令和3年3月30日
大気環境 水・土壌

環境測定分析統一精度管理調査に関する令和2年度調査結果の取りまとめについて

環境省では、環境測定分析の信頼性の確保及び精度の向上等を目的として、環境測定分析統一精度管理調査を実施しています。今般、令和2年度環境測定分析検討会において、令和2年度の調査結果を取りまとめましたので、お知らせします。

<令和2年度調査結果の概要>

(1)調査項目

(a)基本精度管理調査

【模擬排水試料(一般項目等)】

COD、BOD、全窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素及びアンモニア性窒素

(b)高等精度管理調査

【模擬水質試料(農薬)】

<詳細項目> シマジン、イソプロチオラン、フェノブカルブ及びフィプロニル

<参照項目> アセタミプリド、クロチアニジン及びジノテフラン

【模擬大気試料】

<詳細項目> ニッケル、亜鉛、鉄、鉛及びアルミニウム

<参照項目> マンガン、銅、カルシウム、ナトリウム及びカリウム

(2)参加分析機関数

公的機関137、民間機関367、計504機関

(3)分析・調査結果

(a)基本精度管理調査

【模擬排水試料(一般項目等)】

室間精度CV(※)はBOD(20.7%)を除いて2.79~6.68%と良好でした。

BODについては、過去の調査結果での傾向と同様に、市販の植種菌製剤の結果はそれ以外の結果と比べて低値となっていました。

(b)高等精度管理調査

【模擬水質試料(農薬)】

詳細項目については、室間精度CVは13.2~16.6%と、過去の調査時と比較して、改善若しくは同等となっていました。

参照項目については、室間精度CVはジノテフラン(21.4%)が若干大きな値であったものの、それ以外は13.8~16.4%と詳細項目と比較して遜色のないものでした。

【模擬大気試料】

詳細項目については、室間精度CVは亜鉛(16.6%)を除いて、3.60~4.28%と良好でした。亜鉛においては、操作過程における汚染に由来する応答値を下げる取組を行うこと、測定条件の最適化を行うことの2点が課題として挙げられました。

参照項目については、室間精度CVはカルシウム(33.6%)を除いて、3.90~6.73%と全体的には概ね良好でした。カルシウムにおいては、試料中に共存する別の元素からの応答値について対策を行うことが課題として挙げられました。

※「室間精度CV」は、参加分析機関間のばらつきを表す変動係数を示す。

(4)その他(指摘事項等)

計算違い、記載ミスや日常的な装置の点検などを実施すれば防げると思われるケースが散見されました。

分析目的に合致した分析法と前処理法を適切に選択し、得られた測定値について慎重に確認することが非常に重要です。また、計算間違いについては、報告前の確認が不十分であったことも一因であり、内部精度管理体制の整備の必要性が確認されました。

なお、調査結果については、測定分析統一精度管理調査ウェブサイトに掲載しています。

(https://www.env.go.jp/air/tech/seidokanri/report/index.html)

(参考) 環境測定分析統一精度管理調査の背景

我が国においては、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等の法令に基づいて、環境基準の設定や汚染状況の監視、工場・事業場に対する排出規制、公害防止・環境保全に係る国・地方の各種計画等の策定等、様々な施策が実施されています。

環境測定分析は、これらの法令の施行や制度・施策の実施のための基礎であり、地方自治体や民間の環境測定分析機関において測定分析に携わっている技術者がこれを支えています。

環境測定分析の方法は、法令等によって公定法として規定されています。しかし、試料の採取・保管・前処理から、測定分析機器・薬品等の管理・調整・操作に至るまで、公定法に規定されていない細部を含めて、測定分析に携わる技術者の技能・経験・考え方が、データの精度に大きな影響を及ぼします。

環境測定分析の精度が確保されなければ、上記の法令や制度・施策の実効性が損なわれ、環境行政への社会の信頼を揺るがす事態となります。また、誤った測定分析データにより適切な排出規制が行われず、適切な対策が講じられなかった場合には、それによって失われた環境の修復に多大な費用・労力と長い年月を要し、大きな社会的・経済的損失を招くこととなります。

こうした背景から、環境省では、「環境測定分析統一精度管理に関する調査」を毎年度継続して実施し、環境測定分析機関による測定分析の精度の向上及び信頼性の確保を図っています。

本調査は、最近では500前後の環境測定分析機関が参加する我が国でも有数規模の調査です。

また、長期的な計画に基づいて、幅広い試料や項目を対象とするとともに、試料ごとに統計的な分析・評価を行い、その評価結果などについても明らかにしています。

調査結果については毎年度「調査結果説明会」等を開催し、分析上の留意点や分析結果に関して分析機関に技術的な問題点等をフィードバックしています。

またウェブサイトにおいても、環境測定分析の精度向上に資する情報などを提供しています。

(https://www.env.go.jp/air/tech/seidokanri/index.html)

連絡先

環境省水・大気環境局総務課環境管理技術室

  • 代表03-3581-3351
  • 直通03-5521-8297
  • 室長平澤 崇裕(内線 6550)
  • 室長補佐澤 知宏(内線 6551)