平成24年9月21日
地球環境

「低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)」第4回年次会合の開催結果について(お知らせ)

 「低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet:International Research Network for Low-Carbon Societies)」の第4回年次会合が9月17−18日に英国のオックスフォードにおいて開催されました。
 本会合には、14カ国4国際機関から合計71名が出席しました。我が国からは、LCS-RNet政府窓口である環境省、日本国代表研究機関である(独)国立環境研究所、(公財)地球環境戦略研究機関(LCS-RNet事務局)、また、(独)国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)、在英国日本国大使館が参加しました。本会合では、エネルギーシステムの転換、低炭素社会へ向けた政策と実装、政策形成における科学の役割等が取り上げられ、また、途上国の低炭素化に向けた取り組みが紹介されました。さらに、LCS-RNetの今後の在り方について、意見を聴取していきたいとの意向が示されました。
 今回の成果は、気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)のサイドイベントや、来年度のG8環境大臣会合にて発表・報告される予定です。また、上記のほかにも低炭素に関連した様々な会合、機会に向け積極的に発信されます。

1.LCS-RNetの概要

(1)経緯

 LCS-RNetは、2008年5月のG8環境大臣会合(神戸:5月24‐26日)において我が国の提案により設立が合意されたものである。それぞれ自国の低炭素社会を実現するための研究を行っている、各国を代表する研究機関(注1)により2009年4月に正式に立ち上げられ、同月に開催されたG8環境大臣会合において、今後LCS-RNetの活動成果をG8環境大臣会合に定期的に報告していくよう求められた。2009年10月には第1回年次会合がイタリアのボローニャにて、2010年9月には第2回年次会合がドイツのベルリンにて、2011年10月には第3回年次会合がフランスのパリで開催された。

 注1:現時点での参加国・機関は、我が国(国立環境研究所(NIES)、地球環境戦略研究機関(IGES)の2機関)のほか、フランス(環境・開発国際研究所(CIRED)ほか3機関)、イタリア(新技術・エネルギー環境庁(ENEA)ほか1機関)、韓国(国立環境研究院(NIER))、英国(英国エネルギー研究センター(UKERC))、ドイツ(ヴッパタール気候・環境・エネルギー研究所(WI))、インド(インド経営研究大学アーメダバード校(IIMA)ほか5機関)の7カ国からの16研究機関である。

(2)目的

[1]
G8や気候変動枠組条約締約国会議などの気候政策の意思決定プロセスへの科学的知見の提供
[2]
低炭素社会研究の推進及び様々な研究に関する情報交換
[3]
政策決定者やNGO、市民らと研究者の対話の推進

2.第4回年次会合概要

共催:
英国エネルギー研究センター
日程:
平成24年9月17日(月)−18日(火)
開催場所:
オックスフォード(英国)

(1)プログラム概要

2012年9月17日(月
午前:
開会式
本会合1:エネルギーシステムの転換
午後:
分科会1-1:エネルギー共有の脱炭素化
分科会1-2:エネルギー需要の減少
本会合2:科学と政策の相互交流と低炭素に向けた転換
LCS-RNetのこれから
2012年9月18日(火
午前:
基調講演
本会合3:国際協力とファイナンス
分科会2-1:地域協力・アジアにおけるケーススタディ
分科会2-2:全球的なアプローチ
午後:
持続可能な開発の梃子としての低炭素転換
最終討論

(2)主な成果

  • 従来のエネルギー政策ではエネルギーの安全保障が注目されてきたが、最近の傾向と して、節エネ、省エネが各国で重要度を占めてきている。こうしたなか、日本を含む先進国における節電の取り組みが紹介され、各国での取り組み事例から学ぶことの重要性が共有された。特に日本の「節電」について、いわば昨年の危機によって惹起された節電の取り組みが、今もリバウンドすることなく継続していることが注目された。
  • 低炭素社会への転換を進めるためには、科学が政策に組み込まれていくことが欠かせないが、科学と政策をどのように結び付けていくかは各国様々である。日本の研究機関から、福島での事故を巡る科学と政策との間の「不信感」について発表が行われた。この発表では、こうした関係が温暖化の議論にどのように影響したのかについて、各国から関心が寄せられた。
  • 全球的、また地域的な低炭素(低排出)発展を取り扱う類似のネットワークやイニシアティブが複数存在する中で、本ネットワークは低炭素社会に関する研究に特化している点が特徴的である。今後のネットワークのあり方として、政策担当者との連携をさらに強化するための工夫をすべきであること、また、こうした類似のネットワークやイニシアティブとの連携を図ることで、本ネットワークの特徴である知識の蓄積をいっそう深めていくことが重要との指摘があった。
  • 全球的な気候の安定化のためには、先進国のみならず新興経済国や途上国での取り組みが不可欠である。我が国は今までにアジアの途上国における低炭素社会に向けたリープフロッグ型発展を支援する取り組みを支援してきており、本会合においては、アジアの専門家からそれぞれの国での取り組みが紹介された。また、先進国から途上国に対する支援の在り方について、一貫性のある調和した支援が必要であることは論を待たないが、「支援」の一環として、知識や知恵の共有といった形の協力が行なわれていること、また、南々協力を含む多国間での実施が活発化していることが紹介された。

(3)日本の貢献

 西岡秀三LCS-RNet事務局長(IGES研究顧問)が冒頭挨拶を実施した。森秀行IGES所長が「行動様式の変化−福島後の日本の節電の経験」について、西岡事務局長が「福島後の新しいエネルギー計画の決定過程、コストの見直し、シナリオ設定、経済評価」について、須藤智徳JICA連携協力調査員が「アフリカにおける気候変動と発展」について発表した。
 また「低炭素社会のこれから」のセッションで、辻原浩環境省研究調査室長と西岡事務局長が議論の導入を行った。さらに、甲斐沼美紀子NIESフェローが「エネルギー需要の減少」及び「地域協力・アジアにおけるケーススタディ」セッションで議長を務めた。

3.今後の予定

 本会合において辻原浩環境省研究調査室長より、来年のLCS-RNet第5回年次会合を、低炭素アジア研究ネットワーク(注2)の第2回年次会合と共に、日本に招致したいとの提案が行われ、この提案が会議参加者に歓迎された。

注2:低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)は、2011年10月、ASEAN+3環境大臣会合での我が国の提案に基づき本年4月の東アジア低炭素成長パートナーシップ対話会合のサイドイベントで立ち上げられた。同ネットワークの事務局は、暫定的にIGESにおかれている。

連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
直通:03-5521-8247
代表:03-3581-3351
 室長:辻原 浩   (内線 6730)
 補佐:森 芳友   (内線 6731)
 担当:稲子谷 昂子(内線 6733)