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第1回グッドライフアワード グッドライフ特別賞

情報ステーション

リサイクル・ボランティア・コミュニティ
みんなで作る民間図書館

寄贈本を集めて、ボランティアが運営する『民間図書館』。千葉県を本拠に活動するNPO法人情報ステーションの取り組みは、昨年のグッドライフアワードでグッドライフ特別賞を受賞しました。2006年(平成18年)に最初の図書館がスタートし、現在、千葉県内を中心に民間図書館の数は30カ所以上に増えました。


『袖ケ浦団地まいぷれ図書館』にて。左から代表の岡さん、ボランティアの内山怜子さん、工藤隆義さん。
本をリサイクルして地域のコミュニティをつくる!
活動のきっかけは?
夜9時まで開いている便利な図書館が欲しい!

NPO法人情報ステーションの代表である南直樹さんはまだ30歳。民間図書館のアイデアを思いついたのは、東京まで通学していた大学生時代のことでした。往復4時間ほどかかる電車の中で本を読むのが楽しみだったのですが、開館時間が限られている公立の図書館が利用しづらく「駅に近い場所で夜9時くらいまで開いている図書館があればいいのに」と考えたことがきっかけでした。

岡さんはすでに大学1年生の時に自ら代表者としてNPO法人『情報ステーション』を立ち上げて、地域活性化などに取り組み始めていました。民間図書館のアイデアを実現するために、本の寄贈やボランティアスタッフを募集。2006年5月に、JR船橋駅前のショッピングセンター内で『ふなばし駅前図書館』がスタートしたのです。

好立地でもあり『ふなばし駅前図書館』は大成功。利用者やボランティアスタッフ同士の交流も生まれ、民間図書館は地域コミュニティが生まれる場所にもなっていきました。


情報ステーション代表の岡直樹さん。

『ふなばし駅前図書館』はJR船橋駅と
京成船橋駅に近い便利な場所にあります。
どんな取り組みを?
空き店舗の活用や、さまざまな場所で民間図書館を開設!

現在、民間図書館は千葉県内を中心に30カ所以上に増えています。商店街の空き店舗を利用した情報ステーションが直接運営する場所のほか、「図書館付きマンション」として蔵書の管理や運営ノウハウを提供するかたちの場所、酒店の一角に本棚を置いて運用する場所など、そのスタイルはさまざまです。

民間図書館への寄贈本は年間およそ2万冊。たとえば、ふなばし駅前図書館では月に1000冊以上の貸し出しがあるそうです。それぞれの図書館の受付で貸し出しなどの業務を担当するのはボランティアのスタッフ。登録しているボランティアの数はすでに500名以上になっています。

また、情報ステーションでは民間図書館のスペースを活用して『図書館BAR』や『船橋みらい大学』などのイベントも開催しています。南さんが民間図書館を発想した原点は「便利な図書館が欲しい」というものでしたが、実際に設立して運営が始まると、本のリサイクルだけでなく、商店街の空き店舗など町の空間をリサイクルして、多くの人が集まるスペースとしての働きも広がっていったのです。


『袖ケ浦団地まいぷれ図書館』は
団地内商店街の空き店舗を活用。

蔵書の管理や入れ替えは、情報ステーションが
担当します。
成功のポイントは?
身近な場所にあるからこそ意味がある!

ボランティアの方の中には、図書館司書の資格所有者も少なくありません。何か社会に役立つことをやりたいと思っても、なかなか自分をいかせる場所が見つけられないということもあるでしょう。民間図書館はボランティアスタッフ自身が自分をいかせる場所であると同時に、小さな子どもからお年寄りまでが集まる場所として、改めて地域コミュニティを活性化させています。

民間図書館のひとつひとつの施設はそれほど大きな場所ではありません。でも、たとえば住み慣れた団地の中や、分譲マンションの中など「小さなコミュニティの身近な場所にあるからこそ意味がある」と岡さんは考えています。

ボランティアスタッフを集めるための活動にも、あまり苦労したことはないそうです。たとえば、開設が決まった場所にボランティアや本の寄贈を呼びかける張り紙をすると名乗りをあげてくれる人がいて、その人が知人に声を掛けるなどして、自然と人の輪が広がっていくそうです。きっと、今の日本ではたくさんの人たちが民間図書館のような「居場所」を求めているということでしょう。


『酒ドットコム』という酒店の一角がなんと図書館!

貸し出しシステムなどは南さんの
手作りプログラムです。
レポート
全国で、真似してくれる人が増えてほしい!

この日、取材に訪れた『袖ケ浦団地まいぷれ図書館』で出会ったボランティアスタッフの工藤隆義さんが「遊びに行ってもお金がかかるし、ずっと家にいても妻とケンカになるだけだからね。ここで本を借りに来てくれる子どもたちと話してるほうがずっと楽しいんですよ」と話してくれました。東京で長年働いて退職。民間図書館でのボランティアが、工藤さんにとって新しい「やりがい」となっているのです。

スタッフはボランティアとはいえ、運営資金は楽ではありません。情報ステーションの収益は、有志の寄付や「図書館サポーター」と名付けられた有料会員からの会費が中心ですが、何冊も同じ本が集まったらネット通販で販売するなどの工夫をして、さらに新しい民間図書館を開設する取り組みを続けています。

昨年グッドライフアワードで環境大臣賞(グッドライフ特別賞)を受賞したこともあり、最近は視察に訪れる方も多いそうです。岡さんは「身近にあってこそ価値がある場所だから、全国で真似してくれる人が増えるといいと思っています」と話してくれました。たとえば、シャッター通りになってしまった商店街に、民間図書館のように人の集まる場所が生まれたら楽しいですよね。


地域ボランティアの打ち合わせ場所として
使われることもあります。

『プラウド船橋コミュニティ図書館』は、
500冊が並ぶマンションの中の図書館です。
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