第1回「生物多様性国家戦略懇談会」の議事要旨

(別添)

<現行戦略の背景・枠組みについて>
これまで別々だった環境庁の公害行政と自然保護行政が、環境基本法の制定により、環境への負荷の低減を図るという観点で一つに統合され、環境基本計画の中で「共生」が一つの柱として整理された。新戦略では、人と自然との共生だけでなく、次世代の人間に現在の自然の恵沢を継承していくという現在の人間と次世代の人間との共生の観点が必要。
地球サミットでの課題は、地球温暖化対策、生物多様性の保全、持続可能な利用の3本柱であったが、地球温暖化対策のみが注目され、生物多様性保全については余り認識されていない。重要性をもっとアピールすることが必要。生物多様性の問題は、自然環境の保全そのものという考え方に立つべき。

<現行戦略への反応>
日本生態学会自然保護専門委員会では、現行の国家戦略の策定時に、生物多様性の減少にかかる危機感の欠如、長期目標を実現するための具体的な手段の不足、国際的な生物多様性の保全に関する研究の重要性などについて指摘。
[1]我々がどのような生物多様性を有しているのか、[2]生物多様性がどのように変化しつつあるのか、[3]生物多様性が人の生存にどのように役立っているのか、[4]どうすれば生物多様性が維持できるのかが明確になっていない。新戦略では、これらを具体的に整理していくことが必要。

<生物多様性の危機の現状>
生物多様性の減少要因については、生息地の劣化・分断化、乱獲・過剰利用、生物学的侵入、環境の悪化がある。最近の絶滅のおそれのある種の傾向として、メダカやキキョウなど明らかに身近な生活域の生物が危機的になっている。また、水辺の移行帯の生物も危機に瀕している。この要因としては農林業の伝統的な方式が衰退していることもあげられる。
2000年のIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、繁殖鳥類のうち絶滅のおそれのある種の割合はワースト3にニュージーランド、フィリピン、日本が入っていた。この要因は何か考える必要がある。

<計画論他>
3全総で打ち出された流域生活圏の考え方では、循環をイメージしていた。これを再評価し、多様性保全につなげるべき。
日本がアジア地域での生物多様性の保全、利用のモデルを作るのであれば資源の輸入を含めた議論は欠かせない。
生物多様性も歴史的な価値を持つストックとして、いかに次世代に継承するかを考えることが必要。衰退しつつある地方都市における地域計画と生物多様性の保全をどうリンクさせるかも課題。
生態系の財とサービスの利用のバランスをとることが重要。しかし、経済的価値としてカウントしにくい財、サービスもあり、価値が数値化される一面的な機能だけが強調されると、生物多様性保全の観点からは危険な面もある。
関係府省がそれぞれできることを効果的に実施してもらうことも重要。

(以上、5名の委員発言:順不同 文責:事務局)