平成26年12月15日
自然環境

モニタリングサイト1000 平成26年度シギ・チドリ類調査 春期調査結果について(お知らせ)

 環境省生物多様性センターでは、モニタリングサイト1000の一環として実施しているシギ・チドリ類調査について、平成26年度の春期(2014年4月~5月)に行った調査結果をまとめました。全サイトの最大個体数の合計は53種、97,499羽で、このうち連続して調査を行っているサイトでは54,850羽と昨年度の67,078羽から減少となりました。減少の主な要因は年変動が非常に大きいヒレアシシギ類が少なかったことによるもので、ヒレアシシギ類を除くと安定して推移していました。
 また、絶滅危惧Ⅱ類のタカブシギ、セイタカシギ、ツルシギ等水田や湖沼などの内陸の湿地に生息するシギ・チドリ類7種について、モニタリングを開始した2004年以降の個体数が減少傾向にあることがわかりました。減少の要因として、水田などの農耕地や湖沼、河川などの生息地の環境の変化が考えられ、今後の動向に注意する必要があります。

1.平成26年度春期調査概要

・調査期間:平成26(2014)年4月1日から5月31日

・調査地 :115地点

・調査方法:各サイトに調査員を配置し、双眼鏡等を使用した目視により、シギ・チドリ類の個体数を種ごとにカウント

2.結果概要

 今年度の春期の調査では、日本全国の全115サイトにおけるシギ・チドリ類の最大個体数の合計は、昨年度に比べ12,245減の97,499羽でした。連続して調査が継続されている45サイトのみについて見てみると最大個体数の合計は54,850羽となり、昨年度の67,078羽から減少しました。春期の渡来数の減少や増加については、夏期の繁殖状況や越冬期の気温などが関係していると思われますが、継続サイトのうち年変動が非常に大きいヒレアシシギ類を除いた個体数は、2000年以降は5万羽前後が記録されており安定的に推移しています。

 種別に見ると、ハマシギが37,046羽で全体の38.0%を占め、最も個体数の多い種となり、次いでトウネン(12,593羽、12.9%)、チュウシャクシギ(8,999羽、9.2%)と続いており上位を占める構成種は、前年度に多かったアカエリヒレアシシギを除くと同様の状況が確認されました。

 また、前年度と比較すると、アカエリヒレアシシギとオバシギが約9割減少したほか、コアオアシシギが約8割減、タカブシギが約7割減となっています。増加した種は、ハイイロヒレアシシギが前年度の73羽に比べ4,602羽と約63倍に増加したほか、ダイシャクシギが約8割増、ヒバリシギが約7割増となっています。

 アカエリヒレアシシギとハイイロヒレアシシギは、洋上を移動中に荒天に遭遇することにより陸地で大きな群れが観察されると考えられており、年による変動が激しい種となっています。また、オバシギは、これまで一定の幅で増減を繰り返して推移していた個体数が、昨年度春期に大幅に増加し、今年度春期に減少したため大幅に減少しました。

 タカブシギ(絶滅危惧Ⅱ類)、セイタカシギ(同Ⅱ類)、オグロシギは、主に水田や湖沼などの内陸の湿地に生息する種で、モニタリングを開始した2004年以降減少傾向を示していました。同じく内陸の湿地に生息する種であるツルシギ(絶滅危惧Ⅱ類)、ウズラシギ、オジロトウネン、ヒバリシギは昨年度に比べ増加していますが、2004年以降徐々に減少傾向にあることが認められました。これら減少傾向が認められる要因として、水田や蓮田、その周辺のかんがい設備など農耕地や湖沼、小河川の状況が変化していることが考えられます。今後の動向を注意深く見守る必要があると考えられます。

 また、昨年度に続き絶滅危惧ⅠA類のヘラシギが確認されませんでしたが、北海道のコムケ湖などで調査時間外や調査サイト外で確認されています。

 詳細については、添付資料のニュースレター及び春期報告書をご覧ください。

※モニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査について

 モニタリングサイト1000(重要生態系監視地域調査)はわが国を代表する様々な生態系の変化状況を把握し、生物多様性保全施策への活用に資することを目的とした調査で、全国約1,000か所のモニタリングサイトを設置し、平成15年から長期継続的に実施しています。

 シギ・チドリ類調査は、干潟生態系の指標として干潟の微生物・ゴカイ類・貝類・甲殻類等を採食しており干潟生態系の上位に位置するシギ・チドリ類の調査を実施しているものです。代表的な全国140地点の干潟を中心としたサイト(添付資料2)において、シギ・チドリ類が日本へ渡ってくる春(4~5月)、秋(8~9月)、冬(12月~2月)の3期の個体数調査を行っています。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局生物多様性センター
直通   :0555-72-6033
センター長:中山 隆治
保全科長 :木村 元