報道発表資料

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2009年01月16日
  • 自然環境

「絶滅のおそれのある野生動植物種の生息域外保全に関する基本方針」について

 環境省では、平成19年度より生息域外保全方策検討事業を開始し、生息域外保全のあり方等に関する検討を重ね、今般、「絶滅のおそれのある野生動植物種の生息域外保全に関する基本方針」を策定いたしましたのでお知らせいたします。
 この基本方針は、それぞれの主体がよりよい生息域外保全のあり方を見据えて、相互に連携・協力して、計画的かつ効率的に生息域外保全を実施していくこと作成の目的としています。
 なお、今年度より、全国各地の動物園、植物園等の協力を得て、この基本方針の趣旨に沿った「環境省生息域外保全モデル事業」を実施していますので併せてお知らせします。

(注)
 生息域外保全とは、生物や遺伝資源を自然の生息地の外において保全することであり、本基本方針では、我が国の絶滅のおそれのある野生動植物種を、その自然の生息地外において、人間の管理下で保存することをいう。野生動植物種の絶滅を回避するためには、その種の自然の生息域内において保存されること(生息域内保全)が原則となるが、それぞれの種の状況に応じて、生息域内保全の補完として生息域外保全を実施することは、有効な手段である。

1.絶滅のおそれのある野生動植物種の生息域外保全に関する基本方針について

(1)作成の背景

平成18・19年に公表した最新の環境省レッドリストにおいて、我が国に生息・生育する3,155種が絶滅のおそれのある種に掲載されており、我が国の野生生物を取り巻く現状は非常に厳しい。
野生動植物種の絶滅を回避するためには、その種の自然の生息域内において保存されることが原則であるが、生息域内保全の補完としての生息域外保全は、有効な手段であると考えられる。
絶滅のおそれのある種の生息域外保全は、既に多くの主体により取り組まれている。
(実施例)
環境省:トキ、ツシマヤマネコ、ヤンバルクイナなど16種を対象に実施。
(社)日本植物園協会:レッドリスト掲載種の約50%に当たる847種を保有。
(社)日本動物園水族館協会:種の保存委員会を組織し人工繁殖に成果。
その他:地方自治体やNPO法人などが主体となった取組も各地で行われている。
しかし、これまで生息域外保全に関する統一的な考え方が示されていなかったため、それぞれの取組は、独自の生息域外保全に対する考えに従って進められており、必ずしも良い方向ではない結果を招く可能性も指摘されている。

(2)基本方針の策定

これらの状況を踏まえ、平成19年度より環境省において、「平成19・20年度絶滅のおそれのある野生動植物種に関する生息域外保全方策検討委員会(※)」を設置し、生息域外保全のあり方等に関する検討を進めてきた。 ※委員については資料2参照。
今般、これらの考え方を取りまとめ、環境省において、「絶滅のおそれのある野生動植物種の生息域外保全に関する基本方針(以下、「基本方針」という。)」を策定した。
なお原案について、自然保護団体、学会、都道府県等への意見照会を実施し、いただいた御意見についても検討委員会の中で検討を行った。

(3)基本方針の性格

基本方針の性格は以下のとおり。

絶滅のおそれのある野生動植物種の生息域外保全が、どのような考え方に沿って、どのような注意の下に進められるべきかということを提示するもの。
生息域外保全に関して重要な役割を担う環境省、(社)日本動物園水族館協会及び(社)日本植物園協会が、それぞれ、本基本方針に沿って生息域外保全に取組むことを明記。
その他の主体が行う生息域外保全の取組については、この方針に従って、より適切な取組が進められることを期待する。
本基本方針が対象とする生息域外保全の範囲は、国内に生息・生育する種のうち、絶滅のおそれのある種(レッドリスト絶滅危惧II類(VU)以上)を取扱う場合とする。

(4)基本方針の概要 (基本方針全文はについては資料1参照。)

 基本方針は以下の1~4から成っており、各項目の概要は以下のとおり。

1.生息域外保全の目標及び目的
 生息域外保全は、種の絶滅を回避し、種内の遺伝的多様性を維持することを最終的な目標として取り組むこととし、以下の3点を実施の目的とする。
 [1]緊急避難
 [2]保険としての種の保存
 [3]科学的知見の集積
2.生息域外保全の実施に係る基本的な事項
 生息域外保全は、以下の(1)~(5)を基本として実施する。
(1)生息域内保全との連携
 生息域外保全は、生息域内保全の補完として実施するものであるため、生息域内における状況を把握するよう努め、常に生息域内保全との連携を図ることが肝要。
(2)実施計画の作成
 生息域外保全の実施主体は、その実施に先立ち、本基本方針に沿ってその実施行程全体をあらかじめ検討し、生息域外保全の実施計画を作成する。
(3)飼育・栽培の体制と施設
 生息域外保全は、十分に能力(収容力、技術力、資金力)のある実施主体及び施設において、長期的な視点で、専門技術者の管理下で実施する。
(4)
実施主体間の連携
(5)その他
 ア.技術的手法に関するガイドラインの活用
イ.近縁種の活用
 ウ.国際的枠組への対応
エ.種子保存等の手法の活用
3.生息域外保全対象種の基本的考え方
(1)国内に生息・生育する種について
 生息域外保全の対象とする種は、それぞれの分類群の特性を考慮し、生息域外保全の実施の目的に応じて選定する。
(2)国外に生息・生育する種について
 国際協力の観点から取組が望まれる種について生息域外保全を実施する場合には、国内的、国際的義務等を遵守する。
4.語句の定義
 (本基本方針における語句を定義)

2.平成20年度環境省生息域外保全モデル事業

本基本方針の趣旨に沿って、5つの類型のモデル事業を実施。
対象種及び実施場所(施設)については、検討委員会の下に設置した、動物、植物それぞれの分科会(※)において、検討を行い決定した。 ※委員については資料2参照。

(1)モデル事業の類型

I
保険としての種の保存モデル事業
II
生息域外保全の技術開発モデル事業
III
地域との協働参画モデル事業
IV
生息域外保全プログラム作成モデル事業
V
種子保存モデル事業

(2)モデル事業の対象種と実施場所 (詳細は資料3参照)

動物
対象種実施場所
I ハリヨ* 滋賀県立琵琶湖博物館 (滋賀県草津市)
II シルビアシジミ・チャマダラセセリ* 大阪府立大学 (大阪府堺市)
III ナゴヤダルマガエル 広島市安佐動物公園 (広島県広島市)
IV 哺乳類・鳥類を対象とした生息域外保全プログラムを試行的に作成する。

*ハリヨ・シルビアシジミ・チャマダラセセリについては、I・II双方のモデル事業として実施。

植物
対象種実施場所
I キバナスゲユリ** 財団法人海洋博覧会記念公園管理財団総合研究センター(沖縄県本部町)
II コシガヤホシクサ** 国立科学博物館筑波実験植物園 (茨城県つくば市)
II ムカゴサイシン 高知県立牧野植物園 (高知県高知市)
III オキナグサ 新潟県立植物園 (新潟県新潟市)
V 種子保存 環境省新宿御苑管理事務所

**キバナスゲユリ・コシガヤホシクサについては、I・II双方のモデル事業として実施。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長:星野 一昭 (6460)
課長補佐:西山 理行 (6475)
係長:中島 治美 (6469)
直通(03) 5521 - 8283

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