(別添)

平成11年度「環境にやさしい企業行動調査」調査結果


1 調査の目的

  本調査は、企業において環境に配慮した行動が定着し、環境保全に向けた取組が効果的に進められるよう、その実態を的確かつ継続的に把握し、これを評価し、その成果を普及させていくことを目的とする。

2 調査対象、調査方法

  東京証券取引所、大阪証券取引所、名古屋証券取引所の1部、2部上場企業2,441社及び従業員数500人以上の非上場企業等3,855社を対象とし、平成11年11月に郵送によるアンケート調査を実施した。

有効回答数 :  上場企業:1,147社(有効回収率:46.9%)
非上場企業等:1,620社(有効回収率:42.0%)

  なお、上場企業における平成3年度からの有効回収数、有効回収率の推移については以下のとおり。

3 調査項目

(1) 環境管理等への取組状況(経営方針、目標、具体的行動計画、環境マネジメントシステム等)
(2) 環境保全や環境負荷低減のための具体的取組
(3) エコビジネスの動向
(4) 環境保全に係るコスト(投資額、費用)の把握状況
(5) 地球温暖化防止対策に関する意識等

4 調査実施体制

  環境庁の委託により、財団法人地球・人間環境フォーラムと株式会社エコマネジメント研究所が共同で調査を実施した。

5 集計結果の概要

(1)環境管理への取組状況

  環境管理とは、企業等が規制、基準を遵守するだけでなく、自主的、積極的に環境保全のための行動を、組織内で体系化した形で計画・実行・評価することを指し、そのために[1]環境保全に関する方針、目標、計画等の策定、[2]それらに基づく実行及び記録、[3]その実行状況の点検、方針の見直し等を実際に行う組織内システムを環境マネジメントシステムと呼んでいる。
環境管理への取組状況について見ると、上場企業では、

○環境保全に関する経営方針 「制定している」:61.6%(平成10年度:56.5%)
○具体的目標 「設定している」:54.8%(平成10年度:54.8%)
○具体的行動計画 「作成している」:50.8%(平成10年度:43.9%)
○環境保全活動に対する監査の実施  「実施している」:44.0%(平成10年度:36.5%)

となっており、平成10年度と比べると、いずれも増加しており、過去9年間(具体的な行動計画の作成については7年間)の推移を見ても、環境管理に対する取組は着実に広がってきているといえる。

  また、上場企業について業種別に見ると、製造業、電気・ガス等供給業では、環境管理に取り組んでいる企業の割合が高く、例えば、「経営方針の策定状況」を見ると、電気・ガス等供給業は94.7%、製造業は72.7%となっており、他の業種に比べて経営方針を策定している企業の割合が高い。

  従業員500人以上の非上場企業等においては、

○環境保全に関する経営方針 「制定している」:37.5%(平成10年度:33.9%)
○具体的目標 「設定している」:32.8%(平成10年度:27.3%)
○具体的行動計画 「作成している」:32.6%(平成10年度:27.4%)
○環境保全活動に対する監査の実施  「実施している」:26.4%(平成10年度:23.8%)

となっており、平成10年度と比べて増加してきている。上場企業に比べればその割合は低いものの、非上場企業等においても取組が進展してきている。

  ISO(国際標準化機構)14001規格の認証については、既に認証を取得した企業(全社(全事業所)、一部含む)は、上場企業で38.8%、非上場企業等で20.3%となっている。1996年の発行以降、認証取得の動きが着実に広がってきている。

(2)環境保全や環境負荷低減のための取組

  環境保全や環境負荷の低減のための取組については、業種ごと・全業種共通に分けて、調査している。製造業では、環境負荷の小さい製品の開発・設計、産業廃棄物の減量化、通い箱等の使用や包装・梱包の減量化、使用済み容器包材の回収・リサイクル等を中心に行われており、建設業では建築廃棄物排出量の削減、金融・保険業では、再生紙の使用や紙使用量の削減、運輸業では効率的な運転の指導や車両整備の徹底、低公害車の導入、流通・サービス業等では店舗等における省資源・省エネルギー等の取組や再生資源を使用した商品の取扱等が多い。また、全業種共通の取組では、分別の徹底・リサイクル等の推進、紙使用量の削減、廃棄物の減量化に取り組む企業が多くなっている。

(3)エコビジネスの動向

  上場企業及び非上場企業等におけるエコビジネスへの参入状況を見ると、上場企業の4割以上、非上場企業等の2割以上が「既にサービス・商品の提供等の事業展開を行っている」、「エコビジネスに関する研究・開発を行っている」と回答しているほか、「サービス・商品等の提供を始める予定がある」、「今後取り組みたい」という回答を含めると上場企業の6割以上、非上場企業等の4割以上が関心を寄せていることが示されている。

  エコビジネス進展の上での問題点については、「市場規模が分からないこと」、「消費者やユーザーの関心がまだ低いこと」、「開発費が多額になること」がいずれも3割を超えている(複数回答)。平成9年度と比較するといずれの項目も減少傾向にあるが、消費者の動向が今後のエコビジネスの進展の鍵を握っていることが窺える。

(4)環境保全コスト(投資額・経費)の把握状況

  予算、決算において、環境保全に係る投資額や費用を他と区別して集計しているか調査を行ったところ、予算においては、上場企業の25.9%、非上場企業等の19.0%が「投資額」、「経費」又は「投資額、経費とも」他と区別して集計を行っており、決算においては、上場企業の24.7%、非上場企業等の16.6%が同様の集計を行っている。
  環境保全コストの把握を行う目的としては、「自主的な環境管理における目標実行に伴うコスト把握」を挙げた企業が最も多く、以下、「環境保全投資における投資効果分析」、「規制強化等による環境対策のコスト管理」などが挙げられている(上場企業のみ調査)。

  環境保全コストの集計に当たっては、上場企業、非上場企業等ともに「環境保全コストの定義や範囲がはっきりせず、どの科目をどのように集計すべきか分からない」、「現行の会計システムでは特別な投資額や経費の集計が出きるようになっていない」等の問題点が指摘されている。
  一方、当庁が平成11年3月に公表した「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン(中間とりまとめ)」については、上場企業の43.8%、非上場企業等の19.6%がその存在・内容を知っており、上場企業で9.9%、非上場企業で4.0%の企業が実際に活用していると回答している。内容又は存在を知らないが是非知りたいという企業も、上場企業で17.4%、非上場企業で25.6%あり、企業の関心の高さが窺える。
  今後の環境保全コストの把握・集計等の推進のためには、上場企業、非上場企業の6割以上が「企業内部における環境保全コストの把握、集計等に関する指針、ガイドラインの作成」が必要と考えている。

(5)地球温暖化対策のあり方

  地球温暖化問題に対しては、上場企業、非上場企業等ともに約7割の企業が「産業界を始めとした国民各層が排出抑制のための努力を行うことが必要」と回答しており、意識の高さがうかがえる。また、上場企業、非上場企業等ともに半数以上の企業が地球温暖化防止のための何らかの取組を行っており、具体的な行動も広がってきている。

  炭素税の導入については、上場企業の4割以上が賛成又は条件付きで賛成し、非上場企業等においても約4割の企業が賛成又は条件付きで賛成と回答している。また、炭素税よりも規制的な措置を望む意見も2割以上を占め、炭素税及び規制的措置の双方を無用とし、専ら自主的努力のみで対応するとの意見は1割以下であった。
  上場企業、非上場企業等ともに炭素税の導入に賛成する企業の割合は、増加傾向にある。