平成28年9月23日
保健対策

平成27年度 大気中水銀バックグラウンド濃度等のモニタリング調査結果について

 環境省では、国際的な水銀対策に役立てるため、国内の発生源による影響を直接受けない地点(バックグラウンド地点)である沖縄県辺戸岬及び秋田県男鹿半島において、水銀の大気中濃度等のモニタリング調査を実施しています。
 平成27年度の調査の結果、辺戸岬における大気中水銀濃度及び降水中水銀濃度は、指針値等を十分下回るとともに、これまでの調査結果と大きな乖離はありませんでした。また、男鹿半島における調査の結果は、大気中水銀濃度、降水中水銀濃度とも、辺戸岬におけるこれまでの調査結果と大きな乖離はありませんでした。

1.背景

 国連環境計画(UNEP)においては、平成13年より地球規模での水銀による環境汚染に関連する国際的な活動を進めており、平成25年10月には熊本・水俣で開催された水銀に関する水俣条約外交会議において、水銀に関する水俣条約が採択されました。日本においては、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」及び「大気汚染防止法の一部を改正する法律」が平成27年6月に公布され、今年2月に水俣条約を締結しました。

 環境省では、国際的な水銀対策に役立てることを目的として、平成19年度より、国内の発生源による影響を直接受けない地点(バックグラウンド地点)である沖縄県辺戸岬において、水銀の大気中濃度(バックグラウンド濃度)等に関するモニタリング調査を試行し、データの信頼性が確保されたと判断された平成22年度から、毎年調査結果を公表しています。

 また、平成26年8月からは、秋田県の男鹿半島においてもモニタリング調査を行っています。この度、両地点の平成27年度の調査結果をとりまとめましたので、公表いたします。(詳細は別添参照)。

2.調査概要

(1)水銀の形態別測定について

 大気中の水銀は、金属水銀や酸化態水銀など様々な形態で存在しており、それぞれ、大気中において異なる挙動を示すことが知られています。

 本調査では、国際的な水銀の排出状況及び濃度レベルの推移、それらが日本の環境に及ぼす影響の把握等に役立てることを目的に、国内のバックグラウンド地点である辺戸岬において、大気中にガス状で存在する金属水銀及び酸化態水銀、並びに粒子状水銀の濃度と、降水中の水銀濃度について測定を行いました(表1参照)。

 また、北日本における水銀バックグラウンド濃度を測定するため、平成26年8月から、秋田県の男鹿半島においても測定を行っています。

(2)測定地点

・沖縄県:辺戸岬

 国立研究開発法人 国立環境研究所 辺戸岬 大気・エアロゾル観測ステーション

(沖縄県国頭郡国頭村字宜名真)

・秋田県:男鹿半島

 秋田県船川測定局隣接地

(秋田県男鹿市船川港船川字泉台)

(3)測定方法、調査項目及び測定頻度

 大気成分については、形態別水銀連続測定装置を用いて測定を行いました。また、降水成分については、降水捕集装置により試料を採取し、米国環境保護庁(EPA)が定める方法に準じて濃度分析を行いました。(いずれも詳細は別添参照)

表1 調査項目及び測定頻度

区分

調査項目

測定頻度

大気成分

ガス状

金属水銀

連続測定(16回/日)

酸化態水銀

連続測定(8回/日)

粒子状水銀

降水成分

降水中の水銀濃度

週1回測定(7日間連続サンプリング)

※本調査における「金属水銀」とは、大気中にガス状で存在する水銀元素(Hg0)のことを指します。また、「酸化態水銀」は、大気中にガス状で存在する酸化された水銀(Hg2+)を、「粒子状水銀」は、大気中の粒子状物質に含まれる又は吸着している水銀を、それぞれ表しています。

※大気汚染防止法に基づいて行われている有害大気汚染物質モニタリング調査における水銀濃度のモニタリングと本調査では測定方法が異なります(別添参照)。

3.調査結果の概要

(1)大気中水銀濃度

 大気中形態別水銀の合計の年平均値は辺戸岬において1.7 ngHg/m3、男鹿半島において1.6 ngHg/m3であり、環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値(指針値。年平均値40 ngHg/m3)を十分下回る値でした。

 なお、大気中の水銀は、そのほとんどが金属水銀で占められており、酸化態水銀及び粒子状水銀が占める割合は、平均で1%未満でした(別添表3及び別添表6参照)。

 辺戸岬における形態別水銀の合計の濃度及び形態別の水銀濃度の年平均値は、概ね横ばいで推移していますが、過年度の調査結果と比較して、昨年度に引き続きやや低い値となりました(表2及び別添表4参照)。

 なお、平成21年度までは試行期間であり、測定日数が限られる等の点に留意する必要があります。

表2 辺戸岬における大気中水銀濃度の年度別測定結果

(単位:ngHg/m3

測定項目

統計値

平成

19年度

平成

20年度

平成

21年度

平成

22年度

平成

23年度

平成

24年度

平成

25年度

平成

26年度

平成

27年度

金属水銀

平均値

1.5

1.8

2.2

1.9

2.1

2.0

1.7

1.7

1.6

酸化態水銀

平均値

0.001

0.002

0.002

0.001

0.002

0.002

0.001

粒子状水銀

平均値

0.002

0.002

0.002

0.002

0.004

0.004

0.002

合計

平均値

2.2

1.9

2.1

2.0

1.7

1.7

1.7

※平成19年度については、測定を開始した10月16日以降のデータを用いて平均値を算出しています。酸化態水銀と粒子状水銀は、平成21年10月以降に安定した測定が実施できるようになったことから、同月以降合計濃度を算出しており、そのデータを年度別平均値の算出に用いています。

 男鹿半島における形態別水銀の合計の濃度及び形態別の水銀濃度の年平均値は、昨年度と概ね同等の値となりました(表3及び別添表7参照)。

表3 男鹿半島における大気中水銀濃度の測定結果

(単位:ngHg/m3

測定項目

統計値

平成

26年度

平成

27年度

金属水銀

平均値

1.6

1.6

酸化態水銀

平均値

0.002

0.003

粒子状水銀

平均値

0.009

0.009

合計

平均値

1.6

1.6

※平成26年度については、測定を開始した8月8日以降のデータを用いて平均値を算出しています。

(2)降水中水銀濃度

 辺戸岬における降水中の水銀濃度の年平均値は2.0 ng/Lであり、これまでの測定結果と大きな乖離はありませんでした。降水中の水銀については指針値等が設定されていませんが、参考として、水銀に関する水道水の水質基準値である500 ng/Lと比較すると、測定値は十分低い値でした(表4及び別添表9参照)。

表4 辺戸岬における降水中水銀濃度の年度別測定結果

(単位:ng/L)

測定項目

統計値

平成

20年度

平成

21年度

平成

22年度

平成

23年度

平成

24年度

平成

25年度

平成

26年度

平成

27年度

水銀濃度

平均値

3.4

3.1

2.4

3.0

1.9

2.2

1.4

2.0

 男鹿半島における降水中の水銀濃度の年平均値は2.9 ng/Lであり、昨年度よりもやや高い値でした。この値は、参考として、水銀に関する水道水の水質基準値と比較すると、十分低い値でした(表5及び別添表11参照)。

表5 男鹿半島における降水中水銀濃度の測定結果

(単位:ng/L)

測定項目

統計値

平成

26年度

平成

27年度

水銀濃度

平均値

2.5

2.9

※平成26年度については、測定を開始した8月25日以降のデータを用いて平均値を算出しています。

4.今後の対応

 本モニタリング調査のデータは、アジア太平洋地域における大気中の水銀の状況についての基礎資料として国際的に重要であり、将来的には水銀に関する水俣条約の有効性評価にも役立つことから、今後も継続的にモニタリング調査を実施し、広く国内外へのデータの提供や結果報告を行う予定です。

添付資料

連絡先
環境省環境保健部環境安全課
直通 03-5521-8260
代表 03-3581-3351
課長   :立川 裕隆(内線 6350)
保健専門官:土井 研治(内線 6361)
担当   :干場 裕樹(内線 6355)