平成22年3月29日
大気環境

風力発電施設から発生する騒音・低周波音の調査結果(平成21年度)について(お知らせ)

 風力発電施設に関して低周波音の苦情が寄せられていることから、環境省は、愛知県豊橋市・田原市、愛媛県伊方町において騒音・低周波音の実態把握のための調査を行いました。測定結果を解析した結果は以下のとおりです。

  • 豊橋市の苦情者宅内(風力発電設備[1500kW]からの距離:約680m)では、風力発電設備の稼働・停止による明確な騒音・低周波音の変化は確認できず、また、風力発電設備の近傍測定点で観測された31.5Hzや160〜200Hzに特徴のある騒音・低周波音は測定されませんでした。
  • 田原市の苦情者宅内(風力発電設備[1500kW]からの距離:約350m)では、稼働・停止による騒音・低周波音の変化が測定されるとともに、風力発電設備の近傍測定点で観測された160〜200Hzに特徴のある騒音が測定されました。
  • 伊方町の苦情者宅内(風力発電設備[1000kW]からの距離:約210m、240m)では、稼働・停止による騒音・低周波音の変化が測定されるとともに、風力発電設備の近傍測定点で観測された31.5Hzや160〜200Hzに特徴のある騒音・低周波音が測定されました。

 環境省では、引き続き関連する調査・解析を実施し、実態の解明に努めていくこととしています。

1 風力発電施設の騒音・低周波音の調査結果

 風力発電設備の近傍及び苦情者住宅の内外を測定地点として、騒音・低周波音を測定しました[別添1]。これら測定結果を解析した結果は以下のとおりです。[別添2]

(1)
 風力発電設備の近傍測定点において、2Hz、25〜31.5Hz、50〜63Hz、160〜200Hz、400Hzに卓越周波数成分を有する騒音・低周波音が測定されました。
 豊橋市の苦情者宅内(約680m)では、これらの周波数成分が卓越している状況は確認されませんでした。一方、田原市の苦情者宅内(約350m)では、風力発電設備の近傍測定点で観測された160〜200Hzに特徴がある騒音が測定されました。また、伊方町の苦情者宅内(約210m、240m)では、風力発電設備の近傍測定点で観測された31.5Hzや160〜200Hzに特徴のある騒音・低周波音が測定されました。
低周波音:一般に人が聞くことができる音の周波数成分は20Hz〜2万Hzとされており、我が国では概ね100Hz以下の音を低周波音といい、その中で人の耳では特に聞こえにくい周波数20Hz以下の音を超低周波音といいます。
(2)
風力発電設備を停止させると、各設備近傍測定点の騒音・低周波音の音圧レベルが低下しました。田原市及び伊方町の苦情者宅内では風力発電設備の稼働・停止により音圧レベルの変化が観測されたが、豊橋市の苦情者宅内では稼働・停止による明確な音圧レベルの変化は確認できませんでした。
(3)
苦情者宅内における測定結果では、豊橋市では125Hz以上で、田原市では100Hz以上で、伊方町O宅では80Hz以上で、伊方町I宅では40Hz以上で騒音・低周波音が感覚閾値・聴覚閾値を超えていましたが、それら周波数帯での音圧レベル(聴覚補正はしていない)は豊橋市で10〜25dB、田原市で15〜35dB、伊方町O宅で20〜40dB、伊方町I宅で25〜55dBでした。なお、風力発電設備の近傍測定点では、20Hz以下の周波数成分が感覚閾値より20dB程度小さい状況でした。
感覚閾値:人は周波数によって音の感度が異なります。低周波音を感じる最小音圧レベルを感覚閾値といい、可聴音を聞くことができる最小音圧レベルを聴覚閾値といいます。閾値は平均値であり±5〜10dB程度の幅があります。
(4)
風速が大きい時だけでなく、風車の回転数が定格に達せず変動している時にも苦情の訴えがあることがわかりました。

2 国内外の文献調査

 諸外国における低周波音に係る推奨値・ガイドライン等の有無、風力発電施設に係る騒音・低周波音に関して、風力発電騒音に関する国際会議等から収集された情報などを中心に前年度に引き続き調査を行いました。オーストラリア、ニュージーランド等において風力発電施設から発生する低周波音に特化した基準・ガイドライン等は把握できませんでした。

3 今後の課題

風力発電設備近傍において感覚閾値・聴覚閾値を上回った周波数域の中で、31.5Hz、160〜200Hz、400Hzの周波数成分が卓越していました。他の風力発電施設の風車音でも同様の傾向を示すか、これら周波数成分の発生源は何か等の調査が必要です。
風車音の音圧レベルが風車の回転数の変化に伴って変動することから、音圧レベルが変動する騒音・低周波音に着目し、それら音の発生実態や人の感じ方等について調査する必要があります。
苦情発生箇所における測定を更に行い、苦情者の反応と風力発電設備の稼働状況との関連に関するデータ等を蓄積する必要があります。
風車音の測定は風の吹いている条件下で行わなければならないため、風雑音の影響を更に除去する方法の検討が必要です。

 本調査で整理された課題を踏まえ、環境研究総合推進費(旧 環境研究・技術開発推進費)の平成22年度戦略指定研究開発領域公募課題「風力発電等による低周波音の人への影響評価に関する研究」により詳細な調査・解析を行い、実態の解明に努めていくこととしています。

添付資料

連絡先
環境省水・大気環境局大気生活環境室
直通:03-5521-8299
代表:03-3581-3351
室長:土居 健太郎(6540)
補佐:久保 祥三(6543)
担当:木村 仁美(6546)