受賞者紹介

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞

かがわの里海づくり
〜自然共生型の新しい社会と
ライフスタイルを目指して〜

香川県

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり

受賞者紹介

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞

かがわの里海づくり
〜自然共生型の新しい社会とライフスタイルを目指して〜

香川県

第3回グッドライフアワードで環境大臣賞優秀賞を受賞した『かがわの里海づくり』は、香川県が提唱し、行政だけではなく、企業や住民などが一体となって進められている取組です。美しい瀬戸内海に面した香川で暮らす人たちのグッドライフを実現していくために、「里海」とどんなつながりを作っていこうとしているのか。取組の現地へ取材に行って来ました。

活動のきっかけは?

瀬戸内海が抱えている新たな課題を解決するために

瀬戸内海に面した香川県は、全国で一番面積が小さい県でもあります。背後には四国山地が控え、海から一番遠いところでも直線距離にすれば30kmほど。香川で暮らす人には、誰にとっても瀬戸内の海はとても身近な存在であるといえるのです。

高度経済成長期には公害問題が深刻化しましたが、その後、さまざまな努力によって瀬戸内海は美しさを取り戻しつつあります。とはいえ、近年問題となっている海ゴミなどの問題は簡単に解決できるものではありません。また、夏に海水浴を楽しむ人も減り、高松市内で日常的に海の幸を届けてくれていた「いただきさん」と呼ばれる行商のおばちゃんたちの数も少なくなってしまっています。海と人の暮らしの関わりが希薄になってしまうことを、新たな「課題」と認識することが、この取組のスタートでした。

「里海」は平成10年(1998)ごろから提唱され始めた言葉です。香川県が策定した『かがわ「里海」づくりビジョン』の中では「海域・陸域を一体的に捉え、人が適切に関わることにより、多様な生物が生息できる健全な海の状態を保ち、水産資源だけでなく、景観、憩いの場、食文化、観光など、多くの恵みを享受できる豊かな海」と説明されています。

豊かな里海を維持していくには、流れ込む水が通る川や、上流の山、流域の町での暮らしにいたるまで見直す必要があります。山と海が近く、瀬戸内海が身近な香川県の人たちにとって、「里海づくり」は自然と共生する豊かな暮らしを実現するための、まさに地の利に合ったキーワードだったといえるでしょう。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 瀬戸大橋は香川県の坂出市と岡山県倉敷市を結んでいます。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 取組の舞台でもある王越地区。海側の空き地はかつて塩田が広がっていたそうです。

どんな活動?

『かがわ「里海」づくりビジョン』を策定開

取組が本格的に始まったのは2013年のことでした。4月には『かがわ「里海」づくり協議会』を設立。協議会には漁協や農協はもちろん、森林組合や経済同友会、観光協会やPTA連絡協議会など、業界などの垣根を越えて、まさにすべての県民が関わる団体の代表者などが集まりました。その後、おおむね月に1回程度のペースで協議会が開かれて、2013年9月には取組の方向を明確化するための『かがわ「里海」づくりビジョン』が策定されたのです。

ビジョンではまず、目指すべき里海の姿を明確化し、香川で暮らす県民ひとりひとりが「生活者として、また、社会の一員としてできることを見つけ、実践するための方向性」を示しています。つまり、瀬戸内海を「美しい海」「生物が多様な海」「交流と賑わいのある海」を兼ね備えた「人と自然が共生する持続可能な豊かな海」としていくために、「全県域で」「県民みんなで」、山、川、里(まち)、海に関わる、人やモノのつまがりを再構築していくのです。

2013年には、底引き網漁などで網に引っかかり、漁師さんがボランティアで港まで持ち帰った海底ゴミを処分するための費用を、県下の全自治体が負担する仕組みもできあがりました。海に面していない自治体までが海底ゴミの処理費用を負担する理解を得て、全国でも例のない仕組みができあがりました。

多くの県民に「里海」の大切さを実感してもらえるように、2014年からは高松市街からも近い坂出市の王越町で里海体験ができる活動拠点づくりも進められ、『王越まるごと里海ツアー』がスタート。また、同じ河川流域で活動を行う人たちのネットワーク化を進める中で、源流近くの山あいから河口付近の海岸までを巡る『かがわの里海づくり体験研修 in 宮川流域』や、『かがわの里海づくり 鴨部川流域見学ツアー』などのイベントも開催されています。

『かがわの里海づくり』のウェブサイトでは、今までの活動内容なども紹介されており、香川大学の学生さんが描いた『まんが「里海」ってなあに?』も公開されています。活動は着々と広がっていて、里海に関わるさまざまな方が「自分にできること」を実践しつつあるということがわかります。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 『かがわ「里海」づくり協議会』での議論風景。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり ビジョン(日本語版・英語版)はウェブサイトでも公開されています。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 『王越まるごと里海ツアー』の様子。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 宮川流域で開催された『かがわの里海づくり体験研修』

成功のポイントは?

明確なビジョンのもとで多様な人々が主体的に参加!

『かがわの里海づくり』はビジョンが策定されて2年半。その取組はまだまだ発展途上にあるといえるでしょう。とはいえ、内陸部の自治体までが参加する「香川県方式の海底堆積ごみ回収・処理システム」の構築を実現したり、民間主導で県内を流れる河川の「流域協議会」が設立されるなど、ダイナミックな成果を積み上げつつあります。こうした成果を生み出すことができているのは、ひとつにはスピーディに明確な「ビジョン」を示し、それぞれの人たちが主体的に行動を起こせる仕組みを作り上げたことがポイントになっています。

プロジェクトの舵取り役でもある香川県環境管理課の大倉恵美さんによると、今後さらに里海づくりを広げていくために「若い世代を中心とした人材育成に力を入れていきたい」とのこと。2016年4月には、里海づくりをけん引していく人材の育成と交流の場となる「かがわ里海大学」の開校を予定しており、2015年には開校に向けてのプレ講座として「里海プロガイド養成基礎講座」を開催しました。

また『王越まるごと里海ツアー』など里海体験のイベントでは「必ず『食』の楽しみを盛り込むようにしています」(大倉さん)とのこと。里海体験を堅苦しい「勉強」の場にするのではなく、楽しみながら学べるイベントにしていることも、取組が広がりつつある大切なポイントなのかも知れません。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 海ごみの対策にも多くの人たちが関わりながら取り組んでいます。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 『王越まるごと里海ツアー』は子どもにも人気です。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 里海プロガイドなどの人材育成にも力を入れています。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 香川県環境管理課の大倉恵美さん。

レポート!

キーパーソンの方々の「熱意」を実感できました

実は今回の取材では2016年2月14日に開催される予定だった『王越まるごと里海ツアー』を体験させていただく予定で香川県へ伺いました。残念ながら当日は春の嵐が吹き荒れて強風でイベントは中止。でも、イベント会場となるはずだった王越地区の集会所に、『かがわの里海づくり』に取り組んでいる方々に集まっていただいて、その思いなどを伺うことができました。

かがわ「里海」づくり協議会の座長を務めるのは増田拓朗さん(香川大学名誉教授)。取組が成功しているポイントは「協議会では肩書きなどを取り払って小グループでのワークショップを行うなど有意義な議論ができたことで、”ビジョンから行動へ” という実践がスムーズにできたと感じている」とのこと。山、川、里、海がつながっているように、「さまざまな活動が『里海づくり』という共通の目標に向けてつながっていることを実感できている」ことが、取組の活力になっているのではないかと話してくださいました。

北山定男さんは、王越町の連合自治会長さんです。当初は『里海ツアー』で「何ができるのか」という不安もあったそうですが、実際にイベントを開催する中で参加者の楽しそうな表情に接して意義を実感。「われわれも楽しみながら、この活動を通して地域の活性化にもつなげていきたい」と手応えを感じています。

松野陽平さん(絆創工房代表)は、自然体験活動のスペシャリストとして、『里海プロガイド養成講座』の講師や、『里海ツアー』のガイドなどを務めています。
「私自身、この活動に関わるまでは『里海』という言葉さえちゃんと知りませんでしたが、実際にさまざまな取組を行う中で、『里海』は今の社会が抱えるさまざまな問題を包括しているような言葉だと感じています。『点』ではなく、あらゆる人やコミュニティがつながり合った『面』として持続可能な社会づくりに取り組んでいきたいと思っています」(松野さん)

お話しを伺いながら、それぞれの方がそれぞれの立場で、『里海』をキーワードにして、より豊かで持続可能な「グッドライフ」をカタチにするために取り組んでいるということを感じることができました。

お話しを伺った後、里海ツアーの舞台となるはずだった海岸や、集落と海を見下ろすミカン畑などに案内していただきました。イベントが中止になってしまったのは残念でしたが、砂浜に流れ着いたゴミや、放置されて荒れ始めた竹林や、世話をする人がいなくなって大きな実をつけたまま収穫もされていないミカン畑などを見て、里山も里海も、人がきちんと関わっていく必要がある身近な自然であることを実感できました。

香川だけではなく、日本全国、どんな場所でも身近な自然とのつながりの再構築は大切な課題であることも痛感しました。『かがわの里海づくり』でのチャレンジをお手本として、山、川、里、海のつながりを再構築する取組が、日本全体に広がっていくといいですね。

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 松野陽平さん(里海プロガイド、絆創工房代表)

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 増田拓朗さん(かがわ「里海」づくり協議会座長、香川大学名誉教授)

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり 北山定男さん(王越里海づくり実行委員会会長、王越地区連合自治会長)

第3回グッドライフアワード 環境大臣賞 優秀賞 かがわの里海づくり この日はあいにくの強風でしたが、王越地区は瀬戸内海に面し観光名所でもある五色台の麓に位置する静かで美しい町です。

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