報道発表資料

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2013年06月17日
  • 地球環境

気候変動枠組条約第38回補助機関会合(SB38)および強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会第2回会合第2セッション(ADP2-2)について(結果概要)(お知らせ)

 6月3日~14日,ドイツ・ボンにおいて,国連気候変動枠組条約の下での「強化された 行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」第2回会合第2部及び2 つの補助機関会合が行われたところ,概要は以下のとおり。我が国から,外務・経済産業・ 環境・文部科学・農林水産・国土交通各省関係者が出席した。

 今回の会合では,3つの特別作業部会・補助機関会合が並行して開催された。ADP は,2011年末に南 アフリカ・ダーバンで開催された第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)での合意を受け,昨年5 月に設置されたもの。[1]全ての国に適用される2020年以降の新しい法的枠組み(以下「2020年枠組み」 という。)の2015年までの採択及び[2]2020年までの排出削減(緩和)の野心の向上について議論が行わ れている。
 我が国は,2020年枠組みは,緩和及び透明性について全ての国の参加を前提とした新たな法的枠組 みの創設が必要であり,それが2020年枠組みの中核であること,適応及び実施手段(資金,技術,キャ パシティ・ビルディング)についても重要な要素であるが,これらについては既存の組織や仕組みを基礎と した決定等が必要となること等の考えを主張した。
 また,交渉と並行して,二国間・多国間の会談等を行い,2020年枠組みのあり方やCOP19で目指すべ き成果等について我が国の考えを各国に伝えるとともに,各国の立場について情報収集を行った。 より詳しい会合の概要は以下のとおり。

1. 強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)

 ADPは,2011年末に南アフリカ・ダーバンで開催された第17 回気候変動枠組条約締約国会議 (COP17)での合意を受け,昨年5月に設置されたもの。[1]全ての国に適用される2020年以降の新しい法 的枠組み(以下「2020年枠組み」という。)の2015年までの採択及び[2]2020年までの排出削減(緩和)の 野心の向上について議論が行われている。

(1)
2020年枠組みのビジョン及び2020年までの緩和の野心向上の2 つのワークストリームの下,前回4 -5月に引き続き「ラウンドテーブル」形式で自由な意見交換が行われた。「ワークショップ」は,2020年枠 組みのビジョンについて「2015年合意を通じた適応の強化」,2020年までの緩和の野心向上について「再 生可能エネルギー,エネルギー効率,CCS(二酸化炭素回収・貯留)の強化を含むエネルギー転換」をテ ーマに開催され,有識者や国際機関からのプレゼンテーションを受けて,各国による意見交換が行われ た。
(2)
2020年枠組みのビジョンのワークストリームでは,2020年枠組みのデザイン・構造や含まれるべき要 素,全ての国への適用(applicable to all),各国の事情(national circumstances),共通だが差異ある責任 (CBDR)や衡平性といった条約の原則をどのように2020年枠組みに反映させていくかについて意見交換が行われた。特に,各国の約束(コミットメント)を事前に提出し検証(コンサルテーション)を行うとの提案 を基にしつつ,新たな削減目標の形式や期間,約束の提出のタイミング,緩和の野心を向上させるために 効果的な事前コンサルテーションのあり方等について,先進国を中心に意見交換が行われた。
(3)
2020年までの緩和の野心向上のワークストリームでは,削減ポテンシャルの高い分野に関する取組 や様々な国際協力イニシアティブについて,国際機関や有識者の発表を基に議論が行われた。今回会合 では,小島嶼国連合(AOSIS)が提案した再生可能エネルギー・エネルギー効率・CCS(二酸化炭素回収・ 貯留)の強化に関する作業,気候変動分野における投資の促進等に焦点が当てられた。
(4)
2つのワークストリームについて,詳細は先進国,新興国,開発途上国などのグループごとに考えに 違いがあり,とりわけ新興国及び開発途上国は,緩和・適応・資金・技術の4分野が2020年枠組みの中 核であり,これらの要素をバランス良く扱うべきであること,条約の原則や歴史的責任に基づき先進国が 排出削減行動をリードすべきであること,開発途上国の更なる取組のためには条約の規定に基づく実施 手段の供与が不可欠であること等の主張が繰り返された。
(5)
我が国は,[1]2020年枠組みは,緩和及び透明性について全ての国の参加を前提とした新たな法的 枠組みの創設が必要であり,それが2020年枠組みの中核であること,[2]全ての国の参加のためには,国 際的に合意されたルールの下で各国が定める約束を基礎としつつ,緩和野心を向上させていくための透 明性ある事前及び事後の検証の仕組みが不可欠であること,[3]特に,事前の約束の検証のみならず,実 施状況の点検を透明性ある形で実施していくことが不可欠であり,既存の測定・報告・検証(MRV)の仕組 みの実施の経験等を踏まえて,各国の野心向上を促す促進的な事後検証の仕組みを構築すべきである こと,[4]適応及び実施手段(資金,技術,キャパシティ・ビルディング)についても重要な要素であるが,こ れらについては既存の組織や仕組みを基礎とした決定等が必要となること,[5]緩和の野心向上について, AOSIS提案の再生可能エネルギーやエネルギー効率の向上に焦点を当てることは重要であること,[6] 国・地方・地域・民間等の様々なレベルのUNFCCC内外のあらゆる手段を総合的に活用していくべきこと, [7]国際協力イニシアティブについて有用な取組を特定して削減ポテンシャルや実際の効果の把握に努め るべきであること,等の考えを主張した。
(6)
今回の会合は閉会手続を取らずに中断され,次回11月のCOP19(於:ポーランド,ワルシャワ)で第2回会合第3部が再開されることとなった。今回の会合を踏まえて今後の議論の進め方をまとめた結論文 書が採択された。今回のラウンドテーブル及びワークショップの結果は共同議長の責任で取りまとめられ, 後日公表される予定。
(7)
今回会合をもってADP共同議長が交代し,附属書 I 国からルンゲ=メッツガー(Mr. Artur Runge-Metzger)欧州委員会気候行動総局A 局長(国際・気候戦略担当),非附属書 I 国からクマルシン (Mr. Kishan Kumarsingh)トリニダード・トバゴ環境・水資源省多国間環境協定部長の2名が,本年後半か ら来年のCOP20終了までADP 共同議長を務めることが決定した。

2.補助機関会合(SB)

(1)
年に2回開催される,実施に関する補助機関(SBI)及び科学上及び技術上の助言に関する補助機関 (SBSTA)の会合が行われた。
(2)
SBIは,6月3日(月)の開会全体会合冒頭に,ロシア・ウクライナ・ベラルーシが「条約及び京都議定 書の締約国会合における意思決定に関する法的・手続的事項の方法論」を議題に盛り込みたいと強硬に 主張し,これに新興国及び開発途上国等が反対した結果,議題の採択ができなかった。その後様々な形 で協議を続けたが,締約国間の対立状況が打開されず,今回は正式な議論を行う機会がないまま会合期 間が終了した。その間,適応,ロス&ダメージ,資金,事務局予算等の一部の議題については,関係国間 で非公式な意見交換が行われた。我が国を含む各国からは閉会全体会合等の場で,議題が採択できず に重要な議題の議論ができなかったことに対して遺憾の意が表明され,UNFCCCプロセスへの信頼を維 持するためにも,COP19で同様の事態が起きないように解決策を見出す必要性が述べられた。
(3)
SBSTA ではこうした混乱はなく,適応に関するナイロビ作業計画,REDD+,技術,対応措置,農業,国 別報告書やインベントリーに関する方法論,京都議定書下のメカニズムに関する事項,市場メカニズム, 先進国の2020年目標に関する理解促進等に関する議論を行い,合意を得られた議題について結論文書 がまとめられた。

3.我が国の立場に関する説明等

(1)
二国間・多国間の会談
会合期間中,米国,豪州,ニュージーランド,EU,英国,ドイツ,スイス,ポーランド,オランダ,インド, 中国,メキシコ,小島嶼国,東アジア諸国,アフリカ諸国,との二国間会談等を行い,今後のADP プロセス の進め方やCOP19 で目指すべき成果,我が国が進める二国間オフセット・クレジット制度等について意見 交換を行った。
(2)
ステークホルダーとの対話
会合期間中,日本のNGO及び国際NGOと2回意見交換を行った。
(3)
プレスへの説明
会合期間中,邦人記者に対するブリーフを行い,交渉の状況や我が国の立場について説明した。

(了)

連絡先
環境省地球環境局国際地球温暖化対策室
直通:03-5521-8330
代表:03-3581-3351
室長:新田 晃(内線6772)
担当:東 実希(内線6789)