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第3回グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞

一般社団法人市民エネルギー生駒

全額市民出資による市民共同
太陽光発電所事業

持続可能な社会を実現していくために、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの活用は重要な課題です。奈良県生駒市で行われているこの取組は、市民と行政が密接に連携して、現在までに合計3カ所で太陽光発電所を開設しました。地域の再生可能エネルギー資源を活用する仕組みを創り、再生可能エネルギーによる安全で豊かな持続可能な社会の実現を目指しています。


1号機の完成を祝うメンバーのみなさん。
ムービーもご覧ください(これから先は、環境省サーバーを離れます)

環境保全への思いと専門的な技術や知識をもった市民の力を集結!

活動のきっかけは?
ふたつの大震災を経験してエネルギー自給力の必要性を痛感

奈良県北西部に位置する生駒市は、大阪府との県境にある生駒山の麓に広がるベッドタウンです。この取組が始まるきっかけとなったのは、平成7年(1995)1月に発生した阪神・淡路大震災で、電気や水などライフラインの重要性を痛感したことです。

平成21年(2009)には、市民・事業者・行政が協働して市の環境基本計画を推進する「生駒市環境基本計画推進会議(ECO-net生駒)」が発足。その中のエネルギー環境部会が、将来の目標として市民共同発電所構想を策定しました。

東日本大震災と、それに伴う福島第一原子力発電所の事故により、日本の電力事情は大きく変わりました。生駒市でも再生可能エネルギー導入への気運が高まり、市民共同発電所設置の検討準備会が始まりました。電力の固定価格買取制度や、太陽光発電施設を設置するためのファンドなど、さまざまな仕組みや条件が整ってきたのです。

平成25年(2013)10月に、「ECO-net生駒」エネルギー環境部会の有志が中心となって、一般社団法人「市民エネルギー生駒」を設立。全額市民出資による市民共同太陽光発電所の設置に向けた本格的な取組が始まりました。


代表理事の楠正志さん。

副理事長の辻垣淳一さん


副理事長の山名博美さん。

理事の楠下孝雄さん。


理事の橋木啓子さん。

理事の日比野武司さん。
どんな取組を?
発電所設置の資金は全額を市民からの出資で調達

「生駒市民共同発電所1号機」の設置に向けて出資者の募集が始まったのは平成26年(2014)の1月でした。「環境モデル都市」に選定されることを目指していた生駒市も連携して協力し、太陽光発電パネルの設置場所として、市の衛生処理場である「エコパーク21」の屋根を無償貸与することが決まりました。

必要な資金はおよそ1700万円。出資額は1口10万円で2口まで、募集期間は2月末までと設定しましたが、1月の終わり頃になっても集まったのは700万円ほどで、順風満帆のスタートとはいきませんでした。「市民エネルギー生駒」では精力的に市内で説明会を開催し、新聞記事で紹介されたりもして、募集の締切までに全額を「市民」から集めることができたのです。

出資額を2口20万円までと設定したのは、できるだけ多くの市民からの出資を募るためでした。新聞記事で紹介されたことなどから生駒市民以外からの出資もありましたが、全体の約8割が生駒市民からの出資だったそうです。

出資者の募集を始める際、発電所には「1号機」と命名しました。当初、次の発電所の計画などはまだ未知数だったのですが、自然エネルギーを広く普及させていこうとする「市民エネルギー生駒」の思いを込めた命名だったといえるでしょう。

そして、翌年の平成27年(2015)9月には、市立の幼児教育施設「南こども園」の屋根に2号機を、さらに特別養護老人ホームなどが集まる「小瀬保健福祉ゾーン」の斜面に3号機の設置計画が決定。再び市民ファンドによる出資を募り、合計で3900万円の資金を集め、完成させることができたのです。


生駒市民共同発電所1号機



生駒市民共同発電所2号機



生駒市民共同発電所3号機

成功のポイントは?
電機会社OBが多く、専門的な技術や知識を活かす!

生駒市は大阪のベッドタウンとして人口が増えてきた街です。「市民エネルギー生駒」のメンバーの中には、電気技術士や、太陽光発電パネルの技術者だったという方もいます。定年退職後「現役時代に培った技術や知識を活用して取り組めていること」が、より質の高い「発電所」を維持していく原動力となっています。

今回の取材では、理事の方々に生駒市役所に集まっていただいてお話を伺いました。もちろん、構成メンバーの役割や職歴、個性はいろいろですが、持続可能なエネルギーの普及と推進に対する熱い思いは同じです。メンバーの情熱が、市民からの出資を集める大きな力になっているに違いありません。

完成した市民発電所は順調に稼働しており、エネルギーの地産地消に大きな一歩を踏み出しています。また、得られた収益で「南こども園」に園舎名の看板を寄贈したり、小学生向けのソーラーカー工作教室、再生可能エネルギーに関する講演会を開催するなど、地域に貢献し、環境への意識を広げる活動にも取り組んでいます。高齢化が急速に進む日本社会が目指すべき地域モデルのひとつとしても、意義ある取組といえるでしょう。

さらに、この取組の成功のポイントとして大切なのが、市民有志と一体となった生駒市(行政)の協力です。現地を案内いただきながら、発電所を設置した市の施設がすべて真新しい立派な建物であることを伺うと「少なくとも20年は更新する可能性がほとんどない施設を選んでいます」(環境モデル都市推進課天野卓係長)と教えてくれました。市民も行政も本気で取り組んでいるからこそ、短期間に3基もの発電所を完成させることができたのです。


3号機の通電式では生駒市長がスイッチを起動!

南こども園に寄贈した園名看板。


受賞祝賀会に集まったメンバーのみなさん。

イベント会場の玄関ホールに
アワードの賞状などを展示!
レポート
環境大臣賞受賞記念のイベントを開催!

「市民エネルギー生駒」理事のみなさんにお話を伺い、発電所の現地を訪ねた翌日には、市内の「南コミュニティセンターせせらぎ」という会場で、「ECO-net生駒」と「市民エネルギー生駒」が主催する『みんなでつくる おひさまエネルギー』というイベントが開催されました。

会場では、あまり遊ばなくなったオモチャをポイントに替えて、ほかのオモチャと交換できる「かえっこバザール」や、おでんやからあげなどが全品100円で食べられる「屋台コーナー」、さらに「ペットボトルボーリング」や「おもちゃ病院」「ソーラートレイン工作教室」など多彩な催しが行われ、たくさんの家族連れなどで賑わいました。

「市民エネルギー生駒」のみなさんは、自宅への太陽光発電導入などの相談を受ける「エネルギー相談室」のブースに常駐し、市民からの様々な質問に答えたり、「省エネクイズ」を担当。イベントの締めくくりには、小紫雅史生駒市長も参加して、南こども園のこどもたちがペットボトルで作ったイルミネーションツリーの点灯式を行いました。

「全額市民出資による市民共同太陽光発電所事業」の取組は、わずか3年で3カ所の発電所を実現させたことだけが素晴らしいのではありません。生駒市や「ECO-net生駒」と緊密に連携し、常日頃からこうしたイベントを通じて持続可能な社会構築に向けた多くの市民への啓発活動を続け、人々の絆を深めていることにこそ、この取組の真価があるのだと感じる取材となりました。


かえっこバザール。

ペットボトルボーリング。


ソーラートレイン工作教室。

おもちゃ病院。


省エネクイズの賞品には、
市役所での保管期限を終えた非常食が
活用されていました。

生駒市長も参加しての点灯式


ペットボトルイルミネーションツリー
(約1か月間点灯され市民に大好評となりました。)
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