平成18年11月9日
保健対策

「TCPA及びソルベントレッド135中の副生HCBに係るBATレベルに関する報告書(案)」に対する意見募集の結果について

副生する特定化学物質のBAT削減レベルに関する評価委員会による「TCPA及びソルベントレッド135中の副生HCBに係るBATレベルに関する報告書」が、パブリックコメントで寄せられた御意見を踏まえとりまとめられましたので公表します。
 報告書は、化学物質TCPA及びそれを原料とする顔料ソルベントレッド135に含有されるヘキサクロロベンゼン(HCB)について、利用可能な最良の技術(BAT:Best Available Technology/Techniques)を評価し、工業技術的・経済的に可能なHCBの削減レベル(BATレベル)を提案しています。
 BATの考えに基づき特定の化学物質について数量的な基準が示された例は、今回が初めてです。

 副生する特定化学物質に関するBAT削減レベルに関する評価委員会(以下単に「委員会」という。)が取りまとめた標記報告書案について意見募集を行ったところ、31の個人・団体・企業の方々から計76件の御意見を頂きました。提出された御意見の内容及びそれを踏まえた対応等は以下のとおりです。
 貴重な御意見をお寄せいただきありがとうございました。

1. 意見募集期間
平成18年8月10日(木)〜平成18年9月8日(金)[30日間]
2. 御意見の件数及び内容
76件(意見提出者 個人7、団体6、企業18 計31)
寄せられた御意見の内容は別添1のとおりです。
3. 御意見に対する対応
 頂いた御意見を踏まえ、委員会において「TCPA及びソルベントレッド135中の副生HCBに係るBATレベルに関する報告書」(別添2)が取りまとめられました。
 また、頂いた御意見に対する厚生労働省、経済産業省及び環境省としての考え方は別添3のとおりです。

<参考>

1.報告書とりまとめの背景・経緯

 本年2月に、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「化審法」という。)に基づく第一種特定化学物質(※)であるヘキサクロロベンゼン(以下「HCB」という。)が、テトラクロロ無水フタル酸(以下「TCPA」という。)の合成過程において副生する事例が報告されました。
 TCPAは、染料・顔料の原料として用いられており、様々な樹脂の着色を通して多岐にわたる製品に用いられています。その中には、自動車のテールランプ用赤色顔料等のように最終製品の性能維持等の観点から直ちに他の物質への代替が困難な場合があります。

 第一種特定化学物質については、たとえ不純物としての非意図的な副生であっても原則としては許容されるべきではありません。しかしながら、技術的に副生がどうしても不可避なケースについては、人健康への被害又は環境の汚染を生じるおそれがないことを前提とし、かつ、これを供給する事業者によって副生量の低減に向けた最大限の努力が行われる場合に限って、当該副生物を規制対象としないことが適当と考えています。
 すなわち、副生する第一種特定化学物質を可能な限り抑制するとの観点から、「利用可能な最良の技術(BAT:Best Available Technology/Techniques)」を適用し、第一種特定化学物質を「工業技術的・経済的に可能なレベル」まで低減することが必要です。このため、化審法を所管する厚生労働省、経済産業省及び環境省は、副生する特定化学物質に関するBATの観点に立った削減レベルを検討するため、本年4月、専門家からなる「副生する特定化学物質のBAT削減レベルに関する評価委員会」(以下単に「委員会」という。)を設置し、TCPA及びこれを原料とする顔料(ソルベントレッド135)中の副生HCBに係る削減レベルについて検討を行ってきました。
 委員会における検討成果は、本年8月、報告書案の形で公表しました。これに対するパブリックコメントで寄せられた意見を踏まえ、委員会において再度検討を行った結果、今般、報告書がとりまとめられたものです。

(※)第一種特定化学物質:製造、輸入及び使用が原則禁止されている化学物質

2.報告書の骨子

  • TCPA及びそれを原料とする顔料ソルベントレッド135に含有される副生HCBの抑制・削減技術について工業技術的・経済的な観点からBATを評価。
  • その結果、副生HCBの含有量に関する「BATレベル」として、TCPAについては200ppm、ソルベントレッド135については10ppmを提案。

 なお、上述のとおり、副生する特定化学物質については従来からBATの観点に立って削減すべきとの考えに立っていましたが、その考えに基づき特定の化学物質について数量的な基準が示された例は今回が初めてです。

3.環境省における対応

 環境省としては、化審法を共管する厚生労働省及び経済産業省とともに、報告書で提案されたBATレベルを踏まえた副生HCBの低減について関係事業者の対応を求めていくこととしています。
 さらに、本件を含め、各種製品中に含有される有害化学物質への懸念が高まっていることから、製品中有害化学物質モニタリングの構築等の対応を進めていく予定です。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境保健企画管理課化学物質審査室
直通:03−5521−8253
 室長 森下 哲(内線6309)
 補佐 大井 通博(内線6324)
 担当 平塚 二朗(内線6329)