第3節 水俣病被害の救済
水俣病の被害者に対しては、下記のような救済が行われています。

図 水俣病被害救済の概要

(1)法による認定制度と補償協定
昭和48年、原因企業と患者団体の間で補償協定が締結され、慰謝料(一時金)、医療費、年金等が支払われることとなりました。公健法等で水俣病と認定された者は、全員この補償協定に基づく補償を選択しています。
(2)平成7年の政治解決
公健法の認定申請を棄却された者による訴訟の多発など水俣病をめぐる紛争と混乱が続いていたため、事態の収拾を図り関係者の和解を進めるため、平成7年9月当時の与党三党(自由民主党、日本社会党、新党さきがけ)により、最終的かつ全面的な解決に向けた解決策が取りまとめられ、当事者間で解決のための合意が成立しました。これにより、水俣病に見られる四肢末梢優位の感覚障害を有するなど一定の要件を満たす者に対して、一時金が支払われるとともに、医療手帳が交付され、医療費、療養手当等が支給されました。また、医療手帳の対象とならなかった者であっても、一定の神経症状を有する者に対して保健手帳が交付され、上限を設けた医療費等が支給されました。
(3)裁判による損害賠償
熊本水俣病第二次訴訟の高裁判決(昭和60年8月)及び平成7年の政治解決後唯一残った水俣病関西訴訟の最高裁判決(平成16年10月)では、公健法で水俣病と認定されていない人に対し、公健法の認定要件とは別個の判断に基づき、損害賠償が認められています。
(4)今後の水俣病対策について
水俣病関西訴訟最高裁判決が出された平成16年10月15日には、環境大臣が談話を発表し、「被害の拡大を防止できなかったことについて真摯に反省し(中略)多年にわたり筆舌に尽くしがたい苦悩を強いられてこられた多くの方々に対し、誠に申し訳ないという気持ちで一杯であります。」と表明しました。
水俣病の公式確認から50年という節目を迎えるに当たり、平成7年の政治解決や最高裁判決を踏まえ平成17年4月に発表した「今後の水俣病対策について」に基づき、保健手帳対象者に、医療費の自己負担分を全額給付することとし、給付内容を拡充した保健手帳の交付申請の受付を平成17年10月に再開しました。また、胎児性患者に対する社会活動支援等の新たな地域的な取組を平成18年度から実施します。
今後は、水俣病被害者が地域社会の中で安心して暮らしていけるようにするため、医療対策等の充実とともに地域福祉と連携した取組が必要です。


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