報道発表資料

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2011年09月27日
  • 自然環境

平成23年度野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会の開催結果について(お知らせ)

 環境省では、9月27日(火)に、「平成23年度野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会」を開催し、アホウドリ保護増殖事業の実施結果報告と今後の計画についての検討を行いました。
 この中で、アホウドリの最大の繁殖地である伊豆諸島鳥島において環境省が実施したモニタリング事業(今年2~3月)により、当年生まれのヒナが昨年と同数の328羽確認されたことを報告しました。これにより、鳥島の個体群は全体でおよそ2,750羽まで増えたと推定されます。
 環境省が米国内務省魚類野生生物局との協力により平成13年度から実施している日米共同衛星追跡事業では、鳥島のヒナ及び小笠原諸島聟(むこ)島(じま)で人工飼育されたヒナに衛星発信器を装着して行動追跡を行っており、長いものは平成21年5月に装着し、約27ヶ月後の平成23年8月末現在までの移動経路が把握できています。
 山階鳥類研究所が環境省と米国内務省魚類野生生物局との協力により平成19年度から実施している聟島でのアホウドリ新繁殖地形成事業については、平成20・21年に鳥島から聟島へ移送し、聟島を巣立ったヒナ25羽のうちの7羽が、初めて聟島へ帰還した(23年2~4月)ことが報告されました。事業開始5年目となる平成24年の繁殖期(2月頃)には、今年と同数の15羽のヒナを移送して、巣立ちまで飼育することとなりました。

1 環境省野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会検討員

小城 春雄
北海道大学 名誉教授
尾崎 清明
(財)山階鳥類研究所副所長
長谷川 博
東邦大学理学部 教授
樋口 広芳
東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 (五十音順 敬称略)

2 野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会での報告及び検討事項

1.鳥島での保護増殖事業について

[1]平成22年度の実施結果
平成23年2月に行った環境省の調査により、今年生まれたヒナは、鳥島の燕崎(元々の繁殖地)で271羽、初寝崎(新しい繁殖地)で56羽、その他の地点で1羽の計328羽がカウントされ、昨年と同数であった。(※このうち燕崎のヒナ15羽を2月8日に小笠原聟島へ移送した。)
分科会検討員の長谷川東邦大学教授により、アホウドリの鳥島個体群は約2,750羽と推定されている。(平成5年の保護増殖事業開始当時は約600羽)
燕崎繁殖地への土砂流入対策として、平成23年5月に崖下直下における流路変更工事を実施した。(手作業による尾根の掘削、斜面の盛り土と土のう設置)(写真1参照)
[2]今年度(平成23年度)の実施計画
23年度も2~3月(平成24年)にモニタリングを行う。なお、初寝崎での繁殖数が順調に増加していることから、次年度以降のモニタリング内容を簡略化する。

図1:鳥島における2-3月期の確認ヒナ数の推移


写真1:流路変更工事実施箇所全景(平成23年5月実施後)

白く見える部分は土のうであり、それらを設置して流路を変更した。

2.日米共同衛星追跡事業(平成13年度から実施中)

[1]平成21~23年度の実施結果
ア.平成21,22年巣立ちヒナの追跡結果
平成21年5月中旬に、鳥島及び聟島の巣立ち前のアホウドリのヒナに、それぞれ7羽(日本2羽、米国5羽))の計14羽に発信器を装着した。このうち聟島の2羽(ともに日本装着の発信器)に関しては、平成23年8月末現在も追跡を継続中であり、約27ヶ月間にわたって、人工衛星による行動追跡に成功している。(図1参照)
平成22年5月中旬には、鳥島及び聟島の巣立ち前のアホウドリのヒナに、それぞれ6羽(日本2羽、米国4羽))の計12羽に発信器を装着した。このうち鳥島2羽、聟島の1羽(ともに日本装着の発信器)に関しては、平成23年8月末現在も追跡を継続中である。(図2参照)
イ.平成23年巣立ちヒナの追跡結果
平成23年5月中旬に、鳥島及び聟島の巣立ち前のアホウドリのヒナに、それぞれ7羽(日本2羽、米国5羽)の計12羽に発信機を装着した。
平成23年8月までに聟島の3羽(2羽は米国、1羽は日本装着の発信器)が発信を終了したが、その他の鳥島の7羽、聟島の4羽については、平成23年8月末現在も追跡を継続中である。(図3参照)
平成23年5月中旬には、鳥島及び聟島の巣立ち前のヒナ(各7羽、うちハーネス法各2羽)に発信器を装着し、現在(平成23年8月末)11個体で継続追跡中である。
鳥島と聟島の雛の間には巣立ち後の最初の飛翔方向について違いが見られたが、夏季以降の行動については、顕著な違いは見られなかった。
[2]今後の実施計画
平成21~23年度に送信機を装着した個体について、電波受信が途絶えるまで引き続きデータを受信し、今後、衛星追跡結果を解析する。
平成24年度も、鳥島・聟島の巣立ちヒナを対象に、発信器を取り付けて、人工衛星による行動追跡を実施する。

図1:平成21年鳥島巣立ち個体の位置データ(H21.5.~H23.2.)


図2:平成22年聟島巣立ちヒナの位置データ(H.22.5.11.~H.23.3.26)


図3:平成23年巣立ちヒナの追跡結果(H23.8.8.までの結果)

3.聟島における新繁殖地形成事業(平成19年度から実施中)

[1]今繁殖期(平成23年2~5月)の実施結果報告

ア.ヒナ移送と人工飼育
<移送>
2月8日に鳥島から聟島までヒナ15羽をヘリコプターで移送。
捕獲から放鳥までの時間は約7.5時間だった(ヘリによる移送時間は1.5時間)。
ヒナの性比は雄8羽、雌7羽。
移送中に衰弱したヒナはなく、放鳥時にも健康状態に異常のあるヒナはなかった。
<飼育>
聟島の飼育ヒナの体重成長は野生のヒナのそれと大きく外れることなく推移した。
5月1日に1羽が消失したが、残り14羽のヒナが5月18~29日の間に巣立った。
(平成20年からの累計55羽(1羽不明)※が巣立ち)
※55羽の内訳:
平成20年は10羽、21~23年は15羽づつ 4年間の合計は55羽
イ.デコイ・音声装置の設置
平成22年11月にデコイ・音声装置を設置し、翌年5月末まで稼働させた後撤去した(毎年同時期に設置及び撤去)。
ウ.移送ヒナの帰還の確認
本事業で聟島を巣立ったヒナが初めて聟島へ帰還した(平成23年2月10日に初確認、その後計7羽が帰還した。(表1参照))。
帰還確認日個体番号性別年齢移送年備考
2月10日 Y01 3歳 平成20年  
2月25日 Y04 3歳 平成20年 鳥島でも帰還確認
3月12日 Y03 3歳 平成20年  
3月17日 Y06 3歳 平成20年  
3月26日 Y24 2歳 平成21年  
4月 1日 Y07 3歳 平成20年  
Y10 3歳 平成20年  

表1:今繁殖期に確認された移送ヒナの帰還状況

[2]次期繁殖期(平成24年2~5月)の実施計画

移送するヒナは今繁殖期(平成23年2~5月)と同様、35日齢(移送予定日は平成24年2月5日~10日)、ヒナ数は15羽(利用するヘリに1度に載せられる最大数)とする。
飼育方法は基本的に今繁殖期と同様とする。ただし、アホウドリの飛来(帰還)数の増加が予測されることから、帰還の支障とならないよう、ヒナの飼育地を現在の場所から北側に50~100mほど移動する。
デコイ・音声装置はこれまで同様平成23年11月~平成24年5月まで設置する。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
(代表:03-3581-3351)
(直通:03-5521-8283)
課長:亀澤 玲治(内線:6460)
課長補佐:堀内 洋(内線:6475)
専門官:大林 圭司(内線:6469)
係長:浪花 伸和(内線:6469)
係長:柳谷 牧子(内線:6468)

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