令和2年12月24日
水・土壌

東日本大震災に係る海洋環境モニタリング調査 令和元年度調査結果について

 環境省は、東日本大震災を受け、平成23年度から毎年度、被災地における海洋環境モニタリング調査を実施しています。本調査は、震災に伴い流出した化学物質及び廃棄物並びに福島第一原子力発電所から漏出した放射性物質に起因して海洋環境中で汚染が生じる可能性のある項目について、その現状及び経年変化を把握することを目的としています。
 今般、東日本大震災に係る海洋環境モニタリング調査検討会での検討結果を踏まえ、令和元年度の調査結果について、以下のとおり取りまとめました。

1.モニタリング調査(別紙1の1.1、別紙2の4.1参照)

 堆積物中の化学物質及び放射性物質の経年変化の把握を主たる目的として、宮城県及び福島県の4測線において「モニタリング調査」を実施しました(調査期間:令和元年6月20日~25日)。

 環境基準又は暫定除去基準が設定されている項目(ポリ塩化ビフェニル(PCB)及びダイオキシン類)は、いずれも基準値等より1桁以上低い値でした。

 多環芳香族炭化水素(PAH)の濃度は、いずれの測点においても過年度の調査結果の範囲内でした。

 臭素系難燃剤(PBDE及びHBCD)の濃度は、いずれの測点においても過年度の調査結果の範囲内でした。

 有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)は、いずれの調査測点においても過年度調査結果の範囲内でした。

 放射性物質の検出範囲は、セシウム134で検出限界値未満~4.1 Bq/kg(dry)、セシウム137で0.98~58 Bq/kg(dry)でした。平成23年度の調査開始以降、セシウム134及びセシウム137は、多くの測点において経年的に濃度が減少する傾向が見られました。

2.履歴確認調査(別紙1の1.2、別紙2の4.2参照)

 震災以降の化学物質による汚染の履歴を確認することを目的として、福島県の1測点において「履歴確認調査」を実施しました(調査実施日:令和元年6月20日)。

 令和元年度に採取した堆積物については、以下の特徴が見られました。

 ①中央粒径は層によってばらつきが見られました。

 ②水分含有率及び全有機態炭素は、表層から2cm層において他の層と比較して値が高く、2cm以深の層においては同程度の値でした。

 ③PCBは12-14cm層において、ダイオキシン類は2-4cm層において、PBDE、PFOS、PFOAは表層から2 cm層において、セシウム134及び137は8-10 cm層において、他の層と比較して濃度が高くなっており、高い濃度が検出される層にばらつきが見られました。 

 ④いずれの物質においても、下層から表層に向かって濃度が減少する傾向は見られませんでした。

3.重点調査項目の調査(別紙1の1.3、別紙2の4.3参照)

 平成23年度第3次調査以降、高濃度のPAHが検出されている海域のうち、岩手県及び宮城県の6測点において、堆積物中のPAHの分布の経年変化の把握を目的とした「重点調査項目の調査」を実施しました(調査期間:令和元年6月29日~7月1日)。

 放射性物質の検出範囲は、セシウム134で検出限界値未満~25 Bq/kg(dry)、セシウム137で0.55~340 Bq/kg(dry)でした。

 堆積物中のPAHについては、一部の測点において相対的に高い濃度が検出されましたが、過年度調査と比較すると、すべての測点で過年度調査結果と同程度又は低い値でした。

4.まとめ

 今回の調査結果では、環境基準又は暫定除去基準が設定されている項目(PCB及びダイオキシン類)は、いずれも基準値より1桁以上低い値でした。

 その他の化学物質等のうち、臭素系難燃剤及び有機フッ素化合物については、過年度調査結果の範囲内又はそれと同程度でした。PAHについては、一部の測点において相対的に高い値が検出されましたが、過年度調査と比較すると、いずれの測点でも過年度調査結果と同程度又は低い値でした。

 堆積物中の放射性物質については、過年度調査結果の範囲内又はそれと同程度であり、平成23年度の調査開始以降、多くの測点において経年的に濃度が減少する傾向が見られました。

 環境省ではこれらの結果も踏まえ、今後も継続してモニタリングを実施する予定です。

添付資料

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