報道発表資料

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2001年07月05日
  • 自然環境

日米アホウドリ行動追跡共同調査の実施状況について

環境省及び米国内務省魚類・野生生物局は、アホウドリの周年の生態を解明し、今後の保護対策に役立てるため、日米渡り鳥等保護条約に基づくアホウドリ行動追跡共同調査を実施している。本年5月に伊豆諸島の鳥島において、アホウドリ3羽に小型の発信機を装着したところであるが、今般、このうち1羽が米国アラスカ州アリューシャン列島に到達したことが確認されたため、これまでの追跡結果を発表する。
1.本調査の背景と意義
   アホウドリ(学名Diomedea albatrus)は、伊豆諸島の鳥島及び尖閣諸島(南小島)でのみ繁殖している大型の海洋性鳥類である。推定個体数は約1,300羽。繁殖期以外はほとんどを海洋上で過ごし、米国アラスカ州近海を含む中~北部太平洋を行動圏としていると考えられているが、鳥島を離れた後の詳しい行動様式については未解明である。なお、アホウドリは、環境省の作成したレッドリストでは、絶滅危惧II類として記載されており、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づく「国内希少野生動植物種」として指定されている。また、環境省は、鳥島において営巣環境の安定化、新たな繁殖地の形成を中心とした保護増殖事業を実施している。極めて広大な行動圏を持つアホウドリについては、国際的な協力の下で、ライフサイクル全体を解明し、適切な保護対策を検討していく必要がある。このため、平成12年5月に米国アンカレッジで開催された日米渡り鳥等保護条約会議において、人工衛星によるアホウドリの行動追跡や採餌海域における餌条件の調査等について、両国が協力して取り組むことが合意された。
 
2.鳥島における調査の内容
   2001年5月11日から19日に、環境省自然環境局、米国内務省魚類・野生生物局及び財団法人山階鳥類研究所の職員等10名から構成される日米合同調査団が、鳥島において、アホウドリに小型発信機を装着するための調査を実施した。
 5月13日に、ネットを用いてアホウドリ5羽を捕獲し、体長、体重等の計測を行った後、体重が4kg以上の3羽の背中に、テフロンテープをたすき状(ハーネス)にして発信機(トヨコム製、65グラム)を装着した。
 アホウドリに取りつけられた発信機からは1日おきに電波が発信され、人工衛星(NOAA)を経由して位置情報が地上に転送される。今回の調査では、(財)山階鳥類研究所においてデータを受け取り、地理情報システム(GIS)により地図化している。
 
3.アホウドリの行動追跡の結果(中間成果)
   6月下旬までに把握されたアホウドリの移動経路は別紙図のとおりである。発信機を装着した3羽は、それぞれの経路で移動しているが、三陸沖、根室沖など陸地に近い海上を経由して移動したという共通点が認められる。これまでにもアホウドリは日本近海を経由して北上することが知られていたが、この結果はこれを再確認している。
 
○個体の移動状況
[4497]  最も活発に移動しており、6月半ばから太平洋上を東に移動し、根室の東約2000kmの地点から約1300km北に向かい、7月1日までにアリューシャン列島に達した。
[4613]  千島列島沖で6月5日から電波の受信ができない状態にある。発信機の故障等の可能性はあるが、原因は不明である。
[7997]  最も移動距離が短いが、5月20日から1ヶ月間三陸沖に滞在したあと北上し、6月29日現在、根室の沖約100kmの地点に達している。
 
4.今後の展望
   今後は、衛星追跡調査を継続し移動経路の情報を蓄積するとともに、この情報を米国と共同で移動経路沿いの海域の環境情報とあわせて解析する。この解析結果をアホウドリの行動様式の解明に役立てるとともに、アホウドリ保護対策立案の基礎資料として活用を図る。
 なお、米国においては、アホウドリの保護増殖計画を策定するため、専門家から構成される検討委員会の設置作業を進めている。この委員会には、環境省の野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会の委員4名(東京大学大学教授 樋口広芳、北海道大学教授 小城春雄、山階鳥類研究所研究員 佐藤文雄、東邦大学助教授 長谷川博)が参画する予定であり、アホウドリの調査研究・保護に向け、さらに日米両国の連携強化を図っていくこととしている。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長:黒田大三郎(6460)
 補佐:鳥居敏男  (6462)
 担当:中島尚子  (6466)