報道発表資料

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2007年08月07日
  • 地球環境

第17回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー(The Seventeenth Asia-Pacific Seminar on Climate Change)結果について

 環境省は、タイ天然資源環境省、オーストラリア・グリーンハウス・オフィス(AGO)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)及び社団法人海外環境協力センター(OECC)との共催により、7月31日(火)から8月3日(金)にかけてバンコク(タイ)で「第17回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を開催しました。
 今回のセミナーは、20か国・23機関から、約80名の気候変動や開発計画担当の行政官や専門家の出席を得て、「気候と開発のためのグッドガバナンス:コベネフィッツ(相乗便益)の実現と適応措置の開発政策への統合に向けて」をテーマに行われました。
 途上国の開発ニーズを満たしつつ、気候変動の緩和策と適応策を実施するための方法について議論が行われ、緩和策におけるコベネフィッツ(相乗利益)の実現と、適応策の開発への主流化を積極的に進めていくことが合意されました。

※コベネフィッツ(相乗便益)とは、途上国の開発ニーズと、地球温暖化防止を行うニーズとの両方を意識し、単一の活動から異なる二つの便益を同時に引き出すことを指している。

1.開催日時・場所

平成19年7月31日(火)~8月3日(金)
タイ・バンコク

2.実施主体

主催:
環境省、オーストラリアン・グリーンハウス・オフィス(AGO)、タイ天然資源環境省(MNRE/ONEP)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、社団法人海外環境協力センター(OECC)

3.参加者

主としてアジア太平洋地域諸国の各国政府及び国際機関等の代表者 約80名

  • 参加国(20か国):
    オーストラリア、ブータン、カンボジア、カナダ、中国、クック諸島、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、モルディブ、ミクロネシア、モンゴル、フィリピンア、サモア、シンガポール、タイ、米国、ウズベキスタン、ベトナム
  • 国連及びその他の国際機関並びに政府機関等(23機関):
    国連環境計画(UNEP)、国連アジア太平洋経済協力社会委員会(UNESCAP)、国連砂漠化防止条約事務局(UNCCD)、国連工業開発機構(UNIDO)、米国国際開発庁(USAID)、オーストラリア国際開発庁(AusAID)、クリーン・エア・イニシアティブ・アジア(CAI-Asia)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)、韓国環境研究所(KEI)、国立環境研究所(NIES)、地球環境戦略機関(IGES)、ボゴール市(インドネシア)、スラバヤ市(インドネシア)、その他機関等
  • 日本からは、環境省地球環境局地球温暖化対策課川又課長補佐他が参加。
  • 議長は、オーストラリア・グリーンハウス・オフィス(AGO)地球規模森林・気候変動問題担当課長 グレッグ・ピッカー氏が務めた。

4.会議の主な成果

 本セミナーは、アジア太平洋地域内の各国における地球温暖化問題と持続可能な開発に関する情報、経験及び意見の交換を行うとともに、地域内での取組や協力を促進することを目的としている。
 今回のセミナーでは、以下のポイントが主要な成果として、議長サマリーとしてとりまとめられた。

[1]気候変動と開発:アジア太平洋諸国における取組

  • 開発途上国においては、開発が最重要課題であり、エネルギー・経済インフラの整備・環境保全・貧困削減等の目標を掲げている。これらの開発目標には、気候変動の緩和及び適応と関連性を有しているものが多いため、目標達成と同時に、効果的な気候変動対策を講じることが可能である。また、既にいくつかの国ではそのような取組が始められている。
  • 気候変動対策と開発ニーズの双方を実現するためには、普及啓発や能力向上などの条件整備が重要である。開発援助機関、地方自治体、金融機関を含む民間企業により、これら条件整備を進める動きがみられ、今後更なる取組の促進が期待される。

[2]コベネフィッツ(相乗便益)のアプローチ

  • 第14回APセミナー(2004年シドニー)において、コベネフィッツ・アプローチが取り上げられて以来、アジア太平洋地域において活発な取組みが行われてきている。
  • 気候変動対策と開発を統合的に計画・実施し、それぞれの活動の主目的に加え、他方のニーズを満たすことにより、温室効果ガス削減の便益及び省エネルギーや大気汚染防止等の開発に資する便益の双方を満たす、コベネフィッツを実現することが可能である。
  • コベネフィッツを実現するスキームとして、クリーン開発メカニズム(CDM)、政府開発援助(ODA)、途上国における開発活動等がある。コベネフィッツを促進するためには、参考となる優良事例の収集を行うことが効果的である。また、これら優良事例については、実施規模や実施数を拡大していくことが求められる。さらに、取組の促進のためには、関係者に具体的な便益を示すことが重要で、定量化手法などの方法論を開発することが重要である。
  • スラバヤ州における有機廃棄物のコンポスト化事業と米国環境保護庁による中国での高効率ビルディング推進事業をコベネフィッツの具体的事例として取り上げ、トレーニングセッションが行われた。コベネフィッツ実現の条件整備のためには、能力向上が重要であるが、このようなトレーニングセッションは有効な方法と考えられ、さらにその内容や手法を検討すべきである。

[3]適応の開発への主流化

  • 効果的且つ現実的に適応措置を進めるためには、既存の開発計画の策定・実施過程に適応活動を組み込むこと(適応の開発への主流化)が重要である。また、最近、既存の開発援助の中で適応策に貢献する活動のレビューや、脆弱性リスクを回避するための政策ツールの開発・適用が行われている。
  • 適応措置のための情報・ツール・方法論・組織的枠組は既に存在しているものの、現時点では政策担当者が利用しにくいため、今後、その改善を行うことが重要である。
  • 適応策を作成する上で、科学的データが極めて重要な役割を果たしているが、データの量及び質の向上を図る必要があり、特に地域の将来の気候変化を予測するため、より解像度の高いデータの提供の必要性が強調された。
  • 国内政策実施や国際協力によって得られた経済社会開発の成果が、気候変動の悪影響により損なわれないように、適応策を行うことの重要性が認識された。そのためには、科学的データの整備に加え、既存の防災対策等の効果を更に高めるための能力向上等を実施することが重要な役割を果たす。

[4] 気候と開発のためのグッドガバナンス

  • アジア太平洋地域において、コベネフィッツの実現と適応の開発への主流化を促進していくことが合意された。
  • コベネフィッツの実現と適応の主流化を促進するためには、関係省庁の連携が必要で、開発関連省庁の認識向上を図り、これを巻き込む必要がある。
  • また、各国の既存の取組を整理するとともに、優良事例を集め、コベネフィッツと適応に関する情報のプラットフォームを作ることが提案された。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局地球温暖化対策課国際対策室
室長:和田 篤也(内線6772)
 課長補佐:川又 孝太郎(内線6789)
 担当:黒田 彩(内線6789)

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