平成26年12月19日
水・土壌

「日本の汽水湖~汽水湖の水環境の現状と保全~」の公表について(お知らせ)

 環境省では、淡水と海水が混合する水域であり、固有の特性を持つ汽水湖について「日本の汽水湖~汽水湖の水環境の現状と保全~」をとりまとめました。
 本資料は、汽水湖水環境に関わる方々が、汽水湖水環境の保全や対策などの取組を行うときの参考となるよう、日本の汽水湖に関する現状と課題及び水環境保全に向けての考え方をとりまとめたものです。

1. 資料の目的

 淡水と海水が混合する水域である汽水湖は、他の湖沼と同様の課題が見られるものの、汽水湖固有の特性があり、水質形成過程については未解明の部分が多く、有効な保全対策について技術が十分に構築されていない状況です。そこで、行政やNPO等の関係機関等が汽水湖水環境の保全や対策などの取組を行うときの参考資料となることを目的とし、国内の56の汽水湖について、その現状と課題を整理しつつ、汽水湖に関する知見及び水環境保全に向けての考え方をとりまとめました。本資料は、学識経験者から成る「汽水湖調査検討会」により、客観的かつ幅広い専門的知識に基づいた指導・助言を得ながらとりまとめました。

2. 資料の内容

 本資料の主な内容は以下のとおりです。詳細は、本資料及び概要版をご参照ください。

(1)対象汽水湖 [資料第1章]

○本資料で取り扱う汽水湖については国内の56湖沼を挙げた。また、日本にある面積4km2以上の湖沼(ダム湖含まず)の約1/3にあたる18湖沼が汽水湖に該当する。

○汽水湖は、半数近くが北海道に存在しており、次いで日本海側、東日本の太平洋側に多く見られている。

(2)汽水湖の特徴 [資料第2章]

○塩分の影響により成層が強固に形成されやすくなる特徴があり、その結果、底層の貧酸素化等の現象が発生しやすい。

○流域の最下流に位置することから、流域からの有機物や栄養塩類等の汚濁負荷が集積しやすい。また、下流からの塩水遡上に伴う流入負荷や塩分などの影響も受ける。

○生物にとっては、海域や淡水域と異なる独自な生息場になっており、生物の種類は塩分に応じて異なる。

○漁業や養殖などの水産活動を行う重要な場になっているほか、リクリエーション活動の場、人と自然が触れあう場として利用されている。一方、塩分を含むため、農業用水、工業用水、上水道用水としての利用は困難である。

(3)汽水湖の現状と課題 [資料第3章]

○水質の主な課題は、底層の貧酸素化とそれに伴う影響(青潮や硫化水素の問題)や植物プランクトンの異常発生(アオコ・赤潮)等がある。

○底質環境の変化(底質の還元化や細粒化)は水生生物や水質へ悪影響を及ぼすおそれがある。

○本来高い生産力を有しているが、漁獲量は長期的に見ると(30~50年前と比べて)減少傾向にある。

○人々の生活や国の施策などの社会的背景に伴って、人為的改変(干拓、淡水化、開削など)による影響を受けてきた汽水湖も多い。

(4)汽水湖の保全対策に向けて [資料第4章]

○汽水湖での対策には特性や地域のニーズを勘案した対応、塩分や底層の溶存酸素量などの状況に応じた順応的な対策等を進めることが重要であると考えられる。

○汽水湖環境を評価するためには、特性を踏まえた目安づくりが課題となる。本資料では、生物の生息環境を勘案して塩分や溶存酸素量における目安を検討した。

○効果や実用性を踏まえて、塩分調節、底層貧酸素化抑制や底質環境改善、生態系機能を活用した対策、流域対策などの特徴や事例を整理した。

○調査については、「[1]汽水湖の環境を捉えるための調査」と、「[2]対策効果を捉えるためのモニタリング調査」に分けて考え方をとりまとめた。また湖水流動・水質の数値シミュレーションの考え方(留意点)をとりまとめた。

○保全対策のより一層の推進を図っていくためには、汽水湖環境形成の仕組みに関する調査と知見の蓄積、対策実施時・事後のモニタリング調査と効果等の定量的なデータの蓄積を図るとともに、それらの知見が全国的に共有されることが重要であると考えられる。

連絡先
環境省水・大気環境局水環境課
直通  :03-5521-8315
代表  :03-3581-3351
課長  :大村 卓 (内線6610)
課長補佐:緒方 博則(内線6617)
     栗本 航