報道発表資料

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2010年12月28日
  • 保健対策

「平成21年度化学物質環境実態調査結果(概要)」について(お知らせ)

 環境省では、昭和49年度より一般環境中における化学物質の残留状況を継続的に把握することを目的に化学物質環境実態調査(化学物質エコ調査)を実施し、その調査結果を各種化学物質対策に活用していますが、今般、「平成21年度化学物質環境実態調査結果(概要)」がまとまりましたので公表します。調査結果の詳細については、今後「平成22年度版 化学物質と環境」としてとりまとめ、公表する予定です。

1. 経緯

 昭和49年度に、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という。)制定時の附帯決議を踏まえ、一般環境中の既存化学物質の残留状況の把握を目的として「化学物質環境調査」が開始された。昭和54年度からは、「プライオリティリスト」(優先的に調査に取り組む化学物質の一覧)に基づく「化学物質環境安全性総点検調査」の枠組みが確立され、化学物質環境調査はその一部に組み込まれたほか、関連調査として生物モニタリング、非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査、水質・底質モニタリング、指定化学物質等検討調査等が拡充されてきたところである。
 一方、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「化管法」という。)の施行、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(以下「POPs条約」という。)の発効等、環境中の化学物質に係る問題を巡る状況の変化、今日的な政策課題へのより迅速かつ適切な対応等のため、「プライオリティリスト」方式の調査について抜本的な見直しが行われた。
 見直しの結果、調査の結果が環境中の化学物質施策により有効活用されるよう、各担当部署からの要望物質を中心に調査対象物質を選定する方式に変更され、現在は、「初期環境調査」、「詳細環境調査」及び「モニタリング調査」の調査体系で実施している。

2. 調査の進め方

(1)調査対象物質の選定

 調査対象物質については、各担当部署から調査要望があったものについて、平成21年3月17日に開催された中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会(第14回)等における評価等を経て選定された。

(2)調査内容

ア.初期環境調査

 化管法における指定化学物質の指定について検討が必要とされる物質、社会的要因から調査が必要とされる物質等の環境残留状況を把握する目的で調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会議」(平成22年6月30日、7月21日及び8月18日に開催)及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会議」(平成22年10月28日に開催)においてデータの精査、解析等が行われた。
 平成21年度は、2-アミノピリジン等10物質(群)を調査対象とした。

イ. 詳細環境調査

 化審法における特定化学物質及び監視化学物質、環境リスク初期評価を実施すべき物質等の環境残留状況を把握する目的で調査を行い、初期環境調査と同様、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会議」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会議」においてデータの精査、解析等が行われた。
 平成21年度は、オクタクロロスチレン等17物質(群)を調査対象とした。

ウ. モニタリング調査

 POPs条約の対象物質及びその候補となる可能性のある物質並びに化審法の特定化学物質及び監視化学物質等のうち、環境残留性が高く環境残留実態の推移の把握が必要な物質を経年的に調査する目的で行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会議」及び「モニタリング調査の結果に関する解析検討会議」(平成22年11月17日に開催)においてデータの精査、解析等が行われた。
 平成21年度は、POPs条約対象物質のうちPCB類等15物質(群)に、2物質(群)を加えた17物質(群)を調査対象とした。

3.調査結果

ア.初期環境調査(調査結果は別表1のとおり)

 水質については、6調査対象物質中2物質(2-アミノピリジン、o-アミノフェノール)が検出された。
 底質については、2調査対象物質中1物質(2-アミノピリジン)が検出された。
 大気については、3調査対象物質中1物質(ニトロメタン)が検出された。

イ.詳細環境調査(調査結果は別表2のとおり)

 水質については、11調査対象物質(群)中5物質(群)(2,4-ジニトロフェノール、トリメチルベンゼン類(1,2,4-トリメチルベンゼン)、ヒドロキノン、2-ブテナール、2-メチル-N-[4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]プロパンアミド(別名:フルタミド))が検出された。
 底質については、1調査対象物質群中1物質群(ジイソプロピルナフタレン類)が検出された。
 生物については、3調査対象物質(群)中3物質(群)(クロロベンゼン、ジイソプロピルナフタレン類、2,4-ジニトロフェノール)が検出された。
 大気については、5調査対象物質(群)中4物質(群)(クメン(別名:イソプロピルベンゼン)、クレゾール類(o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール)、ジイソプロピルナフタレン類、1,2,3-トリクロロプロパン)が検出された。
 なお、ア.及びイ.の調査結果には、過去の調査においては不検出で今回初めて検出された物質が含まれているが、これは検出下限値を下げて調査を行ったことによるものと考えられる。(別表1及び2参照)

ウ.モニタリング調査

 平成21年度のモニタリング調査は、従前のPOPs条約対象物質10物質(群)(ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフランを除く。)及び新規条約対象物質※5物質(群)(クロルデコンを除く。)に、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びテトラクロロベンゼン類の2物質(群)を加えた計17物質(群)について調査を実施した。(調査結果は、別表3-1、3-2のとおり)

[1] 毎年継続的に調査を実施している物質(従前のPOPs条約対象物質10物質(群)及びHCH類)(統計学的手法による経年変化の解析結果は、別表3-3~3-6のとおり)
 水質及び底質について平成14~21年度のデータの推移をみると、水質及び底質中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。水質及び底質中の濃度の地域分布を見ると、例年どおり、港湾、大都市圏沿岸の準閉鎖系海域等、人間活動の影響を受けやすい地域で相対的に高い傾向を示すものが比較的多く見られた。
 生物について平成14~21年度のデータの推移をみると、生物中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。昨年度に引き続き、PCB類、DDT類等が人口密集地帯近傍の沿岸域の魚で高めの傾向を示した。
 大気について従前のPOPs条約対象物質10物質(群)にかかる平成14~21年度のデータの推移をみると、大気中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられる。大気中のPOPs濃度については、前年度と同様に温暖期及び寒冷期の2回測定が行われ、いずれの物質(群)についても、例年どおり、温暖期の方が寒冷期よりも全国的に濃度が高くなる傾向が認められた。
 なおHCH類については、平成15~20年度に用いた大気試料採取装置の一部からHCH類が検出され、でHCH類の測定に影響を及ぼすことが判明したが、個別のデータについて影響の有無を遡って判断することが困難であるため、この期間の全てのデータについて欠測扱いとすることとした。
[2] その他の物質(HCH類を除く新規のPOPs条約対象物質4物質(群)及びその他2物質(群))
 平成21年度の調査をみると、水質については、4調査対象物質(群)中3物質(群)が検出された。底質については、4調査対象物質(群)全てが検出された。生物については、3調査対象物質(群)中全てが検出された。大気については、3調査対象物質(群)全てが検出された。
 平成21年度調査では、同時分析の可能性等を考慮して、以下の5物質(群)について調査を実施した。その際、条約対象でない一部の異性体又は同族体を加えて調査を実施している。
ペンタクロロベンゼン
HCH類:α-HCH、β-HCH、γ-HCH(別名:リンデン)、δ-HCH
ヘキサブロモビフェニル類
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)
ポリブロモジフェニルエーテル類:テトラブロモジフェニルエーテル類、ペンタブロモジフェニルエーテル類、ヘキサブロモジフェニルエーテル類、ヘプタブロモジフェニルエーテル、ノナブロモジフェニルエーテル類デカブロモジフェニルエーテル
(下線はPOPs条約対象物質外)

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
直通:03-5521-8261
代表番号:03-3581-3351
課長:早水 輝好(6350)
保健専門官:佐藤 輝雄(6361)
担当:太田 昌宏(6355)

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