平成26年10月10日
総合政策

(仮称)冷水峠風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)

 環境省は、10日、青森県で計画されている「(仮称)冷水峠風力発電事業計画段階環境配慮書」(株式会社ユーラスエナジーホールディングス)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、青森県むつ市及び下北郡東通村において、最大で総出力81,000kWの風力発電設備を設置するものである。
 環境大臣意見では、対象事業実施区域の設定に当たっては、水源のかん養や土砂の崩壊の防備を目的として指定されている保安林の尾根筋やその周辺について、ヒノキアスナロ等が優先する良好な森林が劣化する蓋然性が高いことから、冷水峠より北部の森林の改変を回避すること等を求めている。

1.背景
 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して意見を言うことができるとされている。
 今後、経済産業大臣から事業者である株式会社ユーラスエナジーホールディングスに対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要
 本事業は、青森県むつ市及び下北郡東通村において、最大で総出力81,000kWの風力発電設備を設置するものである。
 事業実施想定区域には、水源のかん養や土砂の崩壊の防備を目的として保安林に指定されているヒノキアスナロ群落等の重要かつ良好な自然環境のまとまりの場が広く含まれている。また、イヌワシ、クマタカ、オオタカ等の猛禽類等の重要な動植物の生息や重要な植物の生育が確認されている。本事業者による風力発電所が設置済み又は環境影響評価手続中である。

3.環境大臣意見の概要

(1) 対象事業実施区域の設定
 1)対象事業実施区域の設定に当たっては、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、事業実施想定区域からの絞り込みの検討経緯を明確にし、比較すること。

 2)保安林のうち、冷水峠より北部の森林は、ヒノキアスナロ等が優占する良好な林況を呈しており、尾根筋やその周辺の森林を伐開した場合、直接改変による森林環境の消失や気象害等により、森林が劣化する蓋然性が高いため、対象事業実施区域は、冷水峠より北部の森林の改変を回避して設定すること。
 さらに、事業実施により土砂や濁水の流入による水環境や水生生物等の動植物の生息・生育環境への影響が懸念されることから、河川の源流部の改変は避けること。

(2)各論
 1)鳥類について
 重要な鳥類への重大な環境影響を回避するため、重要な鳥類に関する調査及び予測を行い、専門家等からの助言を踏まえ、環境影響を評価し、反映すること。
 また、猛禽類の調査、予測及び評価に当たっては、「猛禽類保護の進め方(改訂版)」の考え方も踏まえて行うこと。

2)水生生物について
 沢筋等への土砂や濁水の流入に伴う重要な水生生物への影響が懸念される。このため、沢筋等から距離を確保するとともに、工事実施時の土工量を抑制し、かつ、土砂の流出等を最小限に抑えること等により、重要な水生生物への影響を回避又は極力低減すること。

3)植物について
 重要な植物種に関する調査及び予測を行い、専門家等からの助言を踏まえ、環境影響を評価し、反映すること。
 また、自然度の高い植生まとまりのある森林の分断を回避又は極力低減すること。

4)生態系について
 当該事業実施想定区域の尾根筋等において新たに森林を伐開した場合は、気象害等による森林の劣化する蓋然性が高い。このため、事業計画の検討に当たっては、冷水峠南部の区域において、既存林道や立木密度が低く平坦な部分を活用すること等により、新たな森林の伐開と大規模な地形改変を回避又は極力低減すること。
 なお、冷水峠南部の区域の尾根筋は、既に強風の影響等により森林の更新が阻害され疎林状態となっていることから、裸地化の防止及び森林の健全化に十分に配慮すること。

5)発生土について
 尾根筋に風力発電設備等を設置する計画であり、発生土による自然環境への影響が懸念される。このため、既存道路を活用する等、発生土の発生量を抑制すること。
 また、事業における土量収支の均衡に努め、残土については、場外処分地への搬出を基本とすること。

(3)その他
 風力発電設備等のうち本事業との累積的な環境影響が想定されるものについては、明らかになっている情報を踏まえ本事業との累積的な環境影響について予測及び評価をすること。

【参考】
○事業概要
・名  称:(仮称) 冷水峠風力発電事業
・事 業者:株式会社ユーラスエナジーホールディングス
・計画位置:青森県むつ市及び下北郡東通村(事業実施想定区域面積:約779ha)
・出  力:最大で総出力81,000kW

○環境影響評価に係る手続
・平成26年 8月 26日  経済産業大臣から環境大臣への意見照会
・平成26年 10月 10日  環境大臣意見の提出

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
(代表:03-3581-3351)
(直通:03-5521-8237)
室  長:神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審 査 官:田中 友之(内6236)