<参考>第3回環境レポート大賞 講評 (五十音順)

[環境報告書部門]

大賞(環境庁長官賞)

○キリンビール(株)  「1999年版 キリンビール環境報告書」
 報告内容を理解するための基礎的項目、環境マネジメントシステム、環境側面、実績等について平均して多様な読者のニーズに適合している点で高く評価される作品である。
 特に重要な、目標/実績/分析/今後の計画/2期以上のデータ/データ算出・集計根拠等の取組実績についてはかなり充実した記載がされている。また、マテリアルフローや比較的整った環境会計情報の記載も評価される。GRI(Global Reporting Initiative)のガイドライン案の内容を踏まえる努力や、2件の第三者意見書掲載など先進的な試みも評価できる。連結ベースの報告とはなっていないが、付表としてグループ会社のデータが掲載され、また、冒頭で今後の報告範囲の拡大を経営者がコミットメントしており、積極的な報告姿勢がうかがえる。
 
○ソニー(株)   「環境保全活動報告書1999」
 ソニーという全世界規模で活動するマルチ・ナショナル・カンパニーの環境報告書として、その全体を対象として作成し、目標、実績、取組内容を公表している点で現時点で他に優れた作品である。その他、事業の特性に応じて重要な環境側面が、ライフサイクルを踏まえて十分に網羅されている点、この側面と目標、実績が十分に整合している点等が優れている。また、全体の構成がしっかりしていて、どこからでも読め、検索がし易く、内容的にもわかりやすく興味深いことなども評価される。さらに、巻末に差し替え式のデータ集があり、基本的に2年に1回発行とし大部な環境報告書を毎年作らないようにしたことなどの工夫も評価しうる。
 
○トヨタ自動車(株)  「環境報告書1999」
 報告内容の基幹となる基礎的項目、環境マネジメントシステム、実績等についてライフサイクルの流れにも沿って平均して多様な読者のニーズに適合している点で高く評価された作品である。特に製品に対する取組についての詳細な記述や、製品以外の実績についても2期以上のデータ/データ算出・集計根拠等よく書かれている。工場データ掲載や記載・内容項目についての前期との連続性への配慮、第三者意見書掲載などの工夫、取組みも評価される。なお、連結ベースではなく自動車中心の記載であるが、海外事業・自動車以外の事業の活動やデータも掲載されており読者ニーズに適合した報告範囲への努力がうかがえる。
 
○日本電気(株)  「環境アニュアルレポート1999」
 経営者のコミットメントおよび記載項目の網羅性やコミュニケーション・ツールとしての双方向性に意を配っている。環境マネジメントシステム関係についても全体像をわかりやすく解説している。グローバルカンパニーのヘッドクォーターとして企業全体が抱える環境側面の抽出もLCA的にも網羅的であり、実績、目標、計画も整合性がある。また、個別工場毎にサイトレポートを用意し、それらを積み重ねの上、全社のレポートが作成されている点も高く評価される。
 グリーン購入の推進についての本格的取組み状況、「エコシンボル」の試み、さまざまな面でのLCAの活用、環境会計についての取組み、マイナス情報の記載、等の取組みや工夫も評価できる。全体として大変理解しやすい作品である。
 
○松下電器産業(株) 「松下電器グループ 1999年度環境報告書」
 全体として簡潔でカラーや図表の駆使により読みやすい工夫に努力されている作品である。大きなグループの報告書として報告書の範囲や期間を明瞭に表示していることや、目標と実績の関係が全体的なものも、省エネ等の具体的項目について明確な形で示されておりわかりやすい。PRTRについても全社ベースではあるが開示していることや地下汚染の情報についても若干ではあるが開示していることも評価される。社会が注目しているリサイクル対応の紹介も読者ニーズに応えようとしており評価できる。グローバル企業として世界各地の活動状況の紹介もある。情報公開に関するさまざまな取組みの情報の提供も評価される。
優秀賞(地球・人間環境フォーラム理事長賞)
○(株)イトーヨーカ堂  「環境マネージメント レポート1999」
 環境活動が小売り販売の事業活動の中でどのように展開されているかが、図解をもとに全体的に、一般消費者にも理解できるように分かり易く書かれている。また、各活動がどのページに記述されているかが示されており、読者にとって知りたい部分のページをスムーズに開くことが出来る。物流の合理化についてはかなりの取組みをしていることがわかりやすく解説されている。容器包装の簡略化、各店舗における省エネルギー、廃棄物削減等の活動も活発に行われていることがよくわかり、環境会計についても、かなり詳しくかつ平易に解説してある。最後に98年の活動を振り返って、99年度の活動につなげており、継続的改善への取り組みも評価できる。
 
○大阪ガス(株) 「大阪ガス環境行動レポート1999」
 全体的にはコンパクトで、かつ実績値が豊富な環境報告書で、図やグラフの活用も含め、充実している環境報告書である。はじめに指針と主要施策、目標、実績が一覧で整理され、現状を理解しやすいように工夫している点評価される。環境側面もインフラの敷設からガス製造、自社製品製造、オフィス活動等に至るまで、網羅的にとらえられている。それぞれについても実績値及びグラフがよく示されており、また、たとえば電力消費に伴うCO2の計算方法や使用した排出係数の根拠など、報告書の理解に必要な情報が別途記載されているなどの工夫が見られる。環境会計についても根拠を明確にするなど工夫されている。
 
○キヤノン(株)   「キヤノン環境報告書1999」
 全体として簡潔で対象領域を明示し報告書のコンセプトを明確にしていることや、実数値に加え図表も多用し読みやすいように工夫をこらしている。化学物質の管理に関しては、全社ベースではあるが使用量から排出・移動・管理レベルまで記載していることは評価される。また、インターネットと関連させて各サイトの情報を公表する工夫も注目される。製品での環境配慮や、リサイクルについての取組み情報が分かりやすく記載されていることや、独自のタイプIII型エコラベルの試みと解説も評価される。グリーン調達に関する本格的取組みの記述と別冊のグリーン調達基準ガイドブックの公表による啓発努力も評価される。
 
○生活協同組合コープとうきょう 「1999年環境報告書」
 生協の環境報告書として組合員以外の読者ニーズに適合したものにしようという配慮が感じられ評価される。「事業活動が及ぼす環境影響」に示されているフローチャートが、コープとうきょうの活動と関連業者や消費者・組合員とのつながり、そこで発生する環境負荷を網羅的にかつ詳しく開示しており、大変わかりやすい。特にコープとうきょうの環境マネジメントが及ぶ範囲を明示しているのは、事業会社の報告書も含めても新しい試みとして評価される。各環境側面ごとの記載も、目標と実績、および説明やデータがわかりやすくコンパクトにまとめられている。環境に配慮した商品の供給金額を示していることも評価される。
 
○清水建設(株) 「清水地球環境報告書第5号」
 主として従業員向けということもあってか表紙を除きカラーを使わず白黒だけで、全体としては非常にシンプルに作られているが、取組み、その実績と今後の方向が非常にすんなりと理解できるわかりやすさがある。活動報告が総括と詳細に分けて整理されている点も読み手への配慮が感じられ評価できる。また、総括は「中長期目標」「実績」「評価及び今後の課題」が一覧で整理されており、目標に対する現状と今後の方向性が理解しやすい点も評価される。環境側面が明確に示され、また、事業の各工程との関係が整理されていて理解容易である。生態系への取組姿勢なども印象的である。
 
○(株)西友  「西友 環境活動報告 1999」
  印刷に使用されているインクの色は2種類で、全体的に地味な配色であるにも拘わらず、図や写真等を併用して、一般消費者にも活動内容が理解できるように平易な文章で書かれている。また、詳細なデータを資料編として添付することにより、本体報告書に書ききれない活動データの詳細を開示して、平易さと平易さによるデータ量割愛のトレードオフを回避している。ISO14001導入に関しても、環境側面、環境活動などを、平易にかつ図で表現し一目で内容が良く理解できるように工夫されている。 活動内容としては、「ニコニコ学習会」などの消費者教育や、座談会などによる消費者の生の意見収集など地道な活動が評価できる。
 
○ソニー本宮(株)  「環境レポート1999」
 グローバル企業の生産担当子会社の環境報告書でありサイトレポートとして高く評価される作品である。生産工程の現場や職員の活動風景等の写真を随所に織り込むことによって、一般の人が見ても分かりやすく、地域住民にとっても親しみがもてるものとなっている。全体の構成も、「主な環境負荷」として、環境負荷の概要がインプット・アウトプットとビジュアルに表現されており、「環境指標」も地域環境・地球環境との関係が分かりやすく示されている。「環境活動」内容が1頁1項目としてコンパクトながら網羅されており、96年度からの数量的なデータとそれに伴う具体的な活動内容が併記されており、その効果も含めて分かりやすい。
 
○日産自動車(株)  「1999日産自動車環境報告書」
 環境報告書に含めるべき基本的項目が網羅されており、環境側面の抽出についても、定性的ではあるが全体像を示した上で、事業内容にふさわしい側面が洗い出されている。報告書の対象としている期間、地理的範囲など事業活動報告の範囲も記載されており明確である。目標は定量化あるいは検証可能な形で設定され、実績と対比した表も示されており、次年度の目標も別表に示されている。全社ベースではあるがPRTR情報や環境庁の環境報告書作成ガイドラインに沿った環境情報の記載、ならびにGRI(Global Reporting Initiative)ガイドライン案に沿って作成した旨の記載等、先進的な試みに積極的に対応している点が評価される。
 
○富士通(株)  「1999環境活動報告書」
 行動計画の要約が一覧となっており、関連ページも示すなど、読み易さの工夫が感じられる。各取り組みの過去の実績、目標、達成値も分かりやすい。一般の関心が高い製品リサイクル対策も分かりやすく解説している。土壌汚染については、部分的ではあるがマイナス情報も開示され、これに対する取り組みも明示されている。環境会計についても導入、第三者意見書をつけるなど先進的な取組みを記載しており評価できる。グローバル企業として関連会社及び海外グループと連絡協議についての記載もある。
 
○みやぎ生活協同組合   「1998年度環境報告書」
 大変意欲的に環境に取り組んでいることが実感できる報告書である。トップの挨拶で、「ISO認証はスタートにすぎない」と明言していることも、考え方を象徴しているように感じられる。環境側面の抽出、それに沿った目標設定、および実績と計画が、データや説明とともに整合性が取れた形で丁寧に記載されている点評価される。また資料編に産直品や環境商品の定義とその品目などの詳細なデータやグリーン調達基準などを開示していることも評価できる。ダイジェスト版で組合員だけでなく一般の人々等、幅広いステークホルダーのニーズに応えようと努力しているようであり評価される。
 
○(株)リコー  「リコーグループ環境報告書1999」
 グローバル企業として全世界を対象として環境を考えていることが明確で、コメットサークルという全体像の中で優先順位を明確にし取組み方針を分かりやすく工夫している点が評価される。LCAにあたっても、エコバランスを導入している点の説明がわかりやすい。汚染予防の観点から、独自の化学物質管理システムを構築し、2000種以上の化学物質データ等を管理している点や全社分ではあるがPRTR情報の記載も評価できる。環境会計についても独自の試み等先進的な取組みの記載がされている。安全衛生として、従業員の健康管理状況、労働災害件数が明示されている点は、会社の姿勢が現れている。

[環境行動計画部門]

大賞(環境庁長官賞)      該当なし

優秀賞(全国環境保全推進連合会会長賞)

○(株)川邊組  「環境行動計画書(平成11年度)」
 二酸化炭素、産業廃棄物をはじめとして、上水道、紙、電力、ガソリン、LPGなど環境負荷の把握を網羅的かつ定量的に行っている。さらに3年以内に段階的に削減する具体的な目標を掲げている。具体的な取り組みについても詳細に記述している。
 環境活動評価プログラムをマニュアル化し、全社員への教育を実施するなど環境保全への意識の高さが伺える。
 
○(株)谷組  「環境保全行動計画書(平成11年度)」
 二酸化炭素と廃棄物を低減目標の項目にあげ、ともに年次計画により具体的な数値で示されている。建設業であるため工事施工時の騒音・振動及び水質についても配慮している。具体的な取り組みについても記述があり、特に社員教育については、計画書を作成している。社長による環境方針の明示、環境活動評価プログラムのチェック結果を評価の中で考えているなど、真摯な取り組みがなされている。
 
○(株)ヤクルト本社富士裾野工場 「ヤクルトDE21環境アクションプラン」
 事業概要、環境方針、環境管理の体制などわかりやすくまとめられ、全体的にグラフや写真などを使うなど、コミュニケーションツールとしての完成度が高い作品である。
 二酸化炭素と廃棄物を低減目標の項目にあげ、環境負荷を把握するとともに14年度までの削減目標を具体的に示している。また、廃棄物リサイクルの状況における記述について、種類別にリサイクル率の推移を掲載したり、具体的な取り組み内容について、水資源、大気汚染の防止、自然保護等についても触れるなど行動計画としての完成度の高さを伺わせる。

(参考)
●第1回環境アクションプラン大賞(平成9年度)受賞団体
 
[大賞(環境庁長官賞)](8)
清水建設(株)、ソニー(株)、キリンビール(株)、松下電器産業(株)AVC社パーソナルコンピュータ事務局、 神戸地区、東日本旅客鉄道(株)、(株)西友、生活協同組合コープこうべ、世田谷区
 
[優秀賞(全国環境保全推進連合会会長賞)](6)
(株)コープフーズ、生活協同組合東京マイコープ、日本プレシジョン・サーキッツ(株)塩原テクノロジーセンター、ひかり味噌(株)飯島グリーン工場、平河ヒューテック(株)古河工場、丸富製紙(株)富士根工場
 
[毎日新聞社賞](8)
(株)イトーヨーカ堂、日本電気(株)、日本国土開発(株)、板橋区、矢崎部品(株)大浜工場、京都生活協同組合、(株)極東技工コンサルタント 九州電力(株)
 
●第2回環境アクションプラン大賞(平成10年度)受賞団体
 
[大賞(環境庁長官賞)](5)
日本アイ・ビー・エム(株)、ソニー瑞浪(株)、東京ガス(株)、(株)コープフーズ、岡山市民生活協同組合
 
[優秀賞(全国環境保全推進連合会会長賞)](5)
(株)大揮環境計画事務所、静岡瓦斯(株)静岡工場、片山食品(株)紫雲寺工場、日揮化学(株)新津事業所、日本海エル・エヌ・ジー(株)
 
[特別賞(毎日新聞社賞)](9)
日本国土開発(株)、富士通(株)、(株)三越、(株)資生堂、アサヒビール(株)、コニカ(株)、京都生活協同組合、山形日本電気(株)、(株)イトーヨーカ堂
(応募順)