総合環境政策

地方公共団体実行計画(区域施策編)策定マニュアルに関する検討会(第3回) 議事要旨

日時

平成28年10月21日(金) 9:30~11:30

場所

TKP東京駅日本橋カンファレンスセンター ホール2A

参加者

(委員)
佐土原委員(座長)、小林委員(副座長)、榎原委員、風見委員、川中子委員、久保田委員、澤木委員、瀬田委員、竹ケ原委員、松行委員、山本委員
(環境省)
総合環境政策局 環境計画課 今井低炭素地域づくり事業推進室長、新原課長補佐
(事務局)
中外テクノス株式会社 岩崎
エム・アール・アイリサーチアソシエイツ株式会社 池田

議事要旨

(1)地方公共団体における区域施策編に関する事例発表について(資料1-1~資料1-4)

 資料1-1~資料1-4に基づき、栃木県の川中子委員、横浜市の澤木委員、つくば市の甲斐主事(風見委員随行)、ニセコ町の山本委員より、各自治体の事例について御説明いただいた後、以下の質疑応答を行った。

  • (竹ケ原委員)ニセコ町に伺いたい。インバウンドも増加し、自治体が作成している計画の影響外の部分での排出量が増加することとなる。こうした自治体の管轄外部分の排出に関してどのように計画に盛り込んでいくべきと考えているのか。
    • (山本委員)ニセコ町では例えばホテルの単位面積当たりなどによりCO2排出量を算定しても、ホテルがどんどん増えており、総量としては増加してしまう。そのため、独自の積み上げの方法を検討することが重要と考えている。また、ホテルでは海外の投資も多く入っているが、ニセコ町が環境モデル都市であることを評価していただいている。こうした事業者にも準都市計画の検討等に関わってもらうことで、当事者意識も持って頂けており、今後もこうした取組を続けていくことが大事だと考えている。
  • (小林委員)温暖化対策のためだけの進行管理は難しく、周りを巻き込みながら、町全体の進行管理や施策とつなげていく仕組みが重要であることは共通していると言える。また、ニセコ町やつくば市の例のように子供を含めた取組でPDCAを回すことは興味深い。
     栃木県において、人口減少とCO2削減との連鎖の間で、今後どのような政策が重要と考えているか。また、環境部局から他部局への提言や他部局の施策と矛盾が生じて環境的に残念な結果となった実例等があれば伺いたい。横浜市において、環境以外で市の予算や政策決定で横串となるものがあれば伺いたい。策定プロセスになるが、県と市等の関係で計画の策定に当たり配慮すべき事項について議論いただきたい。
    • (川中子委員)総合計画では、地域創生の総合戦略とあわせて、産業と雇用を創出すると共に、人口減少を防ぐことが基本となっている。総合計画と実行計画との関連としては、産業振興の観点から、ものづくり産業や農業での省エネによるコスト削減やそれに伴う新しい環境産業の創出等が考えられる。他部署との調整という点においては、政策経営会議における協議を行っており、その議論によって他の部局との連携が生まれている。予算については、その時々の課題の大きさ等によって決まる。
    • (澤木委員)CO2削減への寄与のみでは事業が進みにくく、コスト削減による経済側面や防災性の向上、健康等の横串の視点も重視しながらやっていく必要がある。市民にとって、地球温暖化対策は分かるが何をやっていいか分からないとなった時に、直結するコベネフィットを付加する必要がある。事業部署との調整については、「温暖化対策プラス事業」という財源を有しており、各事業部署で地球温暖化対策に寄与するものについて一定の財源を追加することできる。今は温暖化対策統括本部のように環境以外で横串を通す組織はないが、分野ごとに全庁的に連携している。県との関わりについては、現在は神奈川県でも実行計画の改定が進められており、内容により連携していく必要があると考えている。
  • (瀬田委員)つくば市について、進捗管理は担当課ごとに実施するとの話があったが、当マニュアルは、地球温暖化対策の担当課以外に、どの部署がどのように利用することが想定されるか。
    • (風見委員)庁内の組織としては、環境モデル都市推進本会議を中心に進行管理を実施している。庁外の組織としては、環境都市推進委員会にて、個別の施策の進捗管理を行っている。なお、環境都市推進に委員会では、部門ごとにワーキングを作り、市役所の各部局に割り振っている。他部署との連携という視点では、健康増進のため自動車利用を控える取組を健康関連部署と検討している。
  • (榎原委員)PDCAのうちCとAについて、Checkの際に進捗が遅れている場合、その後のActについて、予算を付けて加速させる、費用対効果が悪いため中止する、他の事業効率が高そうな分野の取組へ予算を回す、等あると思うが、自治体ではどのような考え方で判断するのか。また、事例はあるか。
    • (澤木委員)PDCAを回す中でどの取組に注力するかの判断は難しいが、当市では年度当初や予算編成時等において、環境モデル都市での進捗管理等を踏まえ、特に注力したい事業に予算を割り振るなど工夫している。

(2)地方公共団体実行計画(区域施策編)のPDCAプロセスについて(資料2-1~2-2)

 資料2-1、資料2-2について、事務局より説明した後、以下の議論を行った。

  • (竹ケ原委員)環境モデル都市では、PDCAサイクルが非常にきれいに回っている。CASBEE-都市というフレームワークの活用により、都市の取組が一覧化され、アウトカムが見えるため、原因や改善の議論につながっている。区域施策編のPDCAサイクルを考える上で、そのようなツールがあるとよいのではないか。また、総排出量目標以外の設定については、何でもよいとすると定性的なものが増え収拾がつかなくなると考えられるため、民間企業が利用しているマテリアリティ分析という、自社のパフォーマンスに直結する大事な非財務項目を選び、数字で説明するフレームワークも参考になるのではないか。
  • (松行委員)Check項目について、毎年の進捗管理等では、効果が出るのに時間がかかる対策をどのように評価するかが難しいと思う。またActionにおいて、環境部局以外の部署での対応が必要となるが、他部局が所管する対策について進捗が遅れているものはそれぞれ事情があると考えられるため、地球温暖化対策という理由でどれだけActionしてもらえるかに課題があると考えられる。
  • (久保田委員)庁内関係者との連携や庁外ステークホルダーとの連携は、Doだけでなく、PlanからCheck、Actionにおける改善策の検討に至る全てのプロセスにおいて重要であることをマニュアルで強調していただきたい。その際、ステークホルダーの参画は形式的では意味がなく、実質的なレベルとする必要性を注意喚起いただきたい。地域利益の創出を温暖化対策の意義として見込むなら、なおさらステークホルダーを政策の形成段階から巻き込まないと当事者意識や主体性が得られない。また、住民参加やステークホルダーとの対話は、役所だけでうまく進められるとは限らない。その場合には、調整機能を、温暖化センター等外部の中間システムを活用することを推奨できるとよい。ただし、それが機能するには、そうした役割が条例や計画で明確に位置付けられていることが必須である。また、庁内体制として、政策間連携や政策統合の必要性をマニュアルで示すことが重要と考える。都道府県と市町村の政策連携も重要である。ヨーロッパでは自治体の気候政策のクオリティマネジメントとしての認証制度を州政府や国が運営しており、その取得や進行管理を地域エネルギーエージェンシーが支援している。このように市町村の政策の導入や進行管理を支援する機能を都道府県や都道府県レベルの温暖化防止センターが担っていく必要性についてもマニュアルで触れていただきたい。
  • (小林委員)P(計画)部分はかなり記載が充実しているが、Do、Check、Actionの部分についてはさらに記載すべき内容がある。例えばCheckの部分では、部門別排出量の把握やモニタリング、進捗管理における庁内連携等を明記するべきである。Actionにおいては、他部局との連携や予算配分への介入について記載するとよい。各主体との意見交換及び合意形成はPlanのみでなく、D、C、Aにも関連する話である。また、他の自治体との施策の連携にも触れるべきと思われる。区域施策編の関連計画は、スライドのP6に記載されている都市に関する計画以外に、農村振興計画、廃棄物や輸送関係、送電網等についても関連があるのではないか。総排出量削減目標以外の計画目標を例示するのであれば、電力の排出係数についての目標も記載してはどうか。その際は、自治体の対策努力の目標とするためには、電源構成に配慮した計算を行う必要があることに留意いただきたい。
  • (佐土原座長)全体の流れと事例が色々と紹介されているが、事例はそれぞれのことに取り組むに入り口となることから、流れと事例との関係の整理も検討いただきたい。

(3)地方公共団体実行計画(区域施策編)策定マニュアルの構成案について(資料3)

 資料3について、事務局より説明した後、以下の議論を行った。

  • (川中子委員)温室効果ガス排出量の算出作業に大きなエネルギーが割かれている現状を踏まえると、策定支援サイトにて提供される簡易推計結果において、PlanだけでなくCheckにも活用できるかが、市町村が策定する際のポイントになると思われる。また、事例編は、全国知事会で施策をまとめたツールがあり、参考に利用している自治体も多いようなので、このような事例を参考にしてサイトをリニューアルすると自治体の取組に役立つものと考える。
  • (久保田委員)コベネフィットの考え方は重要であり、策定支援サイトで事例や考え方を掲載してもらえるとよいと思う。また、環境省で取り組んでいる地域エネルギーコストの域外流出の算定について、県や市町村がアクセスできるようにして、計画策定の意義の部分を伝えるとよいと考える。
  • (風見委員)論点に含まれている類型化で、中小規模自治体では、大規模自治体と比べると実施できない施策などもあるため、規模別による類型化は盛り込んでいただきたい。また、電力自由化に伴い電力事業者からの情報入手が困難になっているため、国からの呼びかけをお願いしたい。
  • (松行委員)当方が実施したアンケートで、策定支援サイトのツールは多くの自治体に利用されているが、環境省のイベントへの参加率は実施場所から遠くなるほど低くなる傾向が見られた。市町村への支援については、各自治体から来てもらうのではなく、環境省や他の支援主体から出向くというスタンスでないと、特に義務化されていない小さな自治体の参加は厳しいと考えられる。都道府県や温暖化センター等による、きめ細かな支援体制の検討も必要だと思われる。
  • (瀬田委員)類型化の部分で、地球温暖化対策以外の効果が特に義務化されていない自治体には重要であると考えられるため、他の施策との相乗効果の視点を類型化の中に入れて検索できるようにすることが重要だと考えられる。その有無で、マニュアルを活用してもらえるかどうかも変わってくるのではないか。
  • (榎原委員)類型化について、使い方は人によって違うため、データベース化してサイトに掲載し、個別の検索ができるようにすれば、今後出てくる様々なニーズへの対応も含めて有効であると考える。
  • (佐土原座長)事例に対する期待は大きいと考える。どのような検索をして、どう使うかについては、使う側である自治体のニーズを聞いてまとめるとよい。ぜひ、今後も継続的に更新していくことも含めて成長型のものにしてほしい。

以上