地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13一般
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
A-10 衛星データを利用したオゾン層変動の機構解明に関する研究 環境省国立環境研究所
(中島 英彰)
B
(1)
(3)
(4)
 
(2)
 
 
(研究概要)
 本研究はわが国の観測衛星センサーによって得られたデータ、及び将来得られるであろうデータを用いて、特に極域オゾン層変動の物理・化学的メカニズムの解明と、その変動が極域オゾン層に与える影響を定量的に把握することを目的とする。そのため、衛星観測スペクトルデータから微量気体量を導出するアルゴリズムの高度化のための研究、そこで用いる気体分光データの精緻化のための研究、オゾン層破壊に重要な役割を果たしている極域成層圏雲の組成及びその微物理過程に関する研究、衛星データ質の評価に関する研究、精度の確立された衛星データを用いた地球物理学的研究、3次元化学輸送モデルと衛星データの比較によるオゾン破壊メカニズムの理解に関する研究を行う。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆先進国として継続すべき研究である。ただし、できるだけ早い機会にILASの総括(どの精度で何が計れたか)を行うべき。また、それがILAS-2でどこまで改善されるのかについても整理する必要がある。
◆ILASデータに基づき、ILAS-II、SOFISに向けて着実に基盤を固めており、評価できる。信頼できるデータを世界に配信するための地道な努力を評価したい。
◆衛星分析データの解析とデータ検証によって、オゾン層破壊メカニズムの解析の手がかりが得られつつあることから、今後の成果への期待度も大きい。
◆衛星分析データの活用という視点から重要なテーマである。衛星データの定量的利用が大切であることから、この部分に、より大きなウェイトをかけたらどうかと考える。ただし、O3についてはもっと目的を絞りこんだほうが良いと思われる。
◆論文を多数産出するだけでなく、成果の社会への普及、あるいは啓蒙活動が、今後の衛星計画にも影響してくることに留意してほしい。
◆研究テーマの性格上やむを得ない部分もあるかと思われるが、研究成果報告書の文章表現をもう少しクリヤーに分かりやすくして欲しい。研究計画全体の中での各サブテーマの位置づけなど、研究全体としてのストーリーが報告書では不鮮明である。社会的関心の高い研究テーマであるだけに、今後、分かりやすい成果の報告・公表に配慮が必要(評価ヒアリングの際には、各サブテーマの位置づけ、研究全体のストーリーについて、わかりやすく表現する努力がなされたといえる)
◆最終的には、極域におけるオゾン破壊量の定量的評価とその変動が分かることが重要である。その方向で残された研究期間、集中することが肝要。サブテーマ(2)は、ややオゾン層の破壊という本題とズレがあるように感じられてしまう。研究の意図を明確に示す必要がある。
◆ILASデータを徹底的に利用して、次につなげる研究としての役割を果たしていると評価できる。
◆今後の更なる研究成果に期待する。
◆研究成果をより解りやすく表現し、伝えることをより努力すべき。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13重点
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
B-9 太平洋域の人為起源二酸化炭素の海洋吸収量解明に関する研究 環境省国立環境研究所
(野尻 幸宏)
A
(1)
(2)
 
 
 
 
(研究概要)
 現在用いられている気候変動シナリオでは、気候変動に対して陸域や海洋の応答が変化しない前提となっているため、海洋・陸域の自然吸収量及びその変化が予測値と異なった場合、取るべき温暖化対策が変化する恐れがある。このため、海洋と陸域の二酸化炭素吸収量の正確な将来予測は、二酸化炭素の排出抑制施策を考える上で極めて重要な課題であるといえる。
 海洋は、人為起源二酸化炭素の吸収源として年間約2Gtの炭素を吸収していると推定されており、炭素循環の将来予測モデルによれば、2000年代中盤まで二酸化炭素吸収量の増加が見込まれている。しかし、現時点の予測精度は十分なものではなく、現代の炭素循環の正確な解明を出発点として将来予測を再検討すべきとの考えから、炭素循環観測研究が世界各国で重点的に進められようとしている。具体的には、将来予測モデルの基礎となる現状説明型炭素循環モデルへの寄与として、その精度向上に必須となる海洋・大気観測から得られる観測量、特に海洋の二酸化炭素吸収量とその年々変動を明らかにすることが求められており、このためのグローバルデータセットの確立と解析が国際的に喫緊の課題となっている。
わが国では、各省庁連携体制のもとで、太平洋域の二酸化炭素に関わる海洋観測を積極的に行ってきたことから、二酸化炭素吸収量に関連したデータを内包した様々な海洋・大気観測データセットが存在しているとみられる。このため、本研究では、これらのデータに対し統合的な解析を行うことにより、太平洋の二酸化炭素吸収量を解明し、地球規模の炭素循環の解明に貢献することを目的とする。
 本研究では、その統合的な解析を進めることにより、太平洋域の二酸化炭素海洋吸収量を明らかにすることを目指し、わが国の海洋観測研究のデータを活用することを通して地球規模の炭素循環の解明に貢献することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆北部北太平洋における、商船を用いた高頻度観測データは国際的に高く評価されている。また、このようなデータセットを作り出すとともに、データベースを整備し、さらに国際的な標準化を進めているという点も高く評価される。ΔpCO2からフラックスの計算まで、より幅広く研究対象に入れた方が良いのではないか。
◆現在の研究は、期待された成果が出ているので、引き続き観測研究を継続することが適当と判断される。生物データ統合化技術、分析の標準化など、本観測技術を支える技術の確立という点でも評価できる。ただし、欧州・北米に関しては、出来るだけ諸外国に任せ、我が国としては太平洋に集中するべきではないか。困難や不便を伴うが、南太平洋という空白域をどのように埋めていくかという点に配慮していくべきである。
◆貴重なデータが得られつつある。しかし、データ取得ということ自体は今や外注も可となりつつあり、その場合、研究者は何を今後やっていくべきか、というシビアな視点も取り入れて欲しい。
◆最終的な結論に向けて、研究を進めていただきたい。
◆海洋sinkの問題は興味深い問題であるが、今後、どの程度まで定量化が可能、又は進むのか、明らかにして欲しい。
◆この研究課題には性格や目的が異なる研究が混在しているのではないか。サブテーマ(1)の海洋観測は何十年も継続して意味が出てくるものであり、別の枠組みの予算で実施されるべきものではないか。他方、サブテーマ(2)、(3)のように、既存のデータベースを活用、解析するのは、推進費の研究プロジェクトとしてふさわしいと思う。サブテーマ(4)は、CO2分圧測定法の国際標準化実験ということで、他のサブテーマと全く異なった性質を有しているのではないか。この研究課題の本当の目的を、より明確にして、どこまで達成するかとういう的を絞った研究計画にすべきである。
◆期待通りの成果が得られつつある。海洋におけるCO2吸収に関するベーシックなデータ-が整備されてきており、他の分野(気候変動予測モデルの高度化、海洋生態系による吸収強化等)への波及効果が期待できる。
◆生物データについては、測定方法の改善が示唆されているが、早急な改善を実施することが求められる。
◆海洋全体におけるCO2シンクとしての結論に近い総括的な成果が得られることが望ましい。
◆データベースの構築という観点からは有意義であるが、このデータの位置付け及び活用の方法がやや判り難い。この時点で最終目標の再確認を行うことが望ましい。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13一般
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
B-13 温帯高山草原生態系における炭素動態と温暖化影響の解明に関する研究 環境省国立環境研究所
(唐 艶鴻)
C
(1)
(2)
 
(3)
 
 
(研究概要)
 温帯高山草原生態系はアジア陸域において大きな面積を占め、炭素蓄積密度が高く、炭素シンクである可能性が高い。当該草原生態系における炭素動態の解明は、アジア陸域、地球レベルの炭素収支の評価においても重要なカギとなっている。とくに、青海・チベット高原を覆う植生の変化と東アジア全体の気候変動は極めて密接に関係を有している。このことから、東アジア地域全体の温暖化影響を明らかにするためには、当該草原生態系における温暖化影響の評価が是非とも必要である。そこで、本研究は、代表的な温帯高山草原生態系、とりわけ、青海・チベット高山草原生態系において、炭素蓄積の時間的空間的変動を明らかにし、炭素蓄積過程を左右する生物環境要因を評価する。また、広域な気象環境・草原生産力に関する既存の観測データを解析し、温帯高山草原生態系における炭素動態および温暖化による影響を解明することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆これまでデータの少なかったチベット高山地域の生態系機能、炭素収支に関するデータが得られており、評価できる。今後とも、総合評価の視点を忘れないで欲しい。また、個々の結果は新しいものであり興味深いが、サブテーマ間の関係、また、標題に掲げた全体の目的との関係がわかりにくい。
◆この種の研究は重要と考えるが、それが地球温暖化の解明に本当に重要なのかという点については、疑問が残る。研究本来の意義を自覚して取り組む必要があると思われる。
◆各サブグループで、様々な項目に関する研究に着手し、一部成果が出始めたということは理解できる。しかし、各項目がどのように組み立てられて全体の研究目標の達成に結び付くのかが見えない。研究目標の達成にむけた研究計画の再構造化が改めて必要なように見える。例えば、試験地での計測結果をどのようにして青海・チベット高原全体の炭素収支につなげるのか、個葉やフンなどの光合成、炭素含有量のミクロレベルのデータを全体の炭素収支のマクロな見積もりにどう結び付けるのかなど。
◆何故チベットなのかという点について、その重要性や必然性に関する説明がより必要と思われる。
◆高原草原でのCO2 fluxの観測自体の意味はあると思われるが、温暖化による気温の上昇は主に冬である可能性が高く、本地域の気候変化と温暖化との関連は弱い可能性がある。また、1点での観測をどうアジアの高原の代表と考えるのか、その方法論についても十分に考える必要がある。
◆それぞれの地域での研究手法、計測項目などを、より一貫したものとすべく、研究計画を再検討した方がよいと考えられる。
◆青海草原がどこまで代表的なのかについて、吟味しておくべきである。世間一般にやられている研究を青海草原でやっただけのように見えてしまう可能性がある。
◆用いた観測点の代表性についての説明や、データのスケールアップ戦略等について説明が不十分である。
◆草原学としてのメカニズム解明という印象が強く、温暖化影響評価あるいは温暖化対応研究としての意義については疑問が残る。
◆個々のサブテーマの意義については、科学的視点からは疑問の余地はないが、全体像として、本研究がどのように発展していくかが不明である。また、手法とデータ解析の方法論について、客観性の確保に留意して欲しい。
◆ヒアリングの際に説明のあったチベット高原の草原で測定した結果と、地球温暖化のメカニズム考察との関連性がよくわからない。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13一般
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
B-56 環境低負荷型オフィスビルにおける地球・地域環境負荷低減効果の検証 環境省国立環境研究所
(一ノ瀬 俊明)
C
 
 
 
 
 
 
(研究概要)
 地球環境保全に配慮した建築手法は、温暖化防止に有効な熱負荷低減手法など様々な提案があるものの、各手法の効果を具体の事例で確認した調査研究例は非常に少ない。平成12年度に国立環境研究所敷地内に建設された地球温暖化対策国際研究棟には各部に様々な環境保全手法が取り入れられていることから、本研究では、研究棟の各部位における放射と熱の挙動に関する通年モニタリングを通じた個別技術毎の環境負荷低減性の比較検討及び建物全体のLCA評価を行う。また、アメニティーを含めたオフィス(研究棟)内外空間の快適性向上の検討や日本の気象条件、建物使用実態に即した環境負荷低減手法の効果の確認を行う。更に、エネルギー消費行為から大気への放熱に至るまでの躯体内部の詳細な熱挙動の把握とモデル開発を通じて、大規模に環境低負荷技術が普及した場合のヒートアイランド低減効果などによる副次的環境負荷低減効果を明らかにする。そのために都市気候数値モデルにおける人工排熱の取扱い方の確立、屋外熱環境に対する建物内部の人間活動の影響のリアルタイムでの把握を行う。以上を通じて、個別建物から都市スケールまで建築における各種環境保全手法が導入された場合の環境負荷低減効果の定量化とコスト対効果の比較などによる技術評価を行うとともに、それら手法の効果的な設置法や現実的な活用法を提示することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆この種の研究はデータの蓄積がまず大切である。研究成果は、データをどのように整理して分かりやすく伝えるかという点にかかっていると考えられるが、この点では希望が持てると評価できる。より役立つデータの取得と解析となるように努めることは不可欠であるが、今年度までは様子を見るのが適当と思われる。また、今後は個別技術の評価だけでなく、太陽光、熱の有効利用、建物構造の影響等全体的なシステムとしての評価へ、高めていくことが期待される。
◆現状では順調に進んでいるといえる。ただし、実測とシミュレーション結果とのきちんとした対比が発表論文等ではまだまだなされていない。今後のよりきちんとした分析を期待したい。
◆個別の対象、ミクロ的現象の確認等が行われており、本研究は重要かつ必要である。それなりの成果も出ていると思われるが、今後、研究成果に基づいたモデルと実態との照合を行い、説明力の高いモデルを確立して、多様な対策の効果を定量化できるようにしていく必要がある。対策評価のための個別研究もbalanceをとることが必要。
◆オフィスビル等の環境負荷低減策は社会・経済・行政的に極めて重要と考えられるものの、その目的のために建築物が構築され、検証できるケースはこれまで殆どなかったと思う。そのような観点から極めて実践的なデータの蓄積と活用が期待できる。しかし、現在の研究の取り組みは、やや個別的であり、汎用的な方向でまとめられる工夫が今後必要と思われる。
◆研究の対象建築物が研究棟となっている。研究課題名に掲げられたオフィス一般への適用に、どうつなげるかという点を明確にして、研究を進めることが望まれる。
◆省エネ効果はシステムの組み合わせがポイントと思われるが、単独システムの検証で終わってしまっては、そこがよく見えてこないのではないか。
◆ビル、住宅の密度の高い日本において、温暖化対策への基礎的なデータを提供するものとして、この研究テーマの重要度は理解される。しかし、今回の報告書からは、研究者の強い意気込みが感じられない。新しく建設した研究棟自体を温暖化対策の研究対象にしようというのであれば、もっと多くの工夫を導入し、徹底してあらゆる対策の効果を検討して国民に発信するという意気込みが必要ではないか。発表が少ないのも問題と思われる。
◆建築物の温暖化対策の効果を実証的に研究しており、堅実な成果が期待できる。
◆比較すべき基準のあいまいさ等を含め、結果を科学的に示せる形に研究方法を改善する余地があると思われる。
◆得られたデータの標準化が必要と思われる。
◆個別技術の評価を、総合的な省エネ建築の設計手法に生かせるのか。国のプロジェクトとして推進する意味を明確にすべく、最終目標の設定を含めてもう一度研究戦力を見直して欲しい。
◆この研究成果を基礎として、環境低負荷型オフィス設計に対する提言を具体的にまとめて欲しい(都市モデルへの組み込み等)。また、「居室」、「ライフスタイル」などという用語が、このオフィス建築物にふさわしいものか再検討して欲しい。
◆今後の成果の取りまとめと発信の仕方次第で、本研究の波及効果は激しく変化する。今後の戦略を考えて欲しい。
◆地球温暖化の観点から見た場合、直接行政に応用できそうな成果が見当たらないのではないか。サブテーマ(1)については、ライフスタイル調査など多くの研究機関で実施しており、新規性の点で疑問が残る。また、幅広い対策を広く評価することも重要だが、有望な対策を早く見極め、その技術の評価を深堀りし、汎用的な成果を導くことの方がより重要ではないか。行政的には、これらの対策の優劣を早く見極めたい。サブテーマ(2)の屋内自然通風によるGHG削減を定量的に評価する試みは期待できる。ただし、削減ポテンシャルが低い場合、詳細なLCAを実施するのはあまり意味のあることとは思われない。サブテーマ(3)についても、削減ポテンシャルを勘案した上で、詳細な解析を行うべき。
◆発表者も意識しているように、各テーマ間の連成解析や、個別技術のシステム化の詳細評価が今後必要と思われる。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13一般
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
B―57 海水中微量元素である鉄濃度調節による海洋二酸化炭素吸収機能の海洋生態系への影響に関する研究 農水省水産総合研究センター
(津田 敦)
B
(1)
(2)
 
 
 
 
(研究概要)
 海洋が大気から吸収する二酸化炭素の量は、その海域の植物プランクトンの生理特性と増殖速度によって大きく左右される。これまで、亜寒帯太平洋、赤道湧昇域、南極海は海洋中の微量元素である鉄の不足によって植物プランクトンの増殖が制限されている海域として知られており、亜寒帯太平洋を除く2海域では、既に米国、欧州を中心とした国際共同研究による海洋への鉄濃度調節実験が行われている。しかし、亜寒帯太平洋は上記2海域とは異なった植物プランクトン群集を有し、その増殖に影響を与える環境要因である栄養塩組成や生産層深度も異なる。そのため、特に鉄濃度調節による二酸化炭素の海洋吸収機能強化の効果検証の必要性が広く認知され、PICES(北太平洋の海洋科学に関する政府間機構)に鉄散布実験に関するパネルが1997年に設立され議論されてきた。その結果、過去の2海域における実験では、二酸化炭素吸収量の定量的評価、海域による効果の差および生物群集への影響が十分に検証されていないなどの問題点が指摘され、2001-2003年にかけて、北太平洋の東西で鉄濃度調節実験を行うことが推奨されている。本研究は亜寒帯太平洋で鉄濃度調節実験を行い、海洋の二酸化炭素吸収機能と海洋生態系への影響を検証することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆海洋での鉄散布実験そのものは新規性に富むとはいえないが、本研究の重要な点は、さまざまな条件での鉄散布実験を年次的に計画していることであり、これによって、鉄添加の影響をより詳しく明らかにすることが可能になると思われる。これにより、従来の単発的な実験とは異なり、より大きな成果が期待できる。初年度における添加実験の成功は本研究グループの能力の高さを示すもので、短期間の間に準備をおえ、大きな成果をあげたことは特筆に価する。また、今後、計画的な鉄散布実験による利点を生かして生態系への影響の研究部分を補強して、研究を進めることが望まれる。
◆きちんとした科学的データを出せば、利用価値が大きいと評価できる。
◆結果は非常に期待できるが、生物、生態系への影響をどう評価するか。各サブテーマが密接に協力して調査すべきである。
◆研究計画はこのまま継続してよいと考える。3つの研究グループともに、成果報告書の段階で、本研究課題による研究成果の公表がないため、今後研究成果の可及的速やかな発表を希望する。
◆極めて重要なテーマ。生態系への影響が科学的に解明されないまま、この方式の温暖化対策が実態として進んでしまうことのないよう、国際的な研究協力を強めて早急に科学的な政策判断ができるようにすることが必要。
◆鉄粉散布のアイデアはよく知られているが、実行となると自然改変技術だけにPAの面からも慎重な対応が必要である。本研究はその基礎的な側面の実験で、測定をもう少し続けることにより、ある程度技術としての意義が明確になるであろう。ただし、現状ではこの規模以上の実験研究は行うべきではないと思われる。
◆期待以上の成果を収めており、2年間延長すべき課題と評価できる。
◆生態系影響についてのアプローチが必要と思われる。
◆生態系への影響をもっと明らかにすべきと考えられる。
◆研究成果の公表に、今後、より努める必要がある。
◆CO2固定量の具体的な推定などを、実用性の見通しも含めてより詳細に示すことが望まれる。
◆実験的な重要性は理解できるが、データの処理、解析については慎重な取り扱いが必要。学術論文化により、学問的な評価をより受けることも必要。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13開始
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
IR-3 地球温暖化の総合解析を目指した気候モデルと影響・対策評価モデルの統合に関する研究 環境省国立環境研究所
(井上 元)
B
 
 
 
 
 
 
(研究概要)
 本研究は、温暖化の影響、各種温暖化対策の必要性と効果を政策担当者、国民等に対して具体的に提供することを目標とし、対策評価、温暖化の見通しの評価、影響評価の3つのモデル間の相互作用を解析するアジア太平洋地域向けの統合モデルを開発して、温室効果気体及びエアロゾルの排出が地域の気候変化を通して農業の収量変化や水資源の変化へ及ぼす影響に対する基礎的情報を得ることを目的とする。
 現在、地球温暖化研究において解決すべき大きな課題として、①地球温暖化をもたらす温室効果気体と地球温暖化を基本的に抑制する対流圏エアロゾルという2つの大気微量成分について、人為的発生量を対策モデル数値計算により定量的に評価し、その評価に基づいて、気候の将来の見通しを得るための空間3次元気候モデル数値計算を行い、地球温暖化の時空間分布を定量的に推定すること、②その推定結果に基づいて、影響評価モデル数値計算を行い、地球温暖化の影響を定量的に推定することの2つが挙げられる。本研究では、最終的にこの2点を遂行することを目指す。具体的には、開発済みの全球気候モデルを、影響および対策評価と結びつけるために、対策研究の成果を気候モデルに組み込む手法を開発して、その開発した手法を組み込んだ気候モデルを利用し、影響研究に資する成果を得る。このように、排出シナリオに対する気候シナリオ、その気候シナリオに対する影響シナリオについて一貫したモデルを作成し、それらのシナリオの評価を実施する。また、開発したモデルを、20世紀の過去100年間の地球温暖化研究に適用することを試みる。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆本研究は各テーマが相互にリンクしており、全体としての評価のみが有効である。現状は開発途上だが、グローバルモデルと地域モデルとのリンク、過去のデータを利用したモデルパラメーターの修正など、順調に進んでいるようであり、このまま研究を進めるべきである。
◆影響・対策評価モデルまで研究の枠を広げて、社会・経済・行政的貢献を正面に見据えた研究と評価できる。サブテーマの内容が具体的かつ明快であり、そこに設定したゴールも明快で成果が期待できる。初年度にも着実に成果が上がっている。
◆基礎的研究として継続が必要である。多数の論文、口頭発表がされていることも評価できる。
◆気候・環境変動予測のための統合化モデル構築は最も重要な課題であり、是非進めて欲しい。現時点では排出シナリオ→影響への道筋が明確でないので、何を変化させて、何を明らかにするのか、視点を定めて研究を進めて欲しい。また、サブテーマ間の連携を密にして欲しい。具体的には、サブテーマ(1)の成果を早めにサブテーマ(2)、(3)に生かせるように努めて欲しい。
◆考え方は分かるが、テーマがあまりに困難かつ大仰過ぎるという感もある。研究を進めるに当たり、オリジナルな発想は何であろうか。研究者がどこまで本気で、掲げたテーマを追求するつもりなのかによって、評価も変わってくる。
◆研究の狙いは理解できる。一年目の成果は必ずしも十分でないが、計画どおりに研究が進めば、社会的に価値の大きい研究になるであろう。ただし、研究体制に関しては、メンバーがほぼ国環研の研究者で占められ、研究内容もほぼモデルの開発ということに限られることから、これだけ多額の研究費が必要かどうか疑問が残る。
◆本研究において気候モデルに関し一部モデルの精緻化が行われているが、本研究では、気候モデルから得られる結果からどういうImpactが説明できるか、またそれに適したモデルのチューニング、結合等、影響分析のモデルの方に、より重点をおくことが必要ではないか。
◆IPCCへの貢献度という点で評価できる。
◆最終目標が壮大なだけに、モデル作りの各段階での、モデルの有効性の評価を徹底しながら進めて欲しい。
◆研究結果の妥当性等の評価を、全地球平均で行う場合と、北アメリカ、アジア内部などの地域スケールで行う場合とは異なる。また人間活動なども地域スケールで非常に異なっており、これらを整理した上で、研究結果の妥当性等の評価を行う必要がある。
◆単なる気候モデルの研究になってしまっており、統合モデル化の進捗が極めて良くないのではないか。また、統合化モデルへの道筋も明確とは思われない。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13一般
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
C-5 中国北東地域で発生する黄砂の三次元的輸送機構と環境負荷に関する研究 環境省国立環境研究所
(西川 雅高)
A
(1)
(2)
 
 
 
 
(研究概要)
 中国大陸の砂漠地帯や黄土地帯から発生する黄砂は、発源地に近い中国と長距離風送される日本および北西太平洋地域で影響の捉え方が異なる。中国国内では、砂塵暴による農業被害や健康被害、交通障害が問題となり、日本を含む北太平洋地域では、黄砂による気候変動、温暖化への影響、酸性雨への影響、海洋や島嶼への栄養塩負荷変動が問題となり、IGBP(International Geosphere-Biosphere Programme)やIGAC(International Global Atmospheric Chemistry)の研究対象物質となっているが、その発生や輸送機構、化学動態変化についてほとんど判っていない。北京周辺に輸送される黄砂は日本にも飛来する確率が高く、日本周辺で観測された黄砂やそれに関連する酸化性物質(二酸化硫黄等酸性化成分のほかオゾン等酸化力のある物質も含めた総称として使用)の科学的情報を国際的に確たるものにするためには、風上側の科学的情報が不可欠である。東アジア地域の黄砂に関する科学的解析を行うことは、IGACの中でも特にアジア起源のエアロゾルを対象とするACE(Aerosol Characterization Experiments)-ASIAプログラムにとって有益な情報提供となる。よって、本研究では、北京を中心とする中国北東地域で発生し風送される黄砂の三次元的大気動態の把握、東アジア周辺の負荷量評価を行うことを目的とする。加えて、得られる成果は、今後中国が行う計画の黄砂防止対策が東アジア周辺に及ぼすさまざまな環境変化を評価するためのベースラインとなる。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆黄砂現象は近年、急速にその飛来量が増加し、日本国内の産業被害、人々の生活被害が増大している状況から、一日も早い原因究明と対策が望まれる。本研究計画は黄砂の発生源の特定から、飛来、その間の物理的・化学的な性状変化までを視野においた力の入った内容である。輸送モデルについては、現時点ではあまり高く評価できないが、この種のモデル解析が力を発揮するのは、研究の中後半からであると考えられ、今後の展開が期待される。黄砂の輸送過程中の化学変化については重要な現象ではあるが、やや研究の幅が広がりすぎな感がある。サブテーマ間での力点のおき方に差を付ける必要があるという印象を受ける。
◆純粋に我が国の環境問題として狭く見た場合には黄砂の重要性はそれほど高いとは思えないものの、最近黄砂が増えていることについて気候変動との関連から社会的関心が高まっていることに対する行政対応として、また、中国ではまさに深刻な環境問題となっていることに対する国際対応(技術協力)として、本研究は評価すべきであろう。そうした意味からは、極めて時宜を得た課題であり、特にサブテーマ(1)は高度技術を用いたモニタリングとして重要な貢献をしている。今後モニタリングデータの解析からどういうサイエンスを導き出せるかがポイントとなろう。またサブテーマ(2)においては、わが国に中国から輸送される硫酸、硝酸イオンなどのうち、黄砂に沈着した形で輸送される量の比率を定量的に求め、この面からの黄砂の重要度を定量化することが必要である。サブテーマ(3)に関してはRAMS/CMAQモデルシステムそのものは既成のモデルと思われるので、解析のねらいをどこに置くかを、より明確にすべきであろう。また、黄砂上の汚染物質付着輸送のサブテーマに関しては、黄砂の側からでなく汚染物質の輸送・変質収支のの側からみた黄砂の重要度についての三次元化学・輸送モデルによる定量的評価が必要と思われる。
◆研究は当初の計画どおり遂行されており、成果の熟成度は高い。新しい仮説や課題も生まれ、さらに研究を進めれば相当な成果が期待できる。欧文での成果発表数が多く、またハイランクの国際学術誌への投稿論文もかなりあり、国際的波及効果も大いに期待できる。ただし、サブテーマ(3)と(4)については、成果の誌上発表が望まれる。研究は計画的・体系的に遂行されており、さらに研究をすすめれば相当な学術的・行政的価値の高い成果が期待できる。黄砂防止のための科学的な提言も期待できる。
◆黄砂現象による被害、気候変動が重要課題となるなかで、社会・経済的に緊急性の高い研究といえる。また、すでに各サブテーマとも成果を出してきている。全地球的な研究課題は観測モニタリングとモデルの構築・検証が両輪となると考えられる。本研究課題についても、黄砂現象の発生・輸送・沈着量の解明に焦点を絞って有機的、効果的な研究体制で推進して欲しい。
◆サブテーマ(2)の成果は興味深い。黄砂現象のみられたときの降水の化学成分との関連について考察すると興味深いと考えられる。最近急速的に黄砂現象が増加した理由を説明でき、発生源対策・防止対策に結びつくような研究に発展することを期待する。Sr同位対比を利用した発生地域の推定手法は興味深い。
◆サブテーマ(4)、(5)において、砂、土壌の飛散量の確定に役立つ物理特性、粒径分布、土壌水分による粒子の凝集などを発生地域別に調査することが望まれる。このためには、中国側研究者の協力体制を強化する必要があるであろう。
◆黄砂の物理、化学的研究としては理解できるが、環境との関わりが今ひとつ明らかでない。化学的にどうなのか、日照など物理的にどう環境に対する影響があるのかを説明できることが望ましい。また、得られた知見を一般に分かりやすく解説するのも専門家の義務であり、今後努力して欲しい。
◆黄砂の機構を解明する本研究は重要。今後は黄砂対策との連携が望まれる。
◆科学技術振興調整費グループとの差異を常に念頭に置いて、対外的プレゼンテーションを行った方が広い支持を得られるのではないか。
◆黄砂現象が防ぎようのないものである以上、我が国への到達回数が増えている原因(例えば気象変化)に特化して研究した方がよいのではないだろうか。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13一般
(13~15)
*中間評価*
F-3 侵入生物による生物多様性影響機構に関する研究 環境省国立環境研究所
(五箇 公一)
B
(2)
(1)
 
(3)
 
 
(研究概要)
 生物多様性を脅かす要因として、開発による生息地の破壊、環境汚染物質による生息環境の悪化の他に、本来の生息地以外に生物種が人為的要因により運ばれ、定着する生物学的侵入があげられる。生物学的侵入は一度起こると生物間相互作用により生態系に不可逆的な変化をもたらし、回復を非常に困難にする。これまでにも我が国ではブラックバスやアライグマ、チョウセンイタチ、マングースといった中型ほ乳類による日本在来の生物種あるいは農作物への被害などが議論され駆除も検討されているが、小型の昆虫や植物をも含め年々増加を続けていると考えられる侵入種の実態および影響に関する調査研究は極めて立ち後れている。本研究では日本における侵入種の実態を把握し、それらがもたらす在来生態系への影響を様々な角度から検証し、得られたデータをもとに侵入種による生物多様性への影響機構を解明することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆きわめて重要な研究で、我が国の侵入種のデータベースは研究終了時までに是非構築してほしい。脊椎動物や昆虫類に限らず、植物も重要と思われるため研究を広げてほしい。ニッチの獲得のしやすさ等、侵入種の定着、分布の拡大の評価指標はできないものであろうか。
◆研究の成果が上がっており、その公表も活発である。
◆適度なスピードで目的にそった成果を上げている。サブテーマ(3)の哺乳類は生態調査を積極的に位置付けた方がよいと考えられる。
◆たびたびマスコミにも取り上げられているように、非常に重要なテーマに対して、一般にも分かりやすい研究を行っているため評価できる。「考察」に記載された「最終年度までにこれらの成果から我が国における侵入種対策の新しいパラダイムを打ち立てたい」という記述について今後期待が持てる。ただし、サブテーマの分け方が不明瞭な印象があり、特にサブテーマ(2)とサブテーマ(3)は重なった面があると思われる。
◆生物的な国家施策の基本データとなるものであり、重要と評価できる。また、危険度、重要度の高くない種の公開も重要と考えられる。
◆サブテーマ(1)で作成されたGISPはその成果をCD-Rに収録し公開(市販等)してほしい。進入経路についてはできるだけ詳細に侵入した場所を(個人のプライバシーへの配慮が必要かもしれないが)含めてほしい。そうすれば今後の対策に役立つであろう。移入草木は、当初は大きなインパクトを在来種に与えるが、帰化が進むにつれて自然の一員となる過程に入ると考えられる。動物の場合、特に捕食性の肉食動物ではどうなのか。過程の精査が必要と思われる。
◆研究テーマとしては極めて重要と考えられる。ただし、全体に特定種に偏している傾向があるのではないか。もう少し体系的に問題種、問題生態系を抽出するプロセスが必要であり、その上で問題性、緊急性のある種をとりあげるというアプローチが必要と思われる。侵入種に対して抵抗性のある群集ニッチは何なのか検討が必要。また、侵入の場を特定していくことが必要。個体群の変遷、Taxon Cycleについての検討が必要。
◆Global Invasive Species Programmeとの連携の一層の強化が望まれる。わが国のAISのナショナルインベントリーづくりへの貢献を目指すプロジェクトであると思われるが、インベントリーづくりに関して言えば、生物多様性国家戦略の一環として、一般行政経費で対応してもよい部分があるかもしれない。国と地方自治体におけるAISを対象とした保全戦略に対して、データを逐次提供することも視野に入れた体制の構築が望まれる。日常的な啓蒙活動への一層の貢献も期待したい。
"◆侵入種が害獣あるいは害虫として直接的に人類社会に有害な影響を及ぼすという問題と、侵入種によって在来種の多様性が減少し、それによって地球環境がかく乱されるという問題がある。後者については、一連のプロセスを調査分析し、最終的には多様性の減少が単に地球環境劣化の指標だけではなく、実際に人類社会に与える重大な影響までも検証する必要があると思われる。遺伝子DNAを使った種や集団の識別は有効な武器であるが、分析に用いる遺伝子の選択結果の取り扱い方についていえば、十分な研究レベルとは言い難く、より高い研究レベルとすべく努力することが望ましい。
"
◆サブテーマ(1)のデータベース構築はphase 1としては必要だが、その次の「生物特性」についてのアプローチ(survey etc.) はどのようなものとする予定か展望を示してほしい。データベースの拡大及び増強が必要であると思われる。
◆侵入種のデータベースには現在・土着の種との相同性も考慮した方がよいでのはないか。哺乳類については侵入・駆除のガイドラインを示してほしい。
◆データベースは別として、もう少し対象種を絞る必要があるのではないか。サブテーマ(2)と(3)の役割の違いが明確でないと思われる。
◆侵入生物は本来の生息域外から人為的に持ち込まれ定着した生物である、という認識は正しいが、調査研究項目を詳しくみても「人為」の側面に関する配慮がされているようには見えない。侵入生物種の生態系内での生物的影響に限定して調査研究を深めても正しい対策に結びつかないことは明らかであり、「対策」のための「人為」に関わる研究を真剣に取り上げていくことが望まれる。外来種としてあげられているリスキーな種のデータベース、それらの種の生態影響についてはそれなりに期待された成果をあげていると評価できる。しかし、対策については駆除法に限られており、人為的な理由、人為的な要因を直視しているとは言えないのではないか。
◆行政的ニーズを十分踏まえた研究として評価できる。サブテーマ(2)については、「研究」としての内容が必ずしも明確でないと思われる。
◆サブテーマ(1)は、現状では掘り下げが足りないない。しかしヒアリング時の委員会の意見等を採り入れれば貴重なデータベースに発展する可能性は高いと思われる。サブテーマ(3)はむしろ行政的に扱うべきテーマではないかと思われる。
◆サブテーマ(3)については、さらに研究を深める(対象生物の拡大、駆除以外の手法など)必要がある。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13一般
(13~15)
*中間評価*
F-4 高度情報・通信技術を用いた渡り鳥の移動経路と生息環境の解析及び評価に関する研究 環境省国立環境研究所
(田村 正行)
B
(2)
(1)
 
(3)
 
 
(研究概要)
 近年、長距離移動性の渡り鳥が世界各地で急速に減少している。その主な原因は,繁殖地,中継地,越冬地それぞれでの環境破壊であると考えられている。渡り鳥の急減は,単に渡り鳥そのものの消失を意味するだけでなく、渡る先々での生態系の歪みの発生を意味している。渡り鳥が消失することになれば、それらを媒介とする生物間の相互作用が機能しなくなり、生態系の健全性が損なわれることになる。その意味で、渡り鳥の保全は、渡り鳥によって連結されている世界各地の自然環境の保全に深く関わっており、私たち人間の生活とも密接に結びついている。渡り鳥の保全を目指す研究を進展させるためには、渡り鳥が非常に広い範囲を移動するため、人工衛星を利用した移動追跡や衛星画像による環境解析などの技術が不可欠である。本研究は、これらの高度情報・通信技術を利用して渡り鳥の生態を調べるとともに、全地球測位システム(GPS)を用いた新たな追跡技術をも開発しながら、渡り鳥とその生息環境の保全を進めることに貢献する。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆長距離を移動する渡り鳥が世界各地で急減している中で、衛星追跡と衛星画像解析を組み合わせて渡り鳥の移動経路と生息環境を調べようという研究は大変意義があり、一般にも興味深い。成果が上がり渡り鳥減少の原因が明確に突き止められることを期待する。
◆研究の成果が着実に上がっており、その公表も活発である。
◆サブテーマ(3)のテーマは、コロニー営巣性の鳥類などについては汎用性が高いと思われる。国内での実用化調査も含めて、検証例を増やしていただきたい。ただし、もう少し、一般への公表(マスコミ等)を行っていくべきテーマと研究成果と考えられ、公表がやや少ない印象がある。
◆GPSによるデータ蓄積が期待でき、その完成まで研究期間の延長を認めてもよいと思われる。
◆重要な研究であるが、タンチョウ、オオハクチョウで各1羽のみの追跡になっており、改善が望まれる。サブテーマ(2)と(3)の共同研究が可能であれば、行ってもよいのではないか。
"◆目標設定は適切であるが、研究を達成させるためにさらなる努力が必要である。GPSを完成させてほしい。
"
◆渡り鳥の経路、生息地環境解析という研究目的に対して、前者に関する成果は評価すべきものと考える。しかし、サブテーマ(1)、(2)は前者がコウノトリ、後者がタンチョウ等の鳥類の違いだけのように受け取れる。サブテーマ(3)は機器の開発に見るべき成果を上げた点は評価できるが、実際に鳥に装着したときにどのような結果が見られるか今後期待したい。全体として、渡り鳥の渡り経路、生息環境の解析、更なる技術開発に顕著な成果をあげている。最終的な前2者、渡り経路と生息環境の解析を結合して具体的な政策の提言に至るような成果の取りまとめに努めてほしい。
◆正確な地名表記に留意されたい。サブテーマ(1)についてはある程度渡り鳥生息地の様子が分かってきたが、サブテーマ(2)における途中の渡りの経路がどう選択されているのかが未だ解明されていない。渡りの経路選択は年によって変化するのか、土地の利用形態によって狭まるのか、年次の経路調査から、実地調査を加えて判断が可能。GPSによって長期の自動位置情報収集システムを開発する理由を明確に示すべき。本研究は、衛星画像の入手に多額の費用がかかり、重要なテーマではあるが、全体額で1億円強を投じて鳥の渡りの研究が必要かという点は気にかかる。
◆生息地、中継地、越冬地の環境解析については、湿地等の季節変化及び人為影響による変化等に関する現場スケールでのグランドトゥルースの一層の強化が必要と考えられる。また、現地機関とのタイアップによる保全戦略への貢献を目指していくべきと考えられる。GPSを使用した追跡システムの開発を期待したいが、適用可能な鳥類種や時間・距離、空間範囲などについての青写真をもう少し提示してもらいたい。オペレーショナルな半球-全球規模の広域追跡システムの開発に向けた国際共同研究への展開も期待したい。
◆渡りそのものの研究としては評価できる面もあるが、生息地保全の必要性とその課題にどのように結びつけるかという点で、より努力が必要である。
◆送信機を装着した個体と無装着の個体との間に、行動のActivityに差がないことは十分確認されているのであろうか。送信機を装着した個体はごく少数なので、行動様式の個体間の偏りはどう評価されるのか明確にして欲しい。費用はかかっても例数を増やして明確な確認を行う必要があるのではないか。
◆サブテーマ(3)に関しては、対象とする鳥類は限定されないはずなので、むしろ従来の方法での調査と同じ対象でテストすることが望ましいのではないか。サブテーマ(1)あるいは(2)と密接に連携させて実施すべきと考えられる。技術開発に相当のポイントが置かれており、この部分については、民間も含めて他の研究費のサポートを得られる可能性も十分あると思われる。
◆サブテーマ(2)について、中継地の現在状況調査は地上から行っているのか明記して欲しい。また、「一日のわたり距離は成長>幼鳥となっているが、中継地点の距離には差がない」という記述は矛盾していないか明確にされたい。また、表題にある機構解明についての解析結果を明確に示してほしい。
◆なぜいろいろな地域で調査するのかという点が大変分かりにくい。
◆報告書に記述されている成果が概括的なものに留まっており、報告書には、実際の研究過程を含め、より詳細にかつ具体的な成果も交えて取りまとめるべきと思われる。
◆総合的には科学的、社会的ともにインパクトがある優れた研究である。新手法の開発であるサブテーマ(3)、実例の蓄積のサブテーマ(2)だけでも十分に成果として成り立ち得るが、今後これらの手法を環境解析と統合していく段階(サブテーマ(1))には未だ相当程度のクリアすべき課題の特定と、実験的な試行が必要であろう。その意味でサブテーマ(1)の一層の努力を期待したい。
◆所期の研究目的の達成に向けて順調に進捗している。生息地の環境解析と変化予測については今回の説明からは必ずしもその成果が明確でない。
◆海鳥に限らず、GPSスタイルの陸上への展開も図ってほしい。
◆GPSシステムを本研究で開発する必要があるかは疑問。他で開発されたものを購入するという方式では本当にダメなのか疑問が残る。サブテーマ(1)は対象地域(中継地等)の経年変化抽出に力を注ぐべきと思われる。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13重点
(13~15)
*中間評価*
G-2 砂漠化指標による砂漠化の評価とモニタリングに関する総合的研究 環境省国立環境研究所
(清水 英幸)
C
(1)
(4)
 
(6)
(2)
 
(研究概要)
 1998年に砂漠化対処条約(UNCCD)の締約国となった日本には、アジア地域のテーマ別プログラムネットワーク(TPN)、特に最初に立ち上がったTPN1「砂漠化のモニタリングと評価」という地域活動に関する積極的な研究支援・技術的貢献が期待されている。そこで、本研究では、アジア各地域における砂漠化の各プロセス(背景情報、直接的/間接的要因、砂漠化の状況、その影響、対策の効果等)に関する調査研究を進めると共に、砂漠化の統一的な評価システムの確立の基礎となる有効な砂漠化指標の抽出・提示を行う。また、砂漠化の各プロセスの因果関係を定量的に説明可能な砂漠化総合化モデルの開発を進める。さらに、それらの砂漠化地域における広域および地域レベルのモニタリング手法を開発・提示することにより、UNCCD/TPN1に資する研究を展開する。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆地球環境悪化の大きな原因となっている砂漠化を防ぐため今後様々な研究が欠かせないという意味で、本研究の意義は非常に大きい。現場も中国、中央アジア、パキスタンと多数あり、総合的な研究成果を出せる可能性が高いと思われるため、研究マネジメントの在り方が問われる。「これまで中国以外の国には紹介されることの少なかった情報が整理、提示された」とあるように各国に埋もれている砂漠化に関する情報、データを世界共有のものにするという点は重要である。パキスタンの現地調査も速やかに実現させ、世界の砂漠化防止に少しでも役に立つことを期待したい。最終的には広範な国際プロジェクトにもっていき、世界的に進む砂漠化に対処できるようにしてほしい。
◆砂漠化プロセスの始まりである土地荒廃化の引き金、しきい値を自然科学、社会科学の両面より追求していただきたい。
◆汎用性のある指標をつくることは可能か疑問に思われるが、課題としては重要である。
◆人間の活動を大きな要因として捉えた砂漠化評価手法の検討は意味のある試みであるが、砂漠化そのものを、より定量的に測定する方法の改良が本研究の基本となるべきではないか。砂漠化モニタリングの指標として植生に着目するのは有効と考えられる。人間活動のカテゴリーをも含め砂漠化の機構と指標に関して、より焦点を絞った研究が望まれる。
◆早急な砂漠化の評価指標の構築が望まれる。目標の設定は妥当であるが、研究の連携にやや遅れがあるのではないか。総合的研究の意義を十分ふまえて研究を進めてほしい。
◆アジアのいくつかの地域を選択して研究を行っているが、なぜその地域を選んだのか,その根拠をより明確に示してほしい。局所的な要因と全球的な降雨メカニズム、水源となる氷河など、涵養域との関係など、グローバルな視点の中での各地域の特性などについて統一的な展望が必要。地域的な問題でデータの得られない地域については今回の対象調査地から除くなど、計画を見直すべきではないか。
◆この研究計画は砂漠化に関する色々な研究計画を総括するもので、サブテーマのリーダー、全体計画の代表者は総合化、全体総括に大変なエネルギーを投入している様子が伺える。サブテーマは総合化研究と銘打ったものと地域ごとの砂漠化研究の両方が含まれている。前者は砂漠化の評価、モニタリング、モデル化など全地球的仮想砂漠化(理論的)を考察の対象とし、後者は中国、中央アジアなど地域の問題を対象としている。後者は地域研究としているが、現在地球上に起こっている砂漠化は極めて人為的、社会的なものであるのに人類学的、文明論的考察が十分でないと思われる。研究計画を根本から見直さないと、将来の砂漠化に対する防止、回復策にはつながらないのではないか。多くの優れた研究者が健闘している割に成果があがっているように見受けられないのが残念である。
◆サブテーマ(1)の潜在NPPはどのようにして求めるのか、より詳しい説明が必要である。また、NCEP、NCARなどの略記号は専門家以外にはわかりにくいので、他の人へ理解させる努力が必要。指標植物種とした各種の分布状態が示されていないので、軽度・中度などとの対応が分からない。サブテーマで沙地と砂地と異なる用語を使っている。モニタリングとして放牧地のような植生と同様に、作物を対象とするのはどうか検討を要する。カザフスタン、パキスタン、中国蒙古のグループ間での方法論等の検討を行っていると思うが、どこかの場面で、砂漠化の要因やその過程をまとめて、将来の対策につながる提案を行ってほしい。
◆サブテーマ間の連携強化を図る必要がある。研究対象地のパキスタン情勢が不安定なこともあり、成果が上がっておらず、本サブテーマの継続方法について検討を要するのではないか。
◆テーマが分散しすぎているために、科学的な成果が期待しにくいと推察される。研究開始直後とはいえ、一部のサブテーマにおいて、既存資料のsurveyに留まっているという点が危惧される。
◆内容が多岐にわたり過ぎており、課題全体の目的が不明確。テーマを絞る又は内容を整理すべき。個別の地域研究を重視すべきと思うが、現状の報告では地域の選択の根拠が分かりにくいため、明確にした上で検討すべき。
◆砂漠及び砂漠化の問題は研究の質・量の面で地域差が大きいように思われ、例えば、サブテーマを決めたクライテリアなど、この当たりのレビューが望まれる。研究効率の向上、研究成果の論文投稿等、大幅に改善すべきである。
◆本プロジェクトにおける種子発芽の生理生態学的研究の位置付けが不明であり、当該研究分野の現状を十分に踏まえたものとなっているのか疑問が残る。報告書にあるような簡単な実験を実施するのであれば研究費はほとんど必要ないと思えてしまう。緑化植物の選択やその技術の検討には、生態学的な視点が欠かせないのではないか。モデルの性格に応じた統合手法を検討する必要がある。情報集約のための手段、あるいはコミュニケーションツールとしてモデルを用いるというのであれば分かるが、Empiricalなサブモデルを組み合わせて予測モデルとして用いることは困難が伴うものと思われる。
"◆12年度に終了した研究課題「砂漠化の評価と防止技術に関する総合的研究」に比較して、総括性、新鮮さを欠き、研究内容の継続性と発展性にも乏しいのではないか。サブテーマ間の連携も弱く、全体計画の大幅な見直しと、コーディネーションの格段の強化が必要と考えられる。
 研究が既に実施されている段階としては、やむを得ないが、「砂漠化指標による評価とモニタリング」の統一テーマの下に、TPN1への貢献をターゲットにしているところに無理があったのかもしれない。仮に、「砂漠化対処条約」の地域レベルの実施への貢献を目指すというターゲットにするのであれば、サブテーマ(1)以外のサブテーマについては、TPN1にこだわる必要はないことになる。アジア地域には未発足なものも含めてTPN2-6のプログラムがあり、その中にはサブテーマ(4)、(5)、(6)が密接に対応して貢献をなすべきものがある。今後は、これを勘案したテーマの再編・展開を期待したい。
 砂漠化指標の選定とモニタリングについては、まず対象の時空間スケールの階層的体系化(階層別有効指標の抽出と評価を含む)を図るとともに、広域モニタリングの意義とその国・地方・ローカルコミュニティ各レベルの行動計画への有効性を充分に検討すべき。広域モニタリング研究は、NPPの変動を指標にした植生荒廃プロセスのモデリングを中心に行われているが、この手法とスケールで”砂漠化の真の姿”がとらえられるのか疑問が残る。得られた情報は誰が何のために、どのように使うのかという観点も含め再検討すべきではないか。サブテーマ(2)、(3)のEFFはそれぞれ一定の成果を上げているが、研究全体へのインプットが少ないのではないか。政情不安が続くサブテーマ(6)のパキスタンでの研究実施は再考を要すると思われる。
 参考:サブテーマ(4)では、TPN2(アグロフォレストリーと土壌保全)、TPN3(放牧地管理と砂丘固定)、TPN5(干ばつインパクト管理)、TPN6(ローカルエリア総合発展イニシアチブ)との対応、サブテーマ(5)では、TPN2、TPN4(水資源管理)、TPN5、TPN6との対応、サブテーマ(6)では、TPN4、TPN3、TPN5、TPN6との対応が考えられる。"
◆中国及び中央アジアにおける研究については、黄砂に関する研究と連携できないか。
◆砂漠化対処条約への対応という面では意義が認められるが、課題採択時に懸念されたとおり、サブテーマ間の連携が不足している。サブテーマ(2)~(4)は中国に関する研究であり、統合を含め、より連携を深めるべきではないか。サブテーマ(2)~(6)で得られた成果をサブテーマ(1)のモデルに還元するという全体構成を再度徹底して整理し直すべき。
◆短期ではほとんど降水量と気温で決まると考えられるが、NPPと砂漠化との関係をより分かりやすく示して欲しい。全体として、社会経済モデルと自然環境モデルの統合に力を注ぐべきであり、研究全体としての対象地域を絞るべきではないか。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13途上国
(13~15)
*中間評価*
O-1 アジアにおける水資源域の水質評価と有毒アオコ発生モニタリング手法の開発に関する研究 環境省国立環境研究所
(彼谷 邦光)
B
(2)
(3)
 
(1)
(1)
 
(研究概要)
 アジアの湖沼は、貴重な飲料水源としてのみならず、生活の維持に不可欠な漁場としても重要な役割を有している場合が多い。しかし、近年、これら湖沼に生活排水や肥料分を含んだ農業排水が流入することによって富栄養化が進行し、有毒アオコの発生が拡大しており、健康面だけでなく経済的にも大きな被害が生じている。現在、有毒藻類の監視の手法が先進諸国で検討されているが、未知毒素の種類、量ともに多いアジアの有毒アオコに適用できる方法はまだ確立されていない。このため、本研究では、緊急の課題である有毒藻類の監視手法を開発するとともに、漁業生産を維持し、有毒アオコの発生を最小限に押さえる「アジア型の水質管理手法」を開発することによって、21世紀におけるアジアの利用可能な水資源の確保に大きく貢献することを目的としている。本研究は中国およびタイの政府機関との密接な連携をもって実施する。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆アオコ-DOMのinterrelationは重要なテーマで、この点の研究進展を期待する。DNAモニタリングも成果が十分に期待できる。生態システムについての研究は、まだ方向性が見えていないように見える。対象やフィールドを広げる(変える)ことも必要ではないか。
◆期待されるデータが蓄積されつつあるが、今後、水産学、海洋科学の研究者との議論が望まれる。
◆有毒アオコと関連づけた水質評価手法および水質改善手法の構築が望まれる。PCR法による有毒アオコの識別手法の完成を期待したい。
◆どんなに小さい湖沼でも生態学として全体像をとらえようとすると個別性、地域性を意識した独特な存在として扱う必要がある。また水資源、農水産資源という扱いをすると、人類、文明、社会的な背景、文明学との相互作用を直視した観点を導入しなければとうてい解決策には到達しえないのではないか。背景・政策・対策をセットにした研究をめざすべき。地球上のあらゆる湖沼に共通する仮想湖沼モデル、理論モデルを追求すればするほど現物の湖沼にあるものとは異なったものでしかなくなるのではないか。生物的、文化的固有性を重視するが故に、地球上の湖沼生態系の多様性がとらえられるような研究視点を考慮してほしい。湖沼レベルでは優れた業績をあげたといえるが、実際の具体的な対策としてインパクトを与えることができるか、という点に強い疑問を感じる。
◆サブテーマ(1)、(2)は基礎的研究として評価できるが、他の研究との関連があまり見えていない。再編が必要ではないか。
◆中国の湖沼を調査地としたフィールドでの研究を重視すべきである。実験室で確認されたこともその知見がどの程度有効かを実際の現場で確認するような調査・研究が必要と思われる。しかし、生態系は多様な要素との関係を含む複雑な系なので、アオコ増殖制御物質を利用しての制御は様々な副次的作用を生む可能性があり、しかもそれが短期間の調査・研究では把握しきれない可能性がある。制御の思想として問題点が大きいと思われる。本来の対策は、過剰な栄養塩が流入し湖に蓄積することを制御し、湖の生態系全体の健全性を取り戻すという方向性であり、この方が漁業とも矛盾せず望ましいのではないか。
◆全体的に研究成果の公表を活発化させる必要があるのではないか。サブテーマ間の連携強化を図る必要がある。
◆中国、タイ等アジア諸国の湖沼を対象とした理由は何か。宍道湖で塩分環境の違いによる植物プランクトンの優先種の変動を観察しているが、日本で解ったことをアジア諸国に発信しようというのであれば、その前に、国内の湖沼で調査を行い、再現性を確認する必要があるのではないか。アオコの有害成分の同定に関する技術開発研究は、どこまでが既知のもので、どこが今回の研究による新しい知見なのか、明確にされていない。
◆サブテーマ(1)と(2)、(3)の関係が不明確。リジンの効果だけでは不十分と思われる。生態系への影響、評価の問題を含めて検討すべきと思われる。
◆報告書において「侵入魚のいない冬季」という記述の意味が不明である。
◆重要で社会的にも注目される研究だと思われるが、全体として何を目指しているのか明確でない面があり、研究のマネジメントが十分なのか気にかかるところである。「アジア」を前面に出し、中国やタイに設定したモデル湖沼での調査も含め意欲的な内容であるが、まず国内で徹底的に調査した後に行うべきではないかという点について説明がほしい。成果報告はもう少しわかりやすく記述する工夫をお願いしたい。ヒアリング時に委員から、リジン投入への疑問が出されたが、その点からの再検討が必要と思われる。
◆サブテーマ1②「食物連鎖の強化による…」は、主題であるアオコとの関連が不明瞭である。魚類群集の季節による変動が一つ、ヤマトシジミの水浄化機能に関するものが一つとばらばらである。
◆研究課題にいう「アジア」、環境目的の「”アジア”型の水質管理手法の意味するところが理解できない。当初提案の説明時には、日本とは”熱環境”が異なる熱帯・亜熱帯アジアの湖沼を主対象とする計画であったと記憶しているが、中海・宍道湖も対象となっているので、ここでの「アジア」には日本も含まれることになるのか。タイ・中国等の熱帯・亜熱帯アジアの水域を主対象とした研究プロジェクトであるなら、それを明確に示すタイトルを冠するべきではないか。いずれにせよ、我が国の湖沼について蓄積されてきた有毒アオコの発生メカニズムとその制御や駆除に関する膨大な成果のレビューを踏まえた研究の展開が望まれる。中海・宍道湖を扱ったサブテーマ(1)と、アオコを扱うサブテーマ(2)、(3)との関連をいかにつけるか工夫して欲しい。サブテーマ(2)と(3)については、相互の関係とともに、発生診断・モニタリング・発生制御のような研究のフローを明確に示してもらいたい。
◆アジアのモデルがタイと中国それぞれ1カ所というのは納得できない。食物連鎖の強化とは何か理解できない。湖沼生態系を健全化することとアオコの解毒のために物質を投入することとは必ずしも両立しない。主眼は健全化にある。
◆各サブテーマ間の連携が希薄であり、残り一年間の期間で「毒アオコ抑制」と「アジア型管理手法」の関連をつけることは困難ではないか。ただし、サブテーマ(2)、(3)の成果は、具体的な毒アオコ対策の一つとして評価できる。
◆研究で用いられたリジンの投入量は大きく、コスト的に合わないのではないか。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13重点
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
H-8 持続可能なコンパクト・シティの在り方と実現方策に関する研究 名古屋産業大学
(伊藤 達雄)
B
(1)
(2)
 
(2)
 
 
(研究概要)
 世界人口の45%を越す約26億人は都市に居住しており、人間活動、エネルギー利用が集中したため、都市が大量生産・大量消費・大量廃棄型社会の根本原因となっているが、省エネ・省資源を徹底した循環型社会の構築には、循環を基調とした都市(循環型都市)への変革が緊急課題となっている。国際共同研究計画であるIHDP(International Human Dimension Program on Global Environmental Change)の重点研究プロジェクトでも産業転換(IT: Industrial Transformation)に関する研究が開始されており、都市の再評価と再構築を通じて、近年進歩の著しい情報技術も活用しながら循環型社会の実現方策を検討することが不可欠とされている。
 都市には、あらゆる人間活動が集中しているため、多面的な評価が不可欠であり、このため人間活動やライフスタイルなど人間・社会的側面に係る研究者を巻き込んだ、学際的な研究アプローチを行い、①循環型社会の構築を具体化する都市の在り方を提示するとともに、②持続可能なコンパクト・シティ(都市機能の適切な濃密性を保った都市)を実現するための政策提案型の研究が急務となっている。本研究は、省エネ・省資源を徹底した循環型都市のひとつの形態として、コンパクト・シティを取り上げ、日本をはじめとした先進国及びアジア地域途上国における方策を検討し、提言することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆産業転換されたコンパクトシティのあるべき姿について、具体的な革新的技術情報の裏づけをより示した上で、分析を展開すると良いと思われる。地球環境の視点から、都市域の既存パターンでの成長と、政策を実施した場合の都市成長との間の比較を、例えば温室効果ガスの削減可能量などで示すと、研究の意義がより大きくなると思われる。
◆課題に対して、サブテーマがしっかりと設定されているので全体がよくまとまっている感があり、かつ論旨も明確である。また、具体性もある。更に研究・調査を重ね、実現可能な方策を導き出してほしい。
◆包括的なサステイナビリティの面から見て興味深く、効率性と公平性が担保できると素晴らしい。
◆サブテーマ(2)④を、サブテーマ(2)②と(2)③に組み込んで、全体としてIT時代のコンパクトシティの概念と実現方策を、具体的に明確にすることが望まれる。
◆異なった研究分野、研究機関が複数連携して協働する本研究において、作業の生産性を向上させる努力については十分工夫がなされたと評価できる。ただし、異なった専門領域では同一の用語が異なった理解を伝達する場合があるため、用語の「意味を共有」する作業が必要となる。報告ではそれが不十分。コンパクト・シティのコンセプトの整理と政策に結びつく類型化を、より分かりやすく示す努力が必要である。日本のすべての都市が自分のゴールとなるコンパクト・シティを持てるように検討を進めて欲しい。
◆初年度目とはいえ、コンパクト・シティ論はこれまでも提示されていたものであり、論文や口頭発表等が少ないため、研究開始後の集中的な研究従事に疑問が残る。これまで有している手法を形を変えて提示しているという印象がある。さらに静脈機能の実態把握が専門的な吟味の乏しいレベルのアンケート調査に終始しており、新たな枠組みの構築にはほど遠いと評価される。今後の大幅な見直しが必要。ただし、サブテーマ(2)④の結果・考察と、サブテーマ(3)の一般的考察は、妥当なメッセージとして評価でき、ここでの一般論を、各テーマの前提として共有化するなどの工夫を望む。コンパクト・シティが現代的には循環の輪を幾分かは閉じたり、ゼロ・エミッション化してゆくアプローチを内包したものになるとするならば、3000程度の市町村の日常的な一般廃棄物対策や環境教育への取組みだけで、実態を捉えるというのでは不足と思われる。マテリアル・フローは貿易通商や産業立地のグローバル化に応じて都市のサイズを越えた姿を示しているので、これをいかに管理運営するのかという側面を含め産業立地・産業メタボリズムを検討してほしい。
◆コンパクトシティの定義とその定量的指標の形成について各サブテーマで個別に要素毎に議論されているように見える。全体としての統一性が捉えられるように、再編が必要ではないだろうか。コンパクトシティの概念とそのモデルについて、本研究プロジェクトの期間内で到着すべき目標、関連した定義、その定量的指標を明確にすることが必要と思われる。それによって各サブテーマの関連性が見えてくると思われる。
◆コンパクトシティに向けた様々な分野での研究が行われているが、最終的なアウトプットが分かりにくい。都市といっても様々な形態がありうるわけで、どのように類型化を行いモデルに結びつけるのかが今後の課題と思われる。サブテーマ毎の情報交換がなされているとのことであり、今後に期待したい。
◆学際的な分野であり、今後の研究分野として注目されると思われる。ただし、政策面に現研究がどこまで応用できるかが不明。もう少しフィールド調査の内容を詰め、モデルが政策に応用・展開できるようになることを期待したい。
◆サブテーマ(1)は容易に入手可能な数値と研究者のもつ既往の概念を披瀝したものという印象を受ける。サブテーマ(2)については、サブサブテーマ①、②などに実際の数値、情報に基づいた検討が一部見られるものの、サブテーマ(1)と同様に、世評にある既往の概念を繰り返し述べているという印象である。サブテーマ(1)、(2)を通し、具体性、新規性について、期待される成果は上がっていないのではないか。
◆全体のマネージメントに対する課題代表者の努力は非常に伺える。しかし、ケーススタディの場所と内容との整合・関連性がクリアではなく、全体としてどのような成果が期待できるのか、現段階ではイメージが持ちにくい。中間評価段階で具体的な成果があまり紹介されておらず、研究期間が約半分経過した時点としては不十分と思われる。
◆具体的な研究成果が示されていない。モデルは構造の説明に止まり、その結果やそこから導出される知見が十分に示されていない。

地球環境研究総合推進費 中間評価(2年度目) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H13時点)
総合評価
(A~E)
研究成果の 科学的価値
研究成果の社会・経済・行政的価値
研究成果の波及効果及び発展性
研究代表者のマネジメント
研究体制について
ヒアリング時の説明の仕方
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
※ア~ウの区分については総括表を参照のこと
1
2
3
1
2
3
H13一般
(13~15)
*中間評価*
(1回目)
H-9 環境勘定・環境指標を用いた企業・産業・国民経済レベルでの持続可能性評価手法の開発に関する研究 環境省国立環境研究所
(森口 祐一)
B
(2)
(3)
 
 
 
 
(研究概要)
 「持続可能な発展」や「環境政策と経済・産業政策の統合」は概念としては広まったものの、その具体的意味の共通理解は不十分なままであり、その実現への具体的道筋は未だに明らかではない。従来の国レベルの経済指標や生産性指標、企業の経営指標は、地球環境保全を考慮した意思決定には不十分であり、各経済主体の活動が、持続可能な方向に向けられているかを判断するための尺度が必要である。そこで、本研究は、環境勘定(環境会計)や環境指標の手法を用いて、さまざまなレベルの経済主体ごとに、その活動の環境面での持続可能性の度合いを計測するための手法を開発することにより、産業・経済活動のより持続可能な方向への転換に資することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆順調に各研究組織の有する学術的ストックを持続可能性の評価に向け、舵取りしている様子が感じられる。ただし、それぞれがグリーン勘定、LCA、MFA、環境(資源)効率などの手持ちのツールと評価手法を用いているため、それらの定義や意味合いに差があるように思われる。早急に持続的に発展しうる環境と資源の利用等に関する指標体系を荒削りでも良いので示していくことを望む。代表者の国際社会での研究リードが成果発表のなかで読みとることができ、地球環境HDP研究として優れている。
◆今後、机上の空論で終わることなく、テーマの深化が進むことを期待する。大変身近な問題解決への研究であると思われる。ただし、論旨等をより素直に分かりやすく表現することを望みたい。
◆サブテーマ(1)、(2)、(3)のいずれも良い成果を上げていると考える。ただし、本研究は基本的なフレームをドイツ、オランダ、UNなどと同一としており、その意味では迷いが少ないタイプの研究テーマであって、知の地平線を拓くタイプの研究ではない。よって、評価等に当たっては、他の研究とは異なった取り扱いをする必要があるかもしれない。
◆サブテーマ(1)は、すでに国連、OECD,内閣府経済社会研究所などでかなり研究されており、新しい分野を切り拓くことは難しい分野である。サブテーマ(3)、サブテーマ(2)は現在ホットな研究分野であり、様々なアイディアが提出されているが、「これだ」といったものがない段階なので、研究成果に期待ができる。
◆行政的に適用可能なレベルに達しつつあり、極めて行政的価値が高い研究といえる。行政レベルでの先行的な適用などによって行政ニーズをさらに反映させる、学術誌への投稿による学問レベルでの妥当性の評価を進めるなど、両面から研究を進めてもらいたい。
◆サブテーマ(1)の研究と(2)、(3)の研究の関係が明確でない。サブテーマ(1)の研究の中へ、サブテーマ(2)、(3)の成果を組み込んだ研究にできないか。
◆各サブテーマが、どのような方法論的なつながりや関連性があるのか具体的な手順や指標の面で明確となっていないように見える。サブテーマ(1)については過去の研究の成果を早く実用化することが必要と思われる。データ(統計量)、評価値を含めて、その質(Quality)と不確実性について、評価のリスク分析という観点からの検討も(例えば、単なる感度解析を超えるもの)必要となるのではないか。
◆環境指標を日本版NAMEAへ統合する意義は高い。マテリアルフローとフットプリントの解析は今後大きく評価されると思われる。MDPIOTの多次元解析は将来、企業への導入(サプライチェーンで有効)が期待される。
◆学術分野としても政策分野への応用可能性の面でも優れた研究と思われる。今後の課題として、専門外の者、あるいは実際に地域で環境保全活動を行う者が活用できるような指標やモデルに展開する必要があると思われる。
◆環境施策の推進、環境と経済の統合に向けて、指標(目標設定)開発は重要。一般に分かりやすく、活用しやすい成果の提示が必要と思われる。そのことにより、企業、NPO等が自ら活動を自主的に評価でき、環境保全活動へとつながるのではないか。
◆汎用的に利用可能なデータの公開に期待する。現況のフレームをミクロレベルまで掘り下げて把握することは重要であり意義はあるが、むしろ、新しい技術が利用可能となったとき、あるいは制度や政策が転換したときなどに、その影響効果がどのようにそのフレームを変えていくかという見透しや、分析フレームワーカビリティをもっている必要があると思われる。その点が示されていない。
◆環境政策や環境教育の効果は投入産出表の要素をパラメーターではなく環境負荷を低減させるように変化させることである。投入産出表をモデルの枠組みに使うのは技術的に疑問を持たざるを得ない。新しいモデルを創造するべきである。サステーナブル・サイエンスの中での位置づけをもっと明確に論じておくべきである。