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環境省総合環境政策局環境報告書環境報告書ガイドライン改訂検討会

環境報告書ガイドライン改訂検討会 第1回議事録


日時:
平成18年度10月30日(月) 10:00~12:00
会場:
(株)ニッセイ基礎研究所 第1会議室
出席委員:
伊東正行、魚住隆太、宇郷良介、河野正男、上妻義直、國部克彦、崎田裕子、佐藤泉、古田清人、別所恭一、森下研 (敬称略、五十音順)
欠席委員:
倉坂秀史、後藤敏彦 (敬称略、五十音順)
事務局:
環境経済課:鎌形課長、中山課長補佐、中坪課長補佐、大久保環境専門調査員、柳田環境専門調査員、澤係員、ニッセイ基礎研究所:川村

資料1「検討会設置要領」及び資料2「検討会委員名簿」の説明

(川村)
 おはようございます。本日はお忙しいところ、「環境報告書ガイドライン改訂委員会」に、ご出席賜りまして誠にありがとうございます。第1回の検討会を開催いたします。議事録作成のため録音をさせていただきますが、ご了承ください。
 開会に当たりまして、環境省総合環境政策局環境経済課の鎌形課長よりご挨拶を申しあげます。

(鎌形課長)
 おはようございます。環境省環境経済課長の鎌形でございます。この度はお忙しい中、環境報告書ガイドラインの改訂のための検討会の委員をお引き受けいただき誠にありがとうございます。環境省ではこれまで事業者の自主的な環境への取り組みを進めていくということで、環境報告書ガイドラインあるいは環境会計ガイドライン、事業者の環境パフォーマンス指標ガイドラインを作成してまいりました。基本的なベースラインをお示ししながら、多くの事業者の方々に取り組みを進めていただきたいということです。これまで、それぞれ一定の成果をあげてきたのではないかと考えております。
 近年、いろいろな動きがございますが、企業の社会的責任(CSR)や社会的責任投資(SRI)への関心が高まっているというような状況の変化もございます。私どもも、例えば環境に配慮した「お金」の流れを作り出していこうということで、金融面での環境配慮にも注目し、その方面での検討も始めているところでございます。企業の環境への取り組みというものが適切に世の中に発信されるということが、より一層重要になってくるのではないかと思います。
 そういう意味で、環境報告書ガイドラインにつきましても2003年版ということで世の中にお示しした訳でございますけれども、使い勝手が悪くなってきたとか、あるいは世の中のいろいろな状況に適応できていない部分があるのではないか、という問題提起が各方面からございますので、この検討会にお集まりいただいて、一から議論していただこうということでございます。本件の今後の流れでございますが、年度末には中間的な成果をとりまとめていただいて、さらに来年度に入りまして検討を深め、そして来年度のある時点で成果物にしていただきたいと考えているところでございます。つきましては、忌憚のないご意見をいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上で、私の挨拶とさせていただきます。

(川村)
 続きまして、委員の紹介をいたします。お手元の資料2をご覧下さい。本日は、後藤委員と倉阪委員がご都合により欠席となっております。委員の方々はお互いにご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、名簿の順に従い自己紹介を簡単にお願いできますでしょうか。

(伊東委員)
 おはようございます。三菱東京UFJ銀行の伊東と申します。今回、私どもの業界が検討会に参加させていただいた主な理由は、やはり「金融のグリーン化」ということで環境省とこれまでいろいろと環境と金融に関する懇談会を行ってまいりましたので、その辺のところをどういう形で反映したらいいかにあると思います。

(魚住委員)
 あずさサステナビリティの魚住と申します。あずさ監査法人の100%子会社で、環境報告書・CSR報告書等の審査や環境に関わる業務を行っております。それと、環境報告書の審査を行っている12機関の集まりである日本環境情報審査協会が昨年できまして、その会長を務めています。

(河野委員)
 中央大学経済学部の河野でございます。専門は会計学、この10年ほどは環境会計、環境マネジメント、環境報告書等の研究を行っております。2003年度の環境報告書ガイドライン改訂にも関わっております。

(上妻委員)
 上智大学の上妻でございます。専門は、最近ではCSR報告の原理や原則を考えております。また最近、私の住んでいる街ではプラスティックゴミの分別が始まったのですけども、インスタントラーメンに付いているコーンオイルの袋は広げて洗って捨てるべきかをちょっと悩んでいます。

(國部委員)
 神戸大学の國部でございます。専門は、環境会計、CSR経営、環境管理会計等です。この環境報告書ガイドラインの検討会では、当初から河野先生と共に参加させていただいております。倉阪委員もそうなのですが、私は国立大学法人として今度環境報告書を作ることになりました。このガイドラインとはレベルは違いますが、いい報告書を作らなければならないなと思っております。

(崎田委員)
 崎田でございます。環境分野のジャーナリストとして歩んできているのですが、生活者の視点ということを大変重視しております。この分野では本当に地域の中小事業者が共に歩んでいくということが重要なことであると思っております。そういう中で環境教育とか環境コミュニケーションを中心的に活動させていただいております。また地域の環境活動だけでなく、全国的な動きを支援するNPO法人等もしておりますので、そういう企業のみなさんの動きをつないでいく役割の者として発言させていただきたいと思っております。前回の2003年度版環境報告書ガイドライン改訂の時にも参加させていただきましたが、やはりこういう動きに参加し発信することが大事だと思っております。

(佐藤委員)
 弁護士の佐藤でございます。私は環境を中心に仕事をしておりますけども、環境報告書に関しては最近社会性の部分がかなり強まってきておりまして、労働基準、偽装請負の問題、消費者保護などについても、もっと事業者のみなさんに記載をしていただきたいと思っております。その点からも、意見を申し上げたいと思っております。

(古田委員)
 キヤノンの古田でございます。私は1999年から環境コミュニケーションをずっと見ておりまして、キヤノンの報告書も環境報告書からサステナビリティ報告書へとずいぶん変化したなと感じております。企業側の発信する立場で、いろいろ議論させていただければと思っております。

(別所委員)
 佐川急便の別所でございます。私どもは2000年から環境報告書を発行しております。製造業ではなくて、物流業はサービス業に入ると思うのですけども、環境報告書を作っている立場として今回参加させていただいております。

(森下委員)
 エコマネジメント研究所の森下でございます。環境報告書につきましては、一番最初の1997年の環境報告書作成ガイドラインから関わってまいりまして、今回を迎えることとなりました。また、環境会計、環境パフォーマンス指標にも関わらせていただいています。

(宇郷委員)
 NECの宇郷でございます。名簿ではワーキンググループのメンバーとして登録されているようですが、NECでは環境あるいはCSR情報についてWEBを主体にした情報発信を非常に強く意識しておりますので、そのような活動で何かご参考になるところがあればということで、意見を述べさせていただきます。

(川村)
 委員の方々、ありがとうございました。次に、私ども事務局の紹介をいたします。(環境省環境経済課:中山課長補佐、中坪課長補佐、大久保環境専門調査員、柳田環境専門調査員、澤係員、ならびにニッセイ基礎研究所:川村)
 さて、座長を選出したいと思います。事務局といたしましては、前回2003年度版の環境報告書ガイドラインの策定検討会において座長を務めていただきました河野委員に再び座長をお引き受け願えないかと考えておりますが、委員の皆様、いかがでございましょうか。 

(全員、同意)
はい、ありがとうございます。「異議なし」ということで、河野先生、座長としてよろしくお願いいたします。

(河野座長)
 先程自己紹介いたしましたが、河野です。環境報告書につきましては、お手元の資料3「環境にやさしい企業行動調査」(暫定版:委員限り)の結果がでておりますが、平成17年度には933社であり、平成12年度(2000年度)から比べるとは倍位に増えておりまして、環境報告書作成の経験を企業の方も積まれてきたのではないかと思います。前回のガイドライン改訂から3年たっており、鎌形課長から情勢の変化のお話がございましたが、ちょうど改訂を考えるいい時期ではないかと考えています。委員の皆様のご協力を得て、よりよいガイドラインに仕上げられればと思っております。よろしくお願いいたします。
 では、最初に本日の資料の確認を事務局にお願いいたします。

(川村)

<以下、配布資料の読み上げ>

(河野座長)
 それでは議事次第に従い、議事に入りたいと思います。資料1及び資料2について、事務局より説明をお願いいたします。

(中坪課長補佐)
 それでは説明させていただきます。資料1と資料2は、検討会の設立趣旨、実施体制、ワーキンググループの設置、スケジュール、そして検討会の委員の説明資料となっております。
 まず資料1の「検討会の設置趣旨」でございますが、これまで環境省では平成15年4月に「事業者の環境パフォーマンス指標ガイドライン2002年度版」を、平成16年3月には「環境報告書ガイドライン2003年度版」を策定し、環境報告書の普及促進を図ってまいりました。その後、今年4月に「第三次環境基本計画」が閣議決定され、今後の環境政策の方向性として、環境的側面・経済的側面・社会的側面の統合的な向上が打ち出されました。また、国内外においては、企業の社会的責任(CSR)への関心が高まり、投資家等を含む利害関係者に環境に関する情報公開の重要性が高まる状況にあり、さらにグローバル・リポーティング・イニシアチブ(GRI)による新たなガイドラインの公表や国際標準化機構(ISO)による社会的責任の規格化(ISO26000)等、国際的な取組が進展してきています。このような状況を踏まえて、今般、環境報告書の作成者、利用者、有識者等からなる「改訂検討会」を設置し、「環境報告書ガイドライン」及び「事業者の環境パフォーマンス指標ガイドライン」の内容を改訂するため、課題の抽出・分析等の必要な検討を実施いたします。
 続きまして2番目の「スケジュール」でございますが、この環境報告書ガイドライン検討会は計5回の開催を予定しております。来年4月にパブリックコメントを行ったうえで最終的な検討会を5月に開催し、6月末を目標に新しい環境報告書ガイドラインを公表する予定となっております。また、環境パフォーマンス指標ガイドラインを検討するワーキンググループ(WG)を検討会の下に設置し、11月中旬に第一回目を行い、計3回を予定しております。これは環境パフォーマンス指標(EPI)のガイドライン改訂の検討結果を環境報告書ガイドラインの改訂に反映し統合化することを考えているためです。さらに、検討会を開催しながら、事業者からの意見を聴取するために、別途、事業者との懇談会や事業者に対するヒアリングも予定しております。
 次に2頁目ですが、3番目の「組織等」でございます。検討会は環境省が調査を委託した株式会社ニッセイ基礎研究所が委嘱する者(検討委員)をもって構成いたします。検討会には座長をおき、検討委員の互選によってこれを定めます。座長は検討会の会務を総理いたします。先ほどスケジュールのところで申し上げましたように、検討会の下に「事業者の環境パフォーマンス指標ガイドライン」に関する個別の案件について詳細に検討するためのワーキンググループ(WG)を設置いたします。また、本検討会は必要に応じて小委員会を設けて必要な検討を行なうことができることといたします。最後に「その他」といたしまして、検討会は必要に応じて検討委員以外の学識経験者、事業者等の出席を求めることができます。検討会の庶務は、株式会社ニッセイ基礎研究所が行うことといたします。
 資料2は「環境報告書ガイドラインの改訂検討会」の委員名簿でございますが、検討委員、ワーキンググループ委員、オブザーバー、並びに事務局につきましては、資料にある通りでございます。以上でございます。

(河野座長)
 ただいま、事務局より資料1・資料2として、本検討会の設置要領、スケジュール等について説明がございましたが、ご意見やご質問がございましたら、どうぞ。
特にご質問等はないようですので、検討会の設置要領については、ご了解をいただいたということで進めさせていただきます。

2. 資料3「環境にやさしい企業行動調査」結果の説明と質疑応答

(河野座長)
 それでは次に、資料3として「平成17年度環境にやさしい企業行動調査」の中で、環境報告書に係る結果について、説明をお願いいたします。

(中坪課長補佐)
 資料3は「平成17年度環境にやさしい企業行動調査」の結果からの抜粋でございますが、公表前ですので委員限りとさせていただきます。この調査結果の中から、今回の改訂に参考になると思われるものに関して説明いたします。まず、調査の対象でございますが、上場・非上場企業の計6,444社を対象に今年の8月にアンケート調査を行いました。有効回答数は2,691社で、全体の41.8%でございます。
 さて、アンケート結果について、まず2頁目は「環境に関する情報の公開、環境報告書の作成・公表の状況」でございます。[1]「環境情報の公開状況」については、『一般に公開している』と回答した企業等が50.3%と最も多く、増加傾向にあります。[2]「公開している環境情報の内容」については、環境情報を公開していると回答した1,585社に尋ねたもので、『環境に関する経営方針』『環境に関する具体的な取組の状況』『環境に関する目標』が上位3者となっています。続きまして、3頁目の[3]「環境報告書の作成・公表の状況」ですが、今回は933社と前年より132社増加しております。本調査の対象とはなりませんが、別に特定事業者が89社ございますので、これを入れると1,000社を超える状況になるかと思います。次いで、[4]「社会・経済的側面の記載状況」ですが、環境報告書に『環境面だけでなく、社会・経済的側面も記載している』が62.7%となっておりまして、前年度の399社から585社に増加しています。
 4頁目にある[5]「環境報告書の公表媒体について」では、『冊子及びホームページ』との回答が77.8%と最も高くなっております。続く[6]「環境報告書の配布先について」を見ますと、『仕入れ・販売等の取引先』『役員、従業員及びその家族』『株主、金融機関、投資家』が上位を占めています。さらに[7]「環境報告書の信頼性向上の手段について」では、『第三者機関による審査(実施を検討)』『内部審査を実施(実施を検討)』する企業等は全933社のうち42.2%を占める結果となりました。そして[8]「環境配慮促進法」の認知度については、『存在・内容を知っている』の割合が最も高く48.5%となっております。
 参考として「CSRへの取組状況」の結果がございます。[1]「CSRを意識した企業経営」では、『実施している』と回答した企業等が62.2%と最も多く、次いで『実施に向けて現在検討している』が27.8%となっており、半数以上の企業が既に取り組んでおり、関心も高いことがわかります。次に[2]「CSRを意識する理由」は複数回答可ということですが、『不祥事発生防止等の様々な社会的リスクの回避、軽減するリスクマネジメント』と回答した企業等が80.2%と最も多く、次いで『企業ブランド価値の向上やイメージアップ』の67.8%、『多様なステークホルダーとの信頼関係確保』の67.5%となっております。以上でございます。

(河野座長)
 ありがとうございました。資料3の説明がございましたが、ご意見・ご質問がございましたら、どうぞ。

(森下委員)
 2点あるのですけども、一つは非上場企業等も調査対象となっていますが、非上場企業は株式会社だけに限られているのか、財団法人、社団法人、学校法人も含まれているのか。企業等という形になっていると思うのですが、例えば私立大学等が環境報告書を出している場合には、この数字に含まれるのかどうか。もうひとつの質問は3頁の環境報告書の作成企業の割合で、図19では34.7%になっていますが、図20の方は31.7%になっておりまます。どちらの数値が正しいのでしょうか。それとも質問の仕方が異なっているのでしょうか。

(中坪課長補佐)
 一つ目のご質問ですが、主に株式会社が対象です。それから、図20は昨年度の数字ですが、まだ精査中でございます。

(河野座長)
 この平成17年度調査の正式な版の公表の時期は、いつ頃でしょうか。

(中坪課長補佐)
 現在、細かいところを精査している状況のため、年内を目処に公表を予定しております。

(魚住委員)
 アンケートの回答率は40%位ですが、回答していない残りの所についてはどのような状況とお考えですか。例えば、環境報告書について残りは全く作成していないと考えることもできますが。

(中坪課長補佐)
 あくまでもアンケート結果でございますので、回答されていなくても報告書を作成しているところはあると見ております。ただ、今回の調査では特に推定してはおりません。

(魚住委員)
 2頁の図17で「公開している」が増えているのは良いのですが、逆に「公開していない」ところは約40%と過去の推移が一定です。一部だけ公開している企業が増えているのではないかと思うのですが、母集団は同じでも毎年サンプルが異なっている中で、要因がわかると宜しいのではないでしょうか。特に、この「公開していない」という企業は、永遠に公開しないという姿勢をとっているとも読み取れますので、少し分析してみてはいかがでしょうか。

(中坪課長補佐)
 検討致します。分析は途中でございますけれども、非上場企業の有効回収率が少し高くなっていることも一つの要因であるかと思われます。前年度(16年度)の有効回答数は39.5%、今回は41.8%と若干上回っており、中でも非上場企業の割合は、前年度は37.2%で今回は39.4%と若干上回っているのも一つの要因ではないかと考えております。その辺は後日分析を行いたいと思っております。

(佐藤委員)
 これは意見ですが、上場企業と非上場企業とに分かれてはいるのですけども、上場企業には新興市場が入っていないですね。このアンケートはある意味で指導的役割もあります。そこで、新興市場がこのようなことに関心を持つことが重要であると思いますので、今後は新興市場を入れてですね、上場企業としてはいかがでしょうか。

(河野座長)
 質問ではないですが、図25で今年度から新たに環境報告書に対する第三者によるコメントというのを取り入れています。現実に第三者認証よりも第三者意見が増えているという感じがありますが、このような結果が出ているのが興味深いですね。

(中坪課長補佐)
 その点につきまして申し上げますと、平成17年度より「第三者機関によるコメント」を新たな選択肢として設けたものですので、突然22.3%と増えている状況にございます。平成16年度でしたら、別の選択肢の中に入って回答されている企業もあるかと思います。

(國部委員)
 今の図25は、単一の回答なのでしょうか。仮に第三者意見と内部審査を行っている場合には、どのように答えているのですか。どれか一つ最も大事なものという質問でしょうか。いずれにしても、信頼性の向上の質問は複数回答にした方がよいと思います。

(中坪課長補佐)
 これは単一の回答になっています。そういう選択肢の質問だとすれば、アンケート設計上の不備かもしれませんので、今後検討いたします。

(河野座長)
 それでは、資料3につきましてはご了解をいただいたということで進めさせていただきます。次に資料4及び資料5について、事務局より説明をお願いします。

3. 資料4「(新)ガイドラインの位置づけ」及び資料5「ガイドライン改訂の論点」の討議

(中坪課長補佐)
 続きまして、資料の4と5を説明させていただきます。資料4は全体図1枚となっておりまして、新しいガイドラインの位置づけを示し、資料5にはガイドライン改訂の論点が10項目ございます。説明の前に資料5における論点ですが、一つの提案として環境省、事務局よりお出ししたものですので、この内容に縛られることなく、委員の皆様のご自由なご意見をお願い致したいと思います。
 さて、資料4「環境報告書ガイドラインの位置づけ」には、今回の改訂対象となる「環境報告書ガイドライン」と「環境パフォーマンス指標ガイドライン」が記載されております。「自己評価の手引き(試行版)」も記載がございます。これらを含めた大きな枠組も検討の対象としておりますが、具体的な改訂の検討課題については、この図の下に太線で囲ってあるところでございます。これは資料5にて説明させていただきます。 
<資料5を読み上げ>
 資料5「環境報告書ガイドライン改訂に向けた検討の論点」の説明は、以上でございます。

(河野座長)
 もう一つ資料が済んでおりません。CSRをどういう風に扱うか。特に社会的な側面ですが、これをどう扱うかが、今回の改訂での一つのポイントかと思います。欠席の後藤委員から予め意見書が出ておりますので、これについて説明していただいた方が、後の議論がしやすいのではないかと思います。事務局、お願いします。

(川村)
 本日欠席の後藤委員から改訂に関する意見をいただいておりますので、説明させていただきます。

<後藤委員のコメントを読み上げ:要点は以下のとおり>
  1. 参考資料6「平成16年度環境パフォーマンス指標のプロトコルに関する調査研究」は、今回のEPI改訂に向けてのものであったので、参考にすべきである。
  2. EPIガイドラインの歴史として、第1版(2000年度版)では環境負荷(Impacts)の把握、第2版(2002年度版)ではInput-Outputの把握と課題の抽出が特徴である。
  3. 環境報告書ガイドラインの改訂ポイント
    [1]
    ガイドライン名称は、第三次環境基本計画でサステナビリティが打ち出されているので、「持続可能性報告書」、「環境・社会報告書」等に変更するのがよい。
    [2]
    EPIガイドラインと一体化するのがよいが、エコアクション21等でも使うので付属とするのがよい。
    [3]
    必須項目は温暖化、生物多様性、資源循環の関連に限り、その他はすべて重要性原則に基づき、組織の選択に任せる。それゆえ、選択項目は可能な限り多くする。
    [4]
    必須項目を少なくするため、報告原則の重要性について頁を割き、項目選択についてはステークホルダーとのコミュニケーション等を通して、「組織が考えるもの」という位置づけを明確にする。
    [5]
    バウンダリー問題(報告範囲)は、単体ではなくグループの報告書という位置づけを明確にする。
    [6]
    環境会計ガイドラインを入れると煩雑になるので頭出しだけにして、「環境効率指標」について従来よりは踏み込むのがよい。
    [7]
    サステナブル・ディベロップメント(SD)については、ヨハネスブルグ宣言の全般的目的(貧困撲滅、生産・消費形態の変更、自然資源基盤の管理)を基本にして指標等を入れ込む。併せて、人権や労働等でSDに関わる部分は入れ込んでも、関わりが小さい部分については、他省庁の研究成果を将来的には入れ込む構造を明確にしておいて、今回の改訂では入れない。
    [8]
    CSRは広範すぎるので、今回のガイドラインではサステナビリティに限り、様々な無料の資料はすべて資料編に名称のみ掲げるのがよい。
    [9]
    パートナーシップ社会にふさわしいコミュニケーションやエンゲージメントについての記述を増やし、ISO14063(環境コミュニケーション規格)も取り入れるのがよい。
    [10]
    来年出される予定のIPCCの第四次レポートは念頭においておく必要がある。

(河野座長)
 ありがとうございます。大分詳しい内容になっておりますね。只今の説明を踏まえて、皆様のご意見を聞くと言うことなんですが、その前にもう一つ、後藤委員からGRIのG3改訂のポイントというメモがあります。改訂の内容はほとんど変わらないと書いてありますが、実は気になるところがあるのです。指標の適用レベル・システムの導入で、保証の強調というところです。私はGRI日本フォーラムの代表理事を務めているのですが、後藤委員から聞いたところでは、GRIが報告の品質保証のための第三者認証について強調しだしたとのことです。登録料等も検討されているようで、何らかの認証システムを立ち上げる議論がなされているということです。今までGRIガイドラインは皆で自由に使っていたのですが、GRI自体は非営利団体ながら、もし料金をとって認証をするということになれば、従来とは若干違うことになるのかなという印象をもっています。
 さて、残りのほぼ1時間でガイドライン改訂の方向等について議論いただきたいと思います。今回は、特に意見をまとめるということではございませんので、皆様からいろいろと意見を出していただくことにしたいと思います。今回、改訂の論点を10点ばかり事務局が上げておりますが、ここになくても追加すべきことがあれば、是非あげていただきたいと思います。今日、できるだけ論点を出していただいて、それを明確にした上で、次回たたき台等を作ることになります。それでは、ご意見をお願いします。 

(古田委員)
 まず、このガイドラインの改訂のポイントとして、前回の改訂時にも議論になったと思うのですが、そもそもこの環境報告書ガイドラインの使い手は誰なのか、というところを明確にしておかないといけないと思います。要するに、世界の最先端を目指す、例えばGRIに匹敵するものを目指すのか、それともそういうことではなくて、先程も話題になったまだ環境報告をしていない40%位の会社に役に立つようなツールという位置づけとしてやっていくのか。非常にハイレベルの要求から基礎的なものまでゴチャゴチャになってしまわないように、是非、そのコンセンサスをキチッとしていただきたいと思います。

(河野座長)
 只今のご意見は大事なことなので、同じようなご意見とか、あるいはそれと違うご意見があれば、出していただきたい。

(森下委員)
 そもそも環境報告書は誰を主なターゲットとして報告をするのか。今までの環境報告書ガイドラインでは、考えられる様々な利害関係者を対象者・読み手として網羅して提示していました。いわゆるマルチステークホルダーという言い方で、ある意味ごまかしてきた。一般の消費者の方とか企業の環境活動の知識がない方から、環境報告書を使って企業を評価しようとする方までマルチに入っています。そういう意味で、環境報告書は環境パンフレットなのか、企業評価に使うためのものなのか、どうなのか。その点を明確にして議論する必要があると思います。

(河野座長)
 私も環境報告書ガイドラインを改訂するに当たって、2000年度版、2003年度版と内容をどんどん充実させていくのか、例えば比較可能性とか。あるいは参考資料3の「環境報告書の記載事項等の手引」がありますが、これの延長線上といいますか、中小企業にも容易に適応ができるようなものとして、スリム化あるいはコンパクト化の方向へいくのか、ということは議論しておいた方がいいのかなあと思います。今のお二人の発言に関わりがあるかと思い、申し上げました。

(別所委員)
 私どもは、まさにそういう悩みがあるのです。2000年に最初の環境報告書を作った時には、環境報告書位作らないとみっともないとトップからの意見があったのですけども、それから7回環境報告書を作ってきて、企業が環境報告書を作る目的は本当に何だろうかという、そこが一番大きな問題です。そして、その環境報告書をどういう層の方に見ていただくために作っているのか。環境報告書のガイドラインを見るとですね、やはり行政や学識経験者の方に評価をしてもらうためにガイドラインがあるのかなと、私は最初素人目に考えていたのですね。今、大きく改正省エネ法の問題とか、いろいろな問題で環境が注目される中で、環境報告書を企業にとってどういう目的で作るのか。私が最初にサービス業といったのはそうなんですが、これから大きくビジネスチャンスにつながっていかないといけないような時代になってきていると思うのですね。ビジネスチャンスにつながるためには、まず従業員に環境知識を持ってもらうと言うこともあるでしょうし、また環境報告書をお得意様に提供することがビジネスの参考になる。そういう時代に、このガイドラインを今後3年間で改訂していくのであれば、この3年の間に大きく世の中も変わっていきますから、現時点はこういう目的ですけども、将来的にはこういう風に変わっていくだろうということは、ある程度考えながら改訂していかなければならないのかなと感じています。
 それから、第三者認証と第三者意見の違いも明確にしておかないといけない。認証になると、やはりきちんとした監査法人等に認証していただかないといけない訳ですが、意見ではいろいろな方々からの意見やステークホルダーからの意見となると思うのですけども、管理責任が弱いかなと思います。認証と意見は、キチッと区別すべきではないかなと感じます。

(河野座長)
  この問題に関連して、何かありませんか。

(國部委員)
 今、私が関係しているところでもあるのですが、誰のためにというところでは、2003年度版の環境報告書ガイドラインの3頁目に「大規模事業者を主に想定し、中小企業はできるところから」と書かれていますよね。この線は多分維持するべきで、その後に「記載事項等の手引き」とか出ていますので、これから作るところには、ガイドラインよりもうちょっと簡易なものを使ってもらう。しかし、大規模事業者には、この環境報告書ガイドラインという位置づけができたと思うので、やはりこの原則は維持すべきだと思います。2003年度版のガイドラインは環境報告に関してはかなり普及していてですね、例えば、当初企業が全く想定していなかったマテリアルバランスの情報なんかも、ガイドラインに出たことで、今はほとんどの企業が報告するようになったというような影響力もあります。
 環境パフォーマンスの指標に関しては、これが必要ですよ、これが必要でありませんよと取捨選択していくことは、現状では望ましいとは思っていません。むしろ大事なことは、CSRの指標が、例えば現在の25番目の社会的取組状況としてただ羅列されているだけで、ここの指標についてはほとんど効力がないことですね。私たちも大学で調査しましたけども、CSR情報はものすごくバラツキがあって、必要な情報ほど出ていないという状況があります。基本は環境省のプロジェクトでどうするのかということですが、ここはよく考えていかないといけないと思います。ただ、たくさん指標を出して全部報告させるというようなスタンスでは社会に受け入れられませんので、今、世界的な動向の中では、何が重要で何が重要でないのかというマテリアリティの議論があって、後藤委員の意見の中にも書いてありますが、そういう風な視点が必要と思います。何が重要かというためにステークホルダーの意見を聞くようなステークホルダー・ダイアログやエンゲージメントについて、私は重視したい。ただ、GRIはマテリアリティやステークホルダー・エンゲージメントを色濃く出していますが、それはGRIがはじめて出したわけではなくて、既にイギリスではAAAという団体がそういうガイドラインを出しています。もともと詳しいガイドラインがあって、それをベースに必要なところだけGRIが取り入れているのですが、日本の場合はガイドラインそのものがない、あるいはその概念そのものが普及していないので、どうするべきか、非常に重要な問題だと思います。これは報告書の第三者認証や保証の方でも同じことが言えます。
 それから、ここで議論されていないので、ぜひ検討していただきたいことは、この環境報告の媒体、メディアの問題です。宇郷委員が先に仰いましたが、例えば、Webを中心に開示する企業もありますし、報告書に載せる事項とWebで開示する事項、そして開示していないが聞かれたら答える事項とか、いくつか段階を分けている開示規程をもつ企業もあるのですが、そういう状況が出てきています。それから、関連でもう一つ大事なことは、金融の話が出てくるとなれば、有価証券報告書ですね。これはどこに載せるのか。省庁別に関係があるのかもしれませんが、企業として環境報告をしていくときの媒体は選択するべきものなので、どういう媒体で何を開示するべきなのか。これはぜひ付け加えていただきたい。
 それに、これは細かいことかもしれませんが、資料の中で全く言及されていないものの、環境省がかつてやった仕事で私も関わったのですが、環境報告書の審査基準案と作成基準案というものがありましたよね。あれはまだ案のままであるので、この際どのように整理するのか決めた方がよいかも知れません。こっちに入れるのか、それともあれは案だったんですよと、誰も言及しなくなるのを待つのか、あるいはもう一度リバイブさせるのか。そんなに昔のことではないので、意識にとめていただいて、どういう風に使うのかを考えていただきたい。まあ、いずれにしても非常にマイナーな話ですが。

(河野座長)
 今のご意見の中で、メディアによって環境報告書の内容を変えてもいいんじゃないのかというニュアンスが入っていたようにも聞こえますが、そういうことですか。

(國部委員)
 情報の内容によってメディアを選ぶ、と言うことですね。

(河野座長)
 つまり、報告書を発行する方からすると、冊子だとこういう風に限られるとかですね。

(國部委員)
 そうですね。冊子だけの時に出すべき情報はこれで、冊子とWebとの併用をする時はこういう考え方をするべき、とかですね。

(河野座長)
 いろいろな論点が出ていますが、他にあれば出すだけは出してください。

(上妻委員)
 今、國部委員が非常に的確に仰っていただいたのですが、私も同じようなことを考えているのですけども、今回の改訂は時期的にものすごくタイミングが悪いんです。それは何故かというと、たびたび重要性の話が出てきていますが、元々この環境報告書ガイドラインというのは財務報告の原理原則を重視し構成されている報告書なんですね。ところがGRIのG3が出たことでよくわかったのですけども、G3が考えている重要性の概念と財務報告つまり2003年度版環境報告書ガイドラインで言っている重要性の概念は全く違うんです。そのどちらをとるかによって、報告書の構造が全く異なってくるし、どうやって保証するかという枠組みも異なってくるが、それをどう選ぶかは、多分簡単に決められないんだと思います。実は、会計の重要性の概念自体も、今、国際会計基準を出しているASBというアメリカの会計基準委員会が概念フレームワークの改訂をやっていますが、かなりリファインされてきており、重要性の考え方が非常に精緻になってきています。
 端的に申し上げますと、会計の重要性の考え方は、一義的に決まった範囲の中で重要性のあるものは全部書けって言う発想なんですけども、G3では重要性のボーダーがステークホルダーによって変わるんです。ステークホルダー・エンゲージメントは重要性とセットになっていますので。会計とG3の重要性は全く異質なものなのに、現在のガイドラインの中にG3の概念を入れることになると、構造自体が重要なものになってきます。だから、項目を全部出して、それを使ってくださいという段階になった時に混乱しちゃうんですね。だけど、限られた検討回数の中で、そういう根本的な部分まで考えながら構成を最初から作り直していくということは、果たして適切なのかどうかということは非常に大きな問題だと思います。だから、そこのところを改訂に当たって、念頭に置いておいていただかないと、多分3年もしないうちに作ったものが陳腐化してしまうかも知れません。國部委員が仰ったように、最初に大規模事業者を対象にしていると書いてあるから、今回も基本的に踏襲するとすれば、重要性の問題とステークホルダー・エンゲージメントの話は避けて通れないんですよ。その辺の構造のことを理解されていかないと困るという意味で、また、それが今変わりつつあるという意味で。ただし、こうしたらいいと、私自身も申し上げにくいのが現状です。

(河野座長)
 國部委員から、ガイドラインは大規模事業者に適用するということで、これは変えない方がいいとのご意見だったのですが、論点2の[2]ですかね。事業者等への改訂への影響や現行ガイドラインの内容の充実度からして、枠組みは基本的に踏襲するどうかに関わってくるかと思います。非常に限られた時間の中では全面的な改訂はできにくいという議論になりやすいのですが、改訂の基本路線として、現行を踏襲するのか、それともかなり踏み出してもいいのかについて、他の委員の方もご意見を言う際に、触れていただければと思います。そうすれば事務局案を作るときには、考えやすくなるのではないかと思います。先程、私が申し上げたコンパクト化とか充実化からは、かなり構想が変わってきたなと思います。

(伊東委員)
 まだ自分自身の考え方がはっきりと決まっていないのですが、基本的に有価証券報告書は財務面を見ているわけでP/L・B/Sですけども、それに対して昨今の企業価値というものを考えた時には、やはり非財務面のところが非常に大きいと思います。つまり、それはE・S・Gです。ただし、この非財務面は企業の存続や繁栄にとって非常に大きいのですが、従来のP/L・B/S的な形で現れないところに難しさがあります。よって、環境報告書、それがサステナビリティなのかCSRなのか、いずれにしても非財務面のものを如何に可視化していくかが、報告書を発行する者にとっても読み手・受け手にとっても重要です。その中でも特に私が重視しているのが、マテリアリティという考え方です。つまり非財務面を考えた時に、企業活動により企業が社会的な存在であるということが“自身の利益になるところ”と“社会的な公正に資するところ”と両方あると思っているのです。そして、企業自身の利益・損失の部分は財務報告書に出るわけですけれども、社会的な公正がプラスの影響として働いたりマイナスの影響として働いたりする部分というものは、基本的には財務報告書には出てきません。そこのところに、きちっと定量化できるものは定量化してスポットを当てていくことが企業自身にとっても、それをお読みになる受け手にとっても重要なことなんじゃないでしょうか。
 それで、もうちょっと各論に入りますと、GRIとISOのSR規格について若干思っていることを申します。GRIで検討されているガイドラインの改訂(G3)については、企業が独自性を出しなさいとか、そしてこれを決めて説明しなさいとか、基準化するみたいですね。これは、ちょっと肌感覚的なものなんですけれども、経団連を中心とする国内の産業界では、なかなかG3の概念そのものを受け入れづらい面があるなと、いう声が非常に強いことは事実だと思います。会長会社のキヤノンさんがいらっしゃいますけれども、三菱UFJも副会長会社ですからその辺は非常に感じております。マニアックなところまで入っていけばいくほど、なかなか受け入れづらいものがあるというのが事実でございます。その一方で独自色を出して説明していくと言うことは重要なのですが、これをガイドラインという形ですんなりと収めるというのは現実的には難しいのかなと思っております。それからISOのSR規格(ISO26000)については、最終的な規格がまとまるのが2009年の第一四半期でなかったかと思います。日本の産業界としましても、それを認証に結びつけるとか、標準化・規格化にすると言うことについては、非常にアレルギーがございます。よって、ISOのSR規格をそのまま環境報告書ガイドラインにすっぽり入れていくのは、ちょっと時期尚早ではないかと考えております。

(河野座長)
 ありがとうございました。他にありませんか。

(佐藤委員)
 ガイドラインは先進的に報告書を発行してきた大企業向けとは言うものの、新興市場も含めて、これから初めて環境報告書を作る事業者も対象とするものであって欲しいと思います。
 記載項目については、現行ガイドラインの基本的構成(5分野・25項目)は分かり易くこのまま踏襲してよいと思いますが、時代の流れに合わないところ、例えば環境マネジメントシステムの部分が多いとか、資源の部分や社会性がわかりにくいといった面は改訂が必要だと思います。
 それからマテリアリティについては、より重要なことを出していくという意味では大事と思いますが、逆に新たに作る人にとってはいきなり出されても理解できず、むしろ「ここだけ書けばよいのか」と事業者側の勝手な解釈や誤解を産み、判断を誤らせる可能性があるので、その出し方は慎重に考えるべきではないでしょうか。
 また、多くの企業が既にそうしているように、ガイドラインにはトピックや特集を盛り込んではどうでしょうか。その企業が重点的に取り組んでいるところ、社会的に強く要請されているところ、あるいは不祥事を起こした企業の対応策等については、読み手も関心を持って見ていますので。

(古田委員)
 GRIガイドラインG3の改訂には弊社も係わったのですが、実は3~4年かけて議論した結果です。特に多様な主体のボランタリーな参加により“あるべき世の中の姿”から議論を起こしていることもあって、ある種の妥協の産物であり、日本企業の意見が全て入っているわけではありません。今回の環境報告書ガイドライン改訂では、G3の考え方をそのまま受け入れるのは難しいと感じています。
 また、第三者による意見や審査は、作り手がフレキシブルに選択していくものであるため、その点に留意していただけると、世の中に充分役に立つのではないかと思います。

(魚住委員)
 GRIガイドラインG3やAA1000等世界の流れを理解しておくことは当然ですし、また、その方向性が理念的には良いものであるとは理解できます。しかし、それを何処までこのガイドラインに入れるべきかについては、大規模事業者でありながら、まだ環境報告書を作成していないところが多数あるという現実を考えると、そちらをターゲットにしていくのが良いのではないかと思います。そうであれば、基本は今までのものを踏襲し、重要性(マテリアリティ)については解説で触れる程度でよいのではないかと思います。
 大気・水圏・土壌に対する汚染物質の排出については、PRTRやGHG報告は法制度ができましたが、環境報告書というのであれば、法制度で開示が求められていない環境パフォーマンス(SOx、NOxあるいはCOD、BOD等)は記載すべき項目として残して欲しいと思います。
 さらに環境計量証明事業者の実態を知ると、環境報告書上「法規制違反はない」と記載されていても、実は上場企業でも規制値オーバーでの再測後、規制値クリアーの「計量証明書」のみを生かしている事例が結構多いので、測定を依頼する事業者のモラル向上を望むとともに、法令遵守は正確に書いて欲しいと思います。

(森下委員)
 新ガイドラインの改訂に当たっては、まず既存の環境関連ガイドラインや環境配慮法等との整合性の観点から整理する必要があるのではないかと思います。
 重要性の原則については、環境面では生物多様性の記載が弱いというくらいが現状で、25項目でほぼ網羅されていますし、企業もこの中で選ぶことができます。しかし、報告書の名称は持続可能性報告書とか環境・社会報告書でありながら、多くの企業の場合、社会性の面ではコンプライアンスや労働安全衛生等が中心になっており、マテリアリティとして大事な社会的な係りはあまり見られませんし、企業がそれを考え、表明しているにはほど遠いのが現状です。そこで持続可能性やCSRという概念の中では、事業者が自ら判断して、社会性の部分のマテリアリティについて明確にすべきではないかと思います。
 また今回の改訂では、第三者による認証や意見を含めて、基本的に環境報告書は企業評価のために作成することや比較可能性を高めることを目的とすることについて明確化すべきだと思います。第三者が報告書について意見を述べる時は、記述内容の正確性やある程度の網羅性を前提にしているので、それに関する代表者の誓約や作成者責任を明確にすべきだと思います。また、いわゆる第三者意見表明や評価についてのあり方の明確化も必要です。

(伊東委員)
 環境報告書の読み手は[1]企業に投資する人、[2]製品・サービスを購入する人、[3]社会的視点からウォッチしている人の3タイプに分けられます。金融機関の立場から言えば、[1]は主にSRIのファンドマネジャーですが、現状ではSRIにはそれほど資金は集まっていません。それを社会的に意義のあるものにしていくには、環境分野では一定の基準の下に定量化して企業間比較できるようになると有り難いという意見が圧倒的に多いですね。非財務情報は企業価値の源泉でもあり、企業にとっては環境面のマテリアリティとともに競争力になる上に、お金が回ることになります。[2]と[3]に対しては、企業が社会的公正や環境保全に自主的かつ積極的に取り組んでいる部分の説明を共通化すると良いのではないかと思います。つまり、このような最低限のところをガイドラインとして共通化することが良いのではないでしょうか。

(河野座長)
  最低限の共通部分のところは全企業に必須なものとしたらどうか、という意見ですね。

(魚住委員)
 企業間比較のためには、報告組織と環境パフォーマンスのバウンダリー(範囲)を明らかにしなければなりません。さらに、環境パフォーマンスの項目や数量はしっかり出されていても、その根拠が明らかでないことが多いのが現実です。そこで、その計算式を標準化する必要があるのではないかと思います。標準の式を使わない時は、独自の計算式を明記するようにしたら良いのではないかと思います。

(上妻委員)
 お話をうかがっていると、問題が二つあるように思います。一つはガイドラインを使い易くすることで、もう一つはガイドラインの内容を整合的に作っていくことです。使い易くするという点については、特に環境面では、魚住委員の言われたような技術的な標準化などを含めて、現行ガイドラインの流れで業種特性に合わせて項目列挙の中から取捨選択してもらう方法で構わないと思います。
ただ、注意していただきたいのは、社会性の項目をどうするかということです。前回のガイドライン改訂では、25番目の社会性指標は「こんなものがある」と整理して単に入れただけであり、議論はしていません。今回は社会性を明確に入れるのか、入れないのかはっきりさせる必要があります。ガイドラインは一人歩きをしますから、ガイドラインに入れると企業は書くようになります。後藤委員の意見に従えば、社会性項目を入れることになりますが。
 繰り返しながら、ガイドラインとしての原理原則と使い易くすること(運用)を混同してはならないと思います。社会性項目には必ず相手があって、その合意を取り付けながら取組を進めていくことが必要ですが、GRIのG3にある項目は社会的公正からみて最低限必要なものを挙げているのではなく、ステークホルダーと相談しながらマテリアリティを自ら判断するようになっています。しかし、財務会計では代理者のための報告原則であり、最低限の報告義務があるのです。つまり、事業に直接関与していない者が関係者に判断を誤らせないように報告するための原則であって、G3の報告原則とは根本的に異なるものなのです。社会性の項目が明確に入ってくると、ガイドライン内部での整合性や重要性の概念とも強く係ってくるのです。

(河野座長)
 上妻委員からご指摘のあった報告原則はとても大事なご指摘であり、環境報告書ガイドラインにCSRないし社会性の項目を入れるかどうかの問題でもありますので、きちっと議論し決定する必要があります。ただし、ここで決めることはできませんので、問題提起を受けたと理解したいと思います。

(國部委員)
 現行ガイドラインにある25番目の社会性の項目を落とすことは考えられません。アからキまである項目の中から何を選び取るのか、その方法がマテリアリティの概念とつながると考えています。それを決めるプロセスに透明性を持たせることが肝要です。この点については、第三者意見でも取り上げる必要があると思います。

(河野座長)
 参考資料4「環境報告書の信頼性を高めるための自己評価の手引(試行版)」の位置づけは、新ガイドラインと一冊化するのか、それとも付属書としての位置づけになるのでしょうか。

(中坪課長補佐)
 自己評価の手引(試行版)は、環境報告書ガイドラインの付属書として考えていくつもりでいます。この手引きは(試行版)とありますように、現行の参考資料1「環境報告書ガイドライン2003年版」に基づき作成されていますので、今回のガイドライン改訂後には当然修正する予定です。
 なお、参考資料2「EPIガイドライン2002年度版」は、新ガイドラインの一連の関係物として内容的に整合性のあるものにしたいと考えています。スケジュール表にもありますように、特にEPIのコアになる部分は本検討会の下に設置するWGで同時に議論することになっていますが、それ以外の関連ガイドライン等を含めて全体として体系だったものにしていきたいと考えています。ただし、冊子として1冊にするかどうかは別途考えたいと思います。

(上妻委員)
 要するに、現行の「環境報告書ガイドライン2003年版」と「環境パフォーマンス指標ガイドライン2002年版」の両方を整合性をもたせつつ、同時に改訂して一本化するということですね。
 なお、後藤委員の推奨される平成16年度の「プロトコル調査」では、既に副題が「環境・社会パフォーマンス指標の計測・開示の充実に向けて」となっているのですね。

(宇郷委員)
 環境報告書ガイドラインは、会計原則のように正式なルールとして認証までめざすのか、それともボランタリーのままでしょうか。政府としての将来的な位置づけについてお聞きしたい。
 現状では環境報告も実績中心であり、まだ充分ではないと思います。特に中期目標がきちんと出ていませんので、資料5の論点10で提起されている「PDCAのありよう(徹底)」の検討が是非とも必要です。
 また、報告項目ごとの開示メディアの推奨についても記載してはどうでしょうか。例えば、過去の詳細な数値や計算式等は必ずしも紙媒体である必然性はなく、開示メディアの使い分けによる開示方法の工夫を促進することになり、さらに自立性・活性化の向上にも繋がると期待できます。

(伊東委員)
 社会性の取組分野はとても広く、経営者の思いや事業特性との関連性が大きく反映される部分でもあります。当社では特定の世界的SRIをクリアすることを目指していますが、これは自社の判断に基づく最低限の水準を示すものです。

(河野座長)
 論点3の生物多様性については、ガイドラインに入れることは問題ないように思えるのですが、どう考えますか。

(古田委員)
 生物多様性の問題は業種によっては関連がほとんどありません。それこそマテリアリティの問題ではないかと思います。ガイドラインに入ったら、「関連がない」と書くことになるのでしょうか。

(宇郷委員)
 しかし、サプライチェーンまで考えると、生物多様性は間接的に関連してくる業種は多くなります。その重み付けの問題もあり、どこまで遡及するべきかについては議論のあるところですが、新しい26番目の項目かもしれません。ただし、それを強制されると困難な企業もあるでしょうから、どのような打ち出し方をするべきかについては考える必要があります。

(河野座長)
 論点5にあるように、SRI(社会的責任投資)を背景とする環境と金融との関係についてはどうでしょうか。先ほどの生物多様性と同様に、環境報告書ガイドラインでこれに触れることには特段の問題はないようですが、どういう出し方をするべきでしょうか。

(鎌形課長)
 論点5の「金融のグリーン化」にある事例には少し偏りがあるかも知れません。企業側の「環境に配慮した資金の調達及び使途状況」に関する財務戦略的な情報だけでなく、投資家に分かりやすく、金融機関から企業が環境面からも評価されるための情報も必要だと思いますが、いかがでしょうか。

(伊東委員)
 金融機関が融資・投資判断の際にわかりやすくかつ使いやすい様に、開示項目等の基準を共通化するとよいのではないかと思います。また、最近になって、銀行も環境会計を考え始めていることから、それを促す意味でも、環境報告書ガイドラインがベストかどうかは別にしても、少し触れた方が良いと思います。

(河野座長)
 これで事務局が準備した論点については、ほぼ触れられたと思いますが、他に言い残したことなどはありませんか。

(森下委員)
 これまでの環境報告書ガイドラインでは、本文以外の解説などが資料編として後ろに付いていましたが、ガイドラインとしての分かりやすさ・使いやすさの向上ために、各原則や各要求事項のすぐ後に「解説」や「Q&A」等を付けて全体的なレイアウトを工夫するとよいと思います。

(古田委員)
 比較可能性のニーズは理解できるのですが、本来、環境報告書の発行自体は企業のボランタリーな取組であり、企業間の比較可能性を強調しすぎると、それを不利と考える企業が公表しにくくなることも考えられます。

(河野座長)
 環境報告書を評価する側としては、比較可能なものが望ましいと考えていますが。
 さて、時間も参りましたので、本日の検討会はこれで終了したいと思います。次回は、本日の議論を受けて環境報告書ガイドラインの骨子案を事務局に作成してもらい、それを討議します。次回の検討会の予定はいかがですか。

(川村)
 現時点では日時まで決まっておりませんが、スケジュール表にありますとおり、12月の中・下旬を予定しております。委員の方々には、改めて日程調整をお願いいたします。

(河野座長)
 それでは、第一回の検討会をこれで終わります。皆様、ありがとうございました。

(以上)