「内部精度管理」という。)の実施状況等を調査する。
     このため、指針に規定されている事項が当該外部機関等において確保されていること等を事前に確認することとし、委託予定業務の内容等(可能な限り詳しいもの)を当該外部機関等に通知した上で、関連する資料を提出させる(注7~9)。また、可能ならば当該外部機関等を訪問し、実地に調査を行う。
     これらにより2次審査(注10)を行い、委託する機関を決定する(注11~13)。
     なお、(1)の調査により、再委託を行う可能性がある場合には、再委託先の外部機関等についても、該当する作業に関して同様に審査する。
    注7: 別表3の審査用資料を参照。必要に応じ、追加・省略する。なお、指針に規定する文書そのものでなくても、これに準ずるものであればよい。また、指針別表1に記載されていない項目についても、指針に準拠して資料を作成する。
    8: 資料には作成日を記載させるとともに、過去の測定データ等により作成されている場合には、その測定日等を記載させる。
    9: 一般に資料の提出要求は文書で行い、その文書には、提出された資料の目的外使用や外部への無断提供を行わないこと、外部機関等の要請があれば、審査終了後不要となった段階で返却することを明記し、実行する。
    10: 審査項目については別表3を参照。必要に応じ、追加・省略する。
    11: 一般競争契約(又はこれに準ずるもの)の場合には、2次審査により委託先の候補を複数選定し、その中から競争入札等により最終の委託先を決定する。
    12: 1次審査と2次審査を同時に行うことができる。
    13: 2次審査には高度の技術的・専門的知識が必要であることから、その審査に当たって、外部専門家の支援を受けること及び信頼性・透明性の高い第三者・機関が行った当該外部機関等に対する同様の審査の結果を参考とすることができる。
     
  3. 委託の際に外部機関等へ要求する事項
     

     1(2)により決定した外部機関等との委託契約に際し、実施要領等において精度管理の観点から次の事項等を要求する。なお、再委託を行う計画となっている場合には、再委託先の外部機関等についても、要求事項が担保されるよう措置する。
    (1) 内部精度管理の実行
     内部精度管理について、指針に規定されている事項又はこれに準ずる内容を遵守する旨、外部機関等が実施計画書等に明記すること。
     
    (2) 精度管理計画書の提出
     指針第1部第3章1の品質保証・品質管理計画書又はこれに準ずる文書を提出すること。
     
    (3) 査察
     委託の期間中1回以上、立入による査察を行うこと(注14~17)とし、外部機関等はその実施を受け入れること。なお、やむを得ず立入による査察が実施できない  場合には、立入に代えて審査する項目(注18)を提示し、対応する資料の提出及びその補足説明の聴取をもって代えることができる(注19)。
    注 14: 立入による査察の項目及び査察時に提出を求める資料については別表4を参照。必要に応じ、追加・省略する。
    15: 査察の時期は、1(2)に記述した実地の調査を行っていない場合には、委託契約後可及的速やかに実施するとともに、実地調査を既に行っている場合で、かつ、ある程度のまとまった検体数の分析を委託している場合には、その約1/3の検体について、ガスクロマトグラフ質量分析計による測定が終わっている段階において実施することを基本とする。
    16: 立入による査察の実施に当たっては、事前に文書による通知を行うこととし、その文書には、日時、実施者及び査察によって得られた情報の目的外使用及び外部への無断提供を行わないことを明記する。
    17: 立入による査察を的確に行うには、高度の技術的・専門的知識が必要とされることから、外部専門家の同行又は外部専門家・機関による代行を依頼することができる。
    18: 別表4を基本とし、必要に応じ、追加・省略する。特にC-1-3の標準作業手順書については、全体が大部であることを考慮するとともに、提出を求める場合には別表3の注1に記述した措置を講じる必要がある。
    19: 立入による査察が実施できないことが当初から明らかな場合には、基本的に約1/3の検体についてガスクロマトグラフ質量分析計による測定が終わっている段階において、立入に代える審査を実施する。
     
    (4) 精度管理報告等
     結果報告に合わせて、指針第1部第3章2の品質保証・品質管理結果報告書又はこれに準ずる報告書を提出すること(注20)。
     また、必要に応じ、測定値が求められた過程を検証するため、指針に定める記録又はこれに準ずるものを提出し、説明すること。
    注20: 指針別紙2(品質保証・品質管理結果報告書)第7の添付文書については、必要に応じて添付させる。
     
    (5) 再測定
       外部機関等に明らかな瑕疵があり、再測定の必要性が認められる場合には、外部機関等と協議を行った上で、再測定を行うこととし、そのための試料の保存等を含め外  部機関等が実施計画書等に明記すること。
     
  4. その他
     
     上記に加え、外部機関等に委託する場合には、以下の措置を講じる。
    (1) 試料採取への立会
     試料採取における精度管理の重要性に鑑み、対応が可能ならば、外部機関等が行う試料採取に立会い、試料採取が適切に実施されていることを確認する。
     
    (2) クロスチェック等の実施
     必要に応じクロスチェック等を実施し、外部機関等による環境測定が適切に実施されていることを確認する。
     
    (3) 査察の記録の作成等
     2(3)により実施する査察においては、記録を作成するとともに、不適切な操作が認められた場合には、その是正措置等について外部機関等と協議し、必要な措置を講じさせる。
     
    (4) 精度管理報告の審査
     2(4)により提出された報告書を審査し、問題が認められた場合には、追加説明を求めるなど必要な措置を講じる。
     
    (5) 関連資料等の保存
       委託を行った外部機関から提出された資料(1(2)の審査終了後返却する標準作業手順書等を除く。)、(3)の査察の記録、(4)の精度管理報告等については、原則として5年間保存する。


    別表1 業務範囲マトリックス
    別表2 組織の整備状況等に関する資料
    別表3 審査項目及び審査用資料
    別表4 立入による査察の項目及び査察時に提出を求める資料