平成18年4月18日
大気環境

平成17年度航空機騒音に関する評価方法検討業務報告書について

 環境省は、成田国際空港の暫定平行滑走路の供用後に実施された騒音測定の結果に見られる評価値(W値)の逆転現象等を改善するため、昨年度に引き続き(社)日本騒音制御工学会に依頼し、「航空機騒音に関する評価方法検討委員会」(委員長:橘秀樹 千葉工業大学教授)において調査・検討を行いました。このたび、その検討結果が別添のように報告されましたので、環境省はその結果を「平成17年度航空機騒音に関する評価方法検討業務報告書」として公表します。結果の骨子は以下の通りです。

  • 平成16年度の成田国際空港周辺の常時監視局において昨年度と同程度の逆転現象が確認されました。
    *逆転現象:2本の滑走路が存在するとき、2本の滑走路に離着陸する航空機全てを対象とした評価値が、どちらか1本の滑走路に離着陸する航空機のみを対象とした評価値よりも低くなる現象
  • 平成16年度における成田国際空港周辺での逆転の程度は、20の監視局(成田国際空港株式会社保有データ全33局)において週別評価値で最大0.1〜0.8dB(年平均では逆転しない)でした。
  • 本検討委員会が昨年度に提示した修正案とともに、時間帯補正等価騒音レベル(Lden)による評価によっても数値上の逆転が発生しないことを確認しました。

1.経緯

 成田国際空港周辺には、航空機騒音の実態を把握するために102局の航空機騒音常時監視局が設置されており、その測定結果は(財)成田空港周辺地域共生財団が一括して管理しています。平成14年4月の暫定平行滑走路供用後、航空機の発着回数が増加したにもかかわらず環境基準の評価値(W値)が減少する場合があることが測定結果から確認されており、現在の評価方式が地域住民の実感にそぐわないという指摘がされています。
 環境省は、こうした指摘を受けまして問題解決のための検討を(社)日本騒音制御工学会に委託し、同学会において平成16年度に学識経験者等からなる航空機騒音に関する評価方法検討委員会を設置しました。検討委員会では、成田国際空港周辺の航空機騒音の実態を把握するとともに、こうした問題が生じる原因を明らかにし、その改善方法についての検討が行われました。

2.内容

 環境省は、成田国際空港の暫定平行滑走路の供用後に実施された騒音測定の結果に見られる評価値(W値)の逆転現象等を改善するため、昨年度に引き続き(社)日本騒音制御工学会に依頼し、「航空機騒音に関する評価方法検討委員会」(委員長:橘秀樹 千葉工業大学教授)において調査・検討を行いました。平成17年度は、成田国際空港における逆転現象の実態把握を行うとともに、時間帯補正等価騒音レベル(Lden)による評価の物理的特性についての検討を行いました。

(1)

平成16年度の成田国際空港周辺の常時監視局において昨年度と同程度の逆転現象が確認されました。平成16年度における成田国際空港周辺での逆転の程度は、20の監視局(成田国際空港株式会社保有の監視局(33局))において週別評価値で最大0.1〜0.8dB(年平均では逆転はなし)でした。

(2)

大阪国際空港、福岡空港、富山空港、広島空港における航空機騒音の曝露状況の実態把握を行いました。

(3)

平成16年度の検討結果において、逆転現象は、ICAO(国際民間航空機関)の定義式を近似して環境基準式WECPNLを導出した際の、「騒音レベルのパワー平均が時間帯によらず同じ」という近似が暫定平行滑走路供用後の成田国際空港では成立しないため起こることがわかっています。平成17年度の検討において、時間帯補正等価騒音レベル(Lden)による評価方法で成田国際空港株式会社提供データを解析したところ、逆転現象は発生しないことが確認されました。

表 平成16年度成田国際空港周辺における逆転の状況について
発生局数※1 発生比率(%)※2 最大値(dB)※3
年間平均 環境基準式WECPNL 0 0 -
週別平均 環境基準式WECPNL 20 3.1 0.1〜0.8
平成16年度検討委員会修正案(WJP1,WJP2)※4 0 0 -
時間帯補正等価騒音レベル(Lden) 0 0 -
※1
成田国際空港株式会社保有の監視局(33局)のうち逆転が確認された局数
※2
「延べ局数(33局×359週)」に対する「延べ発生局数365」の割合
※3
数値は小数点第1位でまるめている
※4
WJP1とは、時間帯別(昼夕夜)に騒音のパワー平均を求め、時間帯加重付きでパワー合成する方法
WJP2とは、時間帯別(昼夕夜)に騒音のパワー平均を求め、夕方及び夜間の値に時間帯補正を加える方法

3.環境基準式WECPNLと時間帯補正等価騒音レベル(Lden)の相違点について

[1] 騒音レベルのとらえ方
環境基準式WECPNLでは、1日のすべてのピークレベルに基づきパワー平均しますが、Lden評価では一機毎のエネルギーで評価します。
[2] 時間帯の補正方法について
環境基準式WECPNLでは、夕方の機数を3倍、夜間の機数を10倍しますが、Lden評価では夕方の騒音に+5dB、夜間の騒音に+10dBの補正を加えます。
[3] 騒音の継続時間について
環境基準式WECPNLでは騒音の継続時間を一律に20秒にしますが、Lden評価では一機毎の騒音の継続時間を評価します。
[4] 測定評価技術について
環境基準式WECPNLは、ICAOの提案式を当時の測定評価技術を勘案して簡略化したものです。近年の測定機器の性能向上等により、Ldenでは騒音レベルがより正確に評価できるので、逆転が発生しません。


別添資料:平成17年度航空機騒音に関する評価方法検討業務報告書

添付資料

連絡先
環境省水・大気環境局大気環境課大気生活環境室
室長 内藤 克彦(内線6540)
 補佐 藤本 正典(内線6543)
 担当 齋藤、迫越(内線6546)