報道発表資料

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2009年03月05日
  • 地球環境

第18回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー(The Eighteenth Asia-Pacific Seminar on Climate Change)結果について(お知らせ)

 環境省は、豪州気候変動省、ベトナム天然資源環境省との共催により、3月2日(月)から3月3日(火)にかけて、ベトナム・ハノイで「第18回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー」を開催しました。
 今回のセミナーは、14か国・10機関から、約50名の気候変動や開発計画担当の行政官や専門家の出席を得て、[1]測定・報告・検証可能な行動(MRV)、[2]温室効果ガス排出データ(インベントリ)、[3]コベネフィット・アプローチ、[4]科学的知見に基づく適応対策について議論が行われました。
 世界全体の排出量の削減のためには、先進国の主導的な排出削減とともに、途上国の積極的な行動が必要であり、

  • 途上国の行動が適切に評価され、把握される仕組みを2013年以降の枠組みにおけるMRVな行動に関する制度やインベントリの整備を通じて構築すべきこと、
  • 途上国の開発ニーズを満たしつつ、気候変動の緩和策と適応策を両立するために、緩和策におけるコベネフィッツ(相乗利益)の実現と、適応策の開発への主流化を進めていく必要があること

などが合意されました。

※コベネフィット(相乗便益)とは、途上国の開発ニーズと、地球温暖化防止を行うニーズとの両方を意識し、単一の活動から異なる二つの便益を同時に引き出すことを指している。

1.開催日時・場所

平成21年3月2日(月)~3月3日(火)
ベトナム・ハノイ

2.実施主体

主催 :
環境省、豪州気候変動省、ベトナム天然資源環境省(MONRE)

3.参加者

主としてアジア太平洋地域諸国の各国政府及び国際機関等の代表者 約50名

・ 参加国(14か国):
日本、豪州、ベトナム、中国、韓国、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ラオス、カンボジア、ツバル、サモア、クック諸島
・ 国連及びその他の国際機関並びに政府機関等(10機関):
アジア開発銀行(ADB)、中国国家発展改革委員会エネルギー研究所(ERI)、豪州国際環境管理センター(ICEM)、地球環境戦略機関(IGES)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、国際協力機構(JICA)、国立環境研究所(NIES)、海外環境協力センター(OECC)、国連環境計画(UNEP)、気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)
・ 日本からは、環境省大臣官房鈴木審議官他が参加。
・ 議長は、地球環境戦略機関上級コンサルタント平石尹彦氏等が務めた。

4.会議の主な成果

 本セミナーは、2013年以降の枠組み交渉において、特にアジア太平洋地域の途上国にとって重要な事項を取り上げ、今後途上国においてどのような取り組みが必要であり、国際社会からどのような支援が必要であるかについて、交渉における各国のポジションを離れて自由な意見交換を行い、今後の方向性について共通認識を高めるとともに、地域内での取組や協力を促進することを目的としている。
 今回のセミナーでは、以下のポイントが主要な成果として、議長サマリーとしてとりまとめられた。

(1)測定・報告・検証可能な行動(MRV)

バリ行動計画にあるMRVについては今月末の国連交渉において議論が始められ、MRVの内容については交渉において詰められていくが、国際的には、先進国による約束または行動(総量削減目標など)、途上国による行動(国家気候変動計画の策定など)、先進国から途上国への資金・技術移転・能力向上支援がMRVの対象事項として挙げられている。
定量的評価方法(温室効果ガス排出量、資金及び技術移転)の導入により適切な削減行動の実施を確保することが必要。MRVの内容に関するガイドラインや方法論、指標等について特定し合意することが必要。
各国の能力に応じた途上国間の行動の差異化(例えば、途上国自身の資金負担による自律的行動、先進国からの資金支援による追加的行動、炭素市場を通じた活動の3分類等)の提案について議論された。
検証は専門家によって行われるべき。途上国の自主的な行動は途上国自身で検証するものの、先進国による支援に基づくものはCOPの検証を受けるべきとの考えも紹介された。
緩和措置へのインセンティブを与え、途上国の行動を促進するために途上国の行動と支援をリンクさせることが有益。
MRVは現行の制度である国別報告書やインベントリなどを発展さる形で構築すべき。データ収集や報告書作成等、新たな制度に必要な追加的コストについて、国際的な資金支援への期待があった。

(2)温室効果ガス排出データ(インベントリ)

科学的に必要な世界全体の長期的な排出パスに乗っているかどうかを確認するためには排出量データが不可欠であるが、ほとんどの途上国は1994年のデータが最新で、頻度と内容の向上が必要。
途上国において、経年的な報告を行うためには、組織の構築や能力向上が不可欠。環境省と国立環境研究所が実施している能力向上の取組が評価され、昨年5月の環境大臣会合で決められた神戸イニシアティブの一貫として、拡大していくことへの期待があった。
途上国のデータ収集には多くの障害があることから、まずは電力、鉄鋼、セメント、交通などの主要セクターの排出データの整備から始めることが有効ではないかとの意見があった。
2013年以降の枠組みで、途上国のMRVな適切な緩和行動において、インベントリ作成が経年的に行われる可能性があるが、モントリオール議定書における制度構築の経験が参考になる。

(3)気候変動と開発へのコベネフィット・アプローチ

アジア太平洋地域においては、温室効果ガス削減と開発便益を同時に達成するコベネフィット・アプローチのポテンシャルが多く存在する。それらには、地域の環境改善や省エネ、交通セクターの改善、廃棄物管理、森林保全等がある。
既存のスキーム(ODAやCDM等)を通じて、コベネフィットプロジェクトが計画、開発、実施をされている。これらを拡大することが期待されており、各国のイニシアティブの強化や、将来の気候変動枠組でのCDM手続き等の改善を通じてそれらを追及していくことが望まれる。
先進各国やドナー関係機関によってコベネフィット・アプローチを支援する具体的な国際協力が展開されている。これらには資金的支援やキャパビル等の取組が含まれている。また、途上国のコベネフィットを支援する技術研究開発(コベネR&D)の考えも提示された。
現在将来枠組の交渉で議論されているアジェンダにはコベネフィットに関連するものも含まれている。例えば、CDMについては、コベネフィットがより多くあるものについては優遇措置を与えるとの提案があり、優先的に手続きを行うこと、手続き費用の割引などの提案が紹介された。なお、コベネフィットの要件がCDMの手続きを複雑にしないようにする必要性が強調された。

(4)科学的知見に基づく適応対策

適応は開発と密接に関連していることから、開発計画に主流化されるべき。限られた資源の有効活用といった観点からも重要。その際、開発担当者が適応策の主流化の必要性を理解できるように分かりやすく説明することが必要。
適応は不確実性が高いため、我が国の地球シミュレータ等適切な気候予測を基に、脆弱性評価を行い、国家適応計画を策定すべき。そのための途上国への能力向上支援が求められる。UNEPなどが提案している適応に関する情報共有を行うネットワークが有効。
適応策には膨大な資金が必要と考えられるが、不確実性が高く、対策を実施するか否かの判断が難しい。そのため、気候変動対策のみならず他の政策課題への対応としても実施すべき対策(気象災害予防など)をまず行い、適応対策の知見を蓄積しつつ、徐々に対策を進展させていくことが重要。
連絡先
環境省地球環境局地球温暖化対策課国際対策室
室長:瀧口 博明(内線6772)
課長補佐:川又 孝太郎(内線6773)
担当:手島 裕明(内線6789)