平成14年3月27日
水・土壌

有明海水質等状況補足調査(平成13年度冬季)の結果について

有明海におけるノリ不作等の問題に関連し、環境省では、従来から関係自治体において実施している水質モニタリング等を補足するため、昨年2月及び8月に有明海における水質等の状況をより的確に把握評価するための調査を行ったところである。
 それら調査結果の評価等を踏まえ、今年度冬季においても同様の調査を2月12・13日に実施し、その結果について3月26日に有明海水質等状況補足調査検討委員会を開催し、別添のとおり取りまとめた。
 なお、本結果については、3月27日午後1時30分から開催される農林水産省の第8回有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会において報告することとしている。

1.調査内容

 
 本年度冬季における有明海の水質、底質、底生生物等の状況を把握しようとするものであり、調査項目については、昨年2月及び8月の調査と同様の項目に、トリブチルスズ化合物等の化学物質を追加したものである(別紙参照)。
 
 

2.主な調査結果の要約

 (1) 水質等について
  [1]  DO(溶存酸素)は、昨年8月においては、上層でも湾奥部を中心に飽和濃度を下回る調査地点が多く、下層では湾奥部佐賀県側と諫早湾の中央部及び湾口部で貧酸素状態の調査地点が認められたが、今回は、昨年2月と同様、すべての調査地点で上下層とも飽和濃度を超えていた。
  [2]  無機態栄養塩(溶存性の窒素及び燐等)は、昨年2月には、ほとんどの調査地点で定量下限値未満であったが、今回は、それに比較すると定量可能な無機態栄養塩が測定された調査地点がいくつか見られた。
  [3]  クロロフィル−aは、昨年2月と同様、湾奥部で高く、赤潮の状態を呈していた(※植物プランクトンの細胞数は昨年2月よりも多く、優占種は、Asterionellaglacialis、Eucampiazodiacusなど一般の海域でも見られる種であり、昨年2月に優占種であった大型の珪藻プランクトン(Rhizosoleniaimbricata)はあまり見られなかった。)。
  [4]  底層水中のトリブチルスズ化合物及びトリフェニルスズ化合物については、8つの調査地点のうち湾奥部の2つの地点で微量(0.002μg/L(TBTO換算値))のトリブチルスズ化合物が検出された(過去の測定データと比較して問題となる値ではない。)が、それ以外の調査地点では検出されなかった。また、トリフェニルスズ化合物は、いずれの調査地点においても検出されなかった。
 
(2) 底質について
  [1]  底質は、過去2回の補足調査結果と比較して、ごく一部の項目を除き、ほぼ同様の結果(湾奥部及び諫早湾で中央粒径が小さく、強熱減量、COD及びTOC等で示される有機物も高かったが、硫化物については湾奥部で若干高い値が見られるに留まった。)であった。
  [2]  底質中の化学物質については、過去における他の調査海域のデータと比較して、同等又は低い値となっており、特に高い調査地点は見られなかった。
 
(3) 底生生物について
   底生生物(マクロベントス)は、湾央部付近の調査地点において、過去2回の補足調査結果と比較して単位面積当たりの個体数が多く、これらの地点では、節足動物の割合が高くなっていた。また、単位面積当たりの個体数が少ない調査地点もいくつか見られたが、かかる調査地点は過去2回の調査結果よりも少なかった。

 
 

3.評価と今後の対応

 
 植物プランクトンの細胞数が昨年2月と比較して多かったにもかかわらず、無機態栄養塩が昨年ほどには低下していなかったことについては、優占した植物プランクトンの種類、赤潮の発生・継続した時期・期間の影響がその要因として想定される。
 底生生物については、依然として個体数が少ない地点が見られるものの、過去2回の調査結果と比較していくつかの地点で個体数が増加していること、節足動物の割合が高い調査地点が見られたこと等、底質環境が昨年に比して良好であるとも受け取れ得る調査結果が得られた。ただし、これらの情報は、必ずしも有明海全体の底質環境が昨年に比して改善されたことを裏付けるものではない。
 なお、今回調査の対象とした化学物質については、当該物質による汚染及び貝類等への影響の可能性を示唆する調査結果とはなっていなかった。
 環境省としては、引き続き有明海の環境のモニタリングを継続して行い、関係省庁が共同で実施している有明海の総合調査(有明海海域環境調査)等及びそれらを踏まえた有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会による検討に貢献していくこととしたい。
 

有明海水質等状況補足調査検討委員会名簿

(五十音順)

氏名所属

 岡田 光正
 
 菊池 泰二
 
 木幡 邦男
 
 
 清水  誠
 
 須藤 隆一
 
 中西  弘

 広島大学大学院工学研究科教授
 
 九州ルーテル学院大学人文学部教授
 
 独立行政法人国立環境研究所
 海域環境管理研究チーム総合研究官
 
 東京大学名誉教授
 
 埼玉県環境科学国際センター総長
 
 山口大学名誉教授

添付資料

連絡先
環境省環境管理局水環境部水環境管理課閉鎖性海域対策室
室   長 柴垣 泰介(内線6660)
 室長補佐 魚谷 敏紀(内線6662)
 03-5521-8320(夜間直通)