平成9年4月4日

平成8年の「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」施行状況について

○ 環境庁と通産省は、本日付で「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル条約国内対応法)」に基づき、平成8年1月から12月までの1年間において特定有害廃棄物等の輸出入の状況を発表した。
                       ( )内は平成7年の実績
我が国からの輸出について 我が国への輸入について
相手国への通告  6件
( 8 )
8,948トン
(1,794)
相手国からの通告 14件
(21)
10,660トン
(4,179)
輸出の承認  5件
( 3 )
3,730トン
( 474)
輸入の承認 13件
(19)
10,033トン
(2,889)
輸出移動書類の交付 52件
(26)
1,721トン
( 2,814)
輸入移動書類の交付 53件
(47)
8,722トン
(1,163)

○ 輸出相手国は、ベルギー、ドイツ、米国(以上OECD加盟国)、インドネシア及び韓国(当時OECD未加盟)となっている。いずれも銅、錫等の金属類等の回収・再生利用を目的とするものであり、最終処分を目的としたものはなかった。
○ 輸入相手国は、オーストリア、オーストラリア、カナダ、オランダ、米国(以上OECD加盟国)、フィリピン、香港、韓国(当時OECD未加盟)及びマレイシアとなっている。いずれも銅、銀等の金属類等の回収・再生利用を目的とするものであり、最終処分を目的としたものはなかった。
           

1.バーゼル条約の成立及び国内対応法の施行について
  有害廃棄物の越境移動やその処分に伴って生ずる環境汚染を防止することを目的とする「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(通称バーゼル条約)」は、1989年3月に採択され、1992年5月に国際的に発効した。また、経済協力開発機構(OECD)においても、1992年3月に「回収作業が行われる廃棄物の国境を越える移動の規制に関する理事会決定」が採択された。
 我が国は、1993年にバーゼル条約に加入するとともに、OECD理事会決定を同年12月に受諾し、これらが我が国に対して効力を持つこととなった1993年(平成5年)12月16日に本条約の国内対応法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(以下バーゼル条約国内対応法という)」を施行した。

2.平成8年(1996年:暦年)における特定有害廃棄物等の輸出の状況
(1) 輸出の一連の手続きの段階別に区分して輸出案件の処理状況を整理すると、以下のようになる。
  ア.輸出承認の申請を受け、環境庁から輸出先国に対する事前通告を行ったものは6件で、その輸出予定量は8,948トンであった。(平成7年は8件、1,794トン)
  イ.相手国からの輸入同意の回答を得て、通商産業省において輸出の承認を行ったものは5件(注2)で、総量は3,730トンであった。(平成7年は3件、474トン)
 なお、通告を行った案件で、輸出先国から輸入不同意又は環境保全上の条件付同意の回答を得たものはなかった。
  ウ.輸出の承認を得たもののうち、実際の輸出が計画され、通商産業省より輸出移動書類の交付を受けたものは52件(注1、注3)で、総量は1,721トンであった。(平成7年は26件、2,814トン)

(2) 輸出案件に係る特定有害廃棄物等の内容は別表のとおりである。これらはいずれも銅、錫等の金属類等の回収・再生利用を目的とするものであり、最終処分を目的としたものはなかった。

3.平成8年(1996年:暦年)における特定有害廃棄物等の輸入の状況
(1) 輸入の一連の手続きの段階別に区分して輸入案件の処理状況を整理すると、以下のようになる。
  ア.相手国からの我が国への輸出についての事前通告を受領したものは14件で、その輸入予定量は10,660トンであった。(平成7年は21件、4,179トン)
  イ.輸入者からの輸入承認の申請により通商産業省において輸入の承認を行い、環境庁から相手国に対し輸入同意の回答を行ったものは13件(注4)で、総量は10,033トンであった。(平成7年は19件、2,889トン)なお、通告を受けた案件は国内において適正に処理されるものと判断されたことから、相手国に対し輸入不同意又は環境保全上の条件付き同意の回答をしたものはなかった。
  ウ.輸入の承認を得たもののうち、特定有害廃棄物等が実際に輸入され、通商産業省において輸入移動書類を交付したものは53件(注1、注5)で、総量は8,722トンであった。(平成7年は47件、1,163トン)

(2) 輸入案件に係る特定有害廃棄物等の内容は別表のとおりである。いずれも銅、銀等の金属類等の回収・再生利用を目的とした輸入であり、最終処分を目的としたものはなかった。

4.条約事務局への報告
 バーゼル条約の締約国は、同条約第13条第3項(b)に基づき、輸出入された特定有害廃棄物等の量、分類、特性、相手国、処分方法等に係る前年の情報を毎年末までに条約事務局に報告することが義務付けられている。なお、この報告は外務省によって行われることとなっている。


注1:
一定期間の輸出入に関して一括して事前通告又は輸出入の承認がなされたものであって複数回に分けて輸出入される場合にあっては、毎回の個々の輸出入にあたってそれぞれ移動書類が交付されるため、通告及び輸出入承認の件数と移動書類の交付件数とは一致しない。
注2:
平成7年以前に事前通告を行ったもの4件を含む。
注3:
平成7年以前に輸出承認を得たもの29件を含む。
注4:
平成7年以前に事前通告を受領したもの2件を含む。
注5:
平成7年以前に輸入承認を得たもの34件を含む。

【参考】

1.特定有害廃棄物等とは
 「特定有害廃棄物等」とは、バーゼル条約国内対応法第2条に規定されているものをいう。具体的には、バーゼル条約附属書IVに掲げる処分作業を行うために輸出入されるものであって、
  {1} 条約附属書Iに掲げるものであり、かつ、条約附属書[3]に掲げる有害特性を有するもの
  {2} 条約附属書IIに掲げるもの
  {3} 条約第11条に規定される多国間協定(OECD理事会決定等)等により規制が必要とされるもの(OECD理事会決定の場合は、緑級、黄級、赤級の3つのリストのうち、黄級、赤級リストに記載されているもの)となっている。
 なお、「特定有害廃棄物等」には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律上の廃棄物に該当するもの(無価物)のほか、再生資源として利用される各種金属スクラップ等の有価物も含まれる。

2.特定有害廃棄物等の輸出の手続き
  特定有害廃棄物等の我が国からの輸出案件については、輸出者から通商産業大臣に対し輸出の申請がなされると、環境庁長官にその写しが送付される。環境庁長官は輸出先国及び通過国に対し事前通告を送付する。環境庁長官が、輸出先国等から輸入又は通過に同意する旨の回答を得るとともに、環境汚染を防止するための必要な措置が講じられていることを確認した上で(OECD加盟国に対する再生利用目的の輸出についてはこの確認は不要とされている)、通商産業大臣は輸出者に対し輸出の承認を行う。輸出の承認をしたものについて、通商産業大臣は1回の輸出ごとに輸出移動書類を交付する。

3.特定有害廃棄物等の輸入の手続き
 特定有害廃棄物等の我が国への輸入案件については、輸出国から環境庁に対し移動計画の事前通告があり、輸入者から通商産業大臣に対し輸入の申請がなされると、通商産業大臣は必要な審査を行い、輸入の承認を行う。その際、環境庁長官は、環境の汚染を防止するため必要があると認めるときは、通商産業大臣に対して必要な説明を求め、及び意見を言うことができる。また、環境庁長官は輸出国に対し、事前通告に対する同意の文書を送付する。通商産業大臣は、当該特定有害廃棄物等が実際に国内に輸入され、輸入国から携帯されてきた移動書類の提出を受けた際に、輸入移動書類を交付する。

4.バーゼル条約締約国会議の開催状況について
 バーゼル条約締約国会議は、第1回会合が1992年12月にピリアポリス(ウルグアイ)で、また、第2回会合が1994年3月、第3回会合が1995年9月にともにジュネーブ(スイス)で開催された。
 第3回会合においては、OECD諸国等から非OECD諸国等への有害廃棄物の越境移動を、最終処分目的のものについては直ちに禁止すること、リサイクル目的のものについては1997年末までに段階的に削減し、同日をもって禁止すること等を内容とする条約改正案をコンセンサス採択した。条約の円滑な実施のため、現在、条約技術作業部会において、規制対象廃棄物のリスト及び規制対象外廃棄物のリストの作成、廃棄物の有害特性等に関して検討が行われており、その結果は、本年10月、クアラルンプール(マレーシア)にて開催予定の第4回締約国会議において採択される予定である。


1. 平成8年における特定有害廃棄物等の輸出の状況

対象物 処分の目的 相手国 相手国への通告重量
(トン)
輸出承認の重量
(トン)
移動書類の交付 廃棄物
の分類
(Y番号)
廃棄物
の特性
(H番号)
OECD
リスト
重量(トン) 件数
ハンダ滓 錫の回収 ベルギー *300 300 260 7 31 11 黄級
AA030
含コバルトスクラップ コバルトの回収 ドイツ *100 100 42 6 42 3 黄級
AA070
含タングステンスクラップ タングステンの回収 ドイツ *1,000 1,000 363 11 42 3 黄級
AA070
含タンタルスクラップ タンタルの回収 ドイツ * 80 80 21 5 32 6.1, 12 黄級
AA070
使用済みニカド電池 ニッケル及びカドミウムの回収 韓国 2,250 2,250 1,035 23 26 11
鉛スクラップ 鉛の回収 インドネシア 4,000 31 11
廃溶剤 溶剤の再生利用 米国 48 41   黄級
AC220
鉛滓 鉛の回収 ベルギー 300 31 6.1 黄級
AA030
ハンダ滓 錫の回収 ベルギー 500 31 11 黄級
AA030
使用済みニカド電池 ニッケル及びカドミウムの回収 韓国 1,850 26 11
総量     8,948 3,730 1,721        
件数     6 5   52      


注)*の輸出案件は平成7年以前に通告がなされたものであるが、輸出承認及びそれに伴う移動書類の交付は平成8年中に行われたため、本表に掲載した。
  従って「相手国への通告」の総量及び件数の集計は、これらの輸出案件を含まない。

2. 平成8年における特定有害廃棄物等の輸入状況

対象物 処分の目的 相手国 相手国からの通告重量
(トン)
輸入承認の重量
(トン)
移動書類の交付 廃棄物
の分類
(Y番号)
廃棄物
の特性
(H番号)
OECD
リスト
重量
(トン)
件数
セレン砒素及びセレンテルル砒素合金 セレン、テルル及び砒素の回収 米国 * 16 * 16 9 1 24, 25, 28 6.1,11,12 黄級
AA090
アルコール製造用使用済み触媒 銅の回収 マレイシア *200 *200 29 2 21, 22 6.1,11,12
水酸化銅スラッジ 銅の回収 マレイシア *600 *600 223 2 24 6.1,11,12
セレン砒素及びセレンテルル砒素スクラップ セレン、テルル及び砒素の回収 米国 * 30 * 30 6 1 24, 25, 28 11 黄級
AA090
排水処理汚泥 銀の回収 マレイシア *100 *100 59 2 17, 33 6.1
セレンテルル及びセレン砒素スクラップ セレン、テルル及び砒素の回収 韓国 * 8 * 8 8 1 24, 25, 28 6.1
写真フィルムスクラップ 銀の回収 オランダ *500 *500 231 11     黄級
AD090
排水処理汚泥 銀の回収 マレイシア *100 *100 24 1 33 6.1
アルコール製造用使用済み触媒 銅の回収 マレイシア *480 *480 203 8 21, 22 6.1,11,12
排水処理汚泥 銀の回収 マレイシア *100 *100 11 1 31 6.1,11,12
廃蛍光体 蛍光体の再生利用 オーストリア * 10 * 10 6 3     黄級
AA070
排水処理汚泥 銀の回収 マレイシア *300 *300 165 2 22, 31 6.1,11,12
ガラスくず及びガラススラッジ 銅の回収 マレイシア *1,050 1,050 867 1 31 6.1,11,12
アルコール製造用使用済み触媒 銅の回収 フィリピン *350 350 173 6 21, 22 11,12
セレンテルルスクラップ セレン、テルルの回収 英国(香港) 13 13 25, 28 11
廃ヨード溶液 沃素の回収 フランス 16 16 16 1 42 黄級
AC210
排水処理汚泥 銀の回収 マレイシア 200 200 63 1 17, 31 12
排水処理汚泥 銀の回収 マレイシア 200 200 67 2 17, 31 12
セレン砒素及びセレンテルル砒素スクラップ セレン、テルル及び砒素の回収 米国 30 30 24, 25, 28   黄級
AA090
使用済み複写機感光ドラム アルミの回収 米国 4 4 4 1 16 11,12 未リスト物
写真フイルムスクラップ 銀の回収 オランダ 500 500 58 5     黄級
AD090
セレン砒素スクラップ セレン、砒素の回収 カナダ 15 24, 25 6.1 黄級
AA070
鉛滓 鉛の回収 オーストラリア 6,500 6,500 6,500 1 31 6.1,11,12 黄級
AA030
亜鉛滓 亜鉛の回収 フィリピン 2,000 23, 31 11
排水処理汚泥 銀の回収 マレイシア 90 90 17, 31 11,12
アルコール製造用使用済み触媒 銅の回収 マレイシア 480 480 21, 22 11,12
排水処理汚泥 銀の回収 マレイシア 600 600 22, 24 11,12
廃蛍光体 蛍光体の再生利用 オーストリア 12     黄級
AA070
総量     10,660 10,033 8,722        
件数     14 13   53      


注)*の輸入案件は平成7年以前に通告を受領し、又は輸入承認を得たものであるが、輸入承認又は輸入移動書類の交付は平成8年中に行われたため、本表に掲載した。

特定有害廃棄物等の分類(Y番号)について
 Y16: 写真用化学薬品及び現像液の製造、調合及び使用から生じる廃棄物
 Y17: 金属及びプラスチックの表面処理から生ずる廃棄物
 Y21: 六価クロム化合物を含有する廃棄物
 Y22: 銅化合物を含有する廃棄物
 Y23: 亜鉛化合物を含有する廃棄物
 Y24: 砒素、砒素化合物を含有する廃棄物
 Y25: セレン、セレン化合物を含有する廃棄物
 Y26: カドミウム、カドミウム化合物を含有する廃棄物
 Y28: テルル、テルル化合物を含有する廃棄物
 Y31: 鉛、鉛化合物を含有する廃棄物
 Y32: ふっ化カルシウムを除く無機ふっ素化合物を含有する廃棄物
 Y33: 無機シアン化合物を含有する廃棄物
 Y41: ハロゲン化された有機溶剤
 Y42: ハロゲン化された溶剤を除く有機溶剤を含有する廃棄物


特定有害廃棄物等の有害特性(H番号)について
 H  3: 引火性の液体
 H6.1: 毒性(急性)
 H 11: 毒性(慢性又は遅発性)
 H 12: 生態毒性


特定有害廃棄物等のOECDリスト番号等について
 AA030: 鉛又は鉛化合物を含む灰、残滓、スラグ、ドロス、スキミング、
        スケール、ダスト、粉、汚泥及びケーキ(以下「灰等」という)
 AA040: 銅又は銅化合物を含む灰等
 AA070: 金属を含む灰等
 AA090: 砒素又は砒素化合物を含む灰等
 AC210: 非ハロゲン化有機溶剤
 AC220: ハロゲン化有機溶剤
 AD090: 複写用又は写真用の化学品又は材料の製造、調合
        又は使用に伴い生ずるもの
 未リスト物: OECDリスト(赤級、黄級、緑級)の
        いずれにも掲げられていないものであって、
        バーゼル条約附属書IIIに掲げる有害特性を有するもの
        (赤級に掲げられている廃棄物と同様の扱いとなる)


連絡先
環境庁水質保全局企画課海洋環境・廃棄物対策室
室長:太田 進  (6620)
 補佐:高橋 康夫(6621)
 担当:神谷 洋一(6623)