報道発表資料

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2000年07月19日

「地球環境問題をめぐる消費者の意識と行動が企業戦略に及ぼす影響(企業編)」調査概要について

環境庁国立環境研究所では、地球環境研究総合推進費の研究として実施された「地球環境問題をめぐる消費者の意識と行動が企業戦略に及ぼす影響に関する国際比較調査」の一環として、(株)住友生命総合研究所に委託して、日本において消費者の行動や態度が企業行動にどのように影響をしているのかを分析するために、平成11年度に日本企業を対象とした調査(以下、「平成11年度企業調査」)を実施した。調査内容は、企業の環境問題に対する認識とその変化、環境行動の現状、企業の環境行動における消費者の位置づけ、情報交換である。

≪報告書の要点≫

1.調査の目的
 本課題では、地球環境への負荷の低減を第一目的に、どのような方向に社会システムが進んでいくべきかをテーマとし、モノやサービスを生み出すことがそのおもな任務である企業と、それによって生活を維持する消費者とのコミュニケーションに注目して調査・分析を行っている。本年度はその一環として企業を対象とした調査をおこなった。調査内容は、企業の環境問題に対する認識とその変化、環境行動の現状、企業の環境行動における消費者の位置づけ、企業の環境リテラシー度である。
 
2.調査結果
a)高まる環境対策実施の評価
 この3年間で、環境分野への対応が企業活動に与える影響を肯定的に評価する企業の割合が高くなった。「ビジネスとして将来性があり有望な分野」という回答がもっとも高く、平成8年度調査と比べて全体で1割近く増加した。これに対し、「コストが増大し企業活動を抑制する」という意見は1割以上減少した。
 
b)業種別の環境対策-企業規模別対応格差の存在
 いずれの業種においても、規模別、上場の有無で回答分布に差がでた。製造業においては、上場大企業は環境技術、設計から工程の管理を含めて抜本的な対策に着手している。建設業では、「建設廃材の削減・リサイクル」「省エネ・省資源化施工」が多かった。運輸業では、「アイドリング・ストップなどの環境負荷が小さい運転方法の推進」「環境負荷が小さい輸送機材を使用する」「環境負荷が小さい燃料を使用する」の順に多かった。金融・保険業に対して実際に行っている環境配慮を尋ねたところ、「投資・融資時の審査に環境リスクを考慮する」「環境問題に関する相談・情報の提供」が多かったが、「特にない」割合が46.9%であり、他の業種に比べると格段に高い。
 
c)環境に関する消費者の期待と企業の認識・対応
 製造業および小売業について、消費者が期待する環境行動(平成10年度消費者調査結果)との比較をしたところ、製造業では「廃棄された製品を責任を持って回収・再利用する」「修理体制を整備する」や「製品の消費エネルギーや環境負荷を分かりやすく表示する」といった項目では、消費者の企業への期待は大きいにも関わらず企業の認識は大きく不足し、対応もされていない。また、小売業についても、小売業は一般の消費者に日常的に接する機会が多い業界であるにも関わらず消費者のニーズへ充分には対応しきれていない姿が浮かび上がった。
 
d)環境に関する情報交換の状況とその内容
 取引企業、消費者、業界団体などとの環境に関する情報交換について尋ねたところ、実施していない旨の回答がもっとも多かった。実施している場合の内容について、平成8年度調査と比較すると、ISO14001認証についての情報が圧倒的に増えており、関心の高まりを反映した。
 なお、本研究は、加藤三郎(株)住友生命総合研究所客員主任研究員(環境文明研究所長)を座長とする研究グループにおいて検討を行いながら、国立環境研究所担当者と(株)住友生命総合研究所が中心となって実施・分析を行った。研究グループに参加していただいた諸先生方、調査に答えてくださった企業の方々、調査研究を担当していただいた(株)住友生命総合研究所のスタッフの方々に深く感謝する次第である。

≪報告書の入手等の問い合わせ先≫

環境庁国立環境研究所 社会環境システム部 青柳みどり

TEL0298-50-2392 FAX0298-50-2572
e-mail:aoyagi@nies.go.jp

添付資料

連絡先
環境庁国立環境研究所主任研究企画官        :高木 宏明
(担当) 社会環境システム部 :青柳みどり
 (TEL 0298-50-2392)