環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部第4章>第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用

第3節 我が国に眠る地上資源の発掘・活用

1 我が国に眠る地上資源

 鉱山から採掘できる天然資源には限りがあり、場合によっては、十数年のうちにもこれまで経験したことのない早さや規模で資源の枯渇に直面するおそれも生じています。また、鉱物資源の採掘に伴い様々な環境問題が発生しています。加えて、精密機器の必需品である貴金属・レアメタルの安定供給も大きな課題となっています。他方で、我が国に存在する様々な使用済製品の中には、原材料として使用した有用な金属資源が多く含まれています。そこから、金属資源を回収し、再利用することができれば、新たに鉱山から採掘する天然資源の投入量を抑制することができます。

 独立行政法人物質・材料研究機構では、地上資源として、我が国にどれだけの金属資源が存在するのか、推計する研究が行われています。その推計結果によれば、我が国に蓄積されている金属資源(地上資源)の量は、鉄12億トン、銅3,800万トン、銀6万トン、金6,800トン、レアメタルであるタンタル4,400トン、リチウム15万トンとなっています。これを、世界全体の現埋蔵量に占める割合で考えると、鉄1.62%、銅8.06%、銀22.42%、金16.36%、タンタル10.41%、リチウム3.83%となります。


我が国の都市鉱山の蓄積量と世界の埋蔵量に対する我が国の都市鉱山の比率

 この数値には、現在まだ使用中の製品、廃棄物として埋められたものなど、直ちに資源を回収することができないものも多く含まれていることに留意する必要がありますが、総量として、我が国に眠っている地上資源は、海外の大鉱山に匹敵する大きなポテンシャルを有しているといえます。

 それでは、これらの大量の地上資源について、現時点で我々はどの程度有効活用できているのでしょうか。平成21年に再生利用されずに処分場に埋め立てられた金属系廃棄物の量は、一般廃棄物で約53万トン(発生量の約34%)、産業廃棄物で約23万トン(発生量の約3%)となっています。このほか、使われないまま家庭で保管(退蔵)されている製品も、相当数あり、携帯電話(約5割)、ビデオ・DVDプレイヤー(約3割)、携帯音楽プレイヤー(約4割)といった小型電子機器の退蔵率が高いとの調査結果も出ています(環境省調査)。

2 使用済小型電子機器等を対象とした新たなリサイクル制度

 我が国においては、大型の家電製品については、家電リサイクル法に基づくリサイクル、あるいは製造者による自主的回収が積極的に行われ、有用金属のリサイクルが行われています。

 他方で、安定的にリサイクルが行われていないゲーム機などの使用済小型電子機器等の中にもレアメタルを含む有用金属が含まれています。

 使用済小型電子機器等に関する統計は整備されていませんが、環境省では、1年間で使用済みとなり廃棄等が行われる小型電子機器等は65.1万トンであり、そのうち有用金属は、27.9万トン(金額換算すると844億円)になると推計しています。また、1年間で使用済みとなる小型電子機器等に含まれている金属の推計量と、1年間で新たに製品製造時に使用される国内需要量とを比較したのが図「使用済小型電子機器中の有用金属含有物と国内需要量の比較」です。金属別にみると、タンタル(対国内需要量比9.4%)、金(対国内需要量比6.4%)、銀(対国内需要量比3.7%)などについては、使用済小型電子機器等の回収・リサイクルを行うことにより、新たな天然資源投入量を抑制する一定の効果が見込まれることが分かります。


使用済小型電子機器中の有用金属含有物と国内需要量の比較


都市鉱山からの金の採掘イメージ

 EUなどでは、使用済小型電子機器等について、有用金属が多く含まれることを考慮し、すでに制度的にリサイクルが行われています。

 我が国でもこの使用済小型電子機器等に着目し、環境省と経済産業省が協力して、平成20年度から回収モデル事業を実施しています。モデル事業を実施した地方公共団体からは、採算性を高めるためには小型電子機器等を広域的に収集運搬することが不可欠であり、廃棄物を収集運搬する際に必要となる廃棄物処理法に基づく許可を不要とすること等の規制緩和を講じるべきとの意見が出されました。

 また、小型電子機器等から回収された有用金属の取引価格は、その金属資源の需給状況や比較対象となる天然資源の取引価格によって、大きく変動する可能性があります。市町村がコストをかけて小型電子機器等を回収しても、市況変化を理由にリサイクル事業者が引取りを拒否することが簡単にできてしまうのであれば、多くの市町村が制度に参加することを躊躇するものと考えられます。

 これらを踏まえ、政府は、新法として、「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律案(小型電子機器等リサイクル法案)」を平成24年3月9日に国会に提出しました。

 図「小型電子機器等リサイクル法案の概要」は小型電子機器等リサイクル法に基づくリサイクルの流れを示したものです。市町村が回収した使用済小型電子機器等は、環境大臣及び経済産業大臣の認定を受けた事業者(認定事業者)に引き渡され、有用金属の回収・リサイクルが行われます。安定的なリサイクルを行う観点から、認定事業者は、市町村から引取りを行うことを求められた際には、正当な理由がない限り、これに応じる義務があります。


小型電子機器等リサイクル法案の概要

 小型電子機器等リサイクル法案に基づき、認定事業者が使用済小型電子機器等の収集・運搬を行おうとするときは、廃棄物処理法に基づく許可を不要とするほか、施設整備に必要な資金を調達する際に産業廃棄物処理事業振興財団の債務保証を受けることができるようになります。

 以上のように、小型電子機器等リサイクル法案は、誰かに義務を課すタイプの制度ではなく、リサイクルの環への参加を促すタイプの制度となっています。このため、住民、市町村、リサイクル事業者といった、地域内の関係者が積極的に協力することが必要不可欠であり、リサイクルが地域内で上手くまわるよう、個々の高い環境意識が「地域力」として結集することが強く期待されます。


循環資源の国内活用を推進するための国民運動「活かそう資源プロジェクト」


 環境省では、「日本のごみを日本の財産に」の掛け声とともに、再生された循環資源を活用した製品の質の高さや二酸化炭素削減効果などの社会的有用性等を広く国民に伝え、そうした循環資源を活用した製品の普及推進を通じて、国内での循環資源の利活用を促進する国民運動「活かそう資源プロジェクト」を平成24年3月より展開しています。

 循環型社会の構築のためには、再生された循環資源を活用した製品の需要拡大を推進していくことが重要です。これまで、さまざまな事業者によって循環資源を活用した製品の商品化がなされてきましたが、売れ行きが伸びず生産終了となる商品も少なくなく、そうした循環資源を活用した製品の需要が拡大される状況にはいたっていないのが現状です。その原因にはさまざまなことが挙げられますが、循環資源を活用した製品の需要がそれほど伸びず、それにより供給側が生産を減少し、さらにそれが需要を停滞させているという指摘もあり需要と供給の問題があることが指摘されているのも事実で、そうした問題解決に向け国が支援を行うことも、循環資源を活用した製品の需要拡大を図っていく上で重要であると考えています。「活かそう資源プロジェクト」は、このような問題認識から立ち上げられた運動で、国が旗振り役となり、多くの企業の賛同を求め企業と消費者をつなぎ、循環資源の活用推進に向けた好循環をつくり出す国民運動です。

 具体的には、廃棄物を国内で中間処理することにより産出される資源を「国産循環資源」と位置づけ、[1]ホームページや各種イベント等を通じて広く国民に向け、国産循環資源を活用した製品の有用性等の情報を発信するとともに、[2]資源化などの廃棄物の適正処理を行うことができる優良な廃棄物処理業者の情報を分かりやすく提供できるシステム「優良産廃ナビゲーションシステム(優良さんぱいナビ)」を構築運営し、[3]廃棄物排出業者と廃棄物処理業者の協業づくりの場(コンソーシアム)を設置運営し未利用循環資源の活用促進に向けた基盤づくりを行っていきます。

 資源を大事に使う持続可能な循環型社会の構築に向け、企業の皆様には循環資源を活用した製品の製造やそうした情報の積極的な公表を促しつつ、国民の皆様には、循環資源の活用推進に向け具体的な4つのアクションを呼びかけていきますので、是非、「活かそう資源プロジェクト」にご参加ください。

 詳しくはこちらまで 活かそう資源プロジェクト(別ウィンドウ)


循環資源の国内活用を推進するための国民運動「活かそう資源プロジェクト」