平成29年3月17日
総合政策

(仮称)袖山高原ウィンドファーム事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、17日、岩手県で計画されている「(仮称)袖山高原ウィンドファーム事業に係る計画段階環境配慮書」(エコ・パワー株式会社)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、岩手県岩手郡葛巻町、下閉伊郡岩泉町及び久慈市において、最大で総出力150,000kWの風力発電所を設置するものである。
 環境大臣意見では、風力発電設備の配置等を検討するに当たって、(1)騒音等や風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減すること、(2)鳥類に関する調査、予測及び評価を行い、イヌワシ等の希少猛禽類の行動圏に関する情報を明らかにした上で、風力発電設備等の配置等を検討すること等を求めている。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書※について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。

 今後、経済産業大臣から事業者であるエコ・パワー株式会社に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要

  ・事業者   エコ・パワー株式会社

  ・計画位置  岩手県岩手郡葛巻町、下閉伊郡岩泉町及び久慈市

        (事業実施想定区域面積 約9,539ha)

  ・出力    最大150,000kW(2,000~3,850kW×最大50基)

3.環境大臣意見の概要

[1]総論

(1)対象事業実施区域の設定

 風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、反映させること。

(2)事業計画の見直し

 [2]の(1)、(2)及び(5)により、騒音等及び風車の影による生活環境への影響並びに鳥類に対する影響を回避又は十分に低減できない場合は、風力発電設備等の配置等の再検討、対象事業実施区域の見直し等を行うこと。

(3)環境保全措置の検討

 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。

[2]各論

(1)騒音等に係る環境影響

 事業実施想定区域の近隣には、複数の住居等が存在しており、工事中及び供用時における騒音による生活環境への重大な影響が懸念されることから、風力発電設備等を住居等から離隔すること等により、騒音等による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。

(2)風車の影に係る環境影響

 事業実施想定区域の近隣には、複数の住居等が存在しており、供用時における風車の影による生活環境への重大な影響が懸念されることから、風力発電設備を住居等から離隔すること等により、風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。

(3)土地の改変に伴う自然環境に対する影響

事業実施想定区域及びその周辺には、保安林、砂防指定地、土砂災害警戒区域及び土石流危険渓流等が存在していることから、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、専門家等からの指導・助言を踏まえること。

 また、土砂や濁水の流出等による自然環境への影響に関する調査、予測及び評価を行い、土砂流出の可能性の高い箇所の改変を回避すること等により、自然環境への影響を回避又は極力低減すること。

(4)水環境に対する影響

 事業実施想定区域及びその周辺には、複数の河川源流部及び沢筋等のほか、簡易水道の取水地点等が存在しており、本事業の実施により、工事中の土砂や濁水の流出に伴う水環境への影響が懸念されることから、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、河川や沢筋等からの距離を確保するとともに、土砂や濁水の流出を最小限に抑えることで、水環境への影響を回避又は極力低減すること。

(5)鳥類に対する影響

 事業実施想定区域の周辺には、国指定天然記念物であるイヌワシ繁殖地及びイヌワシ等の希少鳥獣の保護を目的に指定された鳥獣保護区が存在しており、これらの希少猛禽類の生息が確認されていることから、本事業の実施により、風力発電設備への衝突事故や移動経路の阻害等による鳥類への重大な影響が懸念される。このため、専門家等からの助言を踏まえた調査、予測及び評価を行い、イヌワシ等の希少猛禽類の行動圏に関する情報を明らかにするとともに、その結果を踏まえ、風力発電設備等の配置等を検討すること。

(6)植物及び生態系に対する影響

 事業実施想定区域内には、自然環境保全基礎調査による植生自然度が高いとされた植生及び特定植物群落並びに保安林及び岩手県自然環境保全指針の「優れた自然評価図」で重要性が高いと区分された地域等が存在しており、本事業の実施による植物及び生態系への影響が懸念されることから、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、現地調査により特定植物群落及び自然度の高い植生が存在する区域を明らかにした上で、これらの重要な自然環境の改変を回避又は極力低減すること。

(7)景観に対する影響

 事業実施想定区域内には、主要な眺望点である袖山高原が位置しており、本事業の実施により、眺望景観への重大な影響が懸念されることから、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、客観的な予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、眺望景観への影響を回避又は極力低減すること。また、事業計画の具体化並びに調査、予測及び評価に当たっては、専門家等からの助言並びに管理者、利用者、地域住民及び関係自治体等の意見を踏まえること。

(8)人と自然との触れ合いの活動の場に対する影響

 事業実施想定区域内には、袖山高原が位置しており、人と自然との触れ合いの活動の場への影響が懸念されることから、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、袖山高原の状態及び利用の状況に関する調査及び予測を行い、影響を評価するとともに、その結果を踏まえ、影響を回避又は極力低減すること。

 また、事業計画の具体化並びに調査、予測及び評価に当たっては、管理者、利用者、地域住民及び関係自治体等の意見を踏まえること。


(参考)環境影響評価に係る手続き

・平成29年1月31日    経済産業大臣から環境大臣に意見照会

・平成29年3月17日    環境大臣から経済産業大臣に意見提出

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8237
室長    大井通博(内6231)
室長補佐  伊藤史雄(内6233)
審査官   生田雄一(内6239)