報道発表資料

この記事を印刷
2009年12月07日
  • 保健対策

大久野島沖で発見された発煙筒らしき回収物の第1次分析結果について(お知らせ)

 広島県竹原市の大久野島北部海岸沖で発見された旧日本軍の発煙筒らしき回収物について、下記のとおり、内容物の特定のための第1次分析を実施しましたので、結果をお知らせします。

1.
大久野島北部海岸沖で発見された不審物について
(1)
本年1月19日に環境省発注の工事請負業者が大久野島北部海岸沖で不審物を発見。
 6月5日に内閣官房が関係省庁を招集し、次の3点について関係省庁間で認識が共有された。
[1]
専門家からの意見聴取等を踏まえれば、その外形的な特徴から通常の発煙筒か、あるいは、くしゃみ剤を成分とする「あか筒」と見られ、爆発物ではないこと。
[2]
海洋中で60年以上経過していることから当面の危険性は低く、現時点で安全面での問題はないと考えられること。
[3]
地域住民の安心の観点からどう対応すればよいか、検討を行うことが適切であること。
 あわせて内閣官房から、今回の不審物を発見した事業者である環境省に対して、「地域住民の安心の観点から、約20個の不審物についての対応を検討してほしい。」との要請があった。
(2)
このことについて、6月22日に開催された「平成21年度国内における毒ガス弾等に関する総合調査検討会」において、地域住民の安心の観点から、大久野島の不審物を可能な範囲で引き揚げ、内容物の分析を行うことが望ましいとの見解が示されたことを受け、8月12日に不審物23個を引き揚げ、その後、内容物の分析業務を実施した。
2.
分析結果等について
(1)
発見された不審物の性質について
 23個の不審物について、内容物を分析するため、まず、これら不審物の内部の確認・試料採取を行った。その結果、これらの不審物は爆発性を有するものではなかった。
(2)
2-クロロアセトフェノン含有量試験について
 不審物が旧軍の催涙筒であるかどうかを確認するため、不審物の内容物中の2-クロロアセトフェノン(旧軍の催涙剤)含有量について分析(アセトン・超音波抽出により実施)をしたが、23検体すべてにおいて不検出であった。
(3)
ヒ素含有量試験について
 海洋中で60年以上経過しており、周辺の海域でのモニタリング結果でヒ素が検出されていないが、あか筒であればヒ素が含まれていることから、不審物のうちあか筒の可能性があるものを絞り込むため、内容物に強酸(硝酸、硫酸及び過塩素酸)を加えて加熱分解抽出する方法により、内容物のヒ素含有量試験を行った。その結果は以下のとおりであった。
ヒ素含有量試験結果
(硝酸、硫酸及び過塩素酸を添加し加熱抽出。値は乾燥重量ベース。)
[1]ヒ素含有濃度(約20mg/kg)以上
・・・ 10検体
<43 ~ 32,000 mg/kg>
[2]ヒ素含有濃度(約20mg/kg)以下
・・・ 11検体
[3]検出されず
・・・ 2検体
※なお、約20mg/kgは、「大久野島土壌等処理対策について」(平成11年11月大久野島土壌等汚染対策検討会)で示されている、広島県内の海域の底質濃度(0.7~17.4mg/kg)を参照し設定した。
 上記の値は、不審物の内容物中のヒ素含有量を測定し、あか筒の可能性があるものを絞り込む目的で、内容物の薬剤らしき部分を採取し、それを強酸下で加熱分解抽出した結果、得られた値であり、通常の海中などでは起こらない条件下での値である。このため、上記のような値が検出されたからといっても、ただちに危険性があるとは考えられないが、念のため、今後、通常の水中での溶出についても調べる予定である。
3.
今後の方針
 今回の分析結果を踏まえ、上記[1]の10検体については、あか筒であるかどうかを判定するため、あか剤及びその関連成分(ジフェニルクロロアルシン<DA>、ジフェニルシアノアルシン<DC>、ジフェニルアルシン酸<DPAA>、ビス(ジフェニルアルシン)オキシド<BDPAO>)の含有試験、ヒ素の溶出試験などを第2次分析として実施する。
 なお、第2次分析については、年度内を目途に結果をとりまとめ、公表する予定。
<参考:あか筒に関する情報>
あか筒は爆発物ではなく、万一手に触れても、問題を起こすものではない(ヒ素が含まれているため、手洗い等の措置をすることが適切)。
北部海岸については、戦時中、点火試験場(あか筒等の発煙筒の点火試験(性能試験)行う場所)があったという事実もあり、過去に類似の残骸が見つかっている。
しかしながら、現在まで、あか筒及びあか筒らしき物を原因とする健康被害事例は報告されていない。直近では、平成9年、平成17年に、大久野島北部海岸で回収された同様の不審物を環境省が分析等を行った結果、既に化学兵器としての効力は失われていた。
広島県が実施している大久野島周辺海域でのヒ素濃度測定結果では、いずれも定量下限値(0.005mg/l)未満である(公共用水域水質測定結果(平成17~20年度))。
連絡先
環境省自然環境局自然環境整備担当参事官室
TEL 03-3581-3351(代表)
 TEL 03-5521-8281(直通)
 参事官 大庭 一夫(内線6450)
 参事官補佐 西村 学(内線6452)
総合環境政策局環境保健部環境リスク評価室
 TEL 03-3581-3351(代表)
 TEL 03-5521-8262(直通)
 室長 塚本 直也(内線6340)
 室長補佐 筒井 誠二(内線6341)