報道発表資料

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2004年02月17日
  • 地球環境

気候変動政策に関する日米共同ワークショップの結果について

平成15年度環境省事業として、(財)地球環境戦略研究機関(IGES)は、米国未来資源研究所とともに、2月12日(木)に米国ワシントンDCにおいて、「気候変動政策に関する日米共同ワークショップ」を開催した。
 ワークショップには日米両国より60名を超える参加があり、米側からは環境保護庁(EPA)やシンクタンク、環境NGO、大学、産業界などから多様かつ影響力のある人々の参加が得られた。また、日米の気候変動政策や技術の役割、州や地方自治体における気候変動問題への取組などについて活発な意見交換が行われた。

1.開催日時・場所

開催日時: 平成16年2月12日(木)
開催場所: 米国ワシントンDC 未来資源研究所(Resources For the Future)会議室


2.実施主体

(財)地球環境戦略研究機関(IGES)、未来資源研究所(RFF)


3.参加者

  米側から環境保護庁(EPA)、ピューセンター、マサチューセッツ工科大学、環境防衛(Environmental Defense)など、日本側から環境省(清水地球温暖化対策課長他)、IGES(西岡気候政策プロジェクトリーダー他)、東京都、産業界など、日米両国から60名以上が参加


4.ワークショップの概要

セッション1:日米の国内政策 (司会:Dick Morgenstern氏(RFF))
 米国側から、William Pizer氏(RFF研究員)がブッシュ政権の気候変動政策の概要を説明し、エネルギー政策法1605(b)に基づく温室効果ガス排出量自主的登録制度が今年の夏にもとりまとめられる予定であるが、当初盛り込まれていた移転可能クレジットの発行の見込みが薄くなったことなどの説明があった。また、Denny Ellerman 氏(マサチューセッツ工科大学教授)からは、マッケイン=リバーマン法案が否決はされたものの僅差であったことは上院の気候政策に対する態度の変化を示すものであったこと、米国が国際的に重要な役割を果たすためには国内対策が先行する必要があることなどの説明があった。
  日本側からは、清水環境省地球温暖化対策課長が日本の気候変動政策の概要、新澤秀則氏(神戸商科大学教授)が排出量の現状や温暖化対策税、排出量取引の政策提案、増井俊彦氏(国立環境研究所)がAIMモデルによる温暖化対策税の分析について説明した。
  これらの発表に対し、日米の気候変動政策が自主的な取組を中心としている点について類似しているとの指摘があった。また、米側より日本における地球温暖化対策推進大綱の評価見直しプロセス及びそれに関連した国内排出量取引制度や温暖化対策税の議論に対して関心が寄せられた。

セッション2:技術政策 (司会:丁太庸氏(IGES))
 米国側からDina Kruger氏(米国環境保護庁)がCO2以外の温室効果ガスは、地球温暖化係数(GWP)が高く効果的な対策が実施可能であることを説明し、Dale Heydlauff 氏(American Electric Power副社長)は、電力会社である自社の対策として当面は天然ガスによるコンバインド・サイクル発電やコージェネレーションを進めていくこと、将来技術として炭素隔離技術に期待していることなどを説明した。
  日本側からは、笹之内雅幸氏(トヨタ自動車?環境部渉外グループ担当部長)が工場からの排出量の削減目標や自動車のコア技術としてハイブリッドを重要視していることなどを説明し、槌屋治紀氏(?システム技術研究所代表)は多くの温室効果ガス排出削減技術が存在しており、特に燃料電池は将来有望であることなどを説明した。
  これらの発表に対し、炭素隔離技術を対象とした法制度の必要性や、CO2以外の温室効果ガスがクレジットとして排出量取引の対象となることの可能性、燃料電池の廃棄コストなどについて意見交換が行われた。

セッション3 州、地方自治体、民間におけるイニシアティブ (司会:Ray Kopp氏 (RFF))
 米国側から、Jason Grumet氏(National Commission on Energy Policy)が各分野の専門家18人から構成される委員会を組織し、2005年に温室効果ガス排出対策の長期的な戦略等に関する報告書を発表する予定であることを説明し、Ned Helme氏(Center for Clean Air Policy)は、州レベルで気候変動問題に対する取組が活発化しており28州が排出量取引制度や再生可能エネルギー技術の導入に対する支援、自動車のCO2排出規制などの気候変動対策プランを策定していることなどを説明した。
  日本側からは、斉藤潔氏(日本電機工業会)が電気機器業界の取組として太陽光発電やHFCを含まない冷蔵庫の開発状況、製品のライフサイクルを通じた対策などについて、千葉稔子氏及び西田裕子氏(東京都環境局)が東京都の取組として地球温暖化と都市のヒートアイランド現象の両方に対応するために建築物評価制度などの様々なプログラムを実施中であることを説明した。
  質疑応答では、米国では企業が厳しい温室効果ガス排出対策を要求される州からそうでない州に移転することはないのかとの問いに対して、企業はこれまでも環境規制を理由に移転することはほとんどなく、雇用や教育、生活環境などを考慮して立地の判断がなされているとの回答があった。また、企業は州ごとに規制が異なることを嫌がる傾向があり、州の取組が先行して次に連邦政府レベルの制度が構築されるのはこれまでの米国の環境行政において繰り返されてきたことなどが指摘された。

セッション4 ディスカッション (司会:Ray Kopp 氏(RFF)、 西岡秀三氏(IGES))
 セッション1~3を踏まえたディスカッションでは、日米の気候変動政策の相互関係や短期的対策・長期的対策の関係について議論が集中した。特に、日米間のエネルギーコストの違いに留意する必要があること、米国内には気候変動政策に関して議会や州に前向きな動きがあること、マッケイン=リーバーマン法案のような国内制度を措置することにより米国が気候変動の分野で国際的な交渉を行うポジションが強化されること、今回のワークショップのような様々な関係者が参加する日米間の話し合いが重要であることなどが指摘された。

なお、ワークショップの資料(英語)は、未来資源研究所(RFF)のホームページ(www.rff.org/usjapanclimate)から入手することができます。

連絡先
環境省地球環境局地球温暖化対策課
課長   : 清水 康弘(内線6770)
 国際対策室
 室長   : 牧谷 邦昭(内線6772)
 課長補佐: 瀧口 博明(内線6773)
 担当   : 井上 直己(内線6775)