環境基本計画

目次

前文

第1部 計画策定の背景と意義

第1節 環境問題の動向

1 環境問題の推移
2 環境問題の今後の動向
3 今後対応すべき環境問題の特質

第2節 各主体の意識の高まりと行動の広がり

1 国際社会の状況
2 国内社会の状況

第3節 環境基本計画策定の意義

第2部 環境政策の基本方針

第1節 基本的考え方

第2節 長期的な目標

[循環]
[共生]
[参加]
[国際的取組]

第3節 目標に係る指標の開発

第3部 施策の展開

第1章 環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現

第1節 大気環境の保全

1 地球規模の大気環境の保全
2 広域的な問題への対策
3 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策
4 多様な有害物質による健康影響の防止
5 地域の生活環境に係る問題への対策
6 大気環境の監視観測体制の整備

第2節 水環境の保全

1 環境保全上健全な水循環の確保
2 水利用の各段階における負荷の低減
3 閉鎖性水域等における水環境の保全
4 海洋環境の保全
5 水環境の監視等の体制の整備

第3節 土壌環境・地盤環境の保全

1 土壌環境の安全性の確保
2 地盤環境の保全

第4節 廃棄物・リサイクル対策

1 廃棄物の発生抑制
2 適正なリサイクルの推進
3 廃棄物の適正な処理の推進

第5節 化学物質の環境リスク対策

第6節 技術開発等に際しての環境配慮及び新たな課題への対応

第2章 自然と人間との共生の確保

第1節 国土空間の自然的社会的特性に応じた自然と人間との共生

1 山地自然地域
2 里地自然地域
3 平地自然地域
4 沿岸海域

第2節 生物の多様性の確保及び野生動植物の保護管理

第3節 地域づくり等における健全で恵み豊かな環境の確保とその活用

1 地域づくり等における様々な取組
2 自然環境の健全な利用等を図るための取組

第3章 公平な役割分担の下でのすべての主体の参加の実現

第1節 各主体の役割

1 国の役割
2 地方公共団体の役割
3 事業者の役割
4 国民の役割
5 民間団体の役割

第2節 各主体の自主的積極的行動の促進

1 環境教育・環境学習等の推進
2 環境保全の具体的行動の促進
3 情報の提供

第3節 国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行

第4節 社会経済の主要な分野における取組

1 物の生産・販売・消費・廃棄
2 エネルギーの供給・消費
3 運輸・交通
4 その他

第4章 環境保全に係る共通的基盤的施策の推進

第1節 環境影響評価等

第2節 規制的措置

第3節 経済的措置

第4節 社会資本整備等の事業

第5節 調査研究、監視・観測等の充実、適正な技術の振興等

第6節 環境情報の整備・提供

第7節 公害防止計画

第8節 環境保健対策、公害紛争処理等

第5章 国際的取組の推進

第1節 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

1 地球環境保全に関する政策の国際的な連携の確保
2 開発途上地域の環境の保全
3 国際的に高い価値が認められている環境の保全
4 国際協力の円滑な実施のための国内基盤の整備

第2節 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

第3節 地方公共団体又は民間団体等による活動の推進

第4節 国際協力の実施等に当たっての環境配慮

第5節 地球環境保全に関する国際条約等に基づく取組

第4部 計画の効果的実施

第1節 実施体制と各主体の連携

第2節 目標の設定

第3節 財政措置等

第4節 各種計画との連携

第5節 計画の進捗状況の点検及び計画の見直し


 人類は、地球環境の大きな恵みに支えられて健康で文化的な生活を送ることができる。しかしながら、近年、この人類存続の基盤である地球環境が損なわれるおそれがあることが世界の共通の認識となっている。物質的豊かさの追求に重きを置くこれまでの考え方、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式は問い直されるべきである。こうした認識に立って、我が国の環境、そして地球環境を健全な状態に保全して将来の世代に引き継ぐことは、現在の世代の責務である。これは、人類共通の課題でもある。我が国としては、自らの社会を環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会に変えていくとともに、国際的協調の下に、地球環境保全のための取組を積極的に進めていかなければならない。

 このような考え方に立ち、環境基本法(平成5年法律第91号)第15条の規定に基づき、環境基本計画を、ここに定める。

 この環境基本計画は、環境への負荷の少ない循環を基調とする経済社会システムが実現されるよう、人間が多様な自然・生物と共に生きることができるよう、また、そのために、あらゆる人々が環境保全の行動に参加し、国際的に取り組んでいくこととなるよう、「循環」、「共生」、「参加」及び「国際的取組」が実現される社会を構築することを長期的な目標として掲げた上、その実現のための施策の大綱、各主体の役割、政策手段の在り方等を定めたものである。



第1部 計画策定の背景と意義

第1節 環境問題の動向

1 環境問題の推移

 人間は、自らを取り巻く環境から食料や原料という形で資源を採取し、生活や各種の事業活動を営み、その過程で、家庭ごみ、産業廃棄物、排出ガス、排水その他の不用物を排出している。換言すれば、環境から多くの恵沢を受けるとともに環境に影響を及ぼしつつ活動してきた。環境は復元能力を有しており、人間が環境から資源を採取したり、不用物を環境に排出しても、それが環境復元能力の範囲内であれば生態系の均衡は保たれ、人類は社会経済活動を持続的に営むことができる。しかしながら、近時、人口が増大し、人類の社会経済活動が拡大するのに伴って、環境の復元能力を超えた資源採取による資源の減少と生息・生育地の縮小等による野生生物の種の減少、環境の復元能力を超えた不用物排出に伴う環境の汚染やそのおそれといった問題が発生している。

(1) 我が国の環境問題の推移

 我が国では、戦後の高度経済成長期において、結果としてみると環境への配慮が十分ではなかったことなどから、環境汚染、自然破壊が生じ、これらが大きな社会問題となった。このような問題の解決のため、「公害対策基本法」や「自然環境保全法」が制定され、これらに基づく施策の推進と住民や地方公共団体の努力、企業の公害防止のための投資、技術開発等とがあいまって、激甚な公害の克服に向けて努力がなされた結果、昭和50年代半ば頃までには顕著な成果を挙げることができた。また、すぐれた自然環境の保全のための取組も相当の成果を挙げてきた。

 我が国はその後も経済の安定的成長を続け、今日では世界の総生産の15%強を占める世界第2の経済大国となった。この間、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式が定着するとともに、人口や社会経済活動の都市への集中が一層進んだ。このような中で、大都市地域の窒素酸化物等による大気汚染、生活排水等による水質汚濁などのいわゆる都市・生活型の公害は、依然として改善が遅れ、また、経済規模の拡大等に伴い、廃棄物の排出量が増大している。さらに、地下水や水道水源の水質悪化が顕在化するとともに、化学物質の使用の増加に伴い化学物質による環境汚染の未然防止が求められる一方、新たな技術の開発・利用に伴う新たな環境汚染の可能性が指摘されている。加えて、都市においては、身近な自然が減少し、生活の中での自然との関わりが希薄化しており、他方では、農山漁村の過疎化、高齢化が進行している地域を中心に森林、農地等の有する環境保全能力の維持が困難な地域が発生している。こうした中で、人々の意識は、良好な環境の中でのゆとりとうるおいのある生活を求める方向に変化しつつある。

(2) 世界の環境問題の推移

 世界に目を転ずれば、特に、第2次世界大戦後は、人口と人類の社会経済活動が幾何級数的な伸びを示している。世界人口は、1900年には16.5億人であったものが、1950年には25.2億人となり、1990年には53億人となった。また、世界の経済規模は、1950年から1990年の間に約5倍となり、同期間中、世界の一次エネルギー供給は4倍強に、世界の肥料使用量は9倍強に拡大した。こうした中にあって、一方では先進国における資源の大量消費、不用物の大量排出、他方では、開発途上地域における人口の増大と貧困に対処するための食料需要の増大、経済発展のための開発等を背景として、地球環境の悪化が懸念されている。

 具体的には、近年、オゾン層の破壊や地球温暖化といった地球全体に影響を及ぼす環境問題、酸性雨などの一地域や一国だけに限定されない国境を越える環境問題が発生しており、熱帯林の減少や野生生物の種の減少等の問題も世界各地で進行している。また、一部の開発途上地域では、人口の急増、都市集中、工業化等を背景として、公害問題が進行している。

2 環境問題の今後の動向

(1) 世界の経済社会と環境問題の今後の動向

(i) 経済社会の動向

 世界人口は、国連の中位推計によれば、開発途上地域を中心に増大を続け、2050年には100 億人を突破するものと予測されている。また、世界的に都市部の人口の比率が増大し、特に開発途上地域では巨大都市が増加すると予測されている。経済活動について見ると、国連等によれば、先進国においては、経済成長の速度は緩やかになると予測されているが、経済規模は既に非常に高い水準にある。また、開発途上地域では、南、東アジア地域において経済成長が進むと見られるが、一部開発途上地域においては、貧困の改善が余り進まないまま人口が増大していくおそれがある。国際エネルギー機関(IEA)によれば世界の一次エネルギー需要は、趨勢では2010年には1990年の1.48倍に増加すると予測されている。国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界の農林水産業について次のような見通しが示されている。すなわち、第1に、穀物生産については、開発途上地域では生産量の伸びを人口の伸びが上回るため、2010年には開発途上地域の純輸入量が増大すると予測されている。第2に、海洋からの魚介類の総生産量については、現在の形で漁業活動が続けば、大きな伸びは期待できない見込みである。第3に、林産物需要については今後とも高い伸びが予測されている。

(ii) 環境問題の動向

 こうした人口増大や社会経済活動の拡大により、人類の生存基盤である地球環境が損なわれるおそれがある。具体的には、地球温暖化については、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、特段の対策を講じなかった場合、温室効果ガス濃度が2050年には産業革命以前の約2倍となり、地球全体の平均気温が、10年当たり約0.3度上昇し、21世紀末には今日より約3度上昇すると予測されている。また、オゾン層の破壊については、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」に基づく科学評価パネルによれば、現在のスケジュールに基づき規制が遵守された場合、他に状況の変化がないと仮定すると、オゾン層の減少傾向が見られ始めた1970年代末以前の水準にオゾン層が回復するのは2045年頃と予測されている。さらに、船舶や陸上活動等に起因する海洋汚染、過放牧等による砂漠化、非伝統的な焼畑、過度の薪炭材採取や不適切な商業伐採等による熱帯林等の森林の減少、生息・生育地の破壊や乱獲等による野生生物の種の減少、化石燃料の大量使用に起因する酸性雨問題、有害廃棄物の越境移動、開発途上地域における急激な経済活動の拡大と不十分な対策の下での燃料使用による大都市における大気汚染等の公害問題などが進行するおそれがある。

(iii) 国際的取組の必要性

 このような世界の状況は、貿易や投資の拡大等を通じて、国際的相互依存が一層強まる中で生じるものであり、一国における経済社会活動が他国における環境への負荷の原因となるなど、環境問題を地球的規模でとらえる必要が生じている。したがって、環境保全対策についても、政策の国際的な連携の強化、環境と開発の両立に向けた開発途上地域の自助努力への支援等の国際的取組を推進することが必要となっている。

(2) 我が国の経済社会と環境問題の今後の動向

(i) 経済社会の動向

 我が国では、人口について見ると、高齢化が一層進むとともに、人口増加率の減少が続き、さらに2010年頃以降は人口が減少すると予測されている。地域的には、21世紀初頭まで大都市圏、地方中枢都市等では人口の自然増が続く一方、農山漁村地域を中心に人口が自然減となる市町村が拡大すると予測されている。経済成長について見ると、労働力人口の伸びが低下し、2000年頃を頂点に減少することや労働時間が減少すること等を背景に経済成長率は長期的には低下の傾向にあると予測されている。また、高齢化の進展に伴い、貯蓄率が減少すると予測されている。こうした中で、21世紀初頭までの期間が、環境保全に関するものを含む社会資本整備の上で重要になっている。産業構造について見ると、ソフト化・サービス化・情報化が進展すると予測されている。また交通需要について見ると、伸びが緩やかとなるが、輸送人数や輸送貨物重量の伸びに比べて輸送距離を加味した輸送人キロ・トンキロの面で大きな伸びが予測されている。家計について見ると一人当たりの家計消費が着実に伸びることが予測されている。国民生活について見ると、労働時間の短縮に伴い自由時間が増加すると予測されている。

(ii) 環境問題の動向

 このように、我が国の経済社会は成熟化に向かいつつあるが、既に大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動が定着しており、また、都市化の一層の進展が見込まれる状況にある。このような状況の中で、従来からの地域的な公害、自然保護等に関する問題にとどまらず、通常の社会経済活動の拡大による環境への負荷の増大が大きな問題となっている。これによって、社会そのものの持続可能性が低下していることが懸念される状況にある。また、我が国は、地球環境に大きな負荷を与えている先進国の一員であり、こうした我が国は、地球全体として環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を構築するとの観点からも自らの取組を積極的に進めていく必要がある。

 例えば、省エネルギー等に係る各般の施策が十全に実施されることを前提とした場合、2000年度の二酸化炭素排出量は1990年度実績と比べて一人当たりでは概ね安定化すると予測されており、地球温暖化防止行動計画の第1項の目標は達成できる見通しであるが、総量では若干増加するものと予測される。地球温暖化を防止するため二酸化炭素の排出量の抑制が求められており、地球温暖化防止行動計画の第2項の目標の達成に向け、今後とも、一層の努力を要する状況にある。特に、エネルギー消費に関連して、いわゆる民生・運輸部門の排出量伸び率が相対的に大きいと見られることから、これへの対応が課題となっている。また、現在の生産と消費の様式がそのまま続けば廃棄物発生量の増大が予測されるため、生産・流通・消費等の社会経済活動の各段階で廃棄物発生の一層の抑制を図ることが課題となっている。

 大都市地域においては、自動車等から排出される窒素酸化物等による大気汚染や生活排水等による水質汚濁等の都市・生活型公害への対策を進めることが引き続き課題となっている。さらに、化学物質の使用の増加に伴う環境汚染の未然防止や新たな技術の開発・利用に伴う新たな環境汚染の可能性への対応が今後とも課題である。加えて、現在のような酸性雨が今後も降り続けるとすれば、将来、生態系への影響をはじめ、様々な被害が生じることも懸念されている。

 また、都市部における水辺や緑などの身近な自然の保全や、農山漁村地域における森林、農地等の有する環境保全能力の維持が課題であるとともに、野生生物の生息数の減少や種の絶滅のおそれが問題となっている。これらの課題に取り組むことは、国民の自然とのふれあいや快適な環境(アメニティ)等に対するニーズの高まりにも応えることになる。

3 今後対応すべき環境問題の特質

 これまでに述べた環境問題の推移と今後の動向にかんがみると、今後対応すべき環境問題には以下のような特質がある。

 第1に、二酸化炭素吸収源として森林が果たす役割や窒素酸化物、硫黄酸化物が原因となって生ずる酸性雨による生態系への影響のおそれ等に見られるように、環境問題を人の健康、生活環境、自然環境といった分野別にとらえるのではなく、環境そのものを総合的にとらえる必要がある。

 第2に、今日の環境問題の多くは、都市・生活型公害や地球温暖化問題等に見られるように、通常の事業活動や日常生活一般による環境への負荷の増大に起因する部分が多い。その解決のためには、経済社会システムの在り方や生活様式を見直していくことが必要であり、そのために、広範な主体による自主的、積極的な環境保全に対する参加が必要である。

 第3に、地球環境問題に見られるように、今日の環境問題は地球規模の空間的広がりと将来世代にもわたる時間的広がりを持ち、先進国と開発途上地域がそれぞれの立場で、かつ、共同して取り組むべき人類共通の課題となっている。このため、国際的連携を強化するとともに、科学的知見の充実を図りつつ、長期的視野に立った予防的措置が必要である。

第2節 各主体の意識の高まりと行動の広がり

 人類の生存基盤を脅かすおそれが生じるに至った環境問題の深刻さについて、国、地方公共団体、事業者、国民といった社会を構成する各主体の認識が深まりつつある。深刻な環境問題を克服していくためには、各主体の公平な役割分担の下に、現在の経済社会システムや生活様式を変革し、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築する必要があるとの合意が生まれつつある。これは、限りある地球の環境の中で生きる人間にとっての環境倫理としても主張されるまでになっている。このような認識とともに、人々の様々な行動と各主体間の協力が広がりつつある。

1 国際社会の状況

 国際社会においては、地球規模の環境問題の重要性に対する認識の高まりを踏まえ、1992年(平成4年)に国連環境開発会議が開催され、持続可能な開発を実現していくための国際社会の合意を見た。その成果として、具体的には、環境と開発に関するリオ宣言や行動計画であるアジェンダ21が採択されるとともに、「気候変動に関する国際連合枠組条約」及び「生物の多様性に関する条約」に多くの国が署名した。こうした国連環境開発会議の成功には我が国も貢献した。さらには、国連環境開発会議を受けて、その合意を着実にするため、国連に「持続可能な開発委員会」が設立されるなど国際的取組が進展している。

 また、経済協力開発機構(OECD)等において、環境政策と経済政策の統合について種々の取組がなされている。

2 国内社会の状況

 国内においては、このような世界の動きとも連携して、以下のような動きがある。

(i) 国の動き

 近年、窒素酸化物等に関する自動車排出ガス対策、生活排水対策、野生生物保護等各課題についての取組や環境教育をはじめとした環境保全に係る広範な活動が進められている。また、平成元年には地球環境保全に関する関係閣僚会議を設置し、平成2年には地球温暖化防止行動計画を決定する等地球環境問題について取組を強化してきている。

 さらに、今日の環境問題の対象領域の広がりに対応するため、国連環境開発会議の成果等も踏まえ、平成5年に環境保全に関する新たな理念や多様な政策手段を示す環境基本法を制定した。また、アジェンダ21で示された諸課題に対する我が国としての取組を明らかにした「アジェンダ21」行動計画を同年末にいち早く作成し、国連に報告した。

(ii) 地方公共団体の動き

 従来より地方公共団体は、公害問題に対処し、自然環境の保全に取り組むなど重要な役割を果たしてきたが、近年、環境問題の広がりに対応した環境管理計画の策定、環境保全に関する国際協力の推進等新たな取組を進める団体が増加している。さらに、内外の地方公共団体間の国境を越えた連携が進められている。

(iii) 事業者の動き

 事業者においては、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会システムに対する問題意識や事業活動に際しての環境への負荷の低減の必要性の認識が深まるとともに、経済団体や各企業による地球環境保全のための憲章や自主的な環境に関する行動計画の策定、環境保全のための体制の整備、自主的な環境監査の実施、技術移転への取組等自主的積極的行動が進展している。

(iv) 国民の動き

 国民においては、自らの生活に起因する環境への負荷に対する問題意識や、大量消費・大量廃棄型の生活様式の改善の必要性の認識が深まっている。さらに、リサイクル運動、ナショナルトラスト運動、緑化活動、身近な水域の保全活動等が広まるとともに、国際的な活動も進展している。

第3節 環境基本計画策定の意義

 以上のような環境問題の動向と特質に適切に対応するためには、各主体の意識の高まりと行動の広がりを踏まえつつ、国の環境政策はもとより、地方公共団体、事業者、国民に期待される取組をも含めて、環境の保全に関する取組を総合的かつ計画的に推進する必要がある。

 この環境基本計画は、社会の構成員であるすべての主体が共通の認識の下に、それぞれ協力して環境の保全に取り組んでいくため、21世紀半ばを展望して、環境基本法の理念を受けた環境政策の基本的考え方と長期的な目標を示すとともに、21世紀初頭までの施策の方向を明らかにするものである。

第2部 環境政策の基本方針

第1節 基本的考え方

 これまで人類は、環境から種々の恵沢を享受する一方で、環境に様々な影響を与えながら生活を営んできた。環境は、生態系が微妙な均衡を保つことにより成り立っており、人類の存続の基盤である。この限りある環境は、ひとり人類のみならずすべての生命を育む母胎であるとともに、人類は、この生存の基盤としての環境を将来の世代と共有している。

 しかしながら、近年における人口増加や人類の活動の拡大・高度化に伴う資源採取及び不用物の排出の増大等は環境の持つ復元能力を超え、公害や自然破壊をはじめとする環境問題が生じた。これは、従来の農耕文明から、産業革命以降の工業文明へと進み、さらには、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式が定着し、人間活動が飛躍的に拡大した結果に他ならない。今日の人間の活動による環境への負荷の集積は、地域の環境にとどまらず、人類の生存基盤として一体不可分である地球環境に取り返しのつかない影響を及ぼすおそれが生じてきており、次の世代への影響も懸念されるまでになっている。

 環境の持つ特性やその価値の全貌については、いまだ人類のうかがい知れない多くの部分が存在するが、地球環境が損なわれつつあるとの懸念や環境保全のための予防的方策をとる必要があるとの認識は国際的に共通のものとなり、世界各国は、持続可能な開発を進めていく必要性を認識する点で一致している。これまで地球環境に大きな負荷を与えてきた我が国をはじめとする先進国としては、現代の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式の在り方を問い直し、生産と消費のパターンを持続可能なものに変えていく必要がある。さらに、先進国が互いに協調を図りつつ、グローバルパートナーシップの下、途上国の実情に即した支援を積極的に行うなど、国際的取組を進めることが必要である。我が国では、物質的な豊かさのみの追求が環境の危機を招いているとの認識が深まり、あらゆる主体が、環境を保全するために必要な行動をとろうとの機運の高まりが見られる。経済社会システムや生活様式の変革には痛みも伴うものであるが、あらゆる者が、公平な役割分担の下に、環境と経済の統合に向けた変革に取り組んでいかなければならない。

 我々は、健全で恵み豊かな環境が人間の健康で文化的な生活に不可欠であることにかんがみ、環境の恵沢を現在及び将来の世代が享受できるようにしていかなければならない。同時に、人類共有の生存基盤である有限な地球環境は、将来にわたってこれを維持していかなければならない。その際には、自然の摂理と共に生きた先人の知恵も受け継ぎつつ、現代の文明のあり方を問い直し、生産と消費のパターンを持続可能なものに変えていくことが肝要である。

第2節 長期的な目標

 上記の環境政策の基本的考え方を踏まえ、以下に示す「循環」、「共生」、「参加」及び「国際的取組」を環境政策の長期的な目標として、人間と環境との間に望ましい関係を築くため総合的に施策を推進する。

(1) 人と環境の望ましい関係

 環境は、大気、水、土壌及び生物等の間を物質が循環し、生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っている。人類存続の基盤である有限な環境を、健全で恵み豊かなものとして維持していくには、これらの環境の構成要素が良好な状態に保持され、また、その全体が自然の系として健全に維持されることが必要である。

 このためには、科学的知見の充実の下に、予見的アプローチを用い、環境への負荷が環境の復元能力を超えて重大な、あるいは取り返しのつかない影響を及ぼすことがないようにするとともに、生産活動等において自然の物質循環を活用しつつ、人間が多様な自然・生物と共に生きることを確保する必要がある。

(2) 長期的な目標

[循環]

 大気環境、水環境、土壌環境等への負荷が自然の物質循環を損なうことによる環境の悪化を防止するため、生産、流通、消費、廃棄等の社会経済活動の全段階を通じて、資源やエネルギーの面でより一層の循環・効率化を進め、不用物の発生抑制や適正な処理等を図るなど、経済社会システムにおける物質循環をできる限り確保することによって、環境への負荷をできる限り少なくし、循環を基調とする経済社会システムを実現する。

[共生]

 また、大気、水、土壌及び多様な生物等と人間の営みとの相互作用により形成される環境の特性に応じて、かけがえのない貴重な自然の保全、二次的自然の維持管理、自然的環境の回復及び野生生物の保護管理など、保護あるいは整備等の形で環境に適切に働きかけ、その賢明な利用を図るとともに、様々な自然とのふれあいの場や機会の確保を図るなど自然と人との間に豊かな交流を保つことによって、健全な生態系を維持・回復し、自然と人間との共生を確保する。

[参加]

 以上に掲げた「循環」、「共生」の実現のためには、有機的連携の下に、長期的視野に立って総合的かつ計画的に施策を展開する必要があることはもとより、浪費的な使い捨ての生活様式を見直す等日常生活や事業活動における価値観と行動様式を変革し、あらゆる社会経済活動に環境への配慮を組み込んでいくことが必要である。

 このため、あらゆる主体が、人間と環境との関わりについて理解し、汚染者負担の原則等を踏まえ、環境へ与える負荷、環境から得る恵み及び環境保全に寄与し得る能力等それぞれの立場に応じた公平な役割分担の下に、相互に協力・連携しながら、環境への負荷の低減や環境の特性に応じた賢明な利用等に自主的積極的に取り組み、環境保全に関する行動に参加する社会を実現する。

[国際的取組]

 今日の地球環境問題は、ひとり我が国のみでは解決ができない人類共通の課題であり、各国が協力して取り組むべき問題である。我が国の社会経済活動は、世界と密接な相互依存関係にあるとともに世界の中で大きな位置を占めており、地球環境から様々な恵沢を享受する一方、大きな影響を及ぼしている。我が国は、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を率先して構築するにとどまらず、深刻な公害問題の克服に向けた努力の結果顕著な成果を挙げてきた経験や技術等、その持てる能力を活かすとともに、我が国の国際社会に占める地位に応じて、地球環境を共有する各国との国際的協調の下に、地球環境を良好な状態に保持するため、国のみならず、あらゆる主体が積極的に行動し、国際的取組を推進する。

 これらによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築する。

第3節 目標に係る指標の開発

 この環境基本計画は、「循環」、「共生」、「参加」及び「国際的取組」が実現される社会を構築することを長期的な目標とし、そのための施策の方向を明らかにするものである。これらの目標の達成に向け施策の効果的な実施を図るためには、これらの目標の達成状況や目標と施策との関係等を具体的に示す総合的な指標あるいは指標群が定められることが望ましい。こうした指標については内外で調査研究が活発に行われているものの、現時点ではその成果が十分ではなく、本計画に組み入れられる状況には至っていない。このため、環境基本計画の長期的な目標に関する総合的な指標の開発を政府において早急に進め、今後、その成果を得て、環境基本計画の実行・見直し等の中で活かしていくものとする。

第3部 施策の展開

 前記の環境政策の長期的な目標を実現するため、環境への負荷の少ない循環を基調とした経済社会システムを構築すること、健全な生態系を維持・回復しつつ自然と人間との共生を確保すること、これらを実現していくための基盤として、公平な役割分担の下でのすべての主体の参加による環境保全の具体的取組を展開すること、そして、国際的な取組を積極的に推進すること、という4つの考え方を、施策の展開すべき方向とし、かつ、各種の施策相互の有機的連携を図りつつ、総合的かつ計画的に施策を展開する。

 その際には、今日の環境問題が、環境そのものを総合的にとらえて対応していく必要があること、通常の事業活動や日常生活一般による環境への負荷の増大に起因する部分が多いこと、地球規模の空間的広がりと将来世代にわたる時間的広がりを持つ人類共通の課題となっていることにかんがみ、問題の性質に応じて、環境影響評価、規制的措置、経済的措置、社会資本整備、環境教育・環境学習、事業者・国民の積極的な取組の支援、科学技術の振興等の多様な施策手法を適切に組み合わせ活用することが重要である。

 また、個別の課題については、それぞれの課題の状況や各種対策の効果等について検討を行い、課題相互の関連や施策相互の関連に配慮しつつ、必要に応じて目標や指針を設定し、総合的に施策の展開を図る必要がある。個別の課題に係る数量的な目標としては、環境の状況、環境への負荷、個別の施策に係る事業量、主体別の取組等に関して、本計画に記述したものなどがある。これらの目標は、個別の法令に基づき、又はそれぞれの決定の枠組みの中で定められるものであるが、今後は、環境基本計画の基本的な方向に沿い、総合的な見地からの所要の検討を行いつつ、必要に応じ見直しを行うとともに、施策の効果的な実施を図る上で必要な分野については、具体的目標を設定し、個別の計画を策定することとする。

(注) 以下、参考に掲げる目標等は、それぞれ根拠となる法律、関係閣僚会議等の手続により定められるものであるが、本計画の具体化を図る上で重要と考えられることから、環境基本計画を定める閣議の参考として収めたものである。

 なお、参考に掲げる目標等は、この環境基本計画の閣議決定の日現在のものである。

第1章 環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現

(1) 基本的な方向

 大気環境、水環境、土壌環境等への負荷が自然の物質循環を損なうことによる環境の悪化を防止するため、資源・エネルギー利用の循環・効率化のための投資や技術開発を積極的に行い、生産工程の改善、物流・人流の合理化、環境への負荷の少ない製品の利用、適正なリサイクル、廃棄物の適正な処理、新エネルギーや再生可能エネルギーの開発利用の推進等により、経済社会システムにおける物質の循環をできる限り確保する。

 その際、科学的知見を充実していくとともに、重大な、あるいは取り返しのつかない破壊のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことをもって環境悪化を予防するための費用対効果の高い手段をとることを延期する理由とすべきではないという考え方に基づいて施策を進める。

 このため、大気環境、水環境、土壌環境等への負荷を、特定の分野に偏することなくできる限り低減させることを目指し、廃棄物・リサイクル対策や化学物質の環境リスク対策、技術開発等に際しての環境配慮、新たな課題への対応等の横断的な施策も含め、各般にわたる施策を実施する。

(2) 施策の総合的かつ計画的な実施

 環境の状態や環境への負荷量等について、「環境基本法」に基づいて定められる環境基準など、必要に応じて目標や指針を設定し、以下の節に掲げる施策を、相互の有機的連携を図りながら、計画的に実施する。特に、環境基準未達成項目については、できる限り早期に達成するための方策について総合的に検討する。

第1節 大気環境の保全

 大気環境には境界がない。こうしたことから、大気環境への負荷により、影響の空間的な広がりの違い等に応じて、大気の組成の変化等による地球規模の問題、移流・反応等により生ずる広域的な問題、大都市圏等における集積による問題、多様な有害物質による健康影響のおそれの問題、地域における生活環境に係る問題といった、多様な問題が発生している。

 これらの問題の解決のため、以下のような基本的な方向に沿って、各般の施策を実施する。

(i) 環境基準等の目標の達成・維持等

 科学的知見の充実を図りながら、問題の性質に応じて環境基準等の環境上の条件の目標や環境への負荷の低減の目標等を設定し、その達成・維持に向けて、適切な施策を推進する。

(ii) 多様な社会経済活動に伴う環境への負荷の低減

 生産活動、交通、日常生活等多様な社会経済活動から生ずる環境への負荷の低減等の対策を総合的に推進する。

(iii) 水環境、土壌環境、生態系との関連等への着目

 大気環境への負荷が生態系に与える影響や水環境、土壌環境との関連、緑地の有する大気浄化、気象緩和等の機能にも着目して、適切な施策を推進する。

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(参考)

1 環境基本法に基づく大気の汚染及び騒音に係る環境基準(概要)

二酸化窒素 1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmのゾーン内又はそれ以下であること

二酸化硫黄 1時間値の1日平均値が0.04ppm以下であり、かつ、1時間値が0.1ppm以下であること

一酸化炭素 1時間値の1日平均値が10ppm以下であり、かつ、1時間値の8時間平均値が20ppm以下であること

浮遊粒子状物質 1時間値の1日平均値が0.10mg/m3以下であり、かつ、1時間値が0.20mg/m3以下であること

光化学オキシダント 1時間値が0.06ppm以下であること

騒音 地域の類型及び時間の区分ごとに基準値が定められている。道路に面する地域については、別の値が定められている。また、新幹線鉄道騒音及び航空機騒音についても、別に定められている。

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1 地球規模の大気環境の保全

 地球温暖化及びオゾン層破壊は、長期的な環境問題であり、地球規模の深刻な影響が懸念されることから、科学的知見の充実を図りながら、予防的見地に立って着実に対策を進める。

(1) 地球温暖化対策

 気候変動問題が地球規模の問題であり、一部の国のみによる取組では不十分であることにかんがみ、国際的な連携の下に、究極的には、「気候変動に関する国際連合枠組条約」が目的に掲げる「気候系に対する危険な人為的影響を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を目指す。この場合「そのような水準は生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続可能な様態で進行できるような期間内に達成されるべきである」との規定に配慮する。

 中期的には、全締約国の取組が不可欠であること及び条約が2000年以降の措置を明確に定めていないことから、それらを検討する必要があることが、先進国共通の認識となっていることを踏まえ、国際的な枠組みづくりに努力するとともに、我が国としても国際的な連携の下で一層積極的な対策の実施に努める。

 当面は、地球温暖化防止行動計画を推進することを国際的に公約した国連環境開発会議の経緯を踏まえ、国際的な連携の下に、地球温暖化防止行動計画に定める目標を達成することとする。このため、同計画の実施状況を把握し、その結果や科学的知見の集積等を踏まえ、以下のような施策を積極的に推進する。

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(参考)

 2 地球温暖化防止行動計画の目標等(平成2年10月地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)

(行動計画の目標)

温室効果ガスの抑制目標は次のとおりとする。

(1) 二酸化炭素については、先進主要諸国がその抑制のために共通の努力を行うことを前提に、次の目標を定める。

 (i) 二酸化炭素の排出抑制のため、官民挙げての最大限の努力により、本行動計画に 盛り込まれた広範な対策を実行可能なものから着実に推進し、一人当たり二酸化 炭素排出量について2000年以降概ね1990年レベルでの安定化を図る。

 (ii)上記(i)の諸措置とあいまって、さらに、太陽光、水素等の新エネルギー、二 酸化炭素の固定化等の革新的技術開発等が、現在予想される以上に早期に大幅に 進展することにより、二酸化炭素排出総量が2000年以降1990年レベルで安定 化するよう努める。

(2) メタンについては、現状の排出の程度を超えないこととする。また、亜酸化窒素等その他の温室効果ガスについても、極力その排出を増加させないこととする。

また、二酸化炭素吸収源については、国内の森林・都市等の緑の保全整備を図るとともに、地球規模の森林の保全造成等に積極的に取り組むこととする。

(行動計画の期間)

行動計画の期間は、1991年(平成3年)から2010年(平成22年)までとし、2000年(平成12年)を中間目標年次とする。その間、国際的な動向や科学的知見の集積等を踏まえつつ、必要に応じ行動計画の見直しを行い、機動的に対応して行くこととする。

3 1990年度の我が国の温室効果ガスの排出量(「『気候変動に関する国際連合枠組条約』に基づく日本国報告書」(平成6年9月)による)

二酸化炭素排出量

一人当たり  2.59炭素換算トン

総量  約3億2000万炭素換算トン

メタン排出量     1,380千トン

亜酸化窒素排出量     48千トン

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(1) 二酸化炭素排出抑制対策

(i) 二酸化炭素排出の少ない都市・地域構造の形成

 都市緑化の推進によるヒートアイランド現象の緩和、省エネルギー型建築物の普及促進、建築物における自然エネルギーの利用促進、コージェネレーション(熱電併給システム)の導入促進、地下鉄排熱等のヒートポンプによる利用、地域の熱供給システム等の普及促進、廃棄物焼却余熱の供給、下水汚泥等のエネルギー利用等を進める。

(ii) 二酸化炭素排出の少ない交通体系の形成

 自動車単体からの排出量低減、鉄道・船舶・航空機等のエネルギー効率向上、電気自動車等の低公害車の導入、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心とした鉄道・海運の積極的活用を通じた適切な輸送機関の選択の促進、トラック輸送における輸送効率向上、旅客輸送における公共交通機関整備・利用促進、沿道環境保全に配慮した円滑な自動車走行確保のためのバイパス・環状道路等の道路整備、交通管制システム整備等を進める。

(iii) 二酸化炭素排出の少ない生産構造の形成

 製造業において、燃焼効率の向上、省エネルギー型設備・生産工程の導入、工場間排熱利用等を進める。農林水産業において、農業機械等のエネルギー利用効率の改善を図るとともに、自然エネルギー等の利用を進める。建設業において建設機械のエネルギー利用効率の改善等を進める。

(iv) 二酸化炭素排出の少ないエネルギー供給構造の形成

 発電効率の向上等エネルギー転換効率の向上を進める。

 発電部門において、原子力の開発利用については、原子力基本法等に基づき、放射性廃棄物の処理処分対策等を充実させつつ、安全性の確保を前提として進めるとともに、水力、地熱、太陽光、風力、天然ガス等の利用を進める。また、太陽電池、燃料電池等の分散型電源の導入等を進める。

 都市ガスのLNG化、電力の負荷平準化等を進める。

(v) 二酸化炭素排出の少ないライフスタイルの実現

 リサイクル、過剰包装等の見直し、二酸化炭素排出の少ない製品等の普及促進、サマータイム(夏時間)の検討、労働時間の短縮、冷暖房温度の適正化、エネルギー効率の高い機器の利用促進等を進める。

(2) メタンその他の温室効果ガス排出抑制対策

 メタンの排出の抑制のため、廃棄物の処理、農業、エネルギーの生産・利用において、これまで行ってきた対策等を一層進めるとともに、新たな対策の検討及び技術開発を進めつつ、対策を逐次進める。亜酸化窒素について、放出実態の把握を行いつつ、放出抑制対策について検討する。その他の物質について、地球温暖化への寄与の把握等を実施する。

(3) 二酸化炭素の吸収源(森林等の緑)対策

 多様な森林の整備と体系的な保全、持続可能な森林経営、森林の保全に係る民間活動の支援等により森林の適切な保全整備を進める。公共公益施設等の緑化、公園緑地の整備等による都市緑化、国民参加の緑化等により、都市等における緑の保全創出を進める。熱帯木材貿易の適正化、木材資源の有効利用により木材資源利用の適正化を進める。

(4) 科学的調査研究、観測・監視の推進

 機構解明及び将来予測、我が国等への影響の評価、対策の立案・評価、アジア・太平洋地域を対象とした総合的な地球温暖化研究等の科学的調査研究を進める。人工衛星等による観測・監視、データの流通等を進める。

(5) 技術開発及びその普及

 温室効果ガス排出抑制のための技術、温室効果ガス吸収・固定化のための技術、温暖化適応技術等に係る技術の開発及びこれらの普及等を進める。

(6) 普及・啓発

 地球温暖化に関する正確な情報の普及及び地球温暖化防止行動計画の周知を図り、地球温暖化防止への自主的な取組に対し支援・助成を行う。また、環境教育等を通じて国民各層の自主的積極的な行動を促進する。(2) オゾン層保護対策

 「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」に基づき、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」に定められたスケジュールの的確かつ円滑な実施を確保するための特定フロン等の製造規制並びに排出の抑制及び使用の合理化等の対策を実施する。

 また、排出の抑制及び使用の合理化を一層進めるため、特定フロン等の破壊処理技術等の関連技術開発、適切な役割分担に基づく回収等に係る社会システムの形成の促進、普及啓発を通じ、特定フロン等の回収・再利用・破壊を促進する。

 さらに、他の環境影響に配慮しつつ代替物質及び技術の開発等を進めるとともに、オゾン層破壊メカニズム等に係る調査研究、オゾン層の状況等の観測・監視を実施する。

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(参考)

4 「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」による特定フロン等の生産等の規制スケジュール(平成4年11月の締約国会合において改定、概要)

CFC     1996年全廃

ハロン     1994年全廃

四塩化炭素   1996年全廃

1,1,1-yTvWQxY 1996年全廃

HCFC    2030年全廃

HBFC    1996年全廃

臭化メチル   1995年以降1991年レベルに凍結

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2 広域的な問題への対策

 酸性雨、光化学オキシダント等は、大気環境への負荷の移流・反応等により生ずる広域的な問題である。現在のような酸性雨が今後も降り続くとすれば、将来、生態系への影響をはじめ、様々な被害が生じることも懸念される。また、東アジア地域の状況を考慮すると、我が国の酸性雨は将来的には現状よりも悪化することが懸念される状況にある。また、光化学オキシダントによる汚染も、その改善が進んでいない状況である。これらについて、以下の施策を推進する。

(1) 酸性雨等に係る対策

 酸性雨等、大気環境への負荷が生態系等に影響を及ぼすおそれのある問題については、その長期的影響には未解明な点も多く、科学的知見の充実を図りながら、予防的見地に立って対策を進める必要がある。このため、大都市圏や大陸からの移流による影響の可能性にも着目しつつ、監視・観測を充実するとともに、汚染実態、汚染機構、生態系への影響等について調査研究を進めて知見を充実し、地方公共団体とも連携して広域的に対策を推進する。

(2) 光化学オキシダント対策

 光化学オキシダントによる汚染が広域に広がっていることを踏まえ、酸性雨対策等とも連携し、汚染機構等に関する調査研究、広域的な監視、原因物質の排出抑制対策などについて、地方公共団体とも連携して、広域的に総合的な対策を推進する。 

3 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策

 大都市圏等では、窒素酸化物、浮遊粒子状物質による汚染の改善が進んでおらず、環境基準の達成率は低い水準である。浮遊粒子状物質の中でもディーゼル排気微粒子による健康影響が懸念されている。これらについて、以下の施策を推進する。

(1) 窒素酸化物対策

 自動車等の移動発生源、工場・事業場等の固定発生源等各種の発生源に対する排出抑制対策等を総合的に実施する。

(i) 自動車排出ガス対策

 自動車について、平成元年の中央公害対策審議会答申に基づく自動車排出ガス低減長期目標を極力早期に達成するなどにより排出ガス規制を適切に実施する。併せて、事業者や地方公共団体による低公害車導入及び燃料供給施設整備の支援、国による率先導入、技術開発等により、低公害車の普及を促進する。

 特に、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」に基づく特定地域においては、当面、自動車排出窒素酸化物の総量の削減に関する基本方針及び自動車排出窒素酸化物総量削減計画に定める目標を達成するため、上記施策に加え、以下のような施策を推進する。

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(参考)

5 自動車排出窒素酸化物の総量の削減に関する基本方針(平成5年1月閣議決定)及び自動車排出窒素酸化物総量削減計画(平成5年11月都府県知事策定、内閣総理大臣承認)に定められた環境基準の達成に係る目標(概要)

特定地域において、二酸化窒素に係る環境基準を平成12年度までに概ね達成する。

6 自動車排出窒素酸化物総量削減計画(平成5年11月都府県知事策定、内閣総理大臣承認)に定められた負荷量削減に係る目標(概要)

特定地域における自動車排出窒素酸化物の総量について、平成12年度を目標年度として設定された削減目標量を達成する。

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(i) 車種規制を円滑に実施するとともに流入車対策を実施する。

(ii) 自動車排出窒素酸化物総量削減計画に定める普及台数目標の達成に向けて、低公害車の普及を促進する。

(iii) 共同輸配送、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心とした鉄道・海運の積極的活用を通じた適切な輸送機関の選択の促進、物流拠点の整備等により物流対策を進める。

(iv) 公共交通機関の整備・利便性の向上、徒歩や自転車利用のための施設整備等により人流対策を進める。

(v) 沿道環境保全に配慮した交通の分散・円滑化のためのバイパス・環状道路等の整備、交差点改良、交通規制の効果的な実施、駐車対策、交通管制システムの高度化、情報提供システムの整備等により交通流対策を進める。

(vi) 土壌や植物の活用等による直接浄化システムの早期実用化等により局地汚染対策を進める。

(vii) 自動車使用合理化指導、適切な自動車使用方法の普及啓発等を進める。

(viii) 自動車排出窒素酸化物総量削減計画の進行管理を適切に実施するとともに、窒素酸化物総量の一層の削減を図るための諸施策に関する調査検討を進める。

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(参考)

7 自動車排出窒素酸化物総量削減計画(平成5年11月都府県知事策定、内閣総理大臣承認)に定められた低公害車普及台数の目標(概要)

各都府県を合計すると、特定地域において平成12年度までに30万台程度を目標として普及に努めることとなっている。

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(1) 固定発生源対策

 固定発生源について、排出抑制対策を引き続き適切に実施する。

(i) その他の対策

 群小発生源、建設機械等について適切な対策を実施するとともに、船舶からの排出ガス削減手法を検討する。また、緩衝緑地等の整備を進める。

(2) 浮遊粒子状物質対策・ディーゼル排気微粒子対策

(i) 浮遊粒子状物質対策

 浮遊粒子状物質について、工場・事業場や自動車排出ガスに対する排出規制を引き続き実施するとともに、汚染が広域に広がっている点も踏まえつつ、二次粒子生成過程も含めて汚染機構等に関する調査を進め、特に高濃度汚染が認められる大都市地域を中心に、必要に応じ、より総合的な対策を実施する。

(ii) ディーゼル排気微粒子対策

 浮遊粒子状物質の構成要素でもあるディーゼル排気微粒子については、自動車排出ガス低減長期目標を極力早期に達成するなどにより、自動車排出ガス規制を適切に実施するとともに、健康影響等に関する調査研究を進め、重点的に対策を進める。

 なお、上記の窒素酸化物対策は、ディーゼル車に対する車種規制、自動車交通量の軽減等を通じてディーゼル排気微粒子対策にも資するものである。

(3) スパイクタイヤ粉じん対策

 積雪寒冷地域におけるスパイクタイヤ粉じんの発生を防止するため、スパイクタイヤの使用規制を適切に実施するとともに、普及啓発、冬期における道路環境整備、代替タイヤ等の開発支援等の施策を総合的に進める。

(4) 硫黄酸化物対策等

 硫黄酸化物等の大気汚染物質について、引き続き適切な対策を実施する。

4 多様な有害物質による健康影響の防止

 有機塩素系溶剤等の有害大気汚染物質については、一般環境におけるモニタリング調査によれば直ちに問題となる水準ではないが、健康影響の懸念から注目されている。

 大気環境を通じて人の健康等に影響を与えるおそれのある各種の有害大気汚染物質について、優先的に取り組むべき物質に関して健康影響や発生源に係る知見等を充実し、モニタリングを拡充することをはじめとして、体系的な取組を進める。

5 地域の生活環境に係る問題への対策

 生活環境を保全する上では、大気汚染のほか、主に人の感覚に関わる問題である騒音・振動・悪臭が重要課題となっている。騒音・振動・悪臭は、苦情件数は減少傾向にあるものの、各種公害苦情件数の中では大きな比重を占めており、発生源も多様化している。また、各種交通機関に係る騒音の環境基準達成状況もはかばかしくない。この他、光害などの新たな問題も生じている。これらについて、以下の施策を推進する。

(1) 騒音・振動対策

 騒音・振動の防止のため、以下の施策を推進する。

(i) 自動車交通騒音・振動対策

 自動車交通騒音を防止するため、単体規制等の発生源対策を進めるほか、沿道環境保全に配慮した交通の分散・円滑化のためのバイパス・環状道路整備等の交通流対策、遮音壁・植樹帯整備等の道路構造対策、土地利用の適正化等の沿道対策等の充実について検討し、それらの対策を総合的に進める。

 また、自動車交通振動対策を適切に実施する。

(ii) 新幹線鉄道騒音・振動、航空機騒音対策

 新幹線鉄道騒音・振動、航空機騒音を防止するため、発生源対策、土地利用対策、周辺の防音対策等を進める。

(iii) 在来鉄道騒音・振動対策

 在来鉄道騒音・振動を防止するため、騒音防止対策に係る指針の策定の検討を含め、適切な対策を進める。

(iv) 工場・事業場及び建設作業騒音・振動対策

 工場・事業場及び建設作業からの騒音、振動を防止するため、発生源に対する規制を進めるとともに、技術開発の促進、移転に対する支援等の土地利用対策等を進める。

(v) 近隣騒音対策

 近隣騒音を防止するため、普及啓発等の対策を進める。

(2) 悪臭対策

 悪臭防止のため、排出規制、移転に対する支援等の土地利用対策、普及啓発等を進める。

(3) その他大気に係る生活環境保全対策

 降下ばいじん等への対策を引き続き実施するとともに、様々な大気の状態や光害等が生活環境に及ぼす影響等について検討を進める。

6 大気環境の監視・観測体制の整備

 大気環境の状況を把握し、その保全のための施策を適切に実施するため、効果的な監視等の体制

整備が必要である。

 地域的な問題から地球規模の問題まで、地域的広がりの違いなど問題の性質に応じて、地方公共団体と連携し、また、人工衛星、船舶等を活用しつつ、大気環境の状況に係る監視・観測を適切に実施する。

 このため、体系的な監視・観測体制を適切に整備する。

 また、地域住民の参加を得た監視・観測の活用について、その手法を検討する。

第2節 水環境の保全

 水は、環境中を蒸発、降水、浸透、貯留、流下、海洋への流入等により自然的に循環し、その過程で、汚濁物質が浄化される。一方、水は、社会経済活動を通じ様々な形態で循環利用されており、利用の各段階で水環境への負荷が発生している。このため、環境への負荷が水の自然的循環の過程における浄化能力を超えることのないよう、大気環境や土壌環境等を通じた水環境への負荷や水環境の悪化に伴う大気環境や生態系への影響にも配慮しつつ、水質、水量、水生生物、水辺地を総合的にとらえ、水環境の安全性の確保を含めて、水利用の各段階における負荷を低減し、水域生態系を保全するなど、対策を総合的に推進する。

1 環境保全上健全な水循環の確保

 過疎化、高齢化が進行している地域を中心に森林、農地等の環境保全能力の維持が困難な地域が発生し、都市化の進展に伴う雨水の地下浸透の減少により湧水が枯渇し、水利用の各段階において水環境への負荷等が生じている。これらにより、水の自然的循環の態様に変化が生じており、このため、以下の施策を推進する。

(i) 環境基準等の目標の達成・維持等

 水利用の各段階において水環境への負荷を低減させるため、水の循環利用を念頭に置きつつ科学的知見を充実させ、人の健康の保護及び生活環境の保全に関する環境基準等の目標を設定し、これらの達成・維持に向け適切な施策を進める。生活環境の保全に関する環境基準等については、水域類型指定後に利用目的の変化等状況の変化が認められる水域があることから、定期的に、その達成状況を踏まえつつ必要な見直しを行い、その達成を推進する。また、水生生物への影響にも留意した環境基準等の目標については調査検討を推進する。

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(参考)

8 環境基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準(概要)

人の健康の保護に関する環境基準 カドミウム、全シアン、鉛、六価クロム、砒素、総水銀、アルキル水銀、PCB、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタ ン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン及びセレンについて基準値が定められている。

生活環境の保全に関する環境基準

河川 利用目的に応じた水域類型ごとに、水素イオン濃度、生物化学的酸素要求量、浮遊物質量、溶存酸素量及び大腸菌群数について基準値が定められている。

湖沼 利用目的に応じた水域類型ごとに、水素イオン濃度、化学的酸素要求量、浮遊物質量、溶存酸素量、大腸菌群数、全窒素及び全燐について基準値が定められている。

海域 利用目的に応じた水域類型ごとに、水素イオン濃度、化学的酸素要求量、溶存酸素量、大腸菌群数、n-ヘキサン抽出物質、全窒素及び全燐について基準値が定められている。

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(ii) 健全な水循環機能の維持・回復

 健全な水循環機能の維持・回復を図る必要がある。このため、森林については、複層林施業や天然林施業等の適正な森林整備を通じて保水能力の高い森林の育成に努めるなど適切な維持管理を進める。また、水を貯留するとともに地下水かん養能力等を有する水田等の農地の適切な維持管理を進める。河川、湖沼等の自然浄化能力の維持・回復を図るため、水質、水量、水生生物、水辺地等の保全を進める。また、都市域における健全な水循環を確保するため、下水処理水等の効果的利用及び緑化、透水性舗装や浸透ますの設置等による雨水の適正な地下浸透を進める。海域においては、自然海岸、干潟、藻場、浅海域の適正な保全を推進するとともに、自然浄化能力の回復に資するよう、必要に応じ、人工干潟・海浜等を適切に整備する。

(iii) 地域の実情に即した施策の推進

 地域において健全な水循環を確保するため、地域の実情に即し、地域の住民・事業者等の参加・協力を得つつ、水質、水量、水生生物、水辺地を含めた水環境を総合的に評価する手法について調査検討し、適切な施策を推進する。

(iv) 公平な役割分担

 水環境保全のための流域の地方公共団体間の協力、住民の自主的積極的取組の促進等、各主体の公平な役割分担の下で施策の推進方策を調査検討する。

2 水利用の各段階における負荷の低減

 水利用の各段階において水環境への負荷が発生している。こうした負荷の発生形態に応じて、汚染の未然防止の観点も含め、適切な施策を推進する。

(1) 発生形態に応じた負荷の低減

 汚濁負荷の発生形態に応じ、以下の施策を推進する。

(i) 工場・事業場については、適切な排水規制を行うとともに、環境への負荷を低減する見地から、水の循環利用等を組み込んだ生産工程の導入等を促進する。また、建築物等における水の循環利用、雨水利用を促進する。

(ii) 生活排水については、下水道整備を促進するほか、地域の実情に応じ、コミュニティプラント、農業集落排水施設、合併処理浄化槽等各種生活排水処理施設の整備を進める。

 また、生活排水対策重点地域においては、生活排水対策推進計画を策定、実施するとともに、台所等からの汚濁負荷を低減するため、その方法等について必要な情報の提供、普及啓発を進める。

(iii) 市街地、農地等の非特定汚染源については、汚濁負荷量の把握等の調査研究、都市排水や農業等における対策技術の開発・普及等の適切な施策を推進する。

(2) 負荷低減技術の開発・普及

 下水道の高度処理技術の一層の開発・普及を推進するとともに、排水規制の対象となっていない小規模事業場や一般家庭等からの負荷を低減するため、小規模事業場に適用可能な排水処理技術や合併処理浄化槽における高度処理技術の開発・普及を進める。

(3) 水環境の安全性の確保

 水環境の安全性を確保するため、以下の施策を推進する。

(i) 人の健康や水生生物に影響を及ぼす化学物質については、水環境への負荷を低減する見地から、排出の少ない生産工程の導入や使用方法の改善等により適切に管理する。また、有害物質に係る排水規制、地下浸透規制、農薬規制等を適正に実施するとともに、適正な廃棄物処理の確保、適切な事故時対策等を実施する。

(ii) 排出源が生活系、産業系など多岐にわたるトリハロメタン原因物質については、水道の浄

水場での塩素注入によりトリハロメタンが生成されることにかんがみ、浄水場での対策を踏まえて、生活排水対策、工場・事業場の排水規制等を実施する。また、河川等における浄化対策を進める。

(iii) 有害物質に汚染された地下水については、汚染機構の解明手法及び浄化技術の開発を推進し、適切な対策を実施する。

(iv) 硝酸性窒素による地下水汚染については、汚染原因と汚染状況との因果関係に関する調査研究を進めるとともに、汚染原因及び地域の特性に対応した適切な対策についても検討を進める。

(v) 有害物質に汚染された海域等の底質については、除去等の対策を適切に実施する。

3 閉鎖性水域等における水環境の保全

 湖沼や内海内湾等の閉鎖性水域及び都市内河川においては、有機性汚濁の状況は近年横ばい又は一部で改善の傾向にあるものの、他の水域と比較して改善が進んでいない状況にあり、以下の施策を推進する。

(i) 都市内河川、閉鎖性水域等水質改善が進まない水域等については、集水域における汚濁負荷の発生状況、水域への蓄積状況等を総合的に把握するための調査を行い、効果的な対策を実施する。

(ii) 水質汚濁の著しい都市内河川、水道水源として利用されている水域等の水質改善を図るため、排水規制、下水道等生活排水処理施設の整備、河川等における浄化対策や流量の確保等の各種施策を総合的に実施する。

(iii) 琵琶湖等の指定湖沼や東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海等の特に総合的な対策が必要な湖沼や内海内湾については、湖沼水質保全計画や総量削減計画等において、目標等を定め、対策を着実に推進するとともに、さらに住民参加による生活排水対策等を一層進める。

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(参考)

9 湖沼水質保全特別措置法に基づく指定湖沼の湖沼水質保全計画(都道府県知事策定 、内閣総理大臣同意)の目標(概要)

環境基準の確保を目途としつつ、5年を計画期間とし、指定湖沼ごとに設定された水質目標を達成する。

10 化学的酸素要求量に係る総量削減基本方針(平成3年1月内閣総理大臣決定)及び化学的酸素要求量に係る総量削減計画(平成3年3月都府県知事策定、内閣総理大臣承認)の目標(概要)

東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海における化学的酸素要求量で表示した汚濁負荷量について、平成6年度を目標年度として設定された削減目標量を達成する。

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(iv) 富栄養化を防止するため、湖沼、海域における窒素、燐に係る水質環境基準の類型当てはめを推進するとともに、対象水域において下水道等生活排水処理施設の整備の促進、排水規制等を実施し、水質を改善する。

(v) 有機性汚泥が蓄積している河川、湖沼、港湾等の水域については、しゅんせつ等の浄化対策を適切に実施する。

4 海洋環境の保全

 海洋においては、油汚染の発生確認件数については減少の傾向が見られるものの、依然として廃棄物等による汚染の発生が見られる状況にあり、以下の施策を推進する。

(i) 陸域からの負荷の流入、拡散状況等について調査検討し、適切な対策を進める。

(ii) 船舶等からの油、有害液体物質等、廃棄物の排出等の規制等を適切に実施する。

(iii) タンカー等の油汚染事故等の予防措置を講ずるとともに、事故に対する準備及び油濁損害賠償保障制度の充実等の対策を推進する。

(iv) 船舶からの排出ガス削減手法を検討する。

(v) 海底における活動からの汚染の防止方策について検討する。

(vi) 浮遊性廃棄物、大規模油汚染対策、非有機スズ系船底塗料等に関する調査研究、技術開発を進める。

5 水環境の監視等の体制の整備

 水環境の状況を把握し、保全施策を適正に実施するため、効果的な監視等の体制整備が必要であり、以下の施策を推進する。

(i) 関係省庁、地方公共団体の連携の下に、環境基準設定項目等に係る監視等を効果的に実施するため、水質測定計画の策定・実施体制を適切に整備する。また、国が実施すべき要監視項目その他必要な項目に係る監視等を効果的に実施する体制を適切に整備する。

(ii) 生物指標により水環境を総合的に評価する手法を開発し、住民の協力も得て適切な調査を実施する。

(iii) 地下水の汚染の地域的な広がりについて、総合的な調査、監視等を実施する。

(iv) 海洋環境保全のための総合的な調査、監視等を実施する。

第3節 土壌環境・地盤環境の保全

 土壌環境は、水質浄化、食料・木材生産等の機能を持ち、物質の循環や生態系維持の要として重要な役割を果たしており、その適切な保全を推進する。また、地盤沈下の防止を図るとともに、地下における健全な水循環を確保するため、地盤環境保全のための施策を推進する。

1 土壌環境の安全性の確保

 農用地の土壌については汚染回復対策が着実に進む一方、市街地土壌については、地下水調査や工場跡地の再開発等に関連して汚染が判明する事例が増加の傾向にある。 

 このため、人の健康や生態系への影響に関する科学的知見を充実しつつ、水環境等への影響に配慮し、環境基準の設定等を行い、土壌汚染の未然防止と回復及び健全な土壌環境の維持を図るため、大気環境や水環境等との汚染物質の移動に留意して、以下の施策を推進する。

(i) 有害物質の排水規制、ばい煙の排出規制、農薬規制等を適正に実施する。

(ii) 鉱害防止対策を進める。

(iii) 農用地土壌汚染、市街地土壌汚染に関する調査測定等を適切に実施する。

(iv) 環境基準に適合しない土壌については、汚染の程度や広がり、影響の態様等に応じて、環境基準の達成に努める。このため、農用地土壌汚染対策を推進するとともに、汚染土壌回復技術の開発等、市街地土壌汚染対策を進める。

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(参考)

11 環境基本法に基づく土壌の汚染に係る環境基準(概要)

カドミウム、全シアン、有機燐、鉛、六価クロム、砒素、総水銀、アルキル水銀、PCB、銅、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエ タン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン及びセレンについて基準値が定められている。

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2 地盤環境の保全

 かつて全国に発生した激しい地盤沈下は沈静化の方向に向かっているものの、一部では依然として地盤沈下が発生していることなどから、地盤環境保全のため以下の施策を推進する。

(i) 地盤沈下の原因となる地下水採取の規制、緑化や透水性舗装、浸透ますの設置等による雨水の地下浸透の促進対策、地下水採取量を削減するための代替水対策等の地下水保全対策を推進し、健全な水循環を確保する。

(ii) 地下空間利用に伴う地下水位の低下のメカニズムについて調査研究するとともに、地下水位低下防止技術の開発等を進める。また、地下空間の利用に伴う環境保全上の支障を防止するための措置を検討する。

(iii) 地盤沈下とこれに伴う被害の著しい地域について、地盤沈下防止等対策要綱等に定める目標等を達成するため、適切な対策を実施する。

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(参考)

12 地盤沈下防止等対策要綱(昭和60年4月地盤沈下防止等対策関係閣僚会議決定、関東平野北部にあっては、平成3年11月決定)の目標(概要)

濃尾平野、筑後・佐賀平野、関東平野北部における地下水採取量について、平成6年度(関東平野北部にあっては平成12年度)を目標年度として設定された目標を達成する。

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(iv) 全国の地盤沈下の状況、地下水取水量等を的確に把握するため、監視 測定を実施する。

第4節 廃棄物・リサイクル対策

 社会経済活動が、大量生産・大量消費・大量廃棄型となり、高度化するにつれ、廃棄物の量の増大、廃棄物の質の多様化、最終処分場の残余容量の逼迫等が生じている。これらに伴い、資源採取から廃棄に至る各段階での環境への負荷が高まっていることを踏まえ、社会を持続可能なものにするため、経済社会システムにおける物質の循環を促進し、環境への負荷を低減する。

 廃棄物・リサイクル対策の考え方としては、まず、第1に、廃棄物の発生抑制、第2に、使用済製品の再使用、そして第3に、回収されたものを原材料として利用するリサイクルを行い、それが技術的な困難性、環境への負荷の程度等の観点から適切でない場合、環境保全対策に万全を期しつつ、エネルギーとしての利用を推進する。最後に、発生した廃棄物について適正な処理を行うこととする。

 また、今後は、廃棄物・リサイクル対策に関する責任やコストのうち、必要なものについて、事業者、消費者、地方公共団体及び国の間で適切に分かち合うとともに、製品の開発、製造、輸入、流通、消費、排出、回収、再生利用の各段階において、廃棄物の発生を抑制し、リサイクルを推進する誘因が得られるような経済社会システムの構築を進めていく必要がある。

 このため、廃棄物のなくなる社会を目指し、できる限り廃棄物の発生抑制、リサイクルの推進を実行するため、役割分担の在り方等に関する検討を進めつつ、適切な対策を推進する。

 また、廃棄物・リサイクル対策の目標については、今後、早急に検討を進め、必要に応じて、その設定や見直しを行う。

1 廃棄物の発生抑制

 廃棄物の発生を抑制するため、リサイクルの推進のほか、事業者において、使い捨て製品の製造販売や過剰包装の自粛、製品の長寿命化等を図るなど製品の開発・製造段階、流通段階での配慮が行われることを促進するとともに、国民の生活様式の見直し、使い捨て製品の使用の自粛等を促進する。また、廃棄物の発生抑制のため、一般廃棄物に関して従量制による処理手数料の徴収を推進する等の経済的措置を活用する。さらに、ごみ減量に関する国民運動を推進するとともに、廃棄物の発生状況に係る情報の整備・提供を推進する。

 また、有害廃棄物の発生を抑制するため、製品の設計・製造段階で配慮が行われること等を推進する。

2 適正なリサイクルの推進

(i) 使用済製品の再使用の推進

 容器等の再使用が行いやすいよう規格の統一化、使用済製品の交換、販売等のための機会の提供等を推進する。

(ii) 回収・再生利用の推進

 環境への負荷の低減のため、廃棄物の再生利用、再生資源の回収・利用を促進することが必要である。

 このため、リサイクルが容易な製品づくりを事業者が行うことを促進し、市町村における分別収集の推進の徹底や商品の流通経路等を利用した回収システムの充実、古紙の回収システムの健全な維持を図る。リサイクル推進のための預託払戻制度(デポジット・リファンド・システム)等の経済的措置の活用の検討や事業者による製品等の引取りに関する仕組みについての検討を行う。また、事業者が、再生資源の利用率目標の達成及び再生資源の新規用途の開発などの個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進するとともに、再生資源やリサイクル製品は、初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえつつ、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することなどにより、リサイクル製品の利用・市場の育成等を推進する。さらに、リサイクル製品の規格化の検討を進める。これらの基盤として、異業種間の交流・協力等を進めつつリサイクル技術の開発・普及を促進し、リサイクル推進のための啓発や国民運動を進め、リサイクルの実施状況、効果等に係る情報の整備・提供を推進する。

 建設事業に伴って生ずる土砂、汚泥、廃材等のリサイクル等については、情報交換の促進等によりその広域利用を含め推進する。

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(参考)

13 「再生資源の利用の促進に関する法律」に基づく事業者の判断基準(平成3年10月通商産業省令)に示された目標

古紙利用率 55%(平成6年度)

ガラス容器のカレット利用率 55%(平成7年度)

14 産業構造審議会廃棄物処理・再資源化部会答申(平成2年11月)に示された目標

スチール缶の再資源化率 60%以上(平成7年)

アルミ缶の再資源化率 60%(平成6年度末)

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(iii) 包装廃棄物の分別収集・包装材の再生利用の推進

 包装材について、廃棄物の減量化を図り環境への負荷を低減するため、市町村が包装廃棄物を分別収集し、事業者が引取り・再生利用を行う新しいシステムの導入を検討し、必要な措置を講ずる。このため、事業者がそれぞれの引取り・再生利用に要した費用を価格に適切に反映させる形での経済的措置の活用を含むシステム等について幅広く検討する。

(iv) リサイクル関連施設整備の推進

 一般廃棄物について、廃棄物循環型のごみゼロ社会を目指し、21世紀初頭を目途に、廃棄物のほとんどすべてを、単に燃やして埋める処理から、極力リサイクルを推進し、焼却処理の際には熱エネルギーを活用するものへの転換を推進する。

 リサイクル関連施設については、廃プラスチックの油化、焼却灰の溶融固化、余熱利用、廃棄物発電、ごみ固形燃料化等の普及・技術開発等を推進する。

(v) リサイクルにおける環境配慮

 リサイクルを推進するに当たっては、リサイクルの環境に与える影響を把握し、リサイクルされた原材料を使用した製品等に含まれる可能性のある有害物質等に関する情報の把握を行い、必要な施策を検討する。

   3 廃棄物の適正な処理の推進

(i) 処理施設の確保

 廃棄物の適正な処理を推進するため、環境への配慮を十分に行い、最終処分場・中間処理施設を確保する。最終処分場について、地方公共団体間での共同処理を推進するとともに、大都市圏における都府県の区域を越えた広域的な対応を推進する。

 排出事業者が処理責任を負う産業廃棄物の処理施設について、公共の関与も含め整備を促進する。

(ii) 市町村と事業者の協力

 事業者において、製品が廃棄物となった場合における処理の困難性についてあらかじめ評価し、適正な処理が困難とならないように製品の開発、市町村等に対する情報提供が行われることを促進する。また、家庭等から排出される一般廃棄物は市町村が処理することが原則となっているが、適正な処理が困難となっているとして定められている廃大型電気冷蔵庫等の指定一般廃棄物の処理について、消費者が新規製品を購入する際等において販売店が廃棄物を引き取り、可能な範囲で市町村以外のシステムで処理するなど製品の製造事業者等が市町村の処理が適正に行われることを補完するために行う協力を促進する。

(iii) 廃棄物処理における環境配慮等

 最終処分場の環境保全対策として、モニタリング・受入管理を強化するとともに埋立終了後の長期管理を強化する。最終処分場の信頼性の向上に向けた構造の高度化等の調査検討等を実施する。

 有害廃棄物の適正処理を推進するため、必要に応じ、特別管理産業廃棄物の指定追加、廃棄物の最終処分に関する基準の強化、適正処理技術の開発・普及等を実施する。廃棄物の有害性の評価に関する知見の充実等の廃棄物の処理が環境に与える影響に関する知見を充実する。また、廃棄物が適正に運搬・処理されたことを把握するための管理票システムであるマニフェスト制度の拡充等により不法な処分を防止する。

 不法な処分がなされた際の適切かつ迅速な原状回復方策を確保する。各地域におけるごみの散乱防止のための対策の枠組みの整備を促進するほか、必要な啓発等を行う。

第5節 化学物質の環境リスク対策

 化学物質は、様々な用途に有用性を持ち、広範に用いられているが、その中には、生産、使用、廃棄等の仕方によっては人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがある。また、化学物質の中には、有害性等に関する情報の少ない物質も数多く、燃焼過程や環境中での反応等により生成する物質についても、環境影響についての配慮が必要である。

 生産、使用、廃棄等の仕方によっては人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれのある化学物質について、こうした影響を未然に防止し、より安全な環境を確保するため、これらの化学物質が環境の保全上の支障を生じさせるおそれ(以下「環境リスク」という。)をできる限り定量的に評価し、環境リスクを総体として低減させることを目指し、各般の施策を実施する。

(i) 環境リスクの評価

 生産、使用、廃棄等の仕方によっては人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれのある化学物質について、国際的な環境リスク評価・管理プログラムと積極的に連携しながら、こうした化学物質の特性(健康影響、生態影響、分解・蓄積性等)、環境中での動態(環境への排出状況、媒体間移動、環境中での反応、生物代謝等)、環境中濃度、人への暴露量など、環境リスクに関する知見の充実、情報の適切な提供を行い、環境リスク評価を実施するとともに、より効果的な環境リスク評価・管理手法を検討する。その際、大気、水等の環境の複数の構成要素を通じた環境リスクや、複数の物質による環境リスクに関する知見の充実に努め、これを活用する。

(ii) 環境リスクの低減

 上記のような化学物質について、その生産、使用、廃棄等の各段階で環境リスクを低減させるため、環境への排出形態等に応じ、有害化学物質の大気、水、土壌等への排出の規制等の施策のほか、化学物質の有害性の程度に応じた製造・使用の管理、代替技術・代替製品の開発・普及、回収された有害化学物質の適正な処理等の対策を実施する。

第6節 技術開発等に際しての環境配慮及び新たな課題への対応

 新しい技術の開発・利用に伴い、新たな環境影響の可能性が指摘されている。このため、技術の利用に伴う環境への影響のおそれが予見される場合には、環境に及ぼす影響について、技術開発の段階から十分検討し、未然防止の観点から必要な配慮がなされるよう、適切な施策を実施するよう努める。また、先端技術の成果の環境保全分野への応用を積極的に進める。

 これらのほか、前節までに記述された課題以外のもので、今後、人の活動による環境への負荷により環境が悪化するおそれが生じる場合には、科学的知見の充実の下に、予見的アプローチを用いて、環境への影響を未然に防止するための施策を実施するよう努める。

第2章 自然と人間との共生の確保

(1) 基本的な方向

 持続可能な形で環境を賢明に利用することを通じて、地域地域における多様な生態系の健全性を維持・回復するとともに、日常生活、事業活動、余暇活動等の様々な場の中で自然と人間との豊かなふれあいを保ち、自然と人間との共生を確保する。

 このため、国土空間の自然的社会的特性を踏まえつつ、以下のような基本的な方向に沿って各般の施策を実施する。その際、健全な大気環境、水環境、土壌環境等の保全施策との有機的連携の確保に配慮する。

(i) 原生的な自然の保全

 世界的、全国的、地域的にみて価値の高いまとまりのある原生的な自然について、公有地化や厳格な行為規制等により厳正に保全し、核となる生態系として維持を図る。同時に、精神的な拠りどころとして、生態系研究の拠点として、あるいは、自然環境保全のための適正な管理の下での自然体験・学習等の場として利用する。

(ii) すぐれた自然の保全

 野生生物の生息・生育、自然風景、希少性等の観点からみてすぐれている自然について、行為規制や保全事業等により適正に保全し、良好な生態系として維持を図る。同時に、必要な基盤的な施設の整備を行い、すぐれた自然風景や野生生物とのふれあいの場、学術研究の場等として利用する。

(iii) 森林、農地、水辺地等における自然環境の維持・形成

 森林、農地、水辺地等について、適切な農林水産業活動を通じて環境保全能力の適切な維持を図るほか、公共的施設整備等の事業、雑木林等についての民間保全活動の促進等により、自然の復元力を有効に活用しつつ、自然環境を維持・形成し、多様な生物の生息・生育地等としてできる限り全体的に自然環境の量的な確保を図る。同時に、持続的な形での生物資源の収穫の場、緑・水・さわやかな大気等とのふれあいの場等として利用する。

(iv) 自然的環境の整備

 自然が減少した所等において、公共的施設整備等の事業や民間の緑化等の活動の促進等により、小動物生息空間、公園、緑地、海浜等の自然的環境を適正に整備し、地域の自然の特性を考慮しつつ自然的環境の回復及び量的確保を図る。同時に、日常生活における緑・水・小動物等とのふれあいの場等として利用する。

(v) 野生動植物の保護管理

 生態系の基礎的構成要素である野生動植物の群集、種、個体及びその生息・生育環境について、適正に保護管理する。

(2) 施策の総合的かつ計画的な実施

 こうした施策は、地域、国土、地球のそれぞれのレベルでの生態系の営みの科学的な解明を図りつつ、また、自然とのふれあいに関する国民意識の動向等を踏まえつつ、生態系の健全性の維持・回復や人と自然とのふれあいの確保などの自然と人間との共生のあらゆる局面において適切に展開されることが必要である。このため、以下の節に掲げる施策を、相互の有機的連携を図りつつ、また、必要に応じ適切な目標を設けつつ計画的に実施する。

第1節 国土空間の自然的社会的特性に応じた自然と人間との共生

 地域の特性に応じた自然を的確に保全しつつ、人が自然に学び、自然を体験し、自然の恵みを感じられるよう、様々な自然とのふれあいの場を確保するため、また、生産力の基礎を自然の物質循環の中に置くなど自然環境を基盤としている食料や木材等の持続可能な生産活動を通じて環境の恵沢を確保するため、山地自然地域、里地自然地域、平地自然地域及び沿岸海域としてとらえられるような国土空間の自然的社会的特性を踏まえつつ、以下のような施策を総合的かつ計画的に推進する。その際には、第1に日本列島が属する亜熱帯から亜寒帯までの幅広い気候帯のそれぞれの特性について、第2に山岳、森林、草地、農耕地、街路樹、宅地等の緑、湖沼、河川、湿原、干潟、海岸、サンゴ礁等の多様な地域の自然の特性について、第3に流域などの自然のまとまりについて、それぞれ十分配慮することが重要である。また、森林等の緑がもつ二酸化炭素吸収等の機能にも着目しつつ施策を実施する。

1 山地自然地域

 人口密度が低く、森林率が高い地域としてとらえられる山地自然地域については、全国の自然林の多くが存在し、大型獣の生息も多く確認される。この地域は、他の地域に比べ全体として人間の働きかけによる自然改変の程度が小さく、国土全体の生態系からみると骨格的な部分を形成しているという特性がある。高い価値を有する原生的な自然やすぐれた自然の的確な保全と自然体験型の自然とのふれあいや研究の場としての活用を図ることが必要であり、また、過疎化、高齢化が著しく進行している地域を中心に森林、農地等の有する環境保全能力の維持を図ることが重要である。このため、以下のような施策を推進する。

(1) 原生的な自然及びすぐれた自然の保全

(i) 我が国を代表する典型的な生態系をなしている自然や傑出した自然景観を有する自然等であって、まとまりのある原生的な自然について、原生自然環境保全地域、森林生態系保護地域、国立公園等の各種制度を活用し、厳格な行為規制や公有地化等により、厳正に保全する。

(ii) 生物の重要な生息・生育地、すぐれた自然の風景地、脆弱性、希少性、固有性等を有する自然等のいわゆるすぐれた自然について、鳥獣保護区、自然公園、自然環境保全地域、文化財保護、保安林等の各種制度を活用し、行為規制等により、適正に保全する。特に、保全すべき自然状態が人為的あるいは非人為的に劣化している場合には、植生復元や景観維持等のための事業を進める。

(iii) 上記(i)、(ii)の各種の保全地域間の有機的な連携の確保を検討する。

(iv) これらの保全地域において、自然探勝・野生動物観察等の自然体験型の自然とのふれあいを確保するため、必要な施設の計画的な整備を進めるとともに、自然解説等を実施する。特に重要な地域については、総合的かつ計画的に、用地取得・施設整備を進めるとともに、管理運営体制を適切に整備する。

(2) 森林、農地、水辺地等における自然環境の維持・形成

(i) 地域の特性に応じて、天然林施業、複層林施業等による適切な森林の造成及び保育・管理を図るため、森林整備事業を計画的に進める。

(ii) 消費者等との連携の下に、地域の特性に応じて、農地等における生物の生息・生育地の確保に配慮し、農薬や化学肥料等の節減等により環境保全型農業を促進する。

(iii) 地域の特性に応じて、雇用の場の確保及び農山村環境の整備等の総合的な対策も通じた、森林、農地等における自然環境を維持・形成する担い手の確保を進める。

(iv) 公的関与等により、地域住民参加による集落共同活動を通じて、地域の特性に応じて、農地等の適切な維持のための活動を進める。

(3) 社会資本整備等の事業の実施時の配慮

 道路、河川、農業農村等の社会資本整備等の事業の実施に当たって、地域の特性に応じ、生物の生息・生育地の確保や景観保全への配慮を進める。

2 里地自然地域

 人口密度が比較的低く、森林率がそれほど高くない地域としてとらえられる里地自然地域については、二次的自然が多く存在し、中大型獣の生息も多く確認される。この地域は、農林水産業活動等様々な人間の働きかけを通じて環境が形成され、また、野生生物と人間とが様々な関わりを持ってきた地域で、ふるさとの風景の原型として想起されてきたという特性がある。すぐれた自然の的確な保全と自然とのふれあいの場としての活用を図ることが必要であり、また、過疎化、高齢化が進行している地域を中心に森林、農地等の有する環境保全能力の維持を図り、雑木林等の二次的自然を適切に管理することが重要である。このため、以下のような施策を推進する。

(1) すぐれた自然の保全

(i) 生物の重要な生息・生育地、すぐれた自然の風景地、脆弱性、希少性、固有性等を有する自然等のいわゆるすぐれた自然について、鳥獣保護区、自然公園、自然環境保全地域、文化財保護、緑地保全地区、保安林等の各種制度を活用し、行為規制等により、適正に保全する。特に、保全すべき自然状態が人為的あるいは非人為的に劣化している場合には、植生復元や景観維持等のための事業を進める。

(ii) 上記の保全地域において、生きものと親しみ保健休養を図るなどの自然とのふれあいの場を確保するため、必要な施設の計画的な整備を進めるとともに、その健全な利用を促進する。特に重要な地域については、総合的かつ計画的に、用地取得・施設整備を進めるとともに、管理運営体制を適切に整備する。

(2) 森林、農地、水辺地等における自然環境の維持・形成

(i) 地域の特性に応じて、天然林施業、複層林施業等による適切な森林の造成及び保育・管理を図るため、森林整備事業を計画的に進める。

(ii) 消費者等との連携の下に、地域の特性に応じて、農地等における生物の生息・生育地の確保に配慮し、農薬や化学肥料等の節減等により環境保全型農業を促進する。

(iii) 地域の特性に応じて、雇用の場の確保及び農山村環境の整備等の総合的な対策も通じた、森林、農地等における自然環境を維持・形成する担い手の確保を進める。

(iv) 公的関与等により、地域住民参加による集落共同活動を通じて、地域の特性に応じて、農地等の適切な維持のための活動を進める。

(v) 里山の雑木林、谷津田や水辺地等の自然で、地域全体で維持していくことが必要と認められるもの等について、税制措置の活用や公的関与等により、民間保全活動とも連携しつつ、適切な維持・形成を進める。また、二次的自然とのふれあいの場として活用するため、生きものと親しむ場や自然歩道等の整備を進める。

(3) 公園、緑地等の整備

 地域の特性に応じて、公園、緑地等の公共的施設の整備を進める。

(4) 社会資本整備等の事業の実施時の配慮

 道路、河川、農業農村等の社会資本整備等の事業の実施に当たって、地域の特性に応じて生物の生息・生育地の確保や景観保全への配慮を進めるとともに、緑地や親水空間等の整備を進める。

(5) 計画的な生物の生息地の確保

 各種の保全地域や森林、農地、水辺地等における多様な自然環境の有機的連携により、計画的な生物の生息地の確保を進める。

3 平地自然地域

 人口密度が高く、農耕地等も多く存在し、市街地等の大部分が存在する地域としてとらえられる平地自然地域については、高密度な人間活動が行われているという特性がある。残された自然林や豊かな生物相を維持する湿地等の的確な保全を図ることが必要である。また、森林、農地等の適切な維持・形成を図るとともに、雑木林や屋敷林等の二次的自然を適切に管理することが重要である。さらに、身近な自然とのふれあいの場の確保を図るほか、緑地や水辺地の持つ大気浄化や気象緩和等の機能を活用することが重要である。このため、以下のような施策を推進する。

(1) すぐれた自然の保全

(i) 生物の重要な生息・生育地、すぐれた自然の風景地、脆弱性、希少性、固有性等を有する自然、都市近郊に残された良好な樹林地等のいわゆるすぐれた自然について、鳥獣保護区、自然公園、自然環境保全地域、文化財保護、緑地保全地区、風致地区、保安林等の各種制度を活用し、行為規制等により、適正に保全する。

(ii) 上記の保全地域において、日常生活圏における自然とのふれあいを確保するため、必要な施設の計画的な整備を進めるとともに、その健全な利用を促進する。

(2) 森林、農地、水辺地等における自然環境の維持・形成

(i) 地域の特性に応じて、天然林施業、複層林施業等による適切な森林の造成及び保育・管理を図るため、森林整備事業を計画的に進める。

(ii) 消費者等との連携の下に、地域の特性に応じて、農地等における生物の生息・生育地の確保に配慮し、農薬や化学肥料等の節減等により環境保全型農業を促進するとともに、市街地内の生産緑地を緑地空間として活用する。

(iii) 市街地等に残された雑木林、屋敷林や水辺地等の自然で、地域全体で維持していくことが必要と認められるもの等について、里地自然地域に準じ、適切な維持・形成を進める。

(3) 都市地域における自然的環境の確保等

(i) 都市地域における自然的環境の確保及び日常生活圏における自然とのふれあい等を図るため、総合的な計画等に沿って、緑地の保全、都市公園等の整備、緑化を計画的に進める。

(ii) 宅地や工場及び官公庁施設等の緑化を進める。

(4) 社会資本整備等の事業の実施時の配慮

 道路、河川、農業農村、空港等の社会資本整備等の事業の実施に当たって、地域の特性に応じて生物の生息・生育地の確保や景観保全への配慮を進めるとともに、緑地や親水空間等の整備を進める。

(5) 多様な自然の有機的連携

 各種の保全地域、森林、農地、水辺地等の多様な自然環境、及び各種事業により整備される緑地空間等について、相互の有機的連携が図られるよう、総合的かつ計画的な取組を進める。

4 沿岸海域

 日本の領海内にある海域及び海岸線としてとらえられる沿岸海域については、干潟、藻場、サンゴ礁等多様な生態系を有し、豊かな水産資源に恵まれているという特性がある。すぐれた自然の的確な保全を図るとともに、干潟、藻場等の有する環境保全能力の維持を図ることが重要である。また、人と海の自然とのふれあいの場として活用することも重要である。このため、以下のような施策を推進する。その際、海洋汚染対策との有機的連携を図る。

(1) すぐれた自然の保全

(i) すぐれた海中景観、生物の重要な生息・生育地、良好な自然海浜等のいわゆるすぐれた自然について、海中公園地区、海中特別地区、鳥獣保護区等の各種制度を活用し、行為規制等により、適正に保全する。特に、保全すべき自然状態が人為的あるいは非人為的に劣化している場合には、その復元等の事業を進める。

(ii) 上記の各種の保全地域間の有機的な連携の確保を検討する。

(iii) これらの保全地域において、海の自然とのふれあいを確保するため、必要な施設の計画的な整備を進めるとともに、その健全な利用を促進する。

(2) 干潟、藻場等の保全

 適切な漁業活動を通じて水産資源の適切な維持管理等を図るとともに、保護水面等の各種制度も活用しつつ、干潟や藻場等の適正な保全を図り、当該地域の環境浄化能力や多様な生物の生息・生育地の確保を進める。

(3) 社会資本整備等の事業の実施時の配慮

(i) 港湾、漁港、海岸等の社会資本整備等の事業の実施に当たって、地域の特性に応じ、生物の生息・生育地の確保や景観保全への配慮を進めるとともに、緑地や親水空間等の整備を進める。

(ii) 沿岸域において、埋立を行う場合には、環境保全の観点からその位置・規模等を検討し、干潟の保全等環境保全に十分に配慮するとともに、必要に応じ、干潟・海浜等を整備する。

第2節 生物の多様性の確保及び野生動植物の保護管理

 生物の多様性は、人間の生存の基盤となっている自然の生態系を健全に保持し、生物資源の持続的な利用を図っていくための基本的な要素であり、個々の生物種や地域地域における個体群が維持され、全体として生態系が保全されること等により確保される。

 生態系・種間・種内の各レベルを含めた生物の多様性を確保するという観点から、「生物の多様性に関する条約」に基づく国家戦略を策定するほか、生物の生息・生育地の確保、野生動植物の種及び個体の適正な保護管理等を図るため、前節に掲げた施策を推進することにより国土空間の自然的社会的特性に応じて多様な野生生物の生息・生育空間を保全するとともに、以下のような施策を総合的かつ計画的に推進する。

(1) 捕獲・譲渡の規制、生息・生育環境の整備等

 希少野生動植物や野生鳥獣の捕獲・譲渡等の規制、生息・生育環境の整備のための事業や保護増殖事業等を進める。

(2) 個体数管理等

 野生鳥獣について、狩猟の管理や適正個体数管理等を適切に実施する。また、クマ、サル等の特定の鳥獣について、保護管理計画の策定・実施を進める。

(3) 移入種問題への取組

 新たな種の持ち込みによる固有のすぐれた生態系や閉鎖性の高い島しょ等の生態系への影響を抑制するために必要な措置を検討する。

(4) 各種事業の実施時の配慮

 人間の活動により野生動植物に取り返しのつかない影響を与えないようにするため、各種事業の実施に際して、事業の特性や具体性の程度に応じ、事前に十分に調査・検討を行うとともに、影響を受ける可能性のある生物の生息・生育に対し適切な配慮を行う。

(5) 調査研究等の推進

 生物種や生態系に関する科学的調査研究等に関し、以下のような取組を進める。

(i) 調査研究に必要な人材の育成確保、既存の博物館や専門家等のネットワーク化、民間活動の活用等により、調査体制の確立を進める。

(ii) 原生的自然等を対象とする各種研究に資するため、幅広く研究者に開放する拠点施設等の計画的な整備・確保を進める。

(iii) 生物の多様性に関する情報の収集解析及び保管提供等の機能や体制の整備を進める。

第3節 地域づくり等における健全で恵み豊かな環境の確保とその活用

1 地域づくり等における様々な取組

(1) 快適な環境(アメニティ)の確保

 それぞれの地域において、快適な環境(アメニティ)を確保する一環として、豊かな自然環境を積極的に確保するため、以下のような多様な取組を推進する。

(i) 良好な大気の確保

 静寂で澄んださわやかな大気を確保するため、地域住民等の参加も得つつ、光や視程等をも含め、良好な大気に係る環境の状態のあり方を検討するとともに、身近な大気環境の状況について調査を行う。また、緑化をはじめとする地域の自主的積極的な取組を促進する。

(ii) 良好な水域の生態系の確保

 清浄で豊かな水、多様な生物相等からなる水域の生態系を確保するため、水域の水質・水量、水生生物、周辺植生を一体的にとらえて、地域住民の参加も得つつ、河川、湖沼、海岸、干潟等の水辺地を維持管理するための施策を検討する。

(iii) 景観保全

 各地域の特性に応じて、各種の施設整備等に際して地域の自然環境との調和に配慮した景観保全を図るための取組を進める。

(iv) 歴史的環境への配慮

 文化財保護等の各種制度を活用し、自然環境と一体をなしている歴史的環境についても、その保全を図る。

(2) 民間環境保全活動の促進

 ナショナルトラスト活動や緑化・美化清掃をはじめとしたボランティア活動等の民間環境保全活動を促進するため、税制措置・緑化協定等を活用する。また、企業等による自然の造成管理を推奨する等により促進する。

(3) 都市と農山漁村の交流

 自然とのふれあいの確保の観点から都市と農山漁村の交流の一環として農山漁村地域における滞在型の余暇活動(グリーン・ツーリズム)等を進めるとともに、協定等を活用した公的機関による森林整備や森林所有者等と国民が共同で育成途上の森林を育てる分収育林(緑のオーナー制度等)等を促進する。

2 自然環境の健全な利用等を図るための取組

(1) 健全なふれあい利用の推進

 健全な自然とのふれあい利用等を進めるため、以下のような施策を推進する。

(i) 様々な自然とのふれあいの場やその利用方法等に関する情報の提供を進める。

(ii) 自然体験型利用手法の検討、自然解説のための人材の養成及び確保、自然観察会の開催や野外教育等を通じた機会の提供等を促進する。

(iii) 特に充実したサービスに対する費用徴収を含め、地域や利用者の連携・協力による適切な管理を展開する。

(2) 温泉の保護と利用

 自然とのふれあいを図るための資源として、温泉の適正な保護及びその健全な利用を確保する。

第3章 公平な役割分担の下でのすべての主体の参加の実現

(基本的な方向)

 多様な社会経済活動の中において、各主体が、環境保全に関して担うべき役割及び環境保全に関する行動の有する意義を理解し、それぞれの立場に応じた公平な役割分担の下で自主的積極的に行動することにより、すべての主体が環境保全に関する行動に参加する社会を実現する。

 このため、国の役割及び地方公共団体、事業者、国民、民間団体に期待される役割並びに社会経済活動の分野ごとにこれらの主体に期待される役割を本計画において明らかにするとともに、環境教育・環境学習の推進や積極的な情報の提供をはじめとして、事業者、国民、民間団体の行動を促すための各種施策を講ずることにより、相互に協力・連携した自主的積極的取組を促進する。

 また、国自らも、事業者・消費者として期待される環境保全の行動を率先して実行する。

 なお、各主体の役割の分担については、環境へ与える負荷、環境から得る恵み及び環境保全に寄与し得る能力等それぞれの立場に応じた、公平なものとなることが必要である。その際、今日ではすべての主体が通常の事業活動や日常の生活を通じて直接及び間接に環境への負荷を与えていることを認識し、汚染等による環境利用のコストを価格に織り込むことなどを求めたOECD等の汚染者負担の原則を踏まえ、環境保全のための各種措置の実施費用を汚染者が負担するなど、各主体が責任ある行動をとることが重要である。環境政策においては、このような考え方を基本とし、各種施策を進めるものとする。また、自然の恵沢の享受と保全に関し受益と負担の両面にわたって社会的公正が確保される必要がある。

第1節 各主体の役割

 国は、多様な主体による自主的積極的な取組が社会全体として十分に、また公平かつ整合的に進められるよう、以下の役割に沿って取組を推進する。地方公共団体、事業者、国民、民間団体においても、以下の役割に沿って、自主的積極的に行動することが期待される。

1 国の役割

 国は、各主体の参加により社会全体として取組が総合的に進められ、環境が保全されるよう、多様な施策を実施する。すなわち、環境保全の取組の目標・方向・役割分担等を提示するとともに、各種の制度の設定や社会資本の整備等により各主体の行動の基盤づくりを実施し、さらに、各主体の自主的積極的な行動を促進する。これらにより、地方公共団体、事業者、国民、民間団体と協力・連携しつつ、総合的に環境保全対策を推進する。

(i) この環境基本計画のほか、問題の性質に応じて、環境基準等の環境保全の目標を設定するとともに、法律に基づく基本方針・指針やガイドライン等の形で、環境保全に関する施策の方向や全体像、各主体の役割分担の在り方等を必要に応じて提示する。

(ii) 環境影響評価、規制的措置、経済的措置、社会資本整備、科学技術の振興等の適切な活用により、各主体の行動の基盤づくりを実施する。

(iii) 事業者、国民、民間団体の自主的積極的行動を促進するため、環境教育・環境学習の推進、民間活動の支援、情報の提供等を進める。

(iv) 地方公共団体が自主的積極的に実施する環境保全施策について、必要な財政上の措置、技術的支援に努める。

(v) 地球環境保全等に関する国際的な取組を進める。

(vi) 環境に影響を及ぼすおそれのある各種施策の策定・実施に際して環境保全に配慮する。

(vii) 事業者・消費者としての環境保全に関する行動を率先して実行する。

2 地方公共団体の役割

 持続可能な社会づくりの基礎は地域の環境の保全であり、地方公共団体の役割は大きい。このため、地方公共団体は、地域の自然的社会的条件に応じて、取組の目標・方向等の設定・提示、各種制度の設定や社会資本整備等の基盤づくり、各主体の行動の促進など、国に準じた施策やその他の独自の施策を自主的積極的に策定し、国、事業者、住民等と協力・連携しつつ、多様な施策を地域において総合的に展開することが期待される。

(i) 地域づくりにおいて、地域の自然的社会的条件に応じて、汚染の防止はもとより、リサイクルの促進等により環境への負荷を低減していく。また、地域の自然とのふれあいの確保、快適な環境(アメニティ)の確保の一環としての自然環境の保全等により、恵み豊かな環境を保全する。

(ii) 事業者、住民等との緊密な連携を図りつつ環境保全を進める。このため、学習拠点の整備、人材の育成・確保、学校教育等により環境教育・環境学習や環境保全活動を推進するとともに、情報の提供を進める。また、事業者の環境保全対策を指導し、促進する。

(iii) 周辺地方公共団体や国とも連携、協力しつつ、流域を考慮した水環境の保全など広域的な視点からの取組を進める。

(iv) これまで培ってきた環境の保全に関する知見を活かした国際協力等の取組を進める。

(v) 地域の環境保全に関する基本的な計画の策定等により施策を総合的かつ計画的に進める。

(vi) 事業者・消費者としての環境保全に関する行動を率先して実行する。

(vii) なお、市町村は基礎的な地方公共団体として、地域づくりにおける取組をはじめ多様な施策を実施する。都道府県は主として広域にわたる施策の実施や市町村が行う施策の総合調整を行う。

3 事業者の役割

 事業者は経済活動の中で大きな部分を占めており、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動の見直しのためには事業者の取組が重要である。今日では通常の事業活動に起因する環境への負荷が増大しており、様々な事業活動に際して、公害防止をはじめ環境への負荷の低減を自主的積極的に進めることが必要である。また、その能力を活かした積極的な環境保全活動が期待される。 一方、環境保全に関する事業活動(エコビジネス)の発展は、環境への負荷の少ない持続可能な社会を形成する上で重要であり、積極的な取組が期待される。

 なお、通常の経済活動の主体としての国、地方公共団体も事業者と同様の役割を有する。

(i) 再生資源等環境への負荷の低減に資する原材料等の利用に努める。また、共同輸配送等合理化された物流サービス等の環境への負荷の低減に資する役務等の利用に努める。

(ii) 汚染物質の排出削減、廃棄物の減量化及び適正処理、エネルギー利用の効率化、開発行為に際しての環境配慮等により事業活動に伴う環境への負荷を低減する。

(iii) 製品等の原料採取、製造、流通、消費、廃棄等の各段階における環境への負荷が低減されるよう、全段階における環境への負荷を視野に入れた製品開発、消費者への情報提供、過剰包装の見直し等の取組を進める。

 また、製品が廃棄された後の適正処理等環境への負荷の低減に協力する。

(iv) 所有地を中心とする緑化、地域の美化運動への参加等の地域の環境保全の取組を進める

(v) 技術移転等の国際協力を進めるとともに、海外における事業活動や貿易に際して環境配慮を行う。

(vi) 環境保全のための投資の拡充、技術開発に努めるとともに、環境保全に関する事業活動への取組を進める。

(vii) 職員一人一人の環境保全活動の推奨等に努める。

(viii) 環境保全に関する方針の策定、目標の設定、計画の作成、担当部署の設置等の体制整備及びこれらの監査の実施等からなる環境管理を、国際標準化機構(ISO)における検討の状況も踏まえつつ、自主的に進める。

(ix) この他、国、地方公共団体が実施する環境保全施策に協力する。

4 国民の役割

 今日、国民の日常生活に起因する環境への負荷が増大しており、大量消費・大量廃棄型の生活様式の改善が必要である。このため、国民には、人間と環境との関わりについての理解を深め、日常生活に起因する環境への負荷の低減や身近な環境をよりよいものにしていくための行動を、自主的積極的に進めることが期待される。

 また、環境保全に関する女性の高い関心、豊かな知識や経験がより広く活かされるよう、女性の地位向上に係る施策とあいまって、環境の分野において男女の共同参画を進めることや、次世代を担う子どもや青年が環境保全について理解を深め、これに取り組むことが重要である。     

(i) 人間と環境との関わりについての理解を深めるよう、積極的に自然を体験するなど、自ら学習に努める。

(ii) 再生紙等環境への負荷の少ない製品やサービスの選択、不要不急の自家用乗用車使用の自粛、節電等による省エネルギー、洗剤の適正な使用等の生活排水対策、ごみの減量化、リサイクルのための分別収集への協力等により、日常生活に伴う環境への負荷の低減に努める。

(iii) 地域のリサイクル活動、緑化活動や環境美化活動への参加等により地域の環境保全に努める。また、民間団体の活動への支援を通じ地球環境保全の取組に参加する。

(iv) この他、国、地方公共団体が実施する環境保全施策に協力する。    

5 民間団体の役割

 国民や事業者により組織され、緑化活動、リサイクル活動、啓発活動、調査研究その他の環境保全に関する活動を行う非営利的な民間団体は、公益的視点から組織的に活動を行うことにより、環境保全に大きな役割を果たす。特に、草の根の活動や民間国際協力などきめ細かな活動を展開している。今後とも様々な分野においてより一層の活躍が期待される。

(i) 緑化活動、リサイクル活動、ナショナルトラスト活動、住民・事業者・地方公共団体と協力して積極的に地域環境を保全するための事業を進める活動(グラウンドワーク活動)等、地域の環境保全のための活動を行う。

(ii) 開発途上地域における植林、野生生物保護、公害対策等の活動、国際的な交流等の国際的活動を行う。

(iii) 自然環境の状況に関する調査研究、環境汚染の影響に関する調査研究、環境政策に関する研究等の環境保全に関する調査研究を行う。

(iv) 環境教育・環境学習の活動、国民・事業者等の行動の促進のための啓発活動を行う。

(v) この他、他の主体とも協力・連携を図りつつ、環境保全のための多様な取組を行う。

第2節 各主体の自主的積極的行動の促進

 各主体の自主的積極的行動を促進するため、国は、環境教育・環境学習等を推進し、環境保全の具体的行動を促すための施策を講じ、情報の提供を進める。  

1 環境教育・環境学習等の推進

 持続可能な生活様式や経済社会システムを実現するためには、各主体が、環境に関心を持ち、環境に対する人間の責任と役割を理解し、環境保全活動に参加する態度及び環境問題解決に資する能力が育成されることが重要である。このため、幼児から高齢者までのそれぞれの年齢層に対して、学校、地域、家庭、職場、野外活動の場等多様な場において互いに連携を図りつつ、環境保全に関する教育及び主体的な学習を総合的に推進する。

 その際、自然の仕組み、人間の活動が環境に及ぼす影響、人間と環境の関わり方、その歴史・文化等について幅広く理解が深められるようにするとともに、知識の伝達だけでなく、自然とのふれあいの体験等を通じて自然に対する感性や環境を大切に思う心を育てることを重視する。特に、次世代を担う子どもに対しては、人間と環境の関わりについての関心と理解を深めるための自然体験や生活体験の積み重ねが重要であることに留意し、そのための施策の充実を図る。

(1) 学校教育における環境教育 

 学校における環境教育は生涯学習の一環であり、その基礎的部分として重要である。

 初等中等教育においては、各教科、道徳、特別活動等を通じた学校教育全体の中で、相互の連携を図りながら、環境教育を総合的に推進する。特に、児童生徒の主体的な体験活動を通じて価値観を形成していく過程を重視する観点から、自然とのふれあいや環境保全活動への参加などの体験活動を積極的に推進する。また、児童生徒の発達段階に応じた教育を効果的に行うため、研修等により教員の環境教育に関する資質の向上を図るとともに、指導方法の開発・改善・普及を進める。なお、リサイクル等への理解を深める契機とする観点から、教科書への再生紙の使用等が進むよう、事業者の自主的な取組が今後とも一層進められることが期待されるとともに、国が作成している一部の教科書についても再生紙の使用を進める。

 また、高等教育において環境保全に関する教育を進め、人材育成の充実に努める。

(2) 社会教育その他多様な場における環境教育・環境学習 

(i) 学習拠点の整備

 環境教育・環境学習等のセンターや自然とのふれあいの場など拠点の整備を進める。また、これらの拠点の間の協力・連携を得るためのネットワーク化を進める。

(ii) 学習機会の提供

 自然観察会、星空観察等の体験的学習や環境に関する講座の開設など各種の学習の機会を継続的に提供する。

(iii) 人材の育成・確保

 環境教育・環境学習や環境保全活動の指導者等の人材を育成、確保、活用するため、研修、人材登録システムの充実等の施策を進める。

(iv) 教材・手法の提供

 対象の年齢に応じ、また、野外活動、観光・余暇活動を含め多様な場に応じて、体系的なプログラム、教材、手法を開発・提供する。

(3) 広報の充実

 環境の日(6月5日)を中心として地方公共団体、民間団体等と協力して様々な行事を展開するとともに、様々な情報媒体を活用し、広報を充実する。

2 環境保全の具体的行動の促進

(i) 自主的な環境管理の促進

 事業者による自主的な環境保全に関する方針の策定、目標の設定、計画の作成、体制の整備及びこれらの監査の実施等からなる環境管理の実施並びにそのシステムの認証を促進・支援するための方策を検討し、推進する。

(ii) 望ましい活動の推奨等

 製品等の原料採取から廃棄に至る全段階での環境への負荷の評価(ライフサイクルアセスメント)の手法について調査研究を進める。また、環境への負荷の少ない製品を推奨するため、環境ラベリング事業を適切に指導する。さらに、国民、民間団体等による他の模範となる活動について表彰等により顕彰、奨励を行う。

(iii) 民間団体の活動の支援

 地球環境基金等の関係制度及び税制措置の活用等により、国際環境協力、環境教育・環境学習、ナショナルトラスト活動、民間団体間の国際的パートナーシップの形成等、民間団体の環境保全に関する多様な活動を支援する。また、公益性の高い環境保全に関する民間団体の活動を支援するため、当該民間団体が法人格を取得できるような方策について検討する。

3 情報の提供

 環境の状況、個別の社会経済活動による環境への負荷や、環境保全の取組、環境教育・環境学習の機会等に関する情報を適切に提供する。

 このため、データベースを作成し、地方公共団体、公益法人、活動拠点等とネットワーク化して情報提供を行うシステムを整備する。

 このほか、この計画の第4章第6節に掲げる施策を進める。

第3節 国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行

 通常の経済活動の主体としての国の占める位置は極めて大きく、国自らがその経済活動に際して環境保全に関する行動を実行することによる環境への負荷の低減効果は大きい。また、地方公共団体や事業者、国民の自主的積極的な行動を求めるためには、国自らも率先して実行する必要がある。このため、以下のような分野についての取組を表した政府全体の行動計画を策定する。

(i) 財やサービスの購入・使用に当たっての環境保全への配慮

  再生紙等の再生品の利用、低公害車の導入、自動車の効率的利用等

(ii) 建築物の建築、管理等に当たっての環境保全への配慮

 建築物における環境配慮(太陽光利用等エネルギーの有効利用や水の有効利用、特定フロン等の使用削減・回収、周辺や屋上の緑化等)、建設工事における建設副産物の再生と利用、熱帯材型枠使用合理化等

(iii) その他行政事務に当たっての環境保全への配慮

 エネルギー使用量の抑制、ごみの分別、廃棄物の減量等

(iv) 職員に対する研修等

 職員に対する環境研修の機会の提供、情報提供、休暇の活用等による職員一人一人の環境保全活動の奨励等

第4節 社会経済の主要な分野における取組

 社会経済活動の様々な局面において、相互に協力・連携して環境保全の行動が進められるよう、物の生産・販売・消費・廃棄、エネルギーの供給・消費、運輸・交通等の視点から見た社会経済活動の分野ごとに各主体が担う役割を提示する。これに沿って、地方公共団体、事業者、国民等の各主体が自主的積極的に行動を進めることが期待される。

1 物の生産・販売・消費・廃棄

 農林水産物、工業製品、建築物等は、原料採取、生産段階において不用物排出、土地改変等の環境への負荷を発生するとともに、販売、消費、廃棄の段階において廃棄物等を発生する。一方、農林水産業は自然の物質循環を活用した産業であり、その適切な活動を通じて環境保全能力が維持される。

 したがって、環境への負荷の少ない原材料の使用、原料採取・生産段階での環境への負荷の低減、環境への負荷の少ない製品等の製造、販売・消費段階での環境への負荷の少ない製品等の選択、廃棄物の適正処理やリサイクルの推進、資源利用の節約による環境への負荷の低減とともに、農林水産業における環境の適切な維持管理、土木建築事業における環境保全に配慮した事業の実施が重要である。

(1) 生産者の役割

 環境への負荷の少ない原材料の使用、生産段階での環境への負荷の削減、廃棄物の発生抑制・適正処理、消費・廃棄段階等での環境への負荷の少ない製品の生産等、原料採取から廃棄段階までを視野に入れた負荷低減対策等を進める。

(i) 農林水産業者

 農林水産業は、他の産業活動とは異なり、生産力の基礎を自然の物質循環の中に置いており、森林の適正な整備を通じて環境を維持・形成するなど環境を積極的に管理し、その適切な活動を通じて環境保全能力が維持されるという役割を持つ。

 農業においては、環境への影響に配慮した施肥基準、防除要否の判断基準の見直し等による農薬や化学肥料等の節減、家畜ふん尿等のリサイクル等を基礎とする環境保全型農業、農地周辺の生態系保全等を進める。

 林業においては、持続可能な森林経営を一層進めるよう努めるとともに、複層林施業や天然林施業等の適正な森林の整備及び保安林等における適正な施業を通じた森林の持つ環境保全能力の高度発揮等を進める。

 水産業においては、水産資源を維持・管理し、持続的に利用する資源管理型漁業、つくり育てる漁業を進めるほか、干潟、藻場をはじめとする漁場保全等を進める。

 また、必要に応じ、民間活動とも連携しつつ、伝統的な営農手法や里山の管理等の維持を図る。

(ii) 鉱業者

 原料採取等に際して、採取跡地の適正管理や緑化等の環境への配慮を行う。

(iii) 製造業者

 再生資源等環境への負荷の少ない原材料等の利用、低負荷型の生産方式の採用等による生産段階での環境への負荷の低減、廃棄物発生抑制・適正処理、製品の長寿命化、モデルチェンジの適正化、消費・廃棄段階等での環境への負荷の少ない製品等の開発・生産等を進める。また、製品等が廃棄された後の適正な処理やリサイクルのために協力する。

(iv) 建設業者

 発注者と連携し、省エネルギー型建築(断熱材使用、通風の活用、太陽光発電等)、周辺や屋上の緑化、水利用の合理化、合併処理浄化槽設置など環境への負荷の少ない生態系に配慮した建設を行うとともに、環境への負荷の少ない原材料の使用、環境保全に配慮した工事の実施、建設業に係る指定副産物等のリサイクル、廃棄物適正処理等を進める。

(2) 販売者(卸・小売業者等)の役割

 品ぞろえの際の配慮等による環境への負荷の少ない製品等(不動産を含む。)の販売、過剰な包装材の使用削減、消費者からの再生資源の回収等によるリサイクル、廃棄物の適正処理等を進める。

(3) 消費者の役割

 製品の購入等に際して、環境保全に資する製品や環境への負荷の少ない製品等の選択、過剰包装の辞退、環境への負荷の少ない建築物等の発注等に努めるとともに、その使用に際して、環境への負荷が低減されるような適正な方法での使用に努める。また、廃棄物の発生抑制や分別収集への協力によるリサイクル等を進める。

(4) 再生資源業者・廃棄物処理業者の役割

 静脈産業を担い、環境保全に重要な役割を果たす。廃棄物の排出者の協力を求めつつ、リサイクル、廃棄物の適正処理等を進める。

(5) 国・地方公共団体の役割

 汚染物質排出、廃棄物処理、農薬使用等に係る規制的措置を適切に実施することはもとより、リサイクル促進その他各種の指導等を実施するとともに、廃棄物の発生抑制やリサイクル推進のための経済的措置を必要に応じ適切に活用する。また、廃棄物処理施設等の公共的施設を整備する。

 ライフサイクルアセスメントの手法等に関する調査研究、情報提供、環境保全型商品の推奨等を実施する。また、再生資源業者・廃棄物処理業者の適切な指導等を実施する。さらに、農薬や化学肥料等の節減等を進める環境保全型農業を促進する。

 これらのほか、地方公共団体は、廃棄物の適正処理に必要な措置を実施する。

 一方、公共事業に際しては、環境影響評価等を適切に実施するとともに、河川整備、農業農村整備、漁港整備、港湾整備、道路整備、海岸整備、空港整備等において、生態系の重視や太陽光利用等、環境保全に配慮した事業を進める。また、リサイクル、環境への負荷の少ない原材料の使用を進める。

2 エネルギーの供給・消費

 経済活動のあらゆる局面がエネルギーに関係しており、その供給から消費の過程で各種の環境への負荷を発生する。生産活動、消費生活等の各分野において、環境への負荷の少ないエネルギーへの移行、省エネルギー等を進め、環境への負荷を低減することが必要である。なお、運輸・交通については、次項で一括して記述する。

(1) エネルギー供給事業者等の役割

 事業活動における環境への負荷を低減する。

 発電効率向上等エネルギー転換効率の向上、天然ガス等の利用、太陽光・風力等の開発導入を進める。また、原子力の開発利用については、二酸化炭素排出抑制に資することから、原子力基本法等に基づき、放射性廃棄物の処理処分対策等を充実させつつ、安全性の確保を前提として進める。

 さらに、需要側とも連携しつつ、コージェネレーション(熱電併給システム)等分散型電源の導入、下水排熱等未利用エネルギー利用、廃棄物焼却余熱の利用、電力の負荷平準化等を進める。

(2) エネルギーを消費する事業者の役割

 製造業等において、省エネルギー型設備の導入、エネルギー管理体制の充実、余剰エネルギーの工場外での有効利用、省エネルギー型製品の開発及び導入等を進める。

 農業等において自然エネルギーの利用等を進める。

 オフィス等において、建築物の熱の損失防止等のための的確な設計、施工及び管理、太陽光発電、燃料電池、コージェネレーションの導入、省エネルギー型設備、機器の導入、無用なエネルギー消費の防止を進める。 

(3) 一般消費者の役割

 省エネルギー型機器の導入、無用なエネルギー消費の防止、エネルギー効率の高い住宅用機器の利用、住宅の断熱構造化、太陽光発電、太陽熱温水器等の利用等を進める。

(4) 国・地方公共団体の役割

 汚染物質排出等に係る規制的措置を適切に実施することはもとより、事業活動、国民生活におけるエネルギー消費効率向上に向けた取組を促進する。このため、省エネルギーに資する設備投資、技術開発等に対する支援等を引き続き実施する。また、サマータイム(夏時間)の導入を検討する。 

 太陽光等の自然エネルギー、燃料電池等の環境への負荷の少ないエネルギーについて研究開発を進めるとともに、その導入を促進する。また、分散型電源導入のための制度の検討を進める。さらに、未利用エネルギーの活用等を進める。

3 運輸・交通

 人、物を移動させる過程で環境への負荷が発生しており、自動車をはじめ多様な交通手段から発生する環境への負荷を低減することが必要である。個々の交通機関からの環境への負荷の低減、環境への負荷の少ない交通機関の選択、物流・人流の合理化、交通流の円滑化等の交通に係る環境保全対策が重要である。

(1) 運輸事業者の役割

 自動車について、低公害車の導入、最新規制適合車への代替等に努める。

 物流の合理化のため、荷主と連携しつつ共同輸配送、帰り荷の確保等を進めるとともに、物流施設の複合化・高度化を進め、輸送効率の向上を図る。また、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心とした鉄道・海運の積極的活用を通じ適切な輸送機関の利用を進める。

 人流の合理化のため、鉄道、バス等公共交通機関の整備、利便性の向上を進める。

 鉄道及び航空機については、騒音低減のため発生源対策等を進める。

 海運については海洋汚染防止のための対策を進める。

(2) 荷主等他の事業者の役割

 低公害車の導入、最新規制適合車への代替等に努める。

 物流業務の合理化、情報化、共同輸配送、帰り荷の確保等の推進により輸送効率の向上を図る。その際、営業用トラックの活用を含め、運輸事業者との連携に配慮する。

 また、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心とした鉄道・海運の積極的活用を通じ適切な輸送機関の利用を進める。

(3) 消費者の役割

 徒歩、自転車、公共交通機関等環境への負荷の少ない交通手段の選択に努める。特に不要不急の自家用乗用車使用を自粛するとともに、環境への負荷の低減に効果のある適切な方法での自動車使用に努める。

(4) 国・地方公共団体の役割

 自動車排出ガス規制、中央線変移等の交通規制等の規制的措置を実施することはもとより、自動車使用合理化等の指導を適切に実施するとともに、低公害車の開発・利用等を支援する。

 鉄道や海運のための基盤整備、公共交通機関の整備及び利便性向上、徒歩や自転車利用のための施設整備、沿道環境保全に配慮した交通の分散・円滑化のためのバイパス・環状道路整備等を進めるとともに、交通管制システムの高度化、情報提供システムの整備等を進める。

 また、沿道や空港周辺等交通施設の周辺において、交通騒音等を防止するため、土地利用適正化や緩衝緑地整備等の対策を進める。 

4 その他

(1) 観光・余暇活動

 観光・余暇活動は、国民が自然とふれあう機会を提供する。一方、様々な形での自然環境の改変等の環境への負荷を誘発する可能性もある。

(i) 開発業者、旅行業者等関連事業者の役割

 立地選定から開発及び運営までの各段階において自然環境等への配慮を進める。また、自然を活かし、自然とふれあえるような観光・余暇活動(エコツーリズム等)に関する知見の充実や専門家の育成等を進めるとともに、観光地の自然環境について紹介するなど、自然とふれあえるような観光・余暇活動への取組を進める。

(ii) 利用者の役割

 ごみの散乱防止、自然を損傷するような行為の自制、訪問地の自然環境に対する理解の増進等の取組を進める。

(iii) 国・地方公共団体の役割

 公園、緑地等を適切に管理する。また、地域の観光地整備等に際して、自然環境等への配慮が行われ、自然を活かした、自然とふれあえるような観光・余暇活動が促進されるよう、基盤整備や指導助言などを行う。

(2) 金融

 金融は経済活動の中で重要な役割を果たしており、企業への資金供給等を通じて環境に大きな影響を及ぼし得る。一方、環境保全活動に対する寄付や投資が組み込まれた預金等の提供等の積極的な取組も行われている。

 金融機関においては、融資や投資の際に対象企業の行う事業における環境に対する配慮についても勘案することや、環境についての情報が不足しがちな中小企業等に対して情報を提供し、助言者としての役割を果たすことなどの取組が期待される。

(3) その他

 その他の各事業者等には、一般的な事業者の役割のほか、その活動の特性に応じて、上記の「物の生産・販売・消費・廃棄」、「エネルギーの供給、消費」、「交通・運輸」等の各分野の事業者等の役割を参照しつつ、環境保全への自主的積極的な取組を進めることが期待される。

 また、情報通信の利用は、交通流の円滑化等に資するほか、交通の一部の代替や紙資源の節約等を通じて環境への負荷の低減に資する可能性も有するため、幅広い観点から情報通信システムの活用等情報化の進展と環境との関係について調査研究を進め、環境への負荷低減に資するよう、その適切な活用を図る。

第4章 環境保全に係る共通的基盤的施策の推進

 前章までに位置付けられている共通的基盤的な施策手法である環境影響評価、規制的措置、経済的措置、社会資本整備、調査研究、監視・観測、技術の振興、環境情報の整備等の施策を講じる際の基本的な考え方は以下のとおりであり、問題の性質に応じて、これら多様な手法を適切に組み合わせ活用する。また、公害防止計画、環境保健対策、公害紛争処理等について、施策を講ずる際の基本的な考え方は以下のとおりである。

第1節 環境影響評価等

 国等の施策や事業の策定・実施に当たって、あらかじめ環境保全上の配慮を行うことは、総合的な環境保全を図るために極めて重要である。この考え方は、国内外において広く認識され、定着してきている。

 環境影響評価の実施をはじめとして、環境保全上の配慮を一層徹底するため、以下の施策を推進する。

1 国の施策の策定等に当たっての環境保全上の配慮

 環境保全上の支障を未然に防止するため、環境に影響を及ぼすと認められる国の施策の策定・実施に当たっては、環境保全の観点から検討を行い、環境保全に配慮する。

2 公共事業の計画段階等における環境保全上の配慮

 国の実施する社会資本等の整備のための公共事業については、計画段階からその実施が環境に及ぼす影響について調査予測を行うなど環境保全上の検討を行い、適切な配慮を実施する。

3 環境影響評価の実施

 規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれがある事業の実施に当たり、国においては、従来から環境影響評価実施要綱及び個別法等に基づき的確な環境影響評価の推進に努めてきたところであり、その適正な運用に一層努める。また、地方公共団体においても条例、要綱等に基づき、地域の実情に応じて環境影響評価が実施されている。

4 総合的な調査研究の推進等

 国等の施策や事業の策定・実施に当たっての環境保全上の配慮の徹底を図るため、環境配慮の在り方、手法等について調査研究をさらに進める。

 特に、環境影響評価制度の今後の在り方については、我が国におけるこれまでの経験の積み重ね、環境の保全に果たす環境影響評価の重要性に対する認識の高まり等にかんがみ、内外の制度の実施状況等に関し、関係省庁一体となって調査研究を進め、その結果等を踏まえ、法制化も含め所要の見直しを行う。

第2節 規制的措置

 環境保全に関する政策手段のうち各種の規制的措置は、従来から公害等の環境保全上の支障の防止に効果を発揮してきたところである。規制的措置は、環境コストを市場メカニズムの中に適切に織り込む効果もあり、従来からの施策を適正に実施していくとともに、今後とも問題の性格、効果、影響等を勘案しつつ規制的措置を適切に活用する。

第3節 経済的措置

 我が国では、石油危機以降、他の先進国に比べて産業分野を中心に省資源・省エネルギーが進んだが、その一方で、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動の様式が広まるとともに人口や社会経済活動の都市への集中が続いたことなどのため、都市・生活型公害、廃棄物の排出量の増大、地球温暖化等の環境問題が発生しており、なお一層の取組が必要である。これらの環境問題は、通常の事業活動や日常生活を含む広範な社会経済活動に起因している。このような環境問題が発生した大きな要因としては、これらの活動による環境への負荷に伴い社会に生じる費用についての認識が明確でなく、対策が十分に行われてこなかったことから、これらの費用が市場メカニズムの中に適切に織り込まれていなかったことが挙げられる。このため、いわば社会的なコストが生じた状態でこれらの活動が続けられてきた。このような問題については、規制的措置、経済的措置などの政策手段を適切に活用し、社会構成員それぞれが環境の保全に適合した行動をとることを促すことが必要である。

 このような政策手段のうち、製品・サ−ビスの取引価格に環境コストを適切に反映させるための、環境に係る税、課徴金、預託払戻制度(デポジット・リファンド・システム)などの経済的負担を課す措置については、多数の日常的な行為から生ずる環境への負荷を低減させる点で、有効性が期待されるとともに、資源の効率的配分にも資するものと考えられている。また、OECD、主要先進国首脳会議(G7サミット)、国連環境開発会議などで国際的にも推奨され、欧米諸国等においても様々な活用事例が見られる状況である。我が国としても、前記の環境問題の解決の観点から、これらの措置につき、調査研究を進めるとともに、OECD等における国際的議論に積極的に参画する。

 経済的措置には、負担を課す措置のほか助成を与える措置があり、いずれにしても、経済的な誘因を与えることにより、各経済主体が環境保全に適合した行動をとるよう促そうとするものである。

1 経済的助成

 環境への負荷を生じさせる活動等を行う者による負荷の低減のための施設整備等を効果的に推進する手段として、環境改善を限られた期間中に早期に達成するための公害防止投資等について経済的助成を行う場合には、助成を受ける者の経済的な状況や財政支出が最終的には国民の負担ともなることを勘案し、また、国際貿易、国際投資に重大な歪みを与えることのないよう、OECDの汚染者負担の原則を踏まえ、必要かつ適正な措置を活用する。

2 経済的負担

 環境への負荷の低減を図るための経済的負担を課す措置は、環境への負荷を生じさせる活動等を行う者に対し現在まで支払われてこなかった新たな負担を求めるものでもある。このため、その具体的な措置について判断するため、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制、都市・生活型公害対策、廃棄物の抑制などその適用分野に応じ、これを講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響等につき適切に調査研究を進める。また、その導入に際しては、国民の理解と協力を得るよう努力する。なお、その措置が地球環境保全のための施策に係るものであるときには、その効果が適切に確保されるようにするため国際的な連携に配慮する。

 また、経済的負担を課す措置の検討と並行して、これ以外の規制的措置等のその他の政策手段を活用することや、経済的負担を課す措置に加えてこれら他の政策手段を効率的に組み合わせていくことに関しても、広く検討を進める。

 廃棄物の発生抑制及びリサイクル推進のための経済的措置に関しては、家庭系の廃棄物についても従量制による処理手数料の徴収の推進など適切な負担を求めることにより、廃棄物の発生抑制を図るとともに、発生者の責任を明確にし、廃棄物の適正処理やリサイクルなどのコストが社会的に適切に負担される仕組みづくりのため、預託払戻制度(デポジット・リファンド・システム)などの経済的措置の活用についても幅広く検討する。

第4節 社会資本整備等の事業

 健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な経済社会を構築していくには、事業者や国民が自らの活動に伴う環境への負荷を低減させるだけでなく、環境保全に関する社会資本整備等の事業を推進することが必要である。また、社会資本整備等の事業に当たっては、その環境に及ぼす影響について計画段階から調査予測等を行い、その結果に基づき十分な環境保全対策等を行うことが必要である。我が国では、今後、高齢化の進展等に伴い、投資余力の減退が見込まれるため、重点的かつ着実に当該事業を推進することが重要である。

 このため、本計画に盛り込まれ、各種整備計画等に基づいて行われる、環境保全上の支障を防止し、又はこれに資する公共的施設の整備等の事業を行い、また、自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を行う。この場合には、環境保全経費の見積り方針等を踏まえるとともに、その利用面をはじめ、これらの施設に係る環境の保全上の効果が増進されるための必要な措置を併せて行うことも含め、事業を総合的かつ重点的に推進する。その際、これらの事業の環境保全上の効果等について適切な評価を行う。

第5節 調査研究、監視・観測等の充実、適正な技術の振興等

 環境の状況の把握、環境の変化の機構の解明、環境の保全に関する施策の適正な策定等のため、幅広い分野の調査研究、監視・観測等を的確に行うことが不可欠である。特に地球環境問題については、その解決に向け、十分な科学的知見を蓄積し、解明を進めることが必要である。

 また、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的発展が可能な社会を構築するため、環境保全に関する技術の開発・普及を図ることが必要不可欠である。

 これらの課題について、我が国として積極的に対応し、国際社会及び人類全体に貢献するため、国において調査研究及び監視・観測等の充実、適正な技術の振興を進め、その基盤整備を適切に行うとともに、地方公共団体、民間団体等における取組の支援等を実施する。

1 調査研究及び監視・観測等の充実

(1) 調査研究の推進

 調査研究については、人文、社会、自然科学の幅広い分野の以下のような課題の調査研究を国際的な視野に立って推進する。なお、複数の関係省庁にまたがる政策課題については、必要に応じ一体的な取組を行う。

(i) 温室効果ガスや廃棄物の排出等に係る環境への負荷及びその原因となる社会経済活動の総合的把握に関する課題

(ii) 地球規模の諸現象等環境の変化の機構の解明、影響の予測等に関する課題

(iii) 生物の多様性の確保に関する課題

(iv) 社会経済活動による大気、水等の環境の複数の構成要素を通じた長期的複合的な環境リスクの解明と評価に関する課題

(v) 統合された環境・経済勘定システムの確立等の環境と経済との相互関係に関する課題

(vi) 環境政策の国際的動向や実施効果の評価等に関する課題

(vii) 不確実性を伴う環境変化に対応した政策決定の在り方に関する課題

(viii) 第3部においてそれぞれ位置付けられた課題

(2) 監視・観測等の体制整備

 監視・観測等については、個別法等に基づき着実に実施する。監視・観測等に係る計画の作成・実施、結果の整理・解析・評価・公表に至る過程が適切に行われるとともに、環境問題の態様の変化に的確に対応できるよう、実施体制の整備に努める。

(3) 広域的、全地球的課題への的確な対応

 特に酸性雨や海洋汚染等の広域的に影響が及ぶ分野の調査研究、監視・観測等においては、広域的な物質の移流、拡散、生態系影響の的確な把握に努める。また、地球温暖化等の地球全体に影響が及ぶ分野においては、大気圏、水圏、地圏、生物圏の間の物質等の循環に関する科学的知見の充実や広範な生態系影響の的確な把握に努める。

(4) 実施状況の体系的把握・整理等

 国が実施又は関与している調査研究、監視・観測等については、実施状況を体系的に把握、整理する。また、地方公共団体、民間団体等が実施しているものについても可能な範囲で把握する。なお、必要に応じ連絡会議等を設置、活用すること等により、関連する調査研究、監視・観測等の相互の連携を進める。

(5) 総合的な実施体制

 地球環境保全に関する調査研究、監視・観測等及びその他の調査研究、監視・観測等のうち総合的かつ計画的取組が必要な分野については、総合推進計画等を策定し、総合的な実施体制を確保する。

2 適正な技術の振興

(1) 環境保全の取組を支える技術

 環境保全に関する技術については、対象を広くとらえるとともに、技術を適用した場合の環境保全上の効果、他の項目に係る環境への影響等を総合的に勘案することにより、適正な技術を振興し、環境保全の取組を支える技術体系の確立を図る。

(2) 開発・普及の推進

 省資源・省エネルギ−技術、環境低負荷型生産技術、環境負荷処理技術、廃棄物処理・リサイクル技術、生物を活かした環境整備技術、景観調和型施設整備技術等の一層の開発・普及を図るほか、第3部において位置付けられた技術や人工衛星等によるリモートセンシング技術等の監視・観測等に係る技術、開発途上地域の実状に適した技術の開発にも努める。その際、機器、装置等のハ−ドの技術のみならず、その効果的な使用方法等のソフトの技術も開発する。また、環境保全に関する技術を適用した場合の環境保全上の効果、寄与等について適切な評価を行い、施策に活用する。

3 国における基盤整備等

(1) 施設等の整備

 調査研究、監視・観測等の充実及び適正な技術の振興のために必要な機材、施設等を適切に整備する。

(2) 測定技術の高度化等

 調査・測定等に係る信頼性の向上及び精度管理を進める。また、調査研究、監視・観測等に係るリモ−トセンシング技術、テレメトリ−技術、微量計測技術等の科学技術の高度化に努めるとともに、航空機、船舶、衛星の整備・活用を図る。

(3) 学術研究の推進、人材養成、関係機関の相互の交流等

 大学等における環境保全に関する教育及び人文、社会、自然科学の幅広い分野にわたる学術研究の推進を図るとともに、これらとの連携の確保等により、調査研究、監視・観測等の充実及び適正な技術の振興に従事する人材を養成し、その質的・量的充実に努める。また、調査研究、監視・観測等に関わる機関、従事する者の相互の交流・協力・連携を促進するとともに、調査研究、監視・観測等に関する情報を整備し、関係機関等において活用を図る。

(4) 民間の技術開発能力の活用

 適正な技術の振興に当たっては、その内容に応じ、民間の開発能力を積極的に活用する。

4 地方公共団体、民間団体等における取組の促進

(1) 交流・参加の推進

 地方公共団体、公益法人、大学、民間における調査研究、監視・観測等の充実及び適正な技術の振興を支援するため、情報交換、人材交流を推進するとともに、必要に応じ、機材・施設等の共同利用、共同研究等を行う。

 また、民間団体や一般国民による科学的調査に基づくきめ細かな情報も重要であり、課題に応じて調査研究、監視・観測等への民間団体や一般国民の参加を推進する。このため、参加を容易にする調査・測定方法等の開発・普及に努める。

(2) 測定等の技術支援

 環境への負荷について、事業者自らの測定等の適正実施に係る技術支援等を進める。

 また、調査・測定等に関与する民間の機関の調査・測定等に係る信頼性向上、精度管理を支援するため、適切な情報提供を行うとともに、技術士(環境部門等)等の資格制度の活用等を進める。

5 成果の普及等

 調査研究、監視・観測等の成果については適切に公表し、その普及に努めるとともに、環境情報としての活用も図る。

 また、すぐれた環境保全技術の普及が進む社会システムを構築するため、環境保全技術に関する情報の整備、活用を推進するとともに、普及阻害要因等についても検討し、普及のためのプログラム等の作成、国における率先利用、必要かつ適正な経済的助成措置その他の措置の活用等を推進する。

第6節 環境情報の整備・提供

 環境保全施策を科学的、総合的に推進するため、環境情報を体系的に整備し利用を図っていくことが必要である。また、環境教育・環境学習の振興や事業者、国民、民間団体による自発的な環境保全活動の促進に資することを含め、環境保全に関する様々なニ−ズに対応した情報が各主体に正確かつ適切に提供されることが不可欠である。

 環境情報の整備・提供に当たっては、個人、法人の権利利益に配慮しつつ、適正な情報が効率的に提供され、できるだけ広い範囲で容易な利用が可能となるよう努める。

1 環境情報の体系的な整備(収集、整理、加工) 

 環境情報は、環境の状況、環境への負荷、環境の変化の予測、環境保全の取組等を明らかにする上で重要であり、これに対するニーズ、その整備状況等を調査し、新たに収集、整理、加工すべき情報については、その所在等を踏まえた整備の方向を明らかにし、デ−タベ−ス化を体系的に推進する。整備状況等の調査結果については、情報源情報として活用する。

 国が保有する環境情報のネットワ−ク化を推進するとともに、地方公共団体及び民間が保有する情報も含め、可能な範囲で環境情報を一括して整備する枠組みについて検討し、総合的な環境情報デ−タベ−スの構築に努める。

2 環境情報の国民等への提供 

(1) 資料の提供

 環境白書、環境情報要覧その他の資料の発表等を通じて、国民等に対する環境情報の提供を的確に実施する。その際、印刷物による提供に加え、必要に応じ磁気媒体や通信システム等の多様な媒体を活用する。

(2) 環境情報提供システム

 環境情報に係る国民等からの照会に対して迅速、的確に対応するシステムを整備する。また、総合的な環境情報デ−タベ−スと地方公共団体、公益法人等とのネットワ−ク等を活用した提供システムの整備について検討する。

(3) 環境情報拠点

 各々の分野に応じた多様な環境情報を提供するため、環境情報センタ−、生物多様性センタ−、国立公園ビジタ−センタ−等の拠点整備について検討する。

3 環境解析等システムの整備等

(1) 環境解析等システム

 総合的な環境情報デ−タベ−スを活用し、環境の状況の解析、予測、政策効果判定を行うシステムの整備について検討する。

(2) 環境統計

 統合された環境・経済勘定システムの確立に関する研究の成果等を踏まえ、関連する環境統計の整備について検討する。

4 国における基盤整備

(1) 施設等の整備

 環境情報のネットワーク化を含め、環境情報の整備・提供のために必要な機材、施設等を適切に整備する。

(2) 人材養成

 大学等の教育機関との連携の確保等により、環境情報の整備・提供に従事する人材を養成し、その質的・量的な充実に努める。

5 地方公共団体、民間団体等における環境情報の整備等の支援

(1) 地域環境情報拠点

 地方公共団体による地域環境情報の体系的整備を促進するため、地域環境情報拠点の整備を支援する。

(2) 情報ネットワーク

 民間団体等の自発的な活動により得られた環境情報の整備等を支援する。

 また、通信システムを用いた国、地方公共団体、民間団体等のネットワ−ク化を進める。

第7節 公害防止計画

 現に公害が著しい地域等の特定地域における公害の防止を図るため、公害防止計画を策定し、一貫性が保たれた施策を総合的かつ計画的に推進する。

1 計画の策定

 公害防止計画に関する基本方針は、環境基本計画を基本として策定する。その際、以下の事項について特に配慮する。

(i) 地域における環境基準等の達成・維持を図るための規制をはじめ、幅広い施策を講じ、事業活動及び日常生活全般にわたって環境への負荷の低減を図ること。

(ii) すべての主体が公平な役割分担の下に相互に協力、連携しつつ、自主的積極的に環境保全に取り組めるよう、基盤を整備すること。

(iii) 自然環境の保全、地球環境の保全についても十分配慮すること。

(iv) 地域の実情を踏まえ、窒素酸化物による大気汚染、生活排水による水質汚濁、地下水汚染等の主要課題を適切に設定すること。

(v) 首都圏等の大都市圏等においては、隣接地域の計画の同時策定等による広域的な対応を推進すること。

(vi) 環境保全に係る他の法定計画等との整合を図ること。

2 計画の実施

 計画に位置付けられた多様な施策を、施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に推進する。

第8節 環境保健対策、公害紛争処理等

 公害による健康被害については、予防のための措置を講じ、被害者の発生を未然に防止するとともに、被害者に対しては、汚染者負担の原則を踏まえて迅速かつ公正な保護及び健康の確保を推進する。

 また、公害紛争処理について、紛争の態様に即した迅速かつ適正な解決を推進する。

 さらに、住民の生活環境を保全し、将来の公害紛争を未然に防止するため、公害苦情の態様に即した適切な処理を推進するとともに、公害関係法規の遵守を徹底し、違反による環境汚染を防止する。

1 健康被害の救済及び予防

(1) 被害者の救済

 「公害健康被害の補償等に関する法律」に基づき、認定患者に対する補償等を行い、その迅速かつ公正な救済を図る。また、水俣病については、認定業務の促進、水俣病総合対策事業、国立水俣病研究センタ−を中心とする総合的研究等の施策を推進する。

(2) 被害の予防

 大気汚染による健康被害を予防するため、公害健康被害補償予防協会に置かれた基金により、健康被害予防事業を展開する。また、健康被害の未然防止を図るため、地域人口集団の健康状態と大気汚染との関係を定期的・継続的に観察するシステム(環境保健サ−ベイランスシステム)の構築を図るほか各種調査研究を進める。

2 公害紛争処理等

(1) 公害紛争処理

 「公害紛争処理法」に基づき、あっせん、調停、仲裁及び裁定を適切に実施する。

(2) 公害苦情処理

 「公害紛争処理法」に基づく地方公共団体の公害苦情処理が適切に運営されるよう、適切な処理のための指導、情報提供を行う。また、警察等における公害苦情の受理及び処理を適切に実施する。

(3) 環境事犯対策

 環境事犯の発生を防止するため、関係機関、住民等との連携を強化するなどの環境事犯対策を進める。

第5章 国際的取組の推進

(基本的な方向)

 地球環境保全は、一国のみでは解決できない人類共通の課題であり、我が国の能力を活かし、その国際社会に占める地位にふさわしい国際的取組を積極的に推進する。

 このため、地球環境保全に関する政策の国際的な連携を確保し、開発途上地域の環境や国際的に高い価値が認められている環境の保全への協力を進めるとともに、こうした国際協力の円滑な実施のための国内基盤を整備する。また、調査研究、監視・観測等における国際的な連携の確保、地方公共団体又は民間団体等の活動の推進、国際協力の実施等に当たっての環境配慮に努める。

第1節 地球環境保全等に関する国際協力等の推進

1 地球環境保全に関する政策の国際的な連携の確保

 地球環境保全を達成するためには、所要の国内施策を進めることはもとより、国際的な政策の連携を確保することが必要不可欠である。

(i) 環境保全に関する多数国間条約、二国間協定等の国際約束の遵守はもとより、新たな枠組みづくりに対しても積極的な役割を果たす。

(ii) 国連環境開発会議の成果を着実に実施するため、国連をはじめとする地球環境保全に資する国際的な機関の活動を支援する。特に、開発援助と環境、革新的技術開発、資金メカニズム、地球環境変動研究、貿易と環境、経済的手法の分析等の国際的な連携が必要な課題については、国際的な場で議論を深めることが重要であり、こうした場における議論に積極的に参加、貢献する。

(iii) 地球環境保全を効果的に推進するためには、資金提供を行う国際機関の役割が重要である。このため、地球環境保全に資するプロジェクトに対して可能な限り資金が確保されるとともに、各種の開発プロジェクトにおける環境配慮が徹底されるように、資金提供を行う国際機関が活動することを重視する。また、地球環境問題に対する資金供与のための中心的な基金である地球環境ファシリティ(GEF)については、その効果的で効率的な実施が確保されるよう、積極的な参加を進める。

(iv) 我が国は、地球環境保全の推進に向けて、地球的な視野に基づき、世界各国、国際機関等と幅広く協力を推進する。特に、アジア・太平洋地域は、歴史的・地理的に我が国と密接な関係にあるとともに、今後の急速な経済成長とそれに伴う環境への負荷の増大が見込まれる。このため、アジア・太平洋地域における様々な議論の場において我が国が率先した役割を果たし、同地域における環境政策の連携を図り、地球環境保全を推進する。

2 開発途上地域の環境の保全  

 開発途上地域の環境の保全は、先進国と開発途上地域が共同で取り組むべき全人類的な課題であり、人口、資源、開発、環境といった幅広い文脈の中で先進国としての立場から開発途上地域に対する国際協力を進めることが必要である。このため、我が国としては、環境と開発の両立に向けた開発途上地域の自助努力を支援するとともに、各種の環境保全に関する国際協力を積極的に推進する。

(i) 政策対話の推進

 持続可能な開発に関する基本認識を相手国との間で共有し、環境保全を図るための途上国の積極的な取組を促進し、また共同の努力を進めるため、密接な政策対話を進める。

(ii) 効果的な援助の実施

 有償資金協力、無償資金協力及び技術協力の各援助形態並びにその他の協力の特性を最大限活かし、その有機的連携・調整を図る。また、政府開発援助大綱の基本理念及び原則を踏まえ、国連環境開発会議における表明を受けて、引き続き環境分野の政府開発援助の拡充・強化に努めるとともに、環境と開発の両立に向けた途上国の自助努力を支援するため、有償資金協力及び無償資金協力を弾力的に運用する。さらに、必要に応じ、他の先進国の援助機関、国連諸機関、国際金融機関、地方公共団体、民間団体等との適切な連携・協調を図る。

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(参考)

15 国連環境開発会議(1992年6月)における環境分野の政府開発援助に関する我が国の表明

1992年度より5年間にわたり、環境分野への二国間及び多国間政府開発援助を9千億円から1兆円を目途として大幅に拡充・強化することに努める。

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(iii) 技術・ノウハウ等の移転

 開発途上地域の経済社会の状況及び環境保全に係るニーズを考慮し、かつて高度経済成長の過程で生じた激甚な公害の克服に向けた努力の結果顕著な成果を挙げてきた我が国の技術・ノウハウ、経験を活かしつつ、これら地域の対処能力の向上を適切に支援することが重要である。このため、専門家の派遣、研修員の受入れを通じた人づくり協力、研究協力等を推進し、開発途上地域の環境の保全に資する技術、ノウハウ等の移転を図る。また、発展段階に応じた技術移転に資するため、他の開発途上地域の有する知識や技術の十分な活用を図るための支援を行う。さらに、公共部門のみならず民間部門の有する技術・ノウハウ等の活用を図るとともに、民間の行う技術協力や途上国の民間団体の自主的取組を支援する。

(iiv) 開発途上地域に関する地域研究等の実施

 開発途上地域に関する地域研究、開発政策研究、政府開発援助の総合評価等を進める。また、これらを踏まえ、国別・地域別の実情に応じた環境分野の援助を進める。

(v) 適切な案件の採択と評価の実施

 適切な案件を採択できるよう案件発掘・形成のための協力及び調査を充実させる。また、今後の協力にも資するよう評価活動を進める。

3 国際的に高い価値が認められている環境の保全

 国際的に高い価値があると認められている環境は人類共通の財産である。このため、南極については、「環境保護に関する南極条約議定書」等の国際協定等をも踏まえて、環境影響評価、動植物相の保護、廃棄物の処理及び管理、海洋汚染の防止、保護区域の管理等を進める。また、世界遺産基金への拠出等を通じて、「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて指定された自然遺産の保全に積極的に協力する。

4 国際協力の円滑な実施のための国内基盤の整備

 地球環境保全等に関する国際協力を円滑に推進するため、我が国の技術・ノウハウ、経験を有効に活用できるよう国内の基盤を整備する。

(i) 国内の人材の育成・確保、支援制度の整備

 国際協力を円滑に実施していくためには、人材の確保が重要な課題であり、現在、国際協力に携わっている人材に加え、地方公共団体や民間の人材を引き続き活用していく。また、国際協力に携わる人材を育成するための研修をはじめ各種制度を引き続き充実するとともに、国際協力専門家の人材の登録制度等の整備、帰国後の専門家の活用等を図るよう努める。

(ii) 情報の収集・分析・整理の基盤づくり

 地球環境保全等に関する情報、環境上適正な技術、国内に蓄積されている経験を収集・整理し、地球環境保全等に資する適正技術の蓄積及び円滑な技術移転の基盤を整備する。

第2節 調査研究、監視・観測等に係る国際的な連携の確保等

 地球環境保全等に関する調査研究、監視・観測等を進めるに当たっては、国際的なネットワークの推進、国際的な共同調査研究の推進、研究交流の活発化等により、国際的な連携・協力を強化する。

第3節 地方公共団体又は民間団体等による活動の推進

 地方公共団体が培ってきた環境の保全に関する知見を活かした協力や民間団体による草の根レベルを含む各般の協力を推進し、地球環境保全等に関する国際協力の実効性を向上させる。このため、姉妹都市・友好都市、国際的な自治体の協力団体等の枠組みを通じた協力をはじめとする地方公共団体の自主的な取組を支援するとともに、情報の提供等を通じ民間団体等の行う国際協力を推進する。

第4節 国際協力の実施等に当たっての環境配慮

 国際協力における環境配慮の重要性にかんがみ、我が国としてもこれを適切かつ着実に実施することが必要である。また、事業者の海外活動に関しても適正な環境配慮が重要であるが、この点に関し民間の自主的な取組が進みつつあり、こうした個々の事業者による取組の進展が図られることが重要である。

 国の国際協力の実施に当たり、引き続き、環境配慮に関するガイドラインを的確に運用するとともに、人材の養成をはじめ環境配慮の実施のための基盤を強化し、国際機関等とも連携しながら、適切かつ効果的な環境配慮を実施する。また、その他の公的な資金による協力及び民間企業の海外活動についても適切な環境配慮が行われるよう努める。

第5節 地球環境保全に関する国際条約等に基づく取組

(1) 地球温暖化の防止

 地球温暖化の防止に関しては、温暖化防止のための政策・措置やその効果の予測等を内容とする情報の送付等を通じ、「気候変動に関する国際連合枠組条約」を着実に実施するとともに、国際的な連携の下に対策を推進するため、条約の究極の目的に照らした条約上の約束の妥当性の評価、国際的な協力により世界全体として温室効果ガスの排出量の削減及び吸収量の増大を目指す共同実施等の具体的な方法を検討する。並行してIPCC等における科学的解明活動を支援する。さらに、消費形態の変更に向けた国際的な連携、気候変動の緩和に関する技術開発の国際的な連携、開発途上国等の国家計画の策定支援、技術移転の支援等を実施する。

(2) オゾン層の保護

 オゾン層の保護に関しては、「オゾン層の保護のためのウィーン条約」及び「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」を着実に実施するとともに、開発途上地域における対策を支援する。さらに、観測監視による科学的知見の充実等により、国際的な対策の推進に貢献する。

(3) 酸性雨の防止

 酸性雨の防止に関しては、地域的・国際的な取組が不可欠であり、監視・観測網の構築を図る等、欧州や北米におけると同様に、東アジア地域における越境汚染対策に関する枠組みづくりを率先して進める。また、酸性雨原因物質の排出抑制等を進めるため、技術移転等を推進する。

(4) 海洋汚染の防止

 海洋汚染の防止に関しては、「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(ロンドン条約)、「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書」(マルポール73/78条約)等を着実に実施するとともに、国連海洋法条約等の新たな枠組みへ率先して対応する。国際機関及び関係国と協力し、北西太平洋地域海行動計画等の地域的な取組を進める。

(5) 有害廃棄物の越境移動の規制

 有害廃棄物の越境移動の規制に関しては、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」を的確かつ円滑に実施する。有害廃棄物の不法な越境移動の防止を図るための体制整備を進める。また、有害廃棄物管理のための技術移転等を進める。

(6) 森林の保全

 世界の森林の保全と持続可能な経営の達成に関しては、森林原則声明、アジェンダ21の実施を基本とし、持続可能な森林経営の基準、指標作成等に参加する。国連持続可能な開発委員会、国際熱帯木材機関(ITTO)、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)等における検討状況を踏まえ、より適切な木材貿易に努める。国際的な合意形成に留意しつつ、森林条約作成に積極的に対応する。さらに、森林保全に関する国際研究協力等の推進に努める。

(7) 生物多様性の保全

 野生生物種の保全については、「生物の多様性に関する条約」を中心として、国際的な連携の下に生物の多様性の保全及び持続可能な利用を促進する。生物の多様性に関する調査研究、保全に係る体制整備への協力等を行う。さらに、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約)、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)、二国間の渡り鳥等保護条約・協定等を通じた野生生物種の保全に関する国際協力を一層進める。

(8) 砂漠化の防止

 砂漠化の防止に関しては、「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面している国(特にアフリカの国)における砂漠化の防止のための国際連合条約」への積極的な対応を基本とし、砂漠化のメカニズム、人間活動と砂漠化の相互影響、幅広い主体の参加による社会経済的視点を含めた総合的な砂漠化対策について調査・検討を実施する。また、砂漠化が生じている国における対策を支援する。

第4部 計画の効果的実施

第1節 実施体制と各主体の連携

 環境基本計画の決定後は、これをよりどころとして、社会の構成員であるすべての主体が共通の認識の下に、それぞれ協力して環境の保全に向け実際に行動していくことが肝要である。政府は、閣議のほか関連する閣僚会議や関係省庁連絡会議等の場を通じて緊密な連携を図り、環境基本計画に掲げられた環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に実施する。地方公共団体には、環境基本計画に示された方向に沿いつつ、地域の自然的社会的条件に応じて、国に準じた施策やその他の独自の環境の保全に関する施策について、環境の保全に関する総合的な計画の策定等により、これを総合的かつ計画的に進めることが期待される。

 環境基本計画に基づいて、国、地方公共団体、事業者、国民及び民間団体それぞれが公平な役割分担の下に、様々な施策・取組を自主的かつ積極的に推進するために、連携・協力を密にすることが必要である。国及び地方公共団体は、環境基本計画に掲げられた各種の施策を効果的に実施するため、協調連携を強化する。

 国は、環境基本計画に基づく施策・取組の実施状況を把握し、評価し、自ら活用するほか、環境への取組を進める他の主体に対し環境白書をはじめ様々な手段を通じて情報提供するため、環境情報の体系的な収集・蓄積・利用を進める。環境基本計画に掲げられた施策や取組を進めるための地域レベルの行政、事業者、住民等から構成される組織の活動を支援するため、全国的な情報交流を進める。

第2節 目標の設定

 環境基本計画に掲げられた施策を全体として効果的に実施するため、第2部に掲げた長期的な目標に関する総合的な指標あるいは指標群の開発を早急に進める。また、個別の施策については、各種の具体的目標が設定されているものがあるが、環境基本計画の基本的な方向に沿い、総合的な見地からの所要の検討を行いつつ、必要に応じ具体的目標の見直しを行い、施策の効果的な実施を図る。また、必要な分野については、具体的目標を設定し、個別の計画を策定する。

第3節 財政措置等

 国は、環境基本計画に掲げられた各種施策を実施するため、必要な財政上の措置その他の措置を講ずる。その際、本計画の進捗状況、環境の状況等を勘案するとともに、環境保全経費の見積り方針等を踏まえ、各種事業が総合的に推進されるよう適切に対処する。

 国は、地方公共団体が地域の実情に応じて自主的積極的に実施する環境の保全に関する施策のための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努める。

第4節 各種計画との連携

 環境基本計画は、環境の保全に関する国の基本的な計画であり、環境基本計画と国の他の計画との間では、環境の保全に関しては、環境基本計画との調和が保たれたものであることが重要である。

 国の他の計画のうち、専ら環境の保全を目的とするものは、環境基本計画の基本的な方向に沿って策定、推進する。

 また、国のその他の計画であって環境の保全に関する事項を定めるものについては、環境の保全に関しては、環境基本計画の基本的な方向に沿ったものとなるものであり、このため、これらの計画と環境基本計画との相互の連携を図る。

第5節 計画の進捗状況の点検及び計画の見直し

 環境基本計画の着実な実行を確保するため、毎年、中央環境審議会は、国民各界各層の意見も聴きつつ、環境基本計画に基づく施策の進捗状況等を点検し、必要に応じ、その後の政策の方向につき政府に報告する。

 内外の経済社会の変化に柔軟かつ適切に対応して、環境基本計画の見直しを行うこととし、見直しの時期は、5年後程度を目途とする。



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