報道発表資料

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2006年09月29日
  • 自然環境

ツシマヤマネコの分散飼育について

ツシマヤマネコの保護増殖の取組の一環として、環境省は福岡市動物園と連携し、飼育下繁殖について取り組んできたところです。これまでに20頭が福岡市動物園で誕生し、飼育下繁殖事業は順調に進んでいると考えています。
 この度、飼育下個体群の危険分散等を目的として、新たに「井の頭自然文化園」(東京都)及び「よこはま動物園」(横浜市)に御協力いただき、両園にツシマヤマネコを2頭ずつ移動させ、飼育していただくことになりましたのでお知らせします。
 また、福岡市動物園から、昨年度及び今年度生まれた個体のうち3頭を対馬に里帰り(移送)させます。
 さらに、今年度の飼育下における繁殖は、飼育下個体群の遺伝的多様性を高める目的で、対馬で保護された2頭を福岡市動物園に移動させ、繁殖を試みます。

1.ツシマヤマネコとは

 ツシマヤマネコは、我が国では長崎県対馬にのみ生息し、かつては対馬島内全域にわたり広く分布していたが、生息環境の悪化等により、その生存が危機的な状況にある。
 平成6年に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称「種の保存法」)に基づく国内希少野生動植物種に指定され、平成7年に同法に基づく保護増殖事業計画(環境省及び農林水産省告示)を策定し、保護の取組を進めている。
 なお、平成14年に当省が公表したレッドデータブックでは、絶滅危惧IA類に分類されており、昨年9月に発表した調査結果によれば、現在野生下には80~110頭が生息していると推定されている。

2.飼育下繁殖の経緯

 平成5年に「ツシマヤマネコ人工繁殖基本計画策定調査」を実施、平成8年より野生個体の確保を開始し、5頭の個体を確保した。平成11年より福岡市動物園の御協力を得て飼育下繁殖事業を開始した。
 平成12年4月に初めて繁殖に成功し、その後も福岡市動物園関係者の多大な御努力により、これまで20頭が福岡市動物園で誕生している。
 現在、飼育下繁殖の為に捕獲した個体も含め福岡市動物園で17頭、対馬野生生物保護センターで8頭の、併せて25頭を飼育下個体群として飼養している。

3.分散飼育の目的

 飼育下の個体を、対馬野生生物保護センター及び福岡市動物園のみで飼育し続けた場合、感染症の発生、災害等により多くの飼育下の個体が失われるとともに、遺伝的多様性が失われてしまうおそれがある。このため、飼育個体を分散させ、危険の分散を図り、非常事態に備えることを目的としている。

4.分散飼育協力動物園及び分散飼育の内容

 環境省は分散飼育について、専門家等の意見を踏まえつつ、社団法人日本動物園水族館協会と連携して、動物園との調整を進め、この度、「井の頭自然文化園」及び「よこはま動物園」にツシマヤマネコの個体を移動させ、分散飼育を開始することとした。
 両園にはオスとメスの各1頭、計2頭をそれぞれ移動させる。なお、両園で飼育する個体は、人慣れを防止するため原則として非公開とする。

5.福岡市動物園からの対馬への里帰り(移送)及び今年度の繁殖計画

 飼育頭数が上限に達している福岡市動物園より、今年度生まれ及び昨年度生まれの個体から、遺伝的な系統を配慮して個体を選定し、合計3頭を対馬野生生物保護センターに里帰り(移送)させる。この個体は、人慣れを防止するため、原則として非公開となる。
 また、今年度は、対馬で保護され、野生復帰が困難であると判断される2頭を、対馬野生生物保護センターから福岡市動物園に移動させ、飼育下個体群の遺伝的多様性を高める目的で導入し、繁殖を試みるものとする。

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長 星野 一昭(6460) 
 補佐 堀上 勝 (6475)
 補佐 曽宮 和夫(6464)

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