報道発表資料
7月12日(月)から15日(木)、23ヶ国(日本を含む)、6国際機関の専門家の参加を得て、「第9回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」(環境庁、滋賀県、彦根市及び国連アジア太平洋地域経済社会委員会(ESCAP)主催)が、滋賀県彦根市において、開催された。
4日間の討議の結果、
- 京都議定書の早期発効に向けてCOP6で京都メカニズム(とりわけCDM)を運用するルールを決定することが必要であること
- CDMは、先進国から途上国への投資や技術移転、途上国における能力開発を促進する機会を提供するものであること
- IPCCの各種特別報告書による作業が重要であること、適応対策には気候変動及びその影響の将来予測や計画が必要であり、適切な適応対策の実施のために、精度の高い気候変動及びその影響の将来予測のためのモデル開発の必要性があること
- 途上国においては各国の実情に応じた多様な取組が行われていること
- 具体的な政策や事業のリストアップや実際に実施することが対策を推進する上で非常に有効であり、かつ、多くの追加的な利益が生み出されること
- 日本の環境庁によるAPネットの構築について高く評価するとともに、多くの国がそれぞれのウェブサイトを構築し、APネットへの参加が期待されること
などを内容とする議長サマリーがまとめられた。
京都議定書の早期発効を図るためには、途上国との対話を推進し、議定書で定められた各種制度の検討を進めることが必要。今回の会合を通じて、CDMについて途上国の理解の向上が図られるとともに、アジア太平洋諸国との間でCOP6の成功の必要性が再認識されたこと、さらには、アジア太平洋地域での更なる対策の促進に向けて、より具体的な対策事業のリスト化による対策の促進の必要性について共通の理解が得られたことなど、今後の国際的議論の推進に向けて大きな意義があった。
今回のセミナーの結果は、9月に札幌市で開催されるエコ・アジア99に報告される予定。
1.開催日時及び開催場所
日 時 |
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平成11年7月12日(月)~15日(木)(4日間) |
場 所 | : | 滋賀県彦根市 彦根プリンスホテル |
2.実施主体
議 題 | : | 環境庁(日本)、滋賀県、彦根市及びESCAP |
協力・後援 |
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気候変動枠組条約事務局、外務省、通商産業省 |
3.参加者
アジア太平洋地域諸国の政府(23)及び国際機関(6)からの専門家
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オーストラリア、バングラデシュ、カナダ、中国、フィジー、インドネシア、日本、カザフスタン、キリバス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、韓国、スリランカ、タイ、ツバル、米国、ウズベキスタン及びベトナム
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アジア開発銀行(ADB)、国連アジア太平洋地域経済社会委員会(ESCAP)、地球環境基金(GEF)、経済協力開発機構(OECD)、国連環境計画(UNEP)、国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)
4.開催趣旨
環境庁では、これまでに本セミナーを8回開催し、アジア太平洋地域における気候変動問題への認識の向上、経験の交流及び取組の強化を支援してきた。
今回のセミナーは、以下の事項を主要なテーマとして開催された。
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COP4及びその後の条約事務局主催の会議の成果のレビューを行うとともに、これらの気候変動に係る地域協力に与える影響について検討すること。
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気候変動に関する科学的知見、特に第3次評価報告書(TAR)や気候変動の地域影響や土地利用、土地利用変化及び林業(LULUCF)に関する特別報告書を含むIPCCの活動に関する情報交換を行うこと。
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アジア・太平洋地域における気候変動問題に対処するための具体的な対策の実施状況の確認を通じて、タイでの第8回セミナーで合意した行動、すなわち「アジア・太平洋地域において検討されるべきイニシアティブに係る提案」のフォローアップを行うとともに、各国で具体的な対策のリストを作成する際の問題点の意義を議論すること。
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アジア・太平洋地域気候変動情報ネットワーク「APNET」の促進方策を議論すること。
5 .会議の概要
真鍋賢二国務大臣・環境庁長官の開会挨拶並びに國松善次滋賀県知事、中島一彦根市長及びリザウル・カリムESCAP代表の歓迎挨拶に続いて、西岡秀三慶応大学教授を議長に、テバオ・アウェリカ氏(キリバス)及びアトーロー・カーン・アフリディ氏(パキスタン)を副議長に、ダンカン・マーシュ氏(米国)をラポラツールに選出して、以下のとおり討議を進めた。
○基調講演「COP4と条約事務局主催の会議の成果とアジア・太平洋地域の課題」
タハル・ハジー・サドック氏(気候変動枠組条約事務局科学・技術プログラム調整官)は、条約の下での交渉の現状と今後の方向について概説し、ブエノスアイレス行動計画の着実な実施の重要性を強調するとともに、COP6での成功のためには、政府の専門家や条約事務局による技術的インプットとともに、COP5及びCOP6における、政治的なリーダーシップの必要性について言及した。
その後、原沢英夫氏(国立環境研究所社会環境システム部環境計画研究室長)が、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の活動を紹介するとともに、IPCCの活動において本地域がこれまで以上に大きな役割を果たすべきであることを強調した。
さらに、リザウル・カリム氏(ESCAP環境天然資源開発部環境課長)は、COP4の成果とアジア・太平洋地域の地域協力について発表し、気候変動は多くの主体が関与する非常に複雑な問題であることから、社会的、経済的側面等、幅広い側面からの検討が必要であることを強調した。
○第1セッション「CDMとアジア・太平洋地域」
まず、条約事務局から京都メカニズムに関する最新の議論について、OECDからCDMの制度設計における技術的課題について報告があった。続いて、日本、中国、タイ、インドネシアから、CDMの実施の課題と展望やプロジェクトベースの国際協力に係る経験について報告があった。さらに、アジア開発銀行と国連環境計画(UNEP)から、CDMの実施における国際機関の役割について報告があった。
これらの報告を踏まえ、資金源、民間による積極的参加のためのインセンティブ、持続可能な開発の観点からの適格性の判断基準等の課題について議論がなされた。
○第2セッション「IPCC特別報告書(「気候変動の地域影響:脆弱性の評価」及び「土地利用、土地利用変化及び林業」)」
温帯及び熱帯アジアに対する影響についての報告がなされ、将来予測や計画が必要とされる適応対策の時宜を得た実施のために精度の高いモデル開発の必要性が認識された。また、土地利用、土地利用変化及び林業に関する特別報告の検討状況について報告があり、科学的不確実性を少なくするため、条約と京都議定書の究極の目的を考慮し、炭素固定の活動には検討がなされるべきことが指摘された。
○第3セッション「アジア・太平洋地域における地球温暖化対策の実施状況:アジア・太平洋地域におけるイニシアティブの活動のフォローアップ」
まず、条約事務局から、非附属書[1]国による第1回国別報告書の準備状況について報告があり、続いて各国における対策の実施状況及び気候変動対策における国際機関による支援について報告があった。さらに、国内対策の促進方策として、各国の状況に適合した優先政策/プロジェクトリストの策定の必要性について合意された。
○第4セッション「APNETの現状と今後の普及方策の検討」
まず、条約事務局より、CC:INFO Webについて、続いて日本よりAPネットのゲートウェイ・ウェブサイトの紹介と今後の情報交換の推進方策について報告があった。 参加者から、我が国によるAPネットの構築について高い評価がなされるとともに、今後各国がそれぞれのウェブサイトを作成しAPネットに参加する必要性が認識された。
○第5セッション「地方自治体による対策」
気候変動対策の推進についての地方公共団体の取組に関し、滋賀県、彦根市及び北九州市から報告がなされ、各国が地方公共団体の役割の重要性に合意した。
添付資料
- 第9回地球温暖化アジア・太平洋地域セミナー プログラム[HTMLファイル]
- 第9回地球温暖化アジア・太平洋地域セミナー 議長サマリー(仮訳)[HTMLファイル]
- 第9回地球温暖化アジア・太平洋地域セミナー 議長サマリー(英文)[PDFファイル] [PDF 26 KB]
- 連絡先
- 環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課課 長:竹内 恒夫
調整官:三好 信俊
環境庁企画調整局地球環境部温暖化国際対策推進室
室 長:梶原 成元
補 佐:平岩 勝 (内線6765)
主 査:細川 真宏(内線6763)
担 当:相ノ谷容造(内線6763)