別添

ダイオキシン類の環境測定に係る精度管理指針
(案)

 本指針は、ダイオキシン類の環境測定における的確な精度管理を実現するため、ダイオキシン類の環境測定を担当する試験所等が自ら講ずべき措置等を定めたものである。

第1部 総括的事項
第1章 品質管理システム
1.組織
 ダイオキシン類の環境測定を実施する機関は、以下に示す統括責任者、品質管理者、技術管理者及び測定担当者を置く。
(1)統括責任者
 統括責任者は、ダイオキシン類の環境測定業務全体について責任を負う。統括責任者は、(2)の品質管理者、(3)の技術管理者及び(4)の測定担当者を指名し、指名 した者の氏名、担当する業務及び当該業務・関連業務に関する経験(担当年月、研修の受講歴等)等を記載した組織に関する文書及び組織の機構図を作成する。また、品質管理者から提出される第2章1の標準作業手順書案、第3章1の品質保証・品質管理計画書案及び第3章2の品質保証・品質管理報告書案等を審査し、承認する。
なお、品質管理者については、技術管理者及び測定担当者とは別の者を指名する。
(2)品質管理者
 品質管理者は、ダイオキシン類の環境測定に関する品質管理について、優れた能力を有する者をもってあてる。品質管理者は、ダイオキシン類の環境測定に関する品質管理に責任を持ち、技術管理者から提出される第2章1の標準作業手順書案、第3章1の品質保証・品質管理計画書案及び第3章2の品質保証・品質管理報告書案等を審査し、統括責任者に提出する。また、本章3に規定する内部監査を実施する。
(3)技術管理者
 技術管理者は、ダイオキシン類の環境測定について、豊かな知見と優れた技術を有する者をもってあてる。技術管理者は、ダイオキシン類の環境測定に係る技術的な管理について責任を持ち、測定担当者による業務の実施に関して、技術的指示を行うとともに、測定担当者から提出された記録等の内容を確認し、保存する。
 また、第2章1の標準作業手順書案、第3章1の品質保証・品質管理計画書案及び第3章2の品質保証・品質管理結果報告書案等を作成し、品質管理者に提出する。
(4)測定担当者
 測定担当者は、ダイオキシン類の環境測定に係る試料採取、前処理、ガスクロマトグラフ質量分析計による測定等に関する教育・訓練を受け、その業務を的確に処理することができる者をもってあてる。測定担当者は、本指針の規定に基づき、必要な記録等を作成・整理した上で、技術管理者に提出する。

2.不適切な操作等が行われた場合の対処方法
 技術管理者は、測定担当者から提出される記録等の確認の方法及び確認の際に品質管理上問題があると認めた場合の対処方法に関する文書(以下、「対処方法書」)案を作成し、品質管理者に提出する。
品質管理者は、対処方法書案を審査し、必要に応じ技術管理者と協議した上で修正した対処方法書案を総括責任者に提出する。
統括責任者は、品質管理者より提出された対処方法書案を審査し、必要に応じ修正の指示を行い、修正後の対処方法書案を承認する。
技術管理者は、本指針の品質管理に関する規定から逸脱した操作が行われたと認める場合には、当該対処方法書に基づき適切な措置を講じる。

3.内部監査
 品質管理者は、ダイオキシン類の環境測定に関する品質保証・品質管理が適切に行われていることを確認するための監査を実施し、結果を文書(以下、「内部監査報告書」)にして統括責任者に提出する。監査の頻度は、使用する施設、装置、技術管理者等に特段の変更がない場合には、1年に1度以上とし、上記の事項について変更があった場合(軽微なものを除く。)には、変更後の測定が定常的に行われるようになった段階で実施する。
 統括責任者は、提出された内部監査報告書に基づき、必要がある場合には、品質の改善等を技術管理者に文書(以下、「品質改善指示書」)で指示する。
技術管理者は、品質改善指示書に基づき、品質改善の実行方法を記載した文書(以下、「品質改善実行書」)案を作成し、品質管理者に提出する。
 品質管理者は、品質改善実行書案を審査し、必要に応じ技術管理者と協議した上で修正した品質改善実行書案を統括責任者に提出する。
統括責任者は、品質管理者より提出された品質改善実行書案を審査し、必要に応じ修正の指示を行い、修正後の品質改善実行書案を承認する。
 技術管理者は、当該品質改善実行書に基づき業務改善のための適切な措置を講じる。

4.教育、訓練等
 統括責任者は、品質管理者、技術管理者及び測定担当者の職務の遂行に当たり、必要があると認める場合には、これらの者に対する教育、訓練等(外部機関での研修、技能試験・試験所間比較試験等への参加を含む。)を行う。その際、行った教育、訓練等の内容、日程、成果等について、教育、訓練等を受けた者より報告書を提出させ、これを整理・保存するとともに、1(1)の文書にその内容を追加する。

5.文書の管理等
 統括責任者は、本指針に規定のある文書・記録の作成及び維持管理の手順を明らかにした文書(以下、「文書・記録の作成及び維持管理手順書」)を作成し、これに基づき当該文書・記録の適切な作成及び維持管理が行われるよう、品質管理者、技術管理者及び測定担当者に指示する。
 これらの文書・記録には、作成日を明記する。 別表2の1に示す文書については、最新版を維持・管理し、更新された旧版を原則として5年間保存する。 別表2の2に示す文書及び 3に示す記録については、原則として5年間保存する。
 なお、パソコン等で作成し電子記憶媒体に保存しているデータについては、バックアップを作成するとともに、後日になってデータの書き換え等が行われることのないよう、必要な措置を講じる。

6.他機関との業務の分担
 試料採取等の業務を他機関が分担して実施する場合には、業務分担の内容及び責任関係を明確にし、これを第3章1の品質保証・品質管理計画書に記述する。なお、下請負契約等により試料採取等の一部の業務を他機関に発注する場合には、発注する業務の内容、発注先についても記述するとともに、本指針の要求事項が確実に実施されるよう措置する。

第2章 品質保証・品質管理に関する共通的事項
1.標準作業手順書
 技術管理者は、測定方法(平成11年総理府令第67号、平成11年環境庁告示第68号及び平成12年厚生省告示第3号に定める方法等( 別表1参照)。以下同じ。)及び第2部に規定されている事項等に基づき、試料採取から結果の報告等に至る作業のうち、当該機関が実施する作業について具体的な操作手順を記述した標準作業手順書案を作成し、品質管理者に提出する。
 品質管理者は、標準作業手順書案を審査し、必要に応じ技術管理者と協議した上で修正した標準作業手順書案を統括責任者に提出して再審査を求める。
統括責任者は、品質管理者より提出された標準作業手順書案を審査し、必要に応じ修正の指示を行い、修正後の標準作業手順書案を承認する。

2.試薬、器具、装置及び施設
 測定担当者は、以下の事項について記録等を作成・整理した上で、技術管理者に提出する。技術管理者は提出された記録等の内容を確認し、保存する。
(1)試薬
 使用する試薬について、使用目的に応じて整理した上で、測定方法に定められたものであることを確認し、メーカー、製品名、ロット番号、購入日、購入量、開封日、有効期限、保存方法等を記録する。また、精製・洗浄、その他の調製を行ったものについては、調整作業を行った者、作業日及び作業の内容を記録する。
(2)標準物質(溶液)
 標準物質(溶液)については、(1)に加え、使用日、使用量を記録する。なお、標準溶液を購入した場合には、購入時の濃度(複数の標準物質を含むものにあっては各々の濃度)を記録する。
(3)器具
 使用する器具について、使用目的に応じて整理した上で、測定方法に定められたものであることを確認し、メーカー、製品名、洗浄等の処理(作業を行った者、作業日及びその内容)、保管方法を記録する。なお、高濃度試料測定用器具と低濃度試料測定用器具とを区別し、両者が明確に識別できるように措置し、その内容を記録する。
(4)装置
 使用する装置について、使用目的に応じて整理した上で、測定方法に定められたものであることを確認し、メーカー、製品名、校正の実施状況、日常の測定における管理状況を記録する。装置の修理等を行った場合には、修理伝票の保存とともに修理等の状況を記録する。
(5)施設
 試料搬入後の一連の業務がどのような作業環境で実施されているかを判断できる文書を作成する。特に試料の前処理及びガスクロマトグラフ質量分析計による測定の作業環境については、品質管理の観点からどのような配慮がなされているかを記述する。

3.業務の進行管理
 技術管理者は、ダイオキシン類の測定業務が開始された後は、測定担当者の報告等に基づき業務の進行状況を把握し、その適切な管理に努めるとともに、進行状況に係る記録を作成する。

第3章 品質保証・品質管理に関する計画及び結果報告
1.品質保証・品質管理計画書
 技術管理者は、個別の依頼者から受けた調査業務等のために自機関が実施する一連のダイオキシン類の環境測定業務について、 別紙1に示す品質保証・品質管理計画書案(以下、「計画書案」)を作成し、品質管理者に提出する。
品質管理者は、必要に応じ技術管理者と協議した上で修正した計画書案を統括責任者に提出する。
 統括責任者は、品質管理者より提出された計画書案を審査し、必要に応じ修正の指示を行い、修正後の品質保証・品質管理計画書案を承認する。

2.品質保証・品質管理結果報告書
 技術管理者は、1の品質保証・品質管理計画書に基づき実施したダイオキシン類の環境測定業務について、 別紙2に示す品質保証・品質管理結果報告書(以下、「結果報告書」)案を作成し、品質管理者に提出する。
 品質管理者は、結果報告書案を審査し、記入の不備等の問題があった場合には、技術管理者と結果報告書案の修正について協議する。また、品質管理上の問題があった場合には、第1章1の対処方法書に基づく措置の実施及びこれに基づく結果報告書案の修正について技術管理者と協議する。品質管理者は、必要に応じ修正した結果報告書案を統括責任者に提出する。
 統括責任者は、品質管理者より提出された結果報告書案を審査し、必要に応じ修正等の指示を行い、修正後の品質保証・品質管理結果報告書案を承認する。

第2部 各論
第1章 試料採取
1.試料採取計画
(1)事前調査
 技術管理者は、事前調査の必要性について検討し、必要と認める時は、事前調査の計画を測定担当者より提出させ、必要に応じその修正を行った上で、測定担当者に事前調査の実施を指示する。
 測定担当者は、その計画に基づき事前調査を行い、その結果を記録し、技術管理者に提出するとともに、事前調査結果を(2)の試料採取計画案の作成に反映させる。
 技術管理者は、提出された記録の内容を確認し、保存する。
(2)試料採取計画
 測定担当者は、試料採取計画案を作成し、技術管理者に提出する。
 技術管理者は、提出された案を必要に応じ修正した上で、第1部第3章1の品質保証・品質管理計画書案に試料採取計画として記述する。

2.試料採取の実行に係る判断
 測定担当者は、前日及び当日の天候(項目によっては数日前の天候についても考慮する。)その他の状況を踏まえ、試料採取の実行の可否について判断し、結果を技術管理者に連絡して、その了承を得る。可とした場合には試料採取を実施し、不可とした場合には、その経過を記録する。

3.試料採取の記録
 測定担当者は、試料採取計画に基づき、試料採取を実施し、以下の記録を作成・整理した上で、技術管理者に提出する。技術管理者は、提出された記録の内容を確認し、保存する。
(1)共通的事項
[1]試料の名称
[2]試料採取者
[3]試料採取日時
[4]試料採取地点名
[5]全地球測位システム(GPS)等により求めた試料採取地点の緯度・経度
[6]採取地点・場所に係る地図及びその状況(採取試料に影響を及ぼすことが予想される周辺の発生源等)に関する記述
[7]試料採取の実行に係る判断等
[8]採取期間内の天候
[9]試料採取時の写真(周辺の状況がわかる遠景写真及び試料採取状況がわかる近景写真の2種類。ただし、写真撮影が不可の場合には、必要としない。)
[10]周辺の発生源等、試料に影響を与えている可能性のある事項
[11]試料採取後の輸送方法
(2)測定項目別の特記事項
以下の事項等については、測定項目別に 別紙3~8に規定する。
[1]試料採取器具・装置及び使用した試薬等
[2]試料採取操作
[3]試料容器

4.トラベルブランク試験及び二重測定
 試料採取を行う測定担当者は、試料採取に当たって、測定方法に規定された方法により、トラベルブランク試験のための操作及び二重測定のための試料採取を行い、その実施状況を記録する。

第2章 試料の前処理
1.試料前処理計画
 測定担当者は試料前処理計画の案を作成し、技術管理者に提出する。
 技術管理者は提出された案を必要に応じ修正した上で、第1部第3章1の品質保証・品質管理計画書案に試料前処理計画として記述する。

2.試料の前処理に係る共通的事項
 試料の前処理を行う測定担当者は、試料前処理計画に基づき次の作業を実施し、作成した記録を整理した上で、技術管理者に提出する。技術管理者は提出された記録の内容を確認し、保存する。
(1)試料の受入検査
採取された試料が測定機関に搬入された段階で試料の状態等に関する受入検査を実施し、以下の事項について記録を作成する。
[1]試料が搬入された日時及び受入検査を実施した日時
[2]受入検査の実施者
[3]試料搬入の手段及び状態
[4]試料容器の種類及び大きさ
[5]試料の性状
[6]その他特記事項
(2)抽出操作を行うまでの試料の保存・管理
 受入検査を行った試料について、(3)の抽出操作を行うまでの間、以下の記録を作成した上で適切な保存・管理を行う。
[1]試料の管理番号
[2]試料の保存・管理の場所、方法及び期間
(3)試料からの抽出
 試料からの抽出操作を行い、以下の記録を作成し、その内容が測定方法に定められた方法・条件により行われたことを確認する。なお、特殊事情により特別の方法を講じた場合には、その理由、内容及び妥当性(比較検討結果、引用文献等)を記録する。
 また、抽出操作時の他試料による汚染を判断するための参考資料として、同時期に処理を行った試料のリストを作成する。
[1]操作を行った者
[2]操作を行った日時
[3]抽出に供した試料の性状及び量
[4]抽出のために使用した器具並びにその洗浄の実施状況及び使用するまでの保管の状況
[5]抽出操作の方法・条件(溶媒の種類、量、抽出時間等)
[6]添加したクリーンアップスパイクの種類及び量
(4)試料抽出液のクリーンアップ
 試料抽出液のクリーンアップ操作を行い、以下の記録を作成し、その内容が測定方法に定められた方法・条件により行われたことを確認する。なお、特殊事情により特別の方法を講じた場合には、その理由、内容及び妥当性(比較検討結果、引用文献等)を記述する。
 また、クリーンアップ操作時の他試料による汚染を判断するための参考資料として、同時期に処理を行った試料のリストを作成する。
[1]操作を行った者
[2]操作を行った日時
[3]操作の方法及び条件
[4]使用試薬の種類
ア.硫酸処理-シリカゲルカラムクロマトグラフ操作の場合
 (ア)硫酸処理
ヘキサンの使用量
硫酸の添加量及び添加回数
 (イ)シリカゲルカラムクロマトグラフ操作
シリカゲルの材質・商品名、活性化条件及び充填量
溶出のために使用した溶媒の種類、溶出液の量
イ.多層シリカゲルカラムクロマトグラフ操作の場合
シリカゲルの材質・商品名、活性化条件及び充填量
溶出のために使用した溶媒の種類、溶出液の量
ウ.アルミナカラムクロマトグラフ操作の場合
アルミナの材質・商品名、活性化条件及び充填量
溶出のために使用した溶媒の種類、溶出液の量
分画試験の結果
エ.高速液体クロマトグラフ操作の場合
装置(メーカー名、型式)
分離カラムの材質・商品名
分離の条件液(溶離液の種類、温度、溶離液流量、分離に要した時間)
ブランク値
注入の順番(インジェクションリスト)
オ.活性炭カラムクロマトグラフ操作の場合
活性炭の材質・商品名、活性化条件及び充填量
溶出のために使用した溶媒の種類、溶出液の量
分画試験の結果

3.試料の前処理に係る測定項目別の特記事項
 試料の前処理に係る測定項目別の特記事項については、必要に応じ、 別紙3~8に規定する。

4.測定用試料に併せて測定を行う試料の調製
 測定担当者は、ダイオキシン類の測定に係る品質が確保されていることの確認等を行うため、以下の試料について必要な前処理等を行い、第3章5において測定を行う試料として調製するとともに、調製を行った測定担当者の氏名、調製の日時及び調製操作の概要を記録し、技術管理者に提出する。
(1)操作ブランク試験のための試料
 一連の測定業務において用意する試料である。前処理操作に大きな変更があった場合、試料間汚染が予想されるような高濃度試料を測定した場合にも試料を調製する。
(2)トラベルブランク試験のための試料
 第1章4によりトラベル試験のための操作を行った試料について、前処理操作を行い調製した試料である。
(3)二重測定のための試料
 第1章4に基づき試料採取を行った二重測定用の試料について、前処理操作を行い調製した試料である。
(4)濃度既知試料
 標準的な濃度既知試料であり、一連の分析操作において、品質管理上の問題が発生していないことを定期的に確認するために使用する試料である。

第3章 ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)による測定
1.GC-MSによる試料の測定計画
 測定担当者はGC-MSによる試料の測定計画の案を作成し、技術管理者に提出する。技術管理者は提出された案を必要に応じ修正した上で、第1部第3章1の品質保証・品質管理計画書案にGC-MSによる試料の測定計画として記述する。

2.GC-MSの点検
 技術管理者は、GC-MSの点検に関する実施基準を作成し、品質管理者の承認を得た上で統括責任者に提出し、その承認を得る。測定担当者は、この基準に基づき点検等を行い以下の記録を作成し、技術管理者に提出する。なお、(2)の定期点検は、日常点検の範疇を超える点検、調整等であり、外部に委託することができる。また、停電や故障等の問題が発生した場合には、どのような処置を講じたかを記録する。
(1)日常点検
[1]点検を行った者及び点検を行った日時
[2]キャピラリーカラムの使用状況等各種消耗に関する基本的な事項
[3]冷却水、真空ポンプ、真空度等のMSの基本的な事項
(2)定期点検
[1]点検を行った者及び点検を行った日時
[2]点検の実施状況
(3)メンテナンス
[1]イオン源の点検・交換
[2]レンズ系の点検・調整
[3]ソーススリットの調整
[4]インターフェイスラインの点検・洗浄
[5]ベーキング(イオン源、フライトチューブ等)
[6]フィラメントの交換
[7]その他
(4)問題が発生した時の処置
[1]問題の内容及び講じた処置

3.GC-MSの調整
 測定担当者は、4又は5の操作を行うに当たり、GC-MSの調整を行い、GC- MSが使用可能であることを確認した上で以下の記録を作成し、技術管理者に提出する。
(1)GCの調整
[1]調整を行った者及び日時
[2]キャピラリーカラムの取り付け、キャリヤーガスのチェック
(2)MSの調整
[1]調整を行った者及び日時
[2]質量校正
[3]分解能
(3)GC-MSの調整
[1]GC-MSのピーク分離度、絶対感度

4.検量線の作成
 測定担当者は、検量線作成用標準液について、検量線の作成のためのSIM測定操作を行い、必要なデータを求める。得られたデータが測定方法に定められた条件に合致していることを確認し、以下の記録を作成する。
[1]検量線の作成者
[2]検量線の作成日
[3]ピーク面積の強度比
[4]相対感度及びその変動係数

5.試料の測定
 測定担当者は、GC-MSによる試料の測定計画に基づき、検量線の確認及び感度変動の確認のための検量線作成用標準液、測定用試料、第2章4で調製した試料についてSIM測定操作を行い、必要なデータを求め、以下の記録を作成する。なお、検量線の確認のための操作については1日の測定開始時に、また感度変動の確認のための操作については1日1回以上一定の周期で行う。
[1]測定操作を行った者
[2]測定を行った日
[3]測定条件
[4]添加したシリンジスパイクの種類及び量
[5]測定順番(インジェクションリスト)
[6]試料注入量

6.検量線の確認及び感度変動の確認
 測定担当者は、5の検量線の確認のための検量線作成用標準液の測定操作及び感度変動の確認のための検量線作成用標準液の測定操作より得られたデータから以下の記録を作成する。これらの結果が測定方法に定められた条件に合致しない場合には、原因を取り除いた上で再測定(感度変動の確認で問題が生じた場合には、その直前に行った一連の試料の再測定)を行い、再測定を行った旨及びその結果を記録する。
[1]確認操作で得られた相対感度と検量線作成時の相対感度との比較結果
[2]保持時間の変動
[3]内標準物質との相対保持比の変動

7.同定及び定量
 測定担当者は、測定用試料及び第2章4で調製した試料に係る5のSIM操作より得られたデータについて同定及び定量に係る作業を行い、以下の記録を作成する。
(1)作業を行った者及び日時
(2)シリンジスパイク内標準物質の確認
[1]試料中のシリンジスパイク内標準物質のピーク面積と標準液のシリンジスパイク内標準物質のピーク面積の比較
[2][1]の結果と測定方法に定められた数値との比較
(3)ピークの検出((2)[2]の確認の結果、条件を満足しない場合にはピーク面積を算出しない。)
[1]ピークのS/N比の確認結果
[2]ピーク高さ
[3]ピーク面積
(4)ダイオキシン類の同定
[1]ロックマスチャンネルの変動状況(変動がある場合には[2]以降の記録は行わない。)
[2]ピーク面積と標準物質のピーク面積比及び同位体存在比から推定されるイオン強度比との比較
[3]ピークの保持時間の標準物質の保持時間との比較及び対応する内標準物質との相対保持時間と標準物質のそれらとの比較
(5)定量及び濃度の算出
[1]算出した濃度
[2]濃度の算出に至った計算過程を説明する資料
[3]再測定の必要が生じた場合、理由を記して再測定し、チャートを添付する。

第4章 定量結果の確定
 測定担当者は、1の検出下限及び定量下限の算出作業を行い、作成した記録及び第3章4~7の記録を整理した上で技術管理者に提出する。技術管理者は提出された記録を審査し、第3章7(5)[1]で算出した濃度の品質に問題がないと認める場合には、その旨を測定担当者に連絡する。問題を認めた場合には、第1部第1章2の規定に基づき、適切な措置を講じる。
 技術管理者より第3章7(5)[1]で算出された濃度の品質に問題がないと認める旨の連絡を受けた測定担当者は、以下の2~7の作業を行い、作成した記録を技術管理者に提出する。
 技術管理者は提出された記録を確認し、問題がないと認める場合には、測定用試料の定量結果を確定し、その旨を測定担当者に連絡する。

1.検出下限及び定量下限
(1)装置の検出下限及び定量下限
 装置の検出下限及び定量下限を測定方法に定められた方法により求め、求めた装置の検出下限が測定方法に定められている装置の検出下限以下であることを確認した上で、これらの値及び算出の過程を記録する。
 なお、装置の検出下限及び定量下限は一定の周期で確認するとともに、新たに測定条件を設定した場合にも確認を行い、記録する。
(2)測定方法の検出下限及び定量下限
 測定方法の検出下限及び定量下限を測定方法に定められた方法により求め、これらの値及び算出の過程を記録する。この測定方法の検出下限及び定量下限は一定の周期で確認するとともに、前処理操作及び測定条件を変更した場合にも確認を行い、記録する。
(3)試料測定時の検出下限及び定量下限
 測定方法に定められた方法で試料測定時の検出下限及び定量下限を算出し、これらが目的とする測定の検出下限及び定量下限以下であることを確認した上で、これらの値及び算出の過程を記録する。

2.回収率
(1)クリーンアップスパイク回収率
 クリーンアップスパイクの回収率を求め、測定方法に規定されている範囲にあることを確認し、記録する。なお、規定された範囲から外れる場合には、その事実を記録し、再度抽出液からクリーンアップ操作を行って、クリーンアップスパイク回収率を求める。
(2)サンプリングスパイク回収率
 サンプリングスパイクの回収率を求め、測定方法に規定されている範囲にあることを確認し、記録する。規定された範囲から外れる場合には、その原因を調査して取り除き、その事実を記録した後、サンプリングスパイク回収率算出のための操作を再度行う。

3.操作ブランク試験
 操作ブランク試験の値を求め、結果が十分に低値であることを確認し、記録する。

4.トラベルブランク試験
 トラベルブランク試験の値を求め、結果が十分に低値であることを確認し、記録する。

5.二重測定
 二重測定用試料の測定値を求め、結果を比較検討し、記録する。

6.濃度既知試料の測定
 濃度既知試料の測定値を求め、これまでに同一試料について測定した結果と比較検討し、記録する。

第5章 結果の報告等
 技術管理者から第4章に基づき濃度を確定した旨の連絡を受けた測定担当者は、以下の作業を実施し、作成した記録等を整理した上で技術管理者に提出する。技術管理者は提出された記録等を確認し、保存するとともに、第1部第3章2の品質保証・品質管理結果報告書案を作成し、品質管理者に提出する。

1.測定結果の表示
 第4章によりデータが確定された濃度の算出結果から測定方法に定められた方法で測定結果を表示し、記録する。測定された各異性体の濃度のうち、検出下限以上で定量下限未満のもの及び検出下限未満のものについては、その旨がわかる表示方法とする。

2.毒性等量の算出
 測定方法に定められた算出方法により毒性等量を算出し、その結果を記録する。また、使用した毒性等価係数等毒性等量の算出に至った計算過程を説明できる資料を作成する。

3.異常値・欠測値の発生原因等
 第4章でデータの確定ができなかった異常値・欠測値について、その原因等を検討し、その結果を記録する。


4.試料等の保存
 品質保証・品質管理計画書に基づき、再測定に備えた試料等の保存・管理を行い、その管理番号、保存・管理の方法及び期間を記録する。

別表1 本指針の対象となるダイオキシン類の環境測定の項目及び測定方法
項目測定方法
一般環境大気の常時監視又は調査測定
(大気環境基準の適合状況の監視等)
平成11年環境庁告示第68号 別表
(ポリウレタンフォームを装着した採取筒をろ紙後段に取り付けたエアサンプラーにより採取した試料を高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法)

ダイオキシン類対策特別措置法の施行について(通知)
平成12年環企企第11号、環保安第6号、環大企第11号、環大規第5号、環水企第14号、環水管第1号、環水規第5号、環水土第7号(以下、「施行通知」)第3の2(2)イ(ア)
水質(公共用水域水質及び地下水質) の常時監視又は調査測定
(水質環境基準の適合状況の監視等)
平成11年環境庁告示第68号 別表
日本工業規格K0312に定める方法

施行通知
第3の2(2)イ(イ)
土壌汚染の状況の常時監視又は調査測定
(土壌環境基準の適合状況の監視等)
平成11年環境庁告示第68号 別表
(土壌中に含まれるダイオキシン類をソックスレー抽出し、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法)

施行通知
第3の2(2)イ(ウ)
排出ガスの汚染状況の調査測定平成11年総理府令第67号
日本工業規格K0311に定める方法
排出水の汚染状況の調査測定平成11年総理府令第67号
日本工業規格K0312に定める方法
ばいじん及び焼却灰その他の燃え殻の汚染状況の測定平成12年厚生省告示第3号
(廃棄物焼却炉に係るばいじん等に含まれるダイオキシン類の量の基準及び測定の方法に関する省令第1条第2項及び第2条の規定に基づき厚生大臣が定める方法)

別表2 作成及び維持管理が必要な文書・記録
1.基本文書
 ・組織に関する文書第1部第1章1(1)
・組織の機構図同上
・対処方法書第1部第1章2
・文書・記録の作成及び維持管理手順書第1部第1章5
・標準作業手順書第1部第2章1
・施設の作業環境に関する文書第1部第2章2(5)
・GC-MSの点検に関する実施基準第2部第3章2
2.計画書・報告書等
 ・内部監査報告書第1部第1章3
・品質改善指示書同上
・品質改善実行書同上
・教育・訓練に関する報告書第1部第1章4
・品質保証・品質管理計画書第1部第3章1
・品質保証・品質管理結果報告書第1部第3章2
3.記録
 ・試薬に関する記録第1部第2章2(1)
・標準物質に関する記録第1部第2章2(2)
・器具に関する記録第1部第2章2(3)
・装置に関する記録第1部第2章2(4)
・業務の進行状況に関する記録第1部第2章3
・試料採取に係る事前調査結果第2部第1章1(1)
・試料採取を不可とした経過に関する記録第2部第1章2
・試料採取に関する記録第2部第1章3
・トラベルブランク試験及び二重測定のための試料採取の実施状況に関する記録第2部第1章4
・試料の受入検査に関する記録第2部第2章2(1)
・試料の保存・管理に関する記録第2部第2章2(2)
・試料からの抽出に関する記録等第2部第2章2(3)
・試料抽出液のクリーンアップに関する記録等第2部第2章2(4)
・測定用試料に併せて測定を行う試料の調製に関する記録第2部第2章4
・GC-MSの点検に関する記録第2部第3章2
・GC-MSの調整に関する記録第2部第3章3
・検量線の作成に関する記録第2部第3章4
・試料の測定に関する記録第2部第3章5
・検量線の確認及び感度変動の確認に関する記録第2部第3章6
・同定及び定量に関する記録第2部第3章7
・検出下限及び定量下限に関する記録第2部第4章1 (1)~(3)
・回収率に関する記録第2部第4章2
・操作ブランク試験に関する記録第2部第4章3
・トラベルブランク試験に関する記録第2部第4章4
・二重測定に関する記録第2部第4章5
・濃度既知試料の測定に関する記録第2部第4章6
・測定結果の表示に関する記録第2部第5章1
・毒性等量の算出に関する記録第2部第5章2
・異常値、欠測値の発生原因等に関する記録第2部第5章3
・試料等の保存に関する記録第2部第5章4